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中国の通販事情

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目次

中国の通販業界最前線

日中両国においてインターネットが普及し、ECが通販ビジネスの重要なインフラになってきたことにより、両国の通販ビジネスモデルが大きく変革しつつある。 通販ビジネスは、主として米国で「ダイレクトマーケティング」という形で体系化されてきたが、21世紀に入って、アジア諸国にもインターネットが急速に普及し、その中でも中国では独自のEC通販ビジネスが誕生しつつある。巨大な中国市場に、日本の通販ビジネスも積極的に参入したいという意欲が高まってきた。 そのためにこのブログでは、日中通販ビジネスを比較することにより、両国の相違点及び共通点を比較分析し、中国市場に進出する場合、どこに困難性があるのか解明する作業に取り組んだ。 ただ、2012年に入って、日本の大手EC企業が中国から撤退した。そこで比較研究を進めながら、その撤退の理由についても分析を行った。日本の通販企業が、中国進出で大きな壁に突き当たっている理由の一つは、中国の消費者を十分につかみきれていないという「ターゲットの特性把握」に難点があったといえる。 中国ビジネスの専門家の多くは、「郷に入れば郷に従え」という教訓を指摘していたが、この「郷」の部分を「中国消費者の嗜好の把握」に捉えると、まずは「中国消費者は日本の企業や商品に何を期待しているか」という点を把握するために、調査会社からの結果報告だけではなく、ターゲットとする潜在的な消費者の買物行動や、何に興味を持ってくれるのか、自らフィールド調査し、その情報を基にして投資していくだけの潜在的な市場機会があるのかを確認する「戦略的マーケティングカ」が要求されることがわかった。 日本企業の中で、ユニクロとDHCが中国EC通販ビジネスで成功している事例として注目されているが、その背景には同社の経営トップが、中国が自社の成長を支えてくれる有力な市場であるという点を確信し、思い切った戦略投資を行ったという経緯がある。

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このような潜在的な市場機会をまず独自で確認し、その実現に向けて実行手段をよく吟味し、それを計画通りに実行に移すことにより、中国の消費者に魅力を提供するといった、戦略的マーケティングカを事前に整備していないと成功するのは難しい、ということが分かってきた。 通販ビジネスは店舗販売と異なって、商品を手に取って確認できないため、その弱点をマーケティングでどう補足するのか、両国とも同じ悩みを抱えている。ネットサイトに商品を掲載するだけでは誰も来店してくれない。特に、中国のネットショッピングでは、日本よりもはるかに多い商品が掲載されているので、日本以上にブランド訴求に広告投資をしないと売上が確保できないという悩みがある。 もちろん、日本と中国では、消費者のショッピング行動や同業者との競争環境が異なっているが、そのような状況で、顧客を「集客」し「購買客」にどう転化するかという問題解決方法を事前に準備しておかないと、中国の市場では簡単には売上がとれないのは当然である。 また、売上をとるだけではなく、投下した資金が回収できるだけの利益がとれるような事業計画を事前に立案しておく。 こういった調査や計画の必要性は、両国とも共通している。もちろん、事前の準備を周到に行ったとしても、事業として失敗することもある。成功させるためのマーケティング手法やマネジメント手法を中国市場で日本の通販企業が徹底してこなかったことが、撤退の要因になっているという事例がみられた。 このページをまとめるにあたって、国情の相違や生活習慣の相違点を意識するだけではなく、通販ビジネスとして直面する問題点やその解決策として、徹底した戦略的マーケティング体制をいかに整備するかに重点を置いてまとめた。

中国通販ビジネスの戦略的視点

なぜ、今戦略的マーケティング実行力が必要か

中国に限らず、経済発展、文化的背景、法的規制等の異なった他の国に市場機会を求めて海外進出をする場合、提供したい商品やサービス、コミュニケーション戦略について検討し、「買手」又は「消費者」を把握し、自社の考えるビジネスモデルに投資をしていくだけの市場潜在性が十分に期待できるか、という点を確認する作業は重要である。 特にマーケティングでは、競争優位性を確保する方法として、早くから「戦略的マーケティングカ」が注目されてきたが、1989年に「ベルリンの壁」が崩壊して以来、戦略的マーケティングは、グローバル市場への進出の武器として注目されるようになった。欧米では、はやくから「グローバル・マーケティング」として体系化されてきた。 この場合、海外進出の大義名分として注目されるのが、その国の「人口数」である。中国はこの人口数で言えば、一国として13億人以上をかかえている世界で最大規模の市場であり、しかも経済成長率が高いという意味で、大変魅力的な市場である。 ただ量だけ見ると、望ましい市場機会を提供してくれると思いがちであるが、問題は、日本の市場で成功している同じやり方で、中国市場において成功するかというと、そうはいかないことが、有力企業が撤退しているのをみても明らかである。 中国に進出したいと考えている日本企業も、中国の全領域にわたって進出したいと考えている企業は少ない,進出する拠点として一級都市から上陸するのか、三級都市から進出するのかは、各企業の戦略によって異なるが、どういう進出パターンを考えるにしろ、展開していきたいビジネスモデルを、中国の消費者が受け入れてくれる必要がある。 日本の企業が提供する商品の価格や品質を「魅力的」と感じて買ってくれるかどうか、買物客として中国の消費者がお金をだして、どこまで買い続けてくれるのか、という最も重要な確認に、経営トップがどこまでコミットしているのか?つまり本気で取り組んでいるかである。 日中企業のトップ同士の話合いで、合弁会社の形で中国進出を決めても、売場やネットショッピングで、消費者自体がどこまで魅力を感じてくれるかについて確認を取っていないと、トップの思わくと現場の数値とのギャップが生じ、早期撤退に追い込まれることになる。 既にマーケティングの分野では、環境の激しい状況のもと問題解決の手段として、早くから「戦略的マーケティング」が注目されてきた。執筆者は「戦略的マーケティング」という書籍を出版したが、この著書では戦略的マーケティングを次のように定義している。「「戦略的マーケティング」部分は事業単位マネジャーが立案すべき部分である。事業単位別にトップおよび本社レベルで検討された戦略的方針を基盤にして、事業単位マネジャーは、その方針を具体化するための事業計画を立案する必要がある。この「戦略的マーケティング」は、事業単位の戦略的目標と戦略的マーケティング・ミックス計画を立案する部分とに区分できる」 中国EC通販市場に対する問題解決手段として、なぜ「戦略的マーケティング」が有効であるのかについて、補足説明をしておきたい。 事業単位マネジャーが戦略的方針を設定する場合、重要なポイントはどのターゲット層を狙えば、将来売上を伸ばしていけるか、という「市場機会」の予測に時間を割く必要がある。 例えば、中国ECの中心的役割を果たしている「若年層」を狙うのか、それとも都心部の「働く女性」に絞り込むのかが重要である。絞り込んだ「ターゲット層」に向けて通販ビジネスを展開することによって、どの程度の「売上目標」「利益目標」「市場占有率目標」「投資金額」「組織・システム戦略」「人的資源戦略」といった面で、3〜5年計画を立案して、トップの審議を受ける必要がある。 事業が順調に進行する場合には「市場機会」を逃さないために、どこまで攻めるのか、という戦略方針の上限と、この「戦略的方針」通りに進行しない場合、その下方修正の限度枠を設定するといった守りの体制も事前に検討しておく。 このような「戦略的目標」に関して、トップ陣の合意をえると、その戦略目標を達成するための「戦略的マーケティングミックス要因」を立案し、その展開スケジュールについても立案する。「戦略的マーケティングミックス要因」としては、このブログの場合、「商品販売戦略」「メディア戦略」「広告戦略」「物流戦略」の4つの要因を検討対象に選んでいる。マーケティングの教科書で取り上げられているマーケティングミックスの対象となるのは、4P、つまりProduct(商品)、Price(価格)、Place(販売場所)、Promotion(販売促進)であるが、選んだ戦略的マーケティング要因が、中国の消費者が受け入れてくれる要因であることが大事である。 実際に中国EC市場に進出したとしても、予定の売上や利益が確保できずに、早期撤退する事態が多く発生した一つの原因は、この戦略的目標の設定と中国の消費者ターゲットに向けた戦略的マーケティング要因の組合せや、バランスが崩れていたという点があげられる。 出発点でスタートした戦略的マーケティングも、目標通りに結果がついてこないと、最低、四半期ごとに<計画一実行?チェックーアクション>というPDCAを回して、修正的アクションを迅速に打ち出す。 戦略的マーケティングの流れを「仕組み化」し、そのプロセスを業務フロー化し、各工程でそのズレを早期に解決していくTQC(Total Quality Control)方式を徹底させる。

こういったように「戦略的マーケティング」をプロセス的に区分し、中間工程でズレを発見して、軌道修正する方式を徹底させれば、3年目ぐらいから軌道に乗り始める可能性が高くなる。

コトラーのSTP戦略概念

コトラー(Philip Kotler)も早くから戦略的マーケティングの重要性を強調してきた。 特にコトラーの戦略概念で、STP概念、つまりMarket SeRmentation Targeting Positioningが注目に値する。マーケティング分野では、企業が消費者に向けて提供する商品や、サービスを消費者自体が好んで買ってくれるかどうかについて、欲求構造を分類する概念として「マーケット・セグメンテーション」(市場細分化戦略:Market Segmentation)を提唱してきた。 細分化された消費者の欲求構造のうち、どの欲求構造を持っている消費者を対象にするか、という点を明確にすることをマーケティング論では「ターゲッティング」(Targeting)と呼んできた。 ただ、対象にする「ターゲット層」を明確にするだけでは、企業が提供したい商品やサービスの特徴、提供物について、消費者は知る由もないので、企業が期待するようなマーケティング成果が得られない。そこで、企業は設定した「ターゲット層」が本当に興味を持ち、購買してくれるような「商品」「価格」「購入場所」「プロモーション」といったマーケティング手段を企画する必要がある。 消費者は、競争相手からも同じような提供物を受け取るので、その提供物を選んでくれる点をしっかりした計算をしておかないと、マーケティングが成功しない。 このように「ターゲット層」の好みを予測して、他社に負けないコンセプトを打ち出す必要がある。このコンセプト提案のことを、マーケティングでは「ポジショニング」(Positioning)と呼んでいる。 既にマーケティング・マネジメントの戦略的形成の段階で、消費者の多様なニーズを分類して層に分ける「マーケット・セグメンテーション戦略」、どの層に焦点を当てるかという「ターゲティング戦略」、他社とは一味異なった差別化戦略を提供する「ポジショニング戦略」の3段階を重視してきた。
企業なりのブランドの方向性を決めるSTP(セグメンテーション戦略、ターゲティング戦略、ポジショニング戦略)の3段階説が重視されている。

なぜ日本のダイレクトマーケティング企業は失敗するのか?

日本で米国式のダイレクトマーケティング論を積極的に導入した江尻弘氏は、1988年に「ダイレクト・マーケティング・マネジメント」を出版しているが、サブタイトルに「なぜ日本企業は失敗するのか」というテーマを取り上げている。
江尻氏は、アメリカのダイレクトマーケティングの文献では、次のような問題点を発見したと述べている。
「この文献研究の結果、私は、日本とアメリカとの間に大きなテクノロジー・ギャップの存在していることを知りました。したがってダイレクト・マーケティングの技術とか方法に精通して、日本の技術的な遅れを克服しなければ、わが国のダイレクト・マーケティング企業が成功を収める可能性は低い、と痛感させられたんです。
また、アメリカの先進的なダイレクト・マーケティング・マネジメントを分析しているうちに、日本の企業がいくつもの誤りをおかし、しかもその錯誤に気付いていないことを知るにいたりました。」

そういった熱い想いをもとに、このブログでは日本の経営者向けに以下のような戦略的課題について提言を行っている。
戦略的課題1:顧客データベースの整備に基づく顧客組織化(消費者ターゲット戦略)
戦略的課題2:商品政策の改革を契機とする事業新展開(商品販売戦略)
戦略的課題3:オッフアーの導入による重点化(広告戦略)
戦略的課題4:メディア革新を契機とする市場創造(メディア戦略)
戦略的課題5:フルフィルメントの近代化による障壁の突破(物流戦略)

江尻氏によれば、この5つの戦略的課題が日本企業にとって、遅れた課題であると指摘している。
この戦略的課題は、このブログで取り上げた5つの項目と基本的に一致している。こういった戦略的課題を日本の
通販企業が解決していかない限り、中国市場の通販ビジネスで失敗を繰り返す危険性をはらんでいる。

戦略的マーケティング視点

戦略的マーケティング視点を簡単に整理すると下図のようになる。

<中国市場に対する戦略的マーケティングの重要性>

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この図では、戦略的マーケティングの中核に「中国消費者ターゲット戦略」を据えて、そのターゲット層に対して、どのような商品販売戦略、メディア戦略、広告戦略、物流戦略を打ち出すか、という戦略的概念図をまとめたものである。特に「中国」というカッコつきの消費者をどう理解し、どう対応するか、という点に現地の責任者が本気になって取り組む必要がある。
日中通販ビジネスを比較検討した際に、両国の戦略的マーケティング視点に立って、以下のような5つのポイントにそって対比してみた。
(1)消費者ターゲット戦略
(2)商品販売戦略
(3)メディア戦略
(4)広告戦略
(5)物流戦略
この(2)から(5)までの4つの戦略要因は、マーケティングミックス戦略要因であり、中国の消費者に特化した戦略でなければならない。このような5つの戦略的要因を断面図の形で表現すると以下の図のようになる。この中心軸の「中国消費者ターゲット戦略」をどう考えるかが最優先課題である。

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この戦略的マーケティング体系に関しては、日本と中国では相違点と共通点とを対比してみた。その対比関係を以下の表のようにまとめることができる。

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以下では、この5つの戦略的要因について簡単に説明することにしたい。

1)中国消費者ターゲット戦略
この5つの戦略要因のうちで重要なのは「中国消費者ターゲット戦略」である。この戦略のもとに、4つの戦略要因をいかに体系化するかが重要である。
「中国消費者ターゲット戦略」の段階で、日本の通販企業が注意しなくてはならない点は、ターゲットの絞り込みに際して、中国消費者市場をどこまで理解しているかという点である。
中国では一級都市、二級都市はかなり成熟した市場であるが、三級都市、四級都市のように現在、消費市場が急速に成長しつつある、といったように発展度合いが異なった市場で構成されている。
成熟した市場では、消費者は商品に対する目が肥えており、品質やブランドの選択眼が高い傾向にある。こういった消費者に対するマーケティングは、差別化戦略を重視する必要がある。一級都市や二級都市では、消費パターンが「買手主導型」に変革し始め、「信頼重視の関係性マーケティング」に変革し始めており、この点では日中間で共通化しつつある。
他方、新たに成長している市場では、価格の安さや機能性を重視した普及率マーケティングが通用し、ブランドや商品自体の認知度を高め、販売チャネルを強化する普及率マーケティングが有効である場合が多い。つまり「売手主導型」でまずは商品を充足させる、という購買パターンがみられる。価格の安さや各種のイベントを通じて話題性といったプロモーション活動が有効である場合が多い。また、普及率マーケティングの市場は中国企業との競争が厳しい「レッドオーシャン市場」である場合が多いので、競争に巻き込まれても耐えうる戦略を臨機応変に打ち出せる現地対応力が要求される。

2)商品販売戦略
消費者ターゲット戦略が異なると、具体的なマーケティングミックス戦略要因である「商品販売戦略」「メディア戦略」「広告戦略」「物流戦略」も異なってくる。
以下では、この4つの戦略要因で、日中間でどういった相違点と共通点が見られるかという点について、上
記の図表で述べた内容にそって補足説明することにしたい。
まず第1は「商品販売戦略」である。
日本は成熟化社会に入っているために、「買手主導型」の購買パターンが一般化しているために、消費者の目から見て商品販売戦略として「差別化ポイント」を明確に持っていないと選択してもらえない。そのために、単なる商品の持つ機能性や実用性といった品質価値だけではなく、消費者の使用経験で体得される「経験価値」又は「使用価値」について、ブランドコミュニケーションを通じて差別化を図っていかないと支持されない。
一方、中国では、消費者の要望に商品の供給が追い付いていないために「売手主導型」の購買パターンが温存されている。その段階では、まずは価格が安く便利性が高いという商品特性が強力な武器になり、大量生産、大量消費といったマス商品が消費者から歓迎されてきた。ただ、その中国でも、一部の富裕層や「80年代」、
「90年代」に生まれたヤング世代は、単なる商品の安さよりも√商品のもつブランド価値を重視するようになりつつある。
今後の商品販売戦略として日中両国で共通して言えることは「品質が良ければ高価格でも買う」という時代から「安心・安全・信頼を保証する商品についてロコミなどで裏付けされた経験価値を買う」時代へと移行することが予想される。

3)メディア戦略
第2の重要なマーケティングミックス戦略要因は「メディア戦略」である。
日本の通販ビジネスは、消費者への伝達手段として早くから活用してきたのは、テレビ、新聞、雑誌、ラジオといったアナログメディアであるが、これらのメディアでは、不特定多数の訴求対象者に一方通行的に情報を流してきており、消費者は「受け身」的な反応しかできなかった。 しかし、消費者がインターネットメディアやマルチメディアデバイスを手に入れるようになるにつれて、ステークホルダー(利害関係集団)全体との対話が可能になった。ステークホルダーからも通販企業に向けて、双方向に情報を発信する時代に変革してきた。まさにステークホルダーが主導権を持って、通販企業の商品やメッセージを逆に「検索」し、ふるいにかける時代になった。 一方、中国でもマスメディアが発達しているが、消費者のレベルで、テレビ、新聞、雑誌、ラジオが、マスマーケティングの手段として活用されてきた歴史が浅いために、買物客の情報メディアとして、チャット型ウェイボー(Weibo)といった対話型メディアを通じて、C2C(消費者対消費者)を中心としたインターネットメディアが深く入り込んでおり、消費者への双方向のメッセージ提供機能として注目されるようになった。ただ中国では、買物客情報として、マスメディアはまだまだ有効な役割をはたしている。 いずれにしても日中両国で、通販企業とステークホルダーとがダイレクトに結びつくメディア環境が整った。そういった意味では、関係性マーケティングに関しては、日本も中国も同次元的に重要視されつつあるとみてよい。

4)広告戦略
次に広告戦略である。日本では、マスマーケティング時代が終わるとマス広告の時代も終わった。マス広告戦略が有効に機能したのは、需要の増大に供給が追い付かないので、急きょ、生産能力を高めて生産した大量の商品を迅速に売りさばく手段として有効であった。つまり、広告戦略は売手主導型の産物でもあった。
しかし、90年代に入って、消費需要がマイナス成長の時代、つまり、右府下がりの時代に突入したために、大量生産、大量販売が通用しなくなり、マーケティングも完全に「普及率マーケティング」から買手主導型の「選択率マーケティング」時代に入り、通販企業は広告戦略の大きな見直しが要求された。
一方、中国ではマス広告を通じた認知度向上の戦略も、消費者からみれば重要な情報資源として歓迎される側面もあり、広告戦略はまだ普及率マーケティングの手段として重視されている。
ただ日中両国で、インターネットメディアやマルチメディアデバイスが普及するにつれて、消費者同士の交流を促進するソーシャルメディアが通販ビジネスの重要な情報源になりつつある。

5)物流戦略
第4の重要な戦略的マーケティングミックス要因は物流戦略である。日本では、通販ビジネスが成長する前から、クロネコや佐川が小口配送を重視した宅配ビジネスの基盤を作り上げてきた。日本の宅配ビジネスに関しては「安心」「安全」が高いが、通販ビジネスからみると、いかに遠く届けるか、という翌日配送、即日配送の競争時代に入りつつある。それと並行して注目されているのは「送料無料」問題である。
一方、中国の物流システムの整備は遅れており、宅配物流に関しては、運送中の「安全性」が課題として残っている。ただ都心部のエリアでは、宅配システムも整備されつつあり、アリババグループも2020年までに物流の整備に1兆5000億円程度を投資する予定で、近い将来、中国物流の精度は急速に高まることが予想される。また中国通販では既に無料配送というパターンが多い。
日中両国とも、物流戦略に関しては、通販ビジネスのマーケティングミックス戦略要因の一つであることは間違いないが、物流体制の質的向上とコスト削減を図るためには、通販会社、物流会社、運送会社などのコラボレーションが必要になってきている。

ドットコムからドット利益へ

日中両国の通販ビジネスにおける戦略的マーケティングの重要性を5つの要因にわけて説明してきたが、既に、こういった戦略的マーケティング視点が米国でも2000年当初に議論されてきた。
日中通販ビジネスの成長を支えているのは、ECを中心としたインターネットメディアである。EC通販企業が急成長を遂げつつあるが、その成長の裏付けとなっているのが、インターネット人口の増加やEC通販売上の増加といったマクロ指標である。 米国でも、1990年後半から2000年にかけてEC市場が急成長したので、インターネットを活用すると売上が伸ばせる、という安易な考え方の基に「ドットコム」ビジネスに多くのベンチャー企業が参入してきた。 ドットコムは主として取引、トランザクション(取引数)を指していた。結局、それはドットロスにつながった。ドットコムに投資をして、顧客数や売上数字を伸ばすことだけに専念した企業は、売上数字の伸びが止まってくると、投資した資金が回収できず、投下した経費をカバーできるだけの売上が確保できなくなり、多くの「ドットコム企業」がとう汰された。つまり、ドットコムビジネスのバブル現象が崩壊し、赤字企業が続出した。 なぜそうなったのか、という点をEarle氏とKeen氏が徹底的に調査した。その調査の結果としてわかったことは、単なるネットビジネスで売上を上げることはやめて、利益を意識したECビジネスに力を入れるべきであるということであった。 彼らは「ドットコムから利益へ」という提言を行い、ECビジネスはもっと利益志向を強化すべきである、と主張した。彼らが提案した強化策は、日中比較研究で今後強化すべき課題として指摘した「戦略的マーケティング」の体系と多くの共通点を持っている。 「利益戦略」として強化すべきマーケティング戦略の6つ指摘している。これらの戦略は、中国通販ビジネスで指摘した5つの戦略的マーケティングと類似している。両氏は次のように説明している。

1)付加価値仲介者になれ(消費者ターゲット戦略)
この命題は、他の命題の補完役になる。インターネットビジネスの次の時代は、顧客関係性を重視して、ハブ、つまり、強力なブランド・ポータルと仲介業者が協力し合う。顧客とサプライヤーとの相互関係を促進させるために、仲介者として交渉を援助し、情報コーディネータとして、第三者的視点にたってアドバイザー的役割を果たすハブ的機関が重宝される。

2)強力なブランドを構築せよ(商品販売戦略)
インターネットがブランドの再定義を行いつつある。AOLやヤフーといった企業ブランドは関係性を強調したサービスブランドであって、商品ブランドではない。数千におよぶサイト企業がポータルサイト企業になりたいと思っているが、顧客が選べるのはそのうちの2〜3の企業にすぎない。選ばれたサイトは、キャッシュフローを生み出してくれる。スペースは無制限であるために、関係性、コラボレーション、コミュニティを拡大して、サービスやプロバイダーに影響を与える。その結果、ブランド志向したポータルはスターとなる。

3)資本とコスト構造を変換せよ(商品販売戦略)
インターネットを通じて、顧客関係性の構築にマーケティングコストをかけることは、将来の収益やキャッシュフローを生み出すことに貢献するため、単なる経費とみなさず投資とみなすようになる。インターネットを活用して、在庫や流動資産回転率を高めるように活用することにより、少ない資本コストで収益を維持できるようになる。

4)顧客の立場に立ったマルチチャネルを調和させよ(メディア戦略)
パーソン対パーソン、顧客対コールセンター、オンライン・インターラクションの最適な組合せをすることにより、業績を向上させる。顧客が自己にマッチしたチャネルを選択するように支援する必要がある。

5)長期的な顧客関係性を開拓せよ(広告戦略)
顧客関係性を高めることが売上を利益に変換する有力な方法である。コミュニケーションを通じて良好な関係を結べると、ファン客が増え、利益をもたらしてくる優良顧客を増やすことができる。

6)ロジスティックスの完成度を高めよ(物流戦略)
外部的サプライチェーンと内部的なプロセス・チェーンにそった、インターネット・ロジスティックスが、好業績企業になるための必要条件である。在庫や一般管理費を半減させる実践的な目標となる。
以上のような6つの価値命題を、マルチチャネル・ブランディングのプロセスモデルと連動させる必要がある。もちろん、これらの要因が互いに関連して、それぞれを支援する形でマネジメントする必要かおる。その関連図をまとめると以下のようになる。

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この「From .com to .Profit」と、このブログで提唱する中国市場に対する「戦略的マーケティング視点」を対比してみると、中国市場で成功するためには、消費者ターゲットのし好や価値観を理解することこそ、最優先すべきであるという意味で「消費者ターゲット戦略」を重視してきたが、「From .com to .profit」ではその役割は「価値創造要因」が果たしている。
中国の消費者に対して、新たに価値創造するためには「商品販売戦略」として何を強化するのかというと、「From .com to .profit」では、「ブランド」「財務・コスト」がこの部分にあたる。中国の消費者に対して取り上げているメディア戦略に該当するのは「集客戦略」である。同じく中国市場で用いている「広告戦略」に該当するのは「顧客関係性」である。中国市場で用いている物流戦略に該当するのが「ロジスティック要因」である。
Earle氏とKeen氏は米国通販ビジネスについて論じているが、その枠組みとここで取り上げている戦略要因は、中国向けの戦略的マーケティング要因とほぼ同じである。そういった点を考慮すると、この本で提案している5つの戦略的体系内を実行すると、「From.com to .profit」として利益を伴ったビジネスになりうる、という点が理解できる。

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中国EC通販の幕開け

中国は外資企業にインターネット上でネットショップを開設することを規制していた。2008年10月出版の[中国ネットビジネス 成功へのポイント]という著書のQ&A項目に、「中国でもインターネット上にショップを開設できますか?」という質問に対して[?]と表記し、その理由として「各種規制をクリアしていないと、
インターネット上にショップを開設することはできません」との回答文かおる。2008年当時[経営性インターネット情報サービス管理]の申請は、外資に対しては高いハードルが存在していた。
しかし、中国の内務省は2010年9月9口、外資系流通業及び製造業に対して、ネット販売を許可する通達を出した。以前でも一部日本の商品が、ネット販売を行われていたようだが、外資系企業がダイレクトにネットビジネスを展開できるようになったのは、このときからである。
2010年、中国の消費者向け電子商取引の市場規模は4900億元で、日本円にすると2013年3月のレートでは約7兆3872億円となる。2009年度日本の消費者向け電子商取引の市場規模は約6兆5744億円である。
ファーストリテイリング社は自社サイトと[淘宝網(タオバオ)]でネット販売を始めることになる。当時柳井正会長兼社長は「広い中国にネット販売は適している」とコメントしており、中国EC通販ビジネスの可能性に期待し、10年後の2020年までには中国単独で1兆円の売上目標を掲げ、このうちネット販売を1000億円に設定した。
この解禁の通達と前後して、日本の大手ポータルショッピングサイトのヤフーと楽天は、中国の大手ネット企業との提携を発表した。

ヤフーとタオバオが提携

2010年6月1日、日本のインターネット国内最大手ヤフーと、中国インターネット通信販売最大手の[淘宝网(タオバオ)]は、それぞれが運営するサイト内に、[Yahoo!チャイナモール]と[淘日本(タオジャパン)]を開設、日中間で相互に購入できるサービスを開始すると発表した。 記者会見は、東京都内で、当時、ソフトバンクの孫正義社長、ヤフーの井上雅博社長、アリババグループのジャック・マーCEO、淘宝网のジョナサン・リューCEOら4名が、共同の壇上で執り行い、多数のマスコミ関係者を集めて催された。 [Yahoo!チャイナモール]の主な概要としては、タオバオに出品されている商品約4億5000万点のうち、一定の基準を満たした商品約5000万点が、日本から購入できる内容となっていた。一方、[淘日本]はサービス開始時点では、[Yahoo!ショッピング]の商品約800万点が購入可能となり、こちらも商品や販売ストアについては順次増やしていく予定だった。 孫氏は「日本のユーザーにとっては、中国の商品をこれまでよりも安く購入できる。我々が調べた範囲では、例えば高級ウーロン茶は60%安く、iPhoneのケースは80%安く、カシミアのマフラーは85%安く同じ商品を買える。中国の企業にとっては、日本の消費者に直接商品を販売できるチャンスが生まれる」と、日本ユーザーの利便性を訴えた。 またこれとは別に「日本企業のうち中国に進出している企業は、現状ではわずか2%。日本企業の97%は従業員数100人未満の中小企業で、中国の進出には人件費などの問題があったが、今回のサービスで日本の企業にとっても、Yahoo!ショッピングに出店するだけで、中国に商品を直接販売できるチャンスが生まれる」と[淘日本]の将来性についても力説した。孫氏は「ヤフーとタオバオを合計すると、顧客数は2億5000万人、取扱高は3兆8000億円。取扱高は既に楽天の1兆2000億円を超え、アジアの圧倒的ナンバーワンとなり、今年中にはeBayを抜いて世界最大のeコマース市場になる」とし国社の提携は世界規模で影響力のあるECマーケットになると予測していた。またアリババグループのマー氏も「中小企業の手助けをするのが、アリババグループ創設からの我々の使命。中国の中小企業の日本進出と、日本の中小企業の中国進出の双方をお手伝いしたい。翻訳の問題や物流の問題など様々な課題に直面することも予想されるが、消費者、パートナー、そして我々のべ者によるWin-Win-Winの関係を目指したい」と、翻訳や物流面に不安要素があると当時から認めつつも、三者の強固な関係を目指すとしていた。

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楽天と百度(Baidu)との合弁会社

ヤフーとタオバオの提携が発表される約4ヵ月前の、2010年1月27日、日本のインターネット・ショッピングモール最大手である[楽天]と、インターネット検索サービス最大手[百度(Baidu)]が、合弁会社を設立すると発表した。
合弁会社への3年間の出資総額は43億円で、楽天が51%、百度が49%で、董事長には楽天から出向した中村晃一氏が就任し、開業は同年10月19日、名称は[楽酷天]とした。東京都内で記者会見を行った三木谷浩史会長兼社長は「そう遠くない将来、日本での楽天市場の規模に追いつきたい」と述べた。店舗は既に2000店舗が
登録をすましており、服飾やアクセサリー、家具、家電、デジタル機器、ベビー用品、化粧品などの商品群に、楽天市場で好評であった「お買い物マラソン」や、送料無料キャンペーン、ラッキーくじなどの積極的なプロモーション活動を展開する予定であった。
当時、百度の任旭陽(レン・シューヤン)副総裁は、「中国でもインターネットの発展に伴い、多くの企業や消費者が電子商取引に参入するようになった。今回の提携は中国の消費者により多様化したネット通販体験をもたらし、中国の電子商取引を更に繁栄させると信じている」と述べており、当時、楽天の百野研太郎常務執
行役員も「百度の中国国内における膨大なユーザーと影響力、そして楽天の豊富なB2C取引のノウハウを組み合わせれば、最強のネット通販環境を築くことができると思う」とヤフー同様、力強いコメントがあった。
同年6月9日より、出店店舗の募集活動を開始し、上海、北京で募集セミナーを開催、出店申込み用のページを開設、大手ブランドから個人商店まで多様な店舗出店を募った。

その他日本の通販企業

ニッセンホールディングスは2010年8月24日、中国に婦人服の通販サイトを開設し本格進出を行った。ニッセンは他社海外通販サイトヘの出店は行っていたが、商品紹介のメール送付など、独自の販売促進策での市場拡大を狙った。衣類や靴、バッグなど5000点を掲載し、日本と同程度の価格で販売、商品は日本から輸出。3年後の2013年に20億円の売上を目指していた。 千趣会は、中国に婦人服の実店舗があったがこの出店数を増やし、2011年中に10店舗を目指していた。ネット通販と実店舗を合わせ、2011年には5億円を目指していた。 アウトドア用品通販のミネルヴァ・ホールディングスは2010年12月に中国で独自サイトを開設、テントや釣り具など1万点をそろえ、3年後の2013年に8億円の売上を目指していた。 各社本格進出を行っていた中、2011年4月26口「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイとソフトバンクは提携を発表し、中国でネット通販事業を展開するとした。合弁会社を同年5月に香港で設立後、上海でも7月に設立した。資本金は5億円、ソフトバンクが47.3%、スタートトゥデイが52.7%の比率になる。中国では同年9月からサービスを始めるとしていた。

中国への個人宛郵送品輸入通関制度の強化

このように、中国内務省がネット販売を解禁する前後より、日本のEC通販企業及びその支援業者の多くは、中国進出を果たすことになる。これは、事前に十分な調査と準備があり、進出したのではなく、中国政府のネット通販の解禁が大きなきっかけとなり、前々から中国と関係の深い企業より順次進出した而もある。 これに、2010年6月1ロヤフーとタオバオが提携を発表したその8日後の、6月から[楽酷天]では出店の募集活動を開始している。推察ではあるが、両社は、有力な出店企業を多く囲い込みたいという思わくから、思慮深く戦略が組み立てられたというより、競争関係に打ち勝つために、事業プロセスが急がれたのではないかと考えている。 日本経済新聞社の2010年9月10日付け[中国、ネット通販を外資に解禁 コクヨなど参入へ]という記事の中では「今回、外資企業によるネット販売事業が解禁されることで、今後は中国でのネット販売への取り組みが中国内販事業の成否を占うカギになりそうだ」との分析があり、ネット販売が解禁され、中国内販を検討していた企業はネット販売で成功することが重要である、というような空気感があったと思える。 つまり自身の事業ドメインが、中国の消費者にどのように受け取られるかというよりも、他社が進出するから、我々も後れを取らずに実施する、また内販をするならば通販も欠かせない、という雰囲気が当時はあった。 ネット販売を解禁する8目前の2010年9月1口に、税関総署公告2010年第43号「個入寂郵送物の出入国管理措置に関する事項の調整について」という通達があり、個人郵送物品に対する、新たな輸入関税制度が実施された。 この制度は、中国外のインターネットを介した個人宅の郵便物は、商業性郵便物に属し、50元(約750円)以上の商品は通関手続が必要となった。この通達以前は1000元(約1万5千円)までは通関手続が不要であったが、公告第43号以降からは、より厳格に適用されることになり、越境EC通販やヤフーでいうと[淘日本(タオジャパン)]は、簡便性の面で打撃を受けることになり、ほとんどの通販商品に通関手続が必要となった。 中国から日本への輸入の場合は、1万6666円までが、関税、消費税がかからない。ヤフーとタオバオの提携時や[楽酷天]の合弁設立前では想定していなかった、輸入通関の変更があった。

中国EC通販撤退時代

中国のEC通販でも「楽天VSソフトバンク陣営」の構図が鮮明になり、1年が経過した2011年6月23日の日本流通産業新聞では「中国における楽天の事業活動は鳴かず飛ばず。日本の電子商取引業界トップを走る楽天だが、中国内ではソフトバンク陣営が一歩リードしている状況にある。」と報告されており、楽天に比ベヤフー、タオバオ同盟が比較的順調に推移しているように思えた。

しかし、日本流通産業新聞の2012年3月29口付けで[ヤフー/中国向けECモール閉鎖]という記事を発表した。その内容によると、[淘日本]を閉鎖する理由として「当初から自動翻訳の精度が低く購入しにくい」「両国間の法規制の問題で取り扱える商品が制限」「東日本大雲災による放射能汚染への不安から、日本商品を購入するユーザーが減少し、流通額を伸ばせなかった」「尖閣諸島中国漁船衝突事件をめぐって、中国各地で反日デモが始まるなど反日感情が高まった。この影響で、日本から入ってくる商品の多くが税関で止まった。現金化に時開かかかることから、中国向けの販売を中止するEC事業者が増加。掲載商品点数の拡大を目指していたが、逆に減少する状況」との理由が挙げられた。 これだけではなく[Yahoo!チャイナモール]も閉鎖するとした。理由としては「自動翻訳の精度の低さにユーザーから不満が上がっていた」「送料が高く中国商品の低価格性が発揮できなかったことから流通額が伸びなかった」が挙げられた。 ヤフーの広報は「現状のシステムではうまくいかないことが分かったため、早期に打ち切ることにした。仕切り直して、再度中国ECに挑戦したい」とのコメントを発表した。閉鎖は両モールとも同年5月17日としており、2年間を経過せずに閉鎖を決めたことになる。 2012年4月20日、楽天は中国で立ち上げていた[楽酷天]を同年5月末で閉鎖すると発表した。 [楽酷天]は加盟店を既に数千広以上集めていたが、売上が伸び悩み、中国での通販の価格競争が激しく、仕入れ値を下回る販売価格で売らなければならない状態が続いていたとしている。[百度(Baidu)]との合弁会社は当面維持しつつも、自前での再参入を検討する。北京にある旅行サイトは、これまで通り運営を続ける。楽天は当時9カ国で進出しておりグローバルに展開しているが、海外でのサービス停止はこの[楽酷天]が初めてとなる。投資額は累計で8億6千万円とされている。 楽天のプレスリリースでは、「当社としては、本件サービスでの経験をふまえ、中国でのEC事業の環境が安定した後には、引き続き、EC事業の機会を模索してまいります。」と再チャレンジを考えたいとのコメントを発表したほか、当時の[楽酷天]の江尻裕一董事長は「お金を燃やしながらシェア獲得合戦を繰り広げているのが今の中国のEC市場」と厳しい現状を語った。
2010年10月19日にオープンし、2012年5月31日に閉鎖したことになり、期間としては、19ヵ月程度になる。
2013年1月31日に「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは、中国のショッピングモール天猫内にある[ZOZOTOWN旗・店(ゾゾタウンチィージェンディエン)]と、中国での自社ECサイト「ZOZOTOWN
CHINA」の2つのサイトを閉鎖した。また同年3月14日、ソフトバンクとの合弁会社、香港と上海の現地企業も清算すると発表した。今後はサイト内にあるグローバルサイト『ZOZOTOWN.COM』に集約するとしている。

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中国通販撤退時代の考察

ヤフー、楽天、スタートトゥデイ、日本を代表するEC企業がことごとく撤退した、情報をもち、一定程度の資金力がある企業で、日本では勝ち組EC企業が、なぜ撤退したのか?大手が失敗しているのに、他の通販企業が進出しても、成功する余地はないのでは? 3社に共通しているのは、運営しているサイトに十分な顧客が集まっていなかった点にある。ソフトバンクの孫氏は「取引額は3兆8000億円になる」、「アジアの圧倒的ナンバーワンになる」と器が大きくなれば、必然的に集客ができると思っていたのではないか。[楽天]も[百度(Baidu)]と提携すれば、[百度(Baidu)]からの流人で集客ができると思っていたのではないか。スタートトゥデイも日本のお洒落な商品を並べておけば、集客ができると思っていたのではないか。 顧客を集めるには、中国の消費者、もしくは日本の消費者に、本当に望まれる商品だったのか、喜ばれる商品だったのか、納得できる価格だったのか。消費者を無視して、自分たちが売りたい商品、もしくは自国で売れている商品を、サイトに並べているだけではなかったのか。 もちろん、個人郵便関税制度の変更は予測が不可能であった。この点の影響はあったと思う。しかし、関税制度の変更は通販のメインテーマではない。 相手国で本当に売れる商品はどのような商品なのか、ショッピングサイトと出店企業の間で、情報を出し合い議論が取り交わされたのか、一緒になって商品開発ができたのか。喜ばれる商品であったとしても、その商品が欲しいと思っている人へ情報がリーチできていたのか、買ってみたいと思われる価格帯であったのか。 ヤフーとタオバオ、楽天と百度の戦略同盟は、日中トップクラスの申し分ないEC同盟が出来上がった。すばらしい戦略ではあったが、戦術、行動は洗練されたものではなかった。 一例を挙げてみると[Yahoo!チャイナモール]に出店していた商品で、シノワスタイルのインテリア画が売られていた。その見出しに、「新中式風格は形が変わっていて美しい工業技術装飾画を塗装することを磨いて/油絵/国画/ペンキ絵【女性は楽しい】」
価格は日本円で12,886円とある。インテリア画は気に入り、価格も手ごろと感じても、このような意味の通
じない日本語で1万3千円を払って個人が安心して購入するとは思えない。
これは[淘日本]に対しても言える。日中のEC購入体験者は、高度化されており、商品の説明コピー、写真のクオリティ、レイアウト、購入ボタンの大きさなど、細かい積み重ねが売上を左右するレベルにきており、このような機械翻訳のみに頼った商売は成り立たない。
[楽天]も、[百度(Baidu)]の検索サイトからどのような流人を作るか、また競争の激しい中国EC業界で[百度(Baidu)]外から[楽酷天]への集客を図り、収益化していくのか。中国消費者に対応したマーケティングを進出する前に、十分検討した行動プランがなかったのではないか。
下グラフ3点は、Googleトレンドで調べたワード(言葉)トレンドである。Googleトレンドとは、Web検索において、検索回数と時間経過でどのように変化しているのか、グラフで参照できるサービスである。検索の最大値が100とした場合のトレンドが分かる。
このGoogleトレンドを使用し、[淘日本]、[Yahoo!チャイナモール]、[・酷天]、[ZOZOTOWN]そして対比として[天猫]を調べてみた。
[キーワード:淘日本 対象国:中国 対象:2010/1-2013/3]

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キーワードを[淘日本]に設定し対象国を中国としたグラフと、キーワードを[Yahoo!チャイナモール]に設定し対象国を日本に絞ってトレンド調査をし、両者は非常によく似た結果となった。共にグラフの頂点は、2010年6月で、両モールがオープンしたときになる。孫社長、マーCEOと両国で注目を浴びている人物が共同記者会見を行い、新しいビジネスを展開するというPR活動は適切に機能したと思われる。しかし、そこから期待してサイトに入ったが、結局満足できるものではなく、検索されなくなった現状がよく分かる。
[キーワード:楽酷天 対象国:中国 対象:2010/I-2013/3]

淘日本は、2012年5月に閉鎖された。

 

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一方楽天は、幾つかの対策は行ったような形跡は見られるが、オープン時のピークを最後まで抜くことはできず、下降ラインをたどることになり、撤退の2012年4月に3番目のピークをむかえている。
[キーワード:ZOZOTOWN 対象国:中国 対象:2010/1-2013/3]

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ZOZOTOWNは、撤退のニュースが最大のピークを迎え、このときにZOZOTOWNの存在を初めて知った中国ユーザーがいたという皮肉な結果となった。
[キーワード:天猫 対象国:中国 対象:2010/1-2013/3]

 

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こちらは[大禍]のデータとなる。[天猫]は、アリババグループの[淘宝商城(タオバオモール)]から、B2C(Business to Consumer)のブランドをより明確に打ち出すため、2012年1月[天猫]に変更すると発表した。そこから右府上がりに複素数が伸びている。このような形になるのが理想的である。

中国式販撤退時代からの教訓

大手通販業者が中国で失敗したのは、日本のEC通販業界全体にとっても大きな痛手となった。楽天はオープン前に既に2000店と契約しており、期待も大きかったが、わずか19ヵ月で撤退となりその落胆も大きかったと想像する。しかし、この撤退は大きな教訓も生むことになった。
まず価格である。日本のECサイトは中国でも閲覧することは可能であり、中国の消費者は、日本でどの程度の価格で売っているのか、ということは十分知っている。中国では「日本代購」というサービスが定着している。これは、日本のECサイトで商品を購入し、中国の自宅に商品を送付する、輸入代行サービスである。日本に在住している学生や、日本企業に勤めている中国人サラリーマン、自社Webサイトまで開設している輸入代行企業など、サービス内容も送料、関税を含めるなど、いろいろなパターンかおり、購入代金に対して手数料が5-20%で運営している例もある。 日本企業が中国で出店する場合、正規店であるというブランド価値はあるものの、輸入代行業との比較で、日本の1.4倍以上の商品は、高いという印象を持たれる可能性がある。中国で売価を決める場合、中国と日本の価格差をどの程度にするか、慎重に考える。 中国でも高い商品は売れる。1000元を超えるTシャツも売れる可能性はある。しかし、なぜその商品が高くなるのか、中国人が納得できる説明や、ブランド価値や認知度の向上が必要になる。 ECだけではなくリアル店舗とのマーケティング・ミックスや、プロモーション、広告も求められ、一定の時間は要する。 一律的な価格設定ではなく、進出するカテゴリーの価格情報を入念に調べ、何で勝つのかセールスポイントを明確にし、価値を提供し、リーチプロセスまで検討する必要がある。[天猫]に出店すれば、進出するカテゴリーの価格帯が、どのようなデータとなっているか容易に分析することは可能である。 次にコミュニケーションである。中国ではコミュニケーションは大事である。商品説明、購入プロセス、アフターサービス、返品ルールなど、日本以上にきめ細かく、丁寧な説明がなければならない。 Webページに書いていたとしても限界があり、それを補完する意味でも、中国ではチャットが極めて重要である。チャットをクレーム対策や値引き交渉の道具と思っている人もいるかと思う。しかレリアル店舗では販売員の接客技術が、ブランド価値向上につながっているように、チャットでの接客態度がブランド価値を左右するというところまで、今の中国は至っている。フェリシモでは、チャット要員に消費者対応の研修内容を受けさせ、サービスを提供するネットショップ運営を行っている。1000元を超えるTシャツを販売するのならば、それにふさわしいCRMは必要である。

また通販で使用できる、日中機械翻訳の開発には、膨大なコストがかかり、現時点では使用不可と思った方が良い。チャット対応も含め、コミュニケーションの現地化は、中国通販を行う場合、必要性は極めて高いというのが、今回の教訓の一つである。 最後に商品である。日本で売れている、売られている商品を、ただ並べているだけでは失敗するというのが今回の教訓となった。日本で売れているから、中国でも売れるという妄想は一旦捨てて、中国で売れる商品を絞り込む、もしくはローカライズを行う必要がある。 そのためには、自社商品に関する中国でのリサーチは必要で、投入しようとする商品は、競争が激しい市場に役人するのか、競争がない市場に役人するのか。その商品に関する日本でのEC販売ノウハウが会社として備わっているのか、いないのか、仮にそのノウハウがあったとしても、中国の担当者にナレッジ・トランスファー(知識移転)ができるのか、考察する必要がある。 自社の製品がブルーオーシャン(競争が少ない)ならば、告知・ブランド価値向上に努力する必要かおる。一方、レッドオーシャン(競争が多い)ならば、どのようにして競争に打ち勝っていくか、セールスポイントを明確にする必要がある。 日本での通販ノウハウが、即中国で役に立つということはないが、両国のEC通販に関しては似ている部分もあり、日本での販売ノウハウがないより、ある方が有利である点には変わりない。日本で試行錯誤しながら、ようやく売上ランキングの上位に入ることができたECノウハウが、中国の通販担当者にナレッジ・トランスファー(知識移転)をどのように行うかもポイントになる。日本での通販実績がない企業は、現地でサポートしてもらう通販支援企業のノウハウを活用するなどの戦略は必要である。

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日本式カレーは、2001年当時、中国ではまったくのブルーオーシャンであった。そこで、ハウス食品と味の素は、合弁会社を設立させ、日本の味をベースに、中国での味覚調査を行い、その味覚に合わせたスパイスを配合させたレトルトカレー「ウェイドゥドゥカーリー」を誕生させ、テレビ広告と店頭での試食による地道な普及活動を行っていた。日本経済新聞社によると、その結果ようやく2013年度決算では1億2000万円程度の営業黒字化になる見通しであるという。マーケットが確立していないブルーオーシャンに聞しては、中国に合わせたローカライズが必要である。
このような商品開発に伴うリサーチカは、日本に居ながらにしての越境ECでは難しく、進出する商品は、上記マトリックスのどこに該当するのか、進出前に入念なリサーチを行い、中国で売れる商品を吟味し、そのためのマーケティング戦略を十分時間をかけて立案する必要がある、というのが教訓となった。

日本より好調な中国EC市場

日本ダイレクトマーケティング学会のプロジェクト研究で、日本と中国のインターネット通信販売の比較研究を行った。日本でインターネット通信販売を行っている企業が、中国へ進出する場合、何に注意し、どの点が日本と違うのか、どの点が一致するのか明確にすべく研究を行った。このブログも単純な中国EC市場というより、日本との比較を行いながら研究成果を記述していきたい。
最初の比較として日本、中国、そして参考として米国のEC市場はどの程度の規模か、統計データが下記のグラフとなる。

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日本のEC市場は好調な市場ではあるが、その日本を中国は既に抜いている。
日本、中国、米国のEC市場シェア比較を行ってみた。

 

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2011-2013年の世界のEC市場で、最も競争が激しく、かつスピードが速い地域が中国である。
日本最大のECショッピングモールは楽天である。楽天は2012年10月29日に総取引金額が1兆円を突破した。
楽天の2012年期の総取引額は1兆4460億円となった。一方中国の最大のECショッピングモールは、アリババグループである。アリババグループは、同年11月30日21:50にタオバオと天猫の合計ショッピング総取引額が1兆元を突破した。1兆元とは、日本円で約14兆9100億円(13年4月レート)に相当する。

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2012年の取引金額は楽天1に対して、おおよそでアリババグループが15になった
いままでの中国EC市場の伸び率はあまりにも急激な上昇だったので、今後は下降していくと思われるが、取引規模は今後も大幅に拡大していくと予想する。中国のEC市場規模は、今でも十分大きいが、全体的には導入期が過ぎ、成長期に入りかけている段階で、アフターフォローや物流の改善、40歳以上のEC体験者の増加などで、市場はまだまだ拡大し、現時点での頭打ち傾向は認められない成長拡大の市場である。

中国のインターネット利用動向

中国のEC市場が好調なのは分かったが、そのベースとなっている中国のインターネット利用状況に、日本と違いがあるのか?日中のインターネット利用動向の比較を行ってみる。
まずは、普及率の比較を行ってみた。

中国のインターネット普及率

中国のインターネット普及率

 

 

日本のインターネット普及率

日本のインターネット普及率

 

中国のインターネット普及率はまさにこれからで、今後成長段階に入ってくる。日本のように普及率が80%近くになるまでには、日本同様10年以上の経過が必要であると考える。
中国の普及率は成長段階ではあるが、インターネット人口は日本では9600万人、中国では5億3700万人と現時点でも5.6倍になっている。このような人日比がEC市場の大きさの差と関係している。
人口比以外にも日中で大きな違いがある。まずはインターネット利用時間である。

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2011年、日本でのインターネット利用時間は1日0.65時間であった。これに対して中国のインターネット利用時間は2.7時間となっている。中国のインターネット依存度は高いものがある。
日中で何に違いがあるのか?インターネットの使われ方に違いがあるのか?比較してみる。

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日中インターネット利用状況比較表で、日中とも同じような利用率の項目として、ホームページの閲覧、SNSの利用状況は、大きな差が見当たらなかった。
違いとして日本の利用頻度が多いのは、電子メールとオンラインショッピングである。電子メールでは、日本が70.1%、中国は48.1%となっている。日本ではインターネット・コミュニケーション・ツールのメインストリーム(本流)は電子メールであるといってよい。しかし、中国では電子メールがメインストリームではない。[新しい中国人]によると「メールはもっぱら大卒以上の高学歴の人ばかりが利用していて、中卒、ないしそれ以下の学歴のインターネット利用者の利用率は4割と低い」と分析している。
インターネットショッピングも日本では60.1%となっている一方、中国では39.0%と日本に比べれば低い状態である。中国では若い世代を中心に急速にインターネットショッピングを楽しむ人が増えている現状は確かにある。しかし、日本のEC企業が気をつけるポイントとして、現時点でのインターネット利用環境では、40歳以上で一度もインターネットショッピングを行ったことがない、初めてトライしてみるという人が多いと認識しておく。
日本では、サイトデザインが見にくくなるなど、簡略化した説明にとどめておく場合もある。しかし、ネットショッピングに慣れていない人たちに、分かりやすく、しかも丁寧な説明ができるサイトデザインは必要である。一戦ではないものの、丁寧な説明を心掛ける場合、情報量は必然的に多くなる。
インターネットショッピングを楽しむコアな世代があり、それが膨大なEC取引金額となっているが、その取引金額の大きさのみに目がいき、日本と同じようなサイトデザインでは立ち行かない可能性かおる。 EC初心者でも分かりやすいサイトデザインが必要である。
一方、中国の利用頻度が高いのがチャットである。中国のインターネット・コミュニケーション・ツールのメインストリームはチャットになる。日本のチャット利用率は、掲示板も含めわずか10.3%だが、中国では82.8%にもなる。特に中国では[テンセントQQ]というチャットサービスが巨大ネットメディアとして成功している。[テンセント]は導入期、人気はあったが収益化できず売却も検討されたようだが、広告収入が伸び始め香港市場に上場し、2013年4月時点で時価総額が5兆円を超える企業となり、世界でもトップクラスのネット産業に成長した。
[《80后・90后》中国ネット世代の実態]という著書によると「当時インターネット初心者だった私が、日本で横行していた出逢い系サイト関連の事件やニュースが頭から離れず、顔の見えない相手と会話することにしても抵抗があったのです。しかし、中国の女の子だちと話し始め、毎日不特定多数の人だちと一緒になって楽しんでいると、その不安はすぐに消えてしまいました」とあり、日本とチャットの使われ方に大きな違いがあることがわかる。 中国ではパソコンを立ち上げるとQQも自動的に立ち上げているユーザーが多く、これがインターネット使用時間の長さにもつながっている。新しい友達ができるとメールアドレスの交換ではなくQQの番号を交換する。サポートセンターのコンタクト先としてQQを使う場合や、取引先との重要な商談、ファイル交換、名刺にもQQ番号が記載し、プライベートだけではなく、オフィシャルでも使用されている。 現在のQQは、インターネット・コミュニケーション・ツールだけにとどまらず、エンターテイメント、ネット取引、リアル商品販売、バーチャルアイテムの売買など、多岐にわたったビジネス展開を行っている。 中国では兄弟が少ない若い一人っ子世代が多く、特にこの世代は、同世代とつながっていたいという意志が強く、そのため、他伊代に比べると表現意欲が強くなると言われ、QQが簡単な自己表現の場となり、[中国人に売る時代!]によると「一人ツ子世代の心のよりどころになっているのである。それがQQというサービスの真価なのだ」と、一人っ子世代の深層心理まで影響している可能性があると分析している。 日本でも、幾つかのチャットサービスは存在しているが、日本のEC企業はこのようなチャットの使われ方を研究し、自社が中国進出を行う場合、チャットを含めたコミュニケーションカをどのように持っておくのか、検討しておく必要がある。コミュニケーションは、今の中国ではかなり高度化していると考えるべきで、コミュニケーションの仕方については、コストと時間はかける必要がある。 それ以外の日本との相違点として、音楽、動画、オンライングームなどのエンターテイメントは中国のインターネットで活用されている。動画視聴では、日本が32.1%であるのに対して、中国では65.1%と倍近い利用状況に違いがある。日本でも、YouTube、ニコニコ動画、GyaOなど多彩な動画配信サイトはあるが、中国の使用状況は日本以上に積極的な活用をしている。また、音楽やオンライングームなど、日本では利用状況が少ないコンテンツを、活発に利用している。
一部知識人の間では、「中国ではインターネット=娯楽であるという図式を変える必要がある」と表明しているが、まだまだインターネットが娯楽的な要素は強い。インターネット普及率に伴って、音楽、動画、オンラインゲーム使用ユーザー数も増加している。
[新・中国若者ターゲット]によると、「中国のユーザーにとって、インターネットはすでに万能の情報チャネルになっている」としており、これがインターネット利用時間の差となっている。

中国の世代間ギャップ

利用状況以外の相違点として、世代間ギャップがある。日本でも世代間ギャップは存在している。しかし特に中国の通信販売、インターネット利用状況では、その世代間ギャップが顕著に表れている。
下記のグラフは中国の世代別インターネットの構成比となっている。

中国での世代別インターネット普及率

中国での世代別インターネット普及率

 

中国では、10-39歳まで男女とも80%前後のインターネットの利用シェアを占めている。
次に下記のグラフは日本での世代別インターネット普及率である。

日本での世代別インターネット普及率

日本での世代別インターネット普及率

 

日本では30代と40代に大きな差が見当たらない。50代以降より少しずつ下落している。
中国では39歳と40歳の開に大きな壁がある。いわゆる70年代(70后)、80年代(80后)、90年代(90后)と言われる世代カテゴリーが中国に存在しているからである。

特に70年代と80年代と言われる世代には、大きな世代間のギャップがあり、中国のマスコミでもよく取り上げられている。 なぜこのような世代間ギャップが生まれたのかというと、「一人っ子政策」がその背景にある。「一人っ子政策」つまり計画生育政策は、中国政府が人口増加に法的規制を加え、1979年から実施された政策である。一人っ子として育てられた人たちが多く、兄弟同士の競争が生まれにくく、親や祖父母の恩恵を一身で受けて育ち、[小皇帝]つまり「わがまま」に育った人たち、というネガティブなイメージもある。「最も利己的な世代」「最も反逆の世代」「世間も知らずに最も期待できない世代」とまで言われている。中国語で「月光族」という言葉がある。これは一ヵ月の給与をすべて電化製品や衣類に使い切ってしまう人たちで、80年代、90年代の中に「月光族」はいる。 しかし「個性かおる」「新しいことを受容する」「インターネットに強い」など、最近ではポジティブな意見も増えてきている。 70年代以前は、「横並び」「面子を重んじる」とオーソドックスな中国のイメージ像として言われているが、80年代以降は、70年代とは違い「自分の個性を大事にする」「個人に対する権利意識が強い」というイメージで捉えられている。 日本のEC企業にとって気を付けておくべき点は、70年代と80年代に、日本では存在しない、大きな世代間ギャップがあるということを認識する必要がある。インターネット市場を大きく引っ張っているのは、この80年代、90年代世代であり、この世代がメインボリュームになる。したがって自社商品・サービスのターゲット年齢が、このボリュームゾーンに当てはまるか、はまらないかを検討しておく必要がある。 ただ、40代以降も30代のEC購入体験から引っ張られるように、最近購入者が徐々に増えてきており、今後は大いに期待できる。いずれにしても、40代以降に関してはECのブランド育成には、ある程度の時開か必要である。中国ではテレビ通販も発達しており、ECより年齢層が上になる。そこでECのみを考えるのではなく、年齢層が高い商品は、他メディアとの組合せも有効である。

中国は中国独自で進化したサービスや、ユーザー思考も日本と異なる部分がある。その一方、日本と極めてよく似たサービスや利用実態もあり、規模はともかく、消費者行動としてのインターネットショッピングは、いずれ日本化する部分もある。 中国の動向を深く観察し、競争優位ポイントを明確にし、将来のマーケットを予測する、このようなオーソドックスなマーケティングプランが、今一度必要である。短期的なROIを求めるのではなく、まずは市場浸透が大事であり、投資回収は5年計画で考えておく必要がある。

競争が激化する中国B2C市場

B2C市場ととC2C市場とは

中国のネットショッピングではC2C市場とB2C市場が存在する。 C2Cとは、消費者(Customer)間の取引で、B2C市場とは、企業(Business)対消費者(Customer)の取引である。日本のポータルサイト[ヤフー]が、
[Yahoo!ショッピング(B2C)]と[ヤフオク(C2C)]に分かれているように、アリババグループでも、[淘宝网(タオバオ:C2C)]と[天猫(Tmall :B2C)]に分かれている。
このように中国でも2つの市場があるが、ネットショッピングシェアは、2011年でC2Cが74.4、B2Cが25.3 という割合になっている。

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中国のC2C市場は活況で、大きなシェアを持っているが、B2C市場も確立され、急速にシェアを拡大しつつあり、近い将来C2CとB2Cは逆転する可能性も指摘されている。
C2Cは個人闇取引であるが、中国のC2C市場に企業が入っていないかというと、企業もC2C市場に入っていると考えるべきである。アリババグループのC2C市場と言えば[淘宝网(タオバオ)]だが、法人での出店も多数あり正確な統計は難しいと思われる。
2008年に[淘宝网]から、B2Cを確立するため[淘宝商城(タオバオモール)]を分離させ、出店を法人だけとし出店料も徴収した。 2011年より明確なブランド化を目指し[天猫]へ改名した。ただ、[淘宝網]は出品及び出店は無料であるため、法人の中には、そのまま[淘宝網]での出店を続けている企業もある。日本のヤフオク内にも[ストア出品企業]があり、プロセスは違うが構造的には同じである。 日本ではC2C市場とB2C市場が並行的に発展したが、中国では、まずC2Cが先行し、その後B2C市場が確立した。 これは[eBay]が早くから中国に進出し、C2C市場で存在感があったため、[淘宝網(タオバオ)]と競争が激化し、その隙間でB2C市場が存在していた。しかし、C2Cで[淘宝網]のシェアが、2011年Q1には91.5%となり、競争も沈静化すると、C2C市場は学生などの個人も多数出店し、継続的なブランドカの維持が難しく、購入者の不満が高くなり、C2C市場との差別化を行うため、B2C市場に本腰を入れることになった。 中国のC2C市場を「日本のヤフオクみたいなもの」と説明する場合がある。確かに広義においては、この説明が誤りであるとまでは言えない。しかし、狭義においては「希望購入価格の最高値を提示した参加者が落札する」という本来の[淘宝網(タオバオ)]は少なくなってきており、ヤフオクとは違う。[eBay]が中国で大きなシェアを持っていたときには、オークションが主流であったようだが、C2C市場で大きなシェアを持っている[淘宝網]は、価格を競り合うのではなく、即決価格のみで販売している場合が大半である。 中国のC2C市場とは、個人間取引だけではなく、売り手に個人と企業が乱立しており、C2C市場の中に、個人対企業の取引も含まれている。しかし近年C2Cへの不信感から、消費者の目も、B2C市場に移行している。日本企業にとって、ブランドイメージが浸透しやすいB2C市場は有力なマーケットである。

激しい戦いを繰り広げている中国B2C市場

C2C市場からB2C市場へ近年消費者の目も移行しつつある中、そのB2C市場ではショッピングモール同士の競争が激しくなっている。

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2011年[淘宝商城(タオバオモール)]を[天猫(TMALL)]ヘブランドチェンジし、同年12月よりチャットで有名な[テンセント]が[騰訊B2C(qq.com)]という新しいB2Cモールを設立、参入し始めると、他のショッピングモールの成長率が鈍化し始めた。これに危機感を持った各社は、総合ネットショッピングモールを目指し始め、他社カテゴリーのシェアを奪う総力戦を展開している。 2012年に日本の楽天とヤフーが、中国でのネット通販事業から撤退した理由の一つに「激しい顧客獲得競争」をあげており、この総力戦の影響が少なからずあったと推察している。 どのような総力戦になっているのか?日本経済新聞社の2012/8/23によると「中国の家電量販業界で狂気の値引き合戦がひぶたを切った」と「狂気の値引き合戦」と報じている。 これは8/14に、B2C市場の第2位である[360buy.com]の劉強東CEOが「今後3年、粗利がゼロで構わない」とウェイボー上で書き込みかおり、他のショッピングモールよりテレビ、洗濯機を10%安い価格に販売するとした。これに反応したのが第4位の[蘇寧易購(suning.com)]と第6位の[国美在線(gome.com)]で、徹底抗戦を指示し、同日各社のネット通販サイトでは表示価格が下がったようである。 また第8位の[当当網(danRdanR.com)]李国産CEOは「京東商城は1元稼ぐのに4元を使い、8月に資金が底をつく」とし、トップの[天猫]も1000万元を投じてパソコンの値下げに踏み切った。[360buy.com]CEOが発言した影響があるかは定かではないが、「中国メディアによれば、中国家電大手の海南集団(ハイアール)は京東への商品供給を打ち切ることを決めたという」と日本経済新聞社は伝え、商品供給面でも影響が出始めている。 日本経済新聞社 電子版の2012/4/30によると「中国のネット通販業界で前代未聞の中傷合戦が繰り広げられている」と評しており、ネット通販各社のCEOは、メディアやSNSを使い、値下げ合戦に伴う中傷合戦も行い大きな話題となった。

外資も中国ネット通販市場に目を向ける

中国ネット通販業界の競争は激化しているが、その成長力に魅力を感じ、資本参加や買収をもくろむ中国外企業、外資も現れている。 外資の資本参加は古く、2002年にeBayが「易趣」を買収し、完全子会社化し中国へ進出した。その後[淘宝凹(タオバオ)]の台頭によりシェアを落とし、2006年にTOMグループに売却し、中国から事実上撤退していた。しかし、2012年11月、今度は中国B2C通販サイトの[走秀網]と提携、中国向けショッピングサイト[eBayStyle秀]をオープンさせ再上陸を行った。 伊界最大の小売企業であるウォルマート・ストアーズは、2012年2月21ロ、第9位の[1号店]に51.3%出資すると発表した。投資額は公表されていないが、日本経済新聞社 電子版の2012/2/21によると「2億7千万ドル(約215億円)との見方も出ている」と推察している。 2011年、[1号店]の会員数は1億9400万人、流通金額はiResearch社の調べによると、7700億元と推察されている。この買収には、中国商務省の許認可が必要で、1千社以上の取引先を持つ1号店と、中国で強力な商品調達額と配送網を持つウォルマートが一体運営に乗り出せば、ネット通販市場での寡占化するとし難色を示したが、[1号店]とは別事業体で運営するという条件を出し、最終的にこの条件を受け入れ買収が成立した。 「資金が底をつく」と指摘されていた第2位の[360buy.com]だが、サウジアラビアの著名な投資家、アルワリード・ビンタラール王子が代表を勤める投資会社キングダム・ホールディング・カン八二ーと複数のコンソーシアムは、2013年2月16□、総額15億リアル(約374億円)を[360buy.com]へ出資したと発表した。投資理由として、「3年以内に国際市場に上場を目指す高成長企業に出資していく当社の戦略の一環」としている。 [蘇寧易購(suning.com)]と[国美在線(gome.com)]は香港で上場しているが、第2位の[360buy.com]は2013年4月時点では非上場企業である。

このように、電化製品を中心に激しい競争環境が続いている。これは、成長期の初期段階には、観察できる現象で利益を追求するというよりも、規模の拡大を目指した競争が繰り広げられると思われる。
今後は、ECショッピングモール同士の連携、合併などの寡占化を含め、それと連動した形で外資からの資金流人も盛んに行われると思われる。

中国でのマーケットプレイス型と直接販売型

多種多様な中国のECショッピングモールではあるが、大きく2つに分類できる。
日本でも、ショッピングモールの形態として、マーケットプレイス型と直接販売型がある。マーケットプレイス型とは、出店者から一定の手数料を得る方式で、プラットフォームを提供している/商品発送やCRMなどの消費者との対応は、一義的に出品業者が行う。楽天やヤフーショッピングがこれにあたる。
一方、直接販売型は、自社で商品を仕入れ販売する仕組みを持っている。日本ではアマゾン、ニッセン、千趣会などがこれにあたる。
中国も同様で、マーケットプレイス型と直接販売型がある。

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マーケットプレイス型は一義的に、出品業者が価格設定を行う。中国で激しい価格競争を繰り広げているが、すべてのEC市場で実施しているのではなく、主に直接販売型で行われている。 マーケットプレイス型は、一つの品番で検索すると多数の商品が表示されるが、直接販売型では商品は1つだけ表示される。国際財務報告基準(IFRS)では、マーケットプレイス型では取引金額を売上とはせず、手数料部分が売上として申告するが、直接販売型では、取引金額が売上金額となる。 しかし[SankeiBiz]の記事によると、楽天とアマゾンが「販売や流通の手法で互いの長所を取り入れるなど、経営戦術が交錯してきた」と評価され、マーケットプレイス型と直接販売型の垣根が崩れつつあるように、中国でも同じような動きがある。 特に直接販売型が、マーケットプレイス型も併設する、いわゆるミックス型、ボーダレス型が出てきた。 日本の企業が、中国に進出する場合、マーケットプレイス型として出店すべきか、直接販売型に商品を提供するのか、マーケットプレイス型、直接販売型のメリット、デメリットを進出前に調べておく必要がある。またB2Cショッピングモールごとに、契約形態や得意分野も違うため、どの分野が自社の商品特性と合っているか、サービス内容とマッチするかも検討しておかなければならない。

ネット通販に偏りがある中国

日本の通販業界は幅広い消費者とのコンタクトポイントがある。日本では、ダイレクト・メールやカタログ通販、テレビ・ラジオ通販が1980年頃から業界として機能し始め、その後2000年頃からネットショップが開化し始めた。ネットショップについては、先進国ではほぼ同時レベルでスタートした。 しかし、中国のB2C市場が本格化し始めたのは2006-07年程度で、このときに他の通信販売企業も勢力を拡大させていった。通信販売を含めた無店舗販売の歴史は浅く、日本のようにダイレクト・メール、カタログ通販、テレビ・ラジオ通販、ネットショップと順を追って発展したわけではなく、急速な普及が行われていたインターネットを中心に、C2C市場そしてB2C市場へ移行している最中である。

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上記グラフは、日本と中国の通信販売媒体別の販売額構成比になっている。中国の調査を行ったGFK中国では、ネットショップ、カタログ、テレビのべ種類の販売動向以外は調査していない。テレアポ、ダイレクト・メール、新聞などのデータは分からないが、テレビ通販を大幅に超えるということはなさそうである。 中国では日本と違い、ネットショップが大きなマーケットシェアを持っている。ネット通販に大きな偏りがあるといってもよい。 中国では通信販売の歴史が浅いこともあり、急速な勢いがあるネットショップに、消費者の関心も高く、通販業者も投資をネット通販に集中していると思われ、通信販売と言えば、ネットショップのことを指し、それにテレビ通販も一部貢献している。

中国のEC利用動向

越境ECビジネスの実態

そもそも日本の製品が中国のECビジネスで本当に売れているのか?中国国内で、日本の製品に特化した販売動向は、今回の研究では公のデータとして見つけることはできなかった。しかし、経済産業省から[電子商取引に関する市場調査]があり、この中で[越境EC]の取引額の推定数値が記載されている。越境ECなので、純粋に中国国内で日本製品が売れているデータではないが、日本製品の人気は類推できる。

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これによると、日本から中国に対して2010年で968億円、2011年には1096億円となった。これに対して、アメリカから中国では2010年で1209億円、2011年では1235億円となった。 中国では越境ECが盛んである。なぜ中国では越境ECを利用しているのか?経済産業省のアンケート調査によると、「求めているブランドが国内で販売されていない72.4%」、「国内で購入するよりも商品品質が良い66.1%」、「国内で購入するより価格が安い59.4%」が理由として挙げられている。 越境ECは、中国の消費者が並行輸入業者に注文を依頼する場合もあれば、海外配送を行える日本のサイトから、ダイレクトに中国の自宅へ商品を発注する場合がある。

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日本のECサイトからダイレクトに海外通販を行う場合はよいが、並行輸入業者に依頼する場合、日本のサイトで注文が行われ、日本の配送拠点に商品が一旦送付された後に、中国の個人宅に向けて商品が再送される。
これでは日本のEC企業には正確な顧客データが集められない。
中国のECサイトで販売している日本企業は、中国での多額のプロモーション費用や、関税、増価税を支払いこのコストUP分か価格に上乗せされる。そのようなコストを加味し、4割増しで中国サイトヘ販売すると、並行輸入業者は、手数料を加えても1割増し程度で販売してくる。そうなれば、価格差から並行輸入業者に注文が流れ、日本企業の中国サイトが育たない悪循環となる。

最近の並行輸入業者は、日本の商品を中国語に翻訳し、送料と手数料を加味し「元(げん)」で価格表示し、注文が行われてから日本サイトに発注するというサービスも存在している。これらは偽物を販売しているわけではない。中国と日本の内外価格差をうまく利用し、並行輸入業者の利潤となっている。 日本企業が気をつけておくポイントとして、中国と日本との価格差が大きすぎる商品は、並行輸入を活発にさせる一因となる。中国の消費者は、日本での販売価格について価格コムや楽天などを使いチェックしている。中国と日本の価格差を最小限化する努力が必要となる。 中国の越境ECビジネスは、とにかく盛んである。 EC利用者のうち、越境EC利用率は49.4%で約半分が利用している。ちなみに日本の越境EC利用率は19.1%である。 盛んではあるが約半分は利用していない。中国の消費者が越境ECを使用しない理由として、下記が挙げられている。

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上記理由は主に、金銭・時間的問題とコミュニケーション的問題の2つに分けられる。送料、関税、商品が高額、受け取りまでの時間が長い等は、金銭・時間的問題で、言語が分からない、アフターサービスに不安、事業者が信頼できるか分からない、問合せに対応してくれるか不安等は、コミュニケーション問題である。 これは越境ECの不安要素である。不安要素を解決するために現地化すれば、金銭・時間的問題は解決できるかもしれないが、コミュニケーションの問題は現地化しても、コミュニケーションに注力しなければ不安要素は残る。現地化するというのは、コミュニケーションカを強化し、対面販売を補う安心を提供するということである。 越境ECビジネスがもたらす1096億円という市場規模は日本から見れば大きい。しかし、2011年の中国EC市場は、約11兆5000億円である。越境ECビジネスは0.9%で、1%もない極めて小さい市場で、ECのメインストリームではない。 越境ECは、2010年から2011年にかけて113%伸びているが、中国のEC取引規模は157%も伸びており、越境ECは中国ECの大幅な伸びほどの成長はない。 これは、中国でB2C市場が確立しつつあり、「求めているブランドが国内で販売されていない」、「国内で購入するよりも商品品質が良い」という越境ECの優位ポイントもやがて失われ、リスクの高い越境ECよりも、充実されつつある中国内B2C市場に購入者が流れていくと思われる。 越境ECは、今は113%と拡大を続けているが、中国内B2C市場が充実されるのに伴って、近い将来縮小すると思われる。越境ECは、中国ECの中でもサブストリームである。このようなサブでビジネス展開を考えても、中国消費者の不安を完全に解消することはできない。メインストリームである現地化ECで、しっかりしたビジネスプランを模索する方が、中国消費者から信頼を得られ、多少時間はかかっても利益は最大化できる。

商品カテゴリーの対比

経済産業省の[電子商取引に関する市場調査]では、EC購入体験者に対して、どのような商品カテゴリーを購入したのかアンケート調査を行った。

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アンケート調査で実取引ではないので注意は必要だが、すべてのカテゴリーで、中国は日本よりも広く購入経験がある。特に日本でもファッション関係品は、43.3%の人たちが購入した経験かおる通販の花形カテゴリーではあるが、中国ではそれを上回る73.3%のカテゴリーとなっている。また、日本の通販では上位にない京電関係品(JADMA調査でカテゴリーランキング12位)が上位ランクされている。
日本では、ネット通販で購入する品目で偏りかおるように思えるが、中国では車の保有率が2012年で100世帯あたり20台と保有率がまだ低いこともあり、買物の不便性から幅広いカテゴリーで通販需要がある。

媒体の対比

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」では、日中の媒体別認知度調査も行っている。

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媒体別の認知度を見てみると、中国の方が圧倒的に広告・プロモーションの認知効果は高い。唯一、検索結果のみが、日本が上回っただけである。近年、中国でも日本のように広告効果が薄れつつあると言われているが、元々の効果が高いため、認知度を高めるための広告・プロモーション効果は高い。
どのような広告・プロモーションでも高い効果かおるわけではないが、中国では無名の日本商品を、どのようなセールスボイントかおるのか、特に役人段階では効果かおるプロモーション戦略を立案し、認知度を高める必要がある。 中国に進出するためには、現地化戦略、商品戦略、SCM、CRMなど、入念な事前プランは必要だが、プロモーション戦略も事前プランが必要である。プロモーションは経費の中でも大きな割合をしめることが予想され、どのような選択肢があるのか、立案しておくべきである。 しかし、事前にプランをしたからと言って安心はできない。通販新聞にスタートトゥデイの前部社長のインタビューが掲載され、中国進出にあたり「プロモーションは網羅的にいろいろなケースを試す。『ゾゾ』らしく格好良く打ち出したい」と述べていたが、結果的にプロモーションを網羅的に試す間もなく撤退してしまった。 プロモーションは、事前に用意したプラン通りにいくわけではなく、試行錯誤は必要で、前部社長が言っているように「いろいろなケースを試す」必要もある。しかし、リスクを最小化するためには網羅的にやるよりも、どのようなプロモーションが中国で効果があるのか、事前調査は必要だと思われる。

CRMの対比

次にCRMの日中比較である。中国の消費者は、日本の消費者に比べて積極的にリレーションを持とうとする傾向が高いという点を認識する必要がある。
下記のグラフは、EC購入体験者に対して、この1年間で出店企業に一度以上問合せを行ったことがあるかに対しての回答となる。 これによると、中国では98.8%の人たちが、何らかの問合せを行ったのに対して、日本は43.0%となった。 サイトで丁寧に説明を行ったとしても、直接企業にコミュニケーションをとって確かめたいと思う中国消費者は、日本の倍は存在していると思っておいた方がよい。コミュニケーションに対しては、一定の投資を行う必要がある。 C2C市場では、商品購入そっちのけで、チャットで世間話に花が咲くということもある。初期段階はともかく、本格稼働し始めると、急速に問合せ件数も増えてくる。そのときに、質の高い、満足度の高い顧客対応ができるのかがポイントとなる。
次にEC購入者のうち、過去1年で一度以上、何らかのトラブルに遭遇した体験割合が、中国が78.4%あり、日本は39.3%となった。
トラブル事例としては、本体には影響はないものの配送パッケージが少しへこんでいる、破れているという軽微なものから、商品が全く届かないという深刻なものまで様々ある。 日本の企業が気をつけておく点として、インフラの不備や通販の歴史の浅さなど、様々なトラブルが発生し、対処が煩雑になることもある。 日本では、この程度ならばクレームとして通販企業に報告しない事例でも、中国では積極的にクレーム対処を求めてくる可能性もある。このクレームは、必ずしもマイナスの面ばかりではないが、原因となっている要因を丁寧に分析し、適切に対処し、トラブルを減らしていく必要がある。次に、トラブル発生とも関係しているが、中国では返品率が高い。

中国では返品経験者の中で、年に3-5回返品している人が最も多い。返品率が高ければ、売上総利益率も悪化しかねない。進出する前には、日本以上に返品率が増加することを前もって計画に組み込み、こちらもトラブル同様、原因となっている要因を分析し、返品を減らしていく努力が必要である。 中国の消費者も、返品に伴う作業が天変なのは日本と同じである。返品の多さは、ブランド価値を下げる。またトラブルに伴う誠実な対応は、逆にブランド価値を高める。返品率の低下に向けた対処方法をPDCAで解決していく必要がある。数多い、トラブルや返品を経験している中国消費者であるが、通信販売に対する満足度は高い。

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通信販売に対する満足度は非常に高い。通信販売の顧客満足度が高いという現象は、日本と似ている。ただ、日本と違う点は、日本では一定の期間をかけ、法整備などを行いつつ、満足度を高めたのに対して、中国は短期間で高い満足度となった。

価格が安い、便利であるなど、一度でも経験した人の満足度は高く、通信販売業は、現在の中国の消費文化に適していると判断できる。

通販業界におけるチャイナリスク

日本企業が、中国の通信販売に進出した場合、マーケティングやマネジメントなどのビジネス上のリスク以外にも、カントリー・リスクが存在している。個別企業が持つ商業リスクとは無関係に、政治・社会環境の変化に伴い、収益に変化が生じる場合がある。この章では、過去どのようなチャイナリスクがあったのかを研究し、特に通販業界と関係が深いと思われるチャイナリスクとは、どのようなものがあるのか顕在化していきたい。

尖閣諸島と日本企業への影響

まずは尖閣諸島問題である。 2012年9月10日、日本政府は尖閣諸島を民間から買い取り、国有化することが閣議決定された。これに反発し中国各地で反日デモが行われた。 資生堂の化粧品カウンターが打ち壊しにあい、全国6000店舗ある専門店のうち、約250店舗は販売を見合わせた。またパナソニックの青島や蘇州の工場に暴徒が押し寄せた。平和堂も2店舗閉鎖した。これらの企業は、比較的中国で成功した企業として、地元民に幅広く知られている。日本経済新聞社の記事によると「「中国は法治ではなく『人治』。人脈がものを言う」という鉄則は揺らぎ、成功したが故に攻撃の的になるという皮肉な構図になっている」と、今まで累々として築かれてきた人脈が、かえって攻撃される大きなリスクになっていると分析している。 一方、中国に進出しているユニクロでは、9月18日から10日間で2割程度、売上が下がっただけで、1ヵ月後にはほぼ正常に戻っている、としている。ユニ・チャームでは、9月に減速があったものの、その後は前年比2-3割増が続いている。 TOTOも衛生陶器が好調で2013年3月期には80億円の営業黒字となった。尖閣諸島問題がさほど受けていない業種や企業、中国との関わり度合いによっても差があるようだ。 日本経済新聞社では「生活必需品以外の分野では日本ブランドというイメージが強いと、足元で苦戦するケースもみられる」と分析しており、尖閣以降、嗜好性の高いブランドと一般消費財を扱うブランドを比べると、嗜好性の高いブランドが苦戦を続けているようである。 また日経ビジネスの徐向東氏へのインタビュー記事によると「日本商品不買の影響をそれほど受けていない企業も少なくありません。それは「日本」を前面に打ち出してない企業です。大多数の中国人が外国の商品だとは思っていても、その名前やイメージから、日本ブランドなのかどうかはよく分からない、ひょっとしたら日本と関係があるかもしれないと思わせる程度の、あいまいさを持つグローバルブランドです。例えばユニクロなどですね」とし、日本ブランドがマイナス面になる場合もあるとしている。 尖閣諸島の影響は、果たして日本製品の購入の意思決定に影響を与えたのか?中国の消費者に対して、尖閣後「あなたは日本製品を買いますか?」と日径ビジネス社がネット調査を行った。その回答が下記のグラフになる。

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この調査によると、全国平均で42.1%の人たちが「今後は買わない」としており、尖閣諸島問題が日本ブランドに与えた影響は、かなりあったのではないかと思われる。 ただ、上海、広州、北京などの国際都市、直轄市では「欲しい商品なら買う」という意見も多く、青島、南京、瀋陽などの地方都市、副省級市と温度差かおる。時間経過に伴って、国際都市を中心に「欲しい商品なら買う」という割合が増えつつある。元々日本製品や外国製品が売れているのは、中国全土というよりも、上海、広州、北京とその周辺都市であり、販売実績が高い。通販も実質的には全国販売は可能ではあるものの、プロモーション活動は地域戦略が必要になる。
今の中国は、各国がしのぎを削る国際市場となっている。日本製品だけが外国製品ではない。2012年10月度、トヨタ、口座、ホンダの自動車販売台数が4〜5割減となっているのに対して、GMの中国での販売台数は14%増となった。日本がシェアを落とせば、他の国のシェアが増える。日本の商品がなくても、中国消費経済は安泰である。
そこで、中国では、国別にどのような印象を持たれているのか調査が行われた。

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この調査によると、日本が得意とされている「品質の良さ」は、4位となっており、品質面で急速に改善している中国を下回っている。

この調査では、すべての項目に対して秀でた印象はないものの、大体上位にランクされている特徴かおる。
総合力という点では、日本にポテンシャルが存在している。
通販という面に絞ると、韓国企業の飛躍が目覚ましい。印象変調査では「お洒落さ」「新しさ、斬新さ」そして「価格のてごろさ」などでは、日本を上回っており、日本との直接的なライバル国である。デザイン感性では、中国と韓国の親和性が高い。
韓国がなぜ中国に力を入れているのか?これは中国への親近感調査でも明確に表れている。

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この世論調査では、日本側の世論として、中国より韓国に親近感を感じる人が45.5%、中国は5.9%となった。
対して韓国では、日本に親近感を感じる人たちは13.5%、中国は36.2%となった。
両国とも一定の割合で「どちらにも親近感を感じない」という人たちがいるものの、韓国側から見た中国への親近感は高い次元で存在している。韓国は、中国をアジアのメイン消費地として捉えており、多少の困難を克服しながら、自国よりも消費地として本格的に取り組んでいるとも考えられる。

2005年、当時小泉純一郎首相が靖国神社へ参拝し、学生を中心に反目デモが広がったときとは異なり、領土問題が前面に出ている今回の問題は、質的にも追っている。
[中国ビジネス2013]では「中国との間には領土問題は存在しない、という政府の基本方針を繰り返しており、日本側が妥協する形で早期に解決することは考えにくい」としており、この尖閣問題は長く尾を引く可能性は高い。
尖閣諸島問題は、両国にとって神経質な問題となっており、政府レベルでは更に拡大していくとは考えにくいものの、何らかの形で再燃する可能性はある。
民間企業だけで尖閣問題を解決し、緩和するのは難しい。日本企業が進出する場合、尖閣問題で被害を受けた企業、あまり受けなかった企業を比較分析し、その差がどこにあるのか、自社の事業領域もあてはめ、ブランドの名称に工夫するなど、リスクを軽減する経営戦略を考えていくことは重要と思われる。

尖閣諸島と日本題脱企業への影響

一般的な日本企業及び日系企業の影響は、生活必需品なのか、嗜好品なのか、ブランドや業種、中国との関わり方により、影響に変化があった。
そこで一般企業ではなく、通販業界に絞って見ると、どのような影響があったのか分析してみる。
通販業界には様々な形態があるが、まずはEC通販である。
尖閣問題がおこった9月という時期に大きな特徴があった。その後にあった11月に、中国ではネット販売の最大のお祭りである「独身の日」が控えていた。その「独身の日」は天猫だけで191億元、日本円で約2400億円の巨額売上が1日で記録された。この9月から11月にかけては、天猫以外も含めネットショッピングモールは、どこも好調であったようである。
天猫日本担当の銭江蜂氏によると「百貨店など実店舗で日本商品を買うのははばかられるが、日本商品は欲しい。そんな顧客がネット通販を利用する」と日本経済新聞社にコメントを発表し、日本製品に対しての影響はほとんど見られないどころか、「独身の日」に向けたプロモーション効果かおり、10〜11月は日本商品も大体前年を上回る結果となったようである。 一部の政府系ネットモールで、短期間日本商品を除外したとの話もあったが、大きな影響はなかった。 一方、ネットや通販を含めた様々なプロモーション活動には、大きな影響が出たようである。政府、地方自治体主催のプロモーション活動、交流活動は、そのほとんどが中止になったほか、屋外での宣伝活動やキャンペーンも中止になり、ネットでも簡単なプレゼントキャンペーンですら中止した例もあった。 プロモーションとは元々、商品・サービスの好感度、ブランドロイヤリティの促進、向上にあるが、中国から「日本人は戦争するつもりですか?」という問いかけがある中では、積極的なプロモーション活動ができにくい状態となった。 直接的な影響があったのがテレビ通販である。テレビ通販は、市場シェアこそ4.3%と低いが、認知度の低い日本商品を、映像で一定の時間、説明できるマーケットとしてポイントが高い。付加価値が理解しにくい、説明が必要な商品にとっては大変有益な販売ツールである。 インターネットは、大手プロバイダーを含め民間出身の企業が多く、40代と若い経営者が多い。一方、テレビ通販は、制作しているPR会社は別としても、放送するテレビメディアは共産党の宣伝部の管轄下にある。どの程度影響があったのか、専門的に調べられてはいないので詳細は不明であるが、放送中止や新規放送分の契約が中断し、様々な理由で日本企業にも影響があったようである。 これは共産党宣伝部がテレビ放送局に圧力をかけたというよりも、前倒しで自粛したとも考えられている。中国ビジネスヘッドラインに掲載された、光ワークスの赤井温弘氏によると「実際、少なくとも今回の外交的混乱の前までは、中国のテレビ通販会社は、日本の商品を売りたがっていたというのが私の感触です」とあり、尖関前と尖関後では空気が急変したとしている。 通関業務も影響があったようである。中国で生産し、日本に一度も経由せず中国で販売する通販企業には影響はなかったが、日本から商品を送り込んでいる企業では、通関所によって差があったようで、税関手続が厳格化され、通関時間に一定の時間が必要になったという例も報告されている。 日本経済新聞社によると、上海港で「日本からの輸入ステンレス材が全量検査となり、通関手続に約1週間の遅れが出てきた」や、天津港では「通常は1害U程度の検査率が3害U程度に上昇している」との報道もあった。 通販は、店頭が破壊される心配はなく、中国人同士が、他の中国消費者の目を気にしながら買物することもなく、尖閣諸島の影響は最小限にとどめられ、リスクに強い業界ともいえる。まだまだ日本企業が中国での通販市場のシェアは小さく、シェアが小さい分、尖閣問題があったとしても、ネット通販に閣しては大幅な伸びが期待されている。 ただ、日本ブランド全体としては大きな影響があり、プロモーション活動やテレビ通販、通関業務には影響があった。 尖閣諸島の問題が、ここまで大きくなることを当時の政府も予想しておらず、民間企業が中国でのリスクを事前に、しかも正確に想定するのは難しい。ただ、中国に関わらず外国で商売する以上、カントリー・リスクは存在し、ある日突然、メインの販売経路が遮断される、時間をかけていたPR活動が中止になる、なども想定しておく必要はある。

グレートファイヤーウオール(金盾)

尖閣諸島の問題以外で、日本のネット通販が気を付けておくべきリスクとして、ネット規制がある。
中国にはグレートファイヤーウォール(金盾)と呼ばれる、中国政府のインターネット検閲システムが存在している。中国国内のインターネット利用者に対して、中国政府が問題あると判断する情報にアクセスできないように、フィルタリングする機能が備わっていると言われている。

これは1997年12月11日、中国の公安部で「コンピュータ情報ネットワーク・インターネットの安全保護を強化し、公共の秩序と社会の安定を守る」という名目に[中国人民共和国コンピュータ情報システム安全保護条例]を制定、同年米国シスコシステム社において、ネット利用者を監視、封鎖システムの開発依頼を行った。 ブロックされるサイトは随時更新され、一度ブロックされても変更される事例もある。また国内サイトだけでなく、海外サイトヘのアクセス制限がかかる。ただし、香港とマカオに関しては、法体系が違うため行政区内では通信の自由が保障されている。 最近、富裕層や若年層を中心に、グレートファイヤーウォールを乗り越えて、ダイレクトに海外のサイトにアクセスする人たちが急増しているものの、中国のネット人口全体からみれば、まだ少数派である。 日本のEC通販企業は、自社サイトがブロックされていないか調べておく必要がある。中国の消費者は、EC通販に慎重で購入前に多くの情報収集を行う。日本のサイトもチェックし、購入するか判断の材料としている。そのときに、日本の自社サイトがブロックされていないかを調べておく必要かおる。大手企業サイトも、ブロックされているケースもある。 2012年5月15口〜17日の間、中国から「.co.jp」ドメインの多くのサイトがアクセスできなくなる事件があった。なぜ、アクセスできなかったか解明はされていないが、これもグレートファイヤーウォールが、何らかの理由で作動したのではないかと言われている。このときは3日間で終了したが、長期間も続くようなことになれば、EC通販にも影響が出てくる可能性はある。 中国に存在するリスクの一つとして、このグレートファイヤーウォールが大規模にネットを遮断するリスクがあることを認識しておく必要がある。

偽物問題

中国では多数の海賊版、模造品がネットを通じて販売されている。天猫では、販売数量が一般消費者にも公開されており、どのブランドの、どの品種がよく売れているか、即座に分かる仕組みとなっており、その販売情報を基に、廉価な類似品やコピー品が出回る場合もある。ただ、中国で爆発的に売れている日本通販商品が少ないせいか、大規模な通販の偽物事例はあまりないが、日本商品が売れてくると偽物事例も増加する可能性はある。 中国のネット通販はC2C市場が充実しており、オンラインショッピングサイトがコピー商品の氾濫する温床にもなっているとの指摘がある。 そのような中、改善もみられる。米国の通商代表部(USTR)は2010年から毎年「悪名高き市場」(notorious market)というリストを公表し、世界各国における海賊版、模造品などを販売している市場を実名で公開している。2011年には中国最大手の通販サイト[淘宝]がこのリストに記載されていたが、2012年12月に大幅な改善が見られたとして、リストから除外された。現在淘宝グループは大きな収益を上げており、偽物対策の人員も強化され、ルールの厳格化を掲げている。その成果が、リスト除外につながったと思われる。 ただ厳格化に伴い、正規店舗でありながら証明書を掲載しない、直営店を名乗っていながら実際には第三者企業に運営させている、「購入から7日以内は理由なしの返品が可能」といったルールを守っていない等を理由に、大手携帯会社のノキアを含めた多数の店舗が閉店(一部の店舗では問題点を改善し再オープンした模様)したようで、日本企業も偽物対策を進める一方で、このようなルール厳守も求められるようになっている。

アップル問題

最近の問題として、2013年3月15日中国の国営テレビCCTVが、「世界消費者権利デー」に放映した特集番組で、アップルの製品が故障した際、「他国では新品と交換するのに中国では修理で応じる」として、アップルに対しアフターサービス面で問題があるとしていた。
これに対して、アップルは当初「修理か交換かは機種や故障箇所によって決まるが、中国での対応は他国とほぼ同じだ」とするコメントを発表し、大きな差がないとしていた。しかし、この反論が更にエスカレートする結果となった。人民日報は「アップルが『神様』(顧客)にかみついた」と1面で報じる批判内容を5ロ連続で掲載。中国消費者協会も「アップルは謝罪すべきだ」とコメントを発表。 CCTVも「修理の後、保証期間が延長されていない」として、他国と同じではないという点を強調した報道となった。 このようなことがあり、ティム・クックCEOが4月1日、同社の中国語版ウェブサイトに謝罪文を掲載した。その内容は、アップルの修理、保証制度を改めて明確に示し、スタッフの訓練強化や修理への対応改善に努める計画を発表した。 ティム・クックCEOのコメントとして「対外的なコミュニケーションの不足により、当社が横柄、冷淡で、顧客の声に耳を傾けないとの臆測が広がってしまったことは認識している。消費者の皆さんの御心配や誤解を招いたことを心から謝罪する」「われわれはいつも中国に多大な敬意の念を抱いている。中国のお客様にはわれわれの心の中で常に最も重きを置いている」とした。 アップルは世界トップクラスのワールド・メーカーであり、今後日本から進出を考えている企業で、同じような事象がおきるかは定かではない。またこのことは、「米国政府が米企業へのサイバー攻撃をめぐって中国を名指しで批判したことなどを受け、やり返しているのではないか」という米メディアの見方もあり、中国とアメリカのチャイナリスクとも考えられる。 ただ、規模はともかく、日本のサービス内容と中国のサービス内容に、あまりにも大きな差がある場合、個人レベルの中国SNSで一挙に情報が拡散し、非難の対象となる可能性は、十分検討しておく必要がある。 日本と中国のサービス内容に大きな差を作るべきではなく、差がどうしても出てくる場合は、ホームページなどで、どうしてそのような差が生まれるのか、丁寧に説明するなどし、リスクを最小限にしておく必要はある。

パートナー企業

中国に進出する場合、日本の成功体験をあてはめても、うまく活用できない場合もある。右も左も分からない中国で、最初に行うのが、どのようなパートナー企業かおるのか模索し、また自社に足りない部分を補完してもらうパートナー企業との契約が最初となる。 ユニクロは短期間で大成功した中国通販市場ではまれな企業である。多くの企業が短期間で中国通販から撤退している中、なぜユニクロが成功したのか。 ユニクロが[タオバオ]に進出しだのは2009年4月16日で、店舗数は47店舗あり、ある程度のブランドイメージは定着していた。 ECオープン当日から3000件の取引が成立、11日間で43万人の来訪数があり、410万元の売上を記録した。また黒月には1000万元を突破。デジタル機器のネットショップでは1000万元を突破する例はあったが、アバレルで月商1000万元を突破したのは、ユニクロが最初であった。当時「タオバオ神話」とまで称された。 なぜ、このようなことが短期間でできたのか?[タオバオの正体]によると、「ビジネスの核となる部分を除いて、可能な限りアウトソースするというのがユニクロの方針なのでだ」とある。最後の「でだ」は誤字であると思われるが、ユニクロでは、中国本部に最小限の人数しか置かず、日常ルーチン業務をすべてアウトソーシング化している。 ユニクロの本部が行っているのは、方針決定、プロモーション戦略、販売、品質管理といった主要なマーケティング、マネジメントに特化し、このときに月商1000万元を突破する売上げになり、急に業務が拡大しても対応できたと考えられている。 すべての業務をパートナー企業に丸投げするのは、自社ノウハウとして蓄積できず問題がある。ただその反面、中国市場を知らない日本人を異動させ、経験の少ない通販ビジネス初心者を現地雇用しても、市場構築には大きな時間を要する。 特に、中国進出の初期段階ではパートナー企業が必要になる。パートナー企業の実力、得意分野をよく調べ、自社で行う業務プロセスと、パートナー企業に委託する業務プロセスを明確に分けて、適切なフローをくみ上げる必要がある。 このときのポイントとして、パートナー企業であろうが、自社社員であろうが、目標に向けてお互いに協力させ、信頼関係を構築できるリーダーシップが必要となる。 幸いにして北京、上海には多くの通販支援企業が存在している。すべての業務を丸投げされたとしても、こなせる大型パートナー企業もある。 支援業務としては、プロモーション業務、チャット・コールセンター業務、ホームページ作成、運用業務、ロコミ監視業務、物流業務、消費者行動分析業務、ネットリサーチ業務、新規事業調査業務、現地法人設立支援業務、各種商品申請支援業務等など、様々なコンサルタント、パートナー、支援企業がある。 すべてが通販支援企業の専業というわけではなく、中国進出のための支援との兼業もある。 日本ダイレクトマーケティング学会では、2012年4月から2013年3月までの1年間、中国との比較通販ビジネスの研究を行い、上海、杭州へ現地視察を行った。日本で行った研究会では、講師や中国視察の対象企業の中には、通販支援企業も含まれている。その企業のリスト化を行っておく。

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これらは、実際にコンタクトをとった企業のみをリスト化しており、中国の通販支援企業のごく一部である。上記リストの企業はすべて、中国に現地法人かおる。上海、北京には、目茶企業、中国企業を含め、通販パートナー企業が充実している。 中国での雇用の定着率は一定ではなく、人が辞めてしまうと、新たな募集、育成に力を割かなければならず、中国に進出している多くの日本企業では、パートナー企業に委託している例が多い。 いろいろな分野で、様々なパートナー企業があり、どの分野で、どの企業と取り組むのか、進出前に計画を立て、進出後でも場合によっては、パートナー企業の組み換えを行うなど、常にどのような組合せがベストなのか考えておく必要がある。

魔物が棲む中国通販に挑む

この章では、中国進出するにあたり、日本企業はどの点に注意すべきかを述べる。

1つの重要なキーワード

ヤフーも楽天もゾゾタウンもなぜ中国消費者から受け入れられなかったのか、改めて考えてみる。 この3社は、日本ではECの大企業であるが、自社内で製品を生み出しているわけではなく、プラットフォームを提供している企業である。したがって、日本製品を扱う以上、越境ECのプラットフォームを提供することがメインとなる。 もちろん、中国で小売販売している日本企業が、中国のヤフー、楽天、ゾゾタウンで出品して販売するということも考えられたが、このような企業は、すでに現地化している法人が多く、無理に日系のショッピングモールに出店するより、販売量が圧倒的に大きい天猫や360buy.comで販売する場合が多い。タオバオと中国楽天に双方出店していた日系企業では、タオバオ側に圧倒的な販売量の差があったようである。 そうなると現地法人がない、越境EC企業がメインとなる。しかしその場合、並行輸入業者との競争かおる。日本商品に好感を持っている中国の消費者が、ヤフー、楽天、ゾゾタウンで買うのが得か、並行輸入業者を通じて購入する方が得かを考えた場合、金銭・時間的問題やコミュニケーション問題で、並行輸入業者に圧倒的な差をつけるほどの競争優位は確保できなかった。 結局、進出している日本企業は、すでに現地ECモールに出店しており、販売量が少ない日系モールにあえて進出する理由を探すのは難しかったし、越境ECに関しては、並行輸入業に勝つことができなかったことが敗因と思われる。

3社が受け入れられなかったのは、日本式プラットフオームが敗北したのであって、日本商品が負けたわけではない。3社が撤退したからと言って、日本のすべての通販商品が通用しないわけではない。 中国のECは驚くほどのスピードで成長をしている。ヤフージャパンや楽天、DeNAの日本での成長率は、1ケタないし10%強だが、中国ではテンセントを含むインターネット企業は、年間30〜50%の勢いで成長している。マッキンゼーの金田修氏が、東洋経済に記載されたインタビュー記事によると「リアルの小売業者に会うと、大都市圈を中心に出店している方ほど「売上げの調子が良くない」と言いますが、こうしたネット企業の隆盛の規模を考えると、景気というよりはネットによる代替効果が相当大きいと推測できます」としており、小売業のシェアを奪いながら、ネット企業が急成長しているのではないかと分析している。 中国のEC産業は、当面大きな成長が続くと予測しており、そこに日本企業が投資し、成長を目指す戦略は正しい。そもそも中国人の嗜好に合っていない日本商品もあるかと思うが、大半は、商品そのものというよりも、価格設定、プロモーション、コミュニケーション戦略が中国とあっていないため、失敗している例が多いと思われる。 また日本企業だけが苦戦しているわけではない。中国企業も苦戦している。[中国企業電子商取引IT建設報告]によると、「中国では経験が浅く、理論的指導が足りないため、閉店を余儀なくされるインターネットショップが1日に1万店にも達している」としており、その主な理由として、人材不足、知識の欠如、不明確な位置付け、情報化の基盤が弱い、業務展開の段取りの混乱などが挙げられ、これらは日本の失敗例とも共通する部分がある。中国も厳しい競争にさらされ撤退を余儀なくしているネットショップは多い。 中国B2C市場で商品を売買する場合、EC市場は今や避けて通れない市場となっている。ただ、高い成長率の反面競争は厳しい。どの時点で投資を最大化していくか、常に市場とコンタクトしながら、時期を探っていく作業が必要である。 EC通販の成功企業であるユニクロも、通販では失敗なく順調に推移しているが、リアル店舗では2005年に失敗している。当時、上海、香港では成功していたが、北京の2店舗は赤字続きで撤退した。しかし、ターゲットを中産階級に絞り込み、内装、商品、接客サービスをすべて新しくし、2006年7月、上海のガンフイというショッピングモール内に出店、ここで大きく成功し中国進出の手応えを感じ、本格投資に踏み切った。成功しているユニクロも、一度は失敗しつつも本格投資の時期を探っていた。 このように一度や二度の失敗で、完全撤退してしまう企業は、恐らく中国市場では永遠に成功しないと思う。競争の厳しい市場で、予測通りの展開が組めるわけではなく、市場と対話しつつ、失敗から学び、常にPDCAを回していく必要がある。 安易に進出を考えるのではなく、1入念な計画と 2実行段階での柔軟さ 3.粘り強く続ける根気 4 失敗に対する寛容さを持つ企業のみが、中国通販市場での勝者になる。

価格設定

価格設定は重要である。いくら品質がよくても、中国で納得感がある価格でなければ売れにくい。どのような価格ならば納得感があるのか、事前リサーチは重要である。
オーソドックスな方法として、日本の下代をベースに輸出手数料や利益を加えて、価格を設定する場合がある。

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上記シミュレーションのように、日本から中国へ輸出する場合、下代1000円の商品が、中国では販売価格が
2360円となってしまう。この価格で、世界一競争が厳しい中国市場で戦う必要がある。もちろん、カテゴリーによっては、この価格でも十分勝負できる商品もあるとは思われるが、大半は日本価格より2-3割増しになってしまい厳しい競争になる。日本のコストがかかり、そこからプラスオンしていく、自動的な価格設定は、中国の消費者から納得が得る価格帯ではない。

そこで、まずは納得感のある価格を考える。中国の消費者は、価格にシビアである。特に中級通販商品に関しては、徹底的に安い物を選ぶ傾向が強い。日本企業の中には、価格リサーチすら行っていないまま、競争の緻しさにびっくりして撤退してしまった企業もある。訴求力のある価格帯を調べておくリサーチは重要である。 納得できる価格が決まれば、次のステップとして、その価格を実現できるSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)を構築する必要がある。サプライは、日本国内の生産にとどまらず、中国でのSCMも考えるべきである。中国で生産すると、少なくとも海外物流費と関税はなくなる。税関で商品が滞留することもない。 かつては中国が世界の工場と言われていたが、現在も幅広いサプライは可能で、現地化ECに対応できるサプライは、よほどの商品でない限り可能である。いろいろな選択肢は排除せず、納得感が得られる価格帯を決め、またそれに向けたSCMを構築する。決して安い物が納得感が得やすい価格ではない。あまりにも安く設定したため、中国商品に埋没してしまった例もある。日本である程度、競争に打ち勝ってきた高額品は、値段が高いのにはそれなりの訳かおる。その理由をプロモートしていき、納得感を得やすいようにする。

長期的な投資回収

中国進出にあたり、次に気を付けておくポイントは、長期的な視点に立った投資回収が必要である。 日本の通販大手3社は2年も経過せずに撤退してしまった。中国が2010年9月9日に外資企業にEC通販を解放したが、撤退した3社以外の企業も3年を待たずに撤退したことになる。何か本当の理由で撤退したのか、判断した経営トップ陣にしか分からないが、一つはあまりにも短期的なROI(投資回収率)を目指したのではないかと思われる。初年度から、僅かでもいいので黒字化させたいと思って事業計画を組んだものの、実際は予算の2害U程度しか売上が達成できず撤退してしまう、という場合もある。 短期的に投資を回収しようと思えば、初年度、もしくはその次年度からの黒字化は必要である。日本の投資案件では、2年目から黒字化できる事業はたくさんある。しかし、中国の消費者を理解していない、コミュニケーションができない、勝ちパターンが分からない日本企業が、2年目から黒字化できるほど中国市場は甘くない。 中国ですでに十分な店舗展開ができている、もしくは、並行輸入などを通じて知名度がある商品ならばいざ知らず、ほとんどの商品は初年度から黒字化することは大変難しい。ブランドの認知度を高めるためには、どうしても一定量の時間とプロモーション活動は必要となる。その覚悟がない企業は今の段階では進出しない方がよい。 日本人のブロガーで、中国で活躍しているTokyo Panda氏の著書「中国ネット世代の実態」によると、「「まっとう」に取り組む」「王道勝負で挑むのが近道」と記載されており、定石で取り組むのが近道であると解説している。そういった意味では、フランク・ジェフキンス氏が「PRコミュニケーション管理」で述べている「製品のライフサイクル」は、まさにその王道である。

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この「製品のライフサイクル」通りの展開が必要である。導入段階と成長段階を拡大したのが下図になる。

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中国ではプロモーションが重要で、導入期では一定の金額が必要になる。導入期は3年、成長期は5年程度が必要である。つまりこの図で行くと、3年間は赤字を見込んでおき、かつ5年間程度で全投資額の半分程度の回収を見込んでおく。

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投資回収を短期的に考えるのでなく、長期的な視点に立って投資を回収していく必要がある。①投資を積極的に行うフェーズ、②売上を拡大するフェーズ、③利益を最大化するフェーズに分類し、ロングで事業計画を立案しておく。 中国では王道が近道となる。 幅広いネットショップの講師として活躍している井上啓介氏の著書「黒豆式。」によると、日本でネット通販を成功する時間として「1日10時間3年です」という回答を行っている。「残念ながらネット通販の世界では、立ち上げからわずか1年以内に、ネットショップをやめてしまう会社も、とても多いのです。その理由は「インターネットの世界では、すぐに売上があがるはず」という、根拠のない先入観を持って、参入する人が多いからです」とその理由を述べている。 まさに中国で撤退している企業の多くは、この理由に該当している。日本もネット通販の導入期には、EC通販から撤退した企業もたくさんあった。しかし、今生き残っている企業は、きっちりと対応できた企業である。

そのときの苦労を忘れているのではないか。 中国のネット通販も日本と同じで、中国の消費者に対応できる企業は生き残り、できない企業は脱落していく。中国のEC市場の成長率は、現在世界でも類を見ないほどの成長を成し遂げている。日本では数パーセントであるが、中国は20-30%の成長である。中国市場は、日本では考えられない高い成長が期待できる。フアーストリテイリング社の柳井正会長も自身の著書[現実を視よ]で「いまや中国抜きに、ユニクロのアジア戦略は成り立だない」と中国の成長力に大いに期待している。その反面競争は年々厳しくなってきている。脱落している企業は、日中企業とも大変多い。 日本の成功体験が役に立たないことはないが、中国の消費者に合わせるということが初めの一歩である。理解し、中国に合わせたマーケティング体制を整えるのには、時間と2-3年は赤字でも運営できる投資資金は必要となる。 覚悟を決めることが大事である。

人材

中国通販で大事なのは、人材の育成である。通販全体の歴史が浅く、優秀な人材はこれから育てていく必要がある。 現地法人のトップの董事長かCEO、中国EC市場をよく理解しているプランナーやマーケッター、マーチャンダイザー、そしてネットPRができるクリエーター、Webデザイナーという人材がポイントとなる。 中国では優秀なインターネット技術者は多数存在している。教育水準も高くインターネットの技術面に関しては、多くの人材が存在している。しかし、Webデザインや集客に関して、いろいろなアイデアが提案できるクリエーターは、一級都市でもあまり存在していない。中国の教育機関も、Webデザイン教育はようやく始まったばかりで、優秀な人材は足りていない。この分野では、実績のあるサポート会社をうまく活用する。 もっと深刻なのは、中国EC市場を熟知しているプランナーやマーケッターはほとんどいない。活躍している人たちも、すでにどこかの企業と契約している。日本で活躍しているプランナーやマーケッターを、中国に異動させたとしても、日本のやり方が、即中国では適応できず、ある程度の市場理解と行動ができるまでは、3年程度の時間は必要となる。この分野のアウトソーシング化も可能ではあるが、やはり自社のキーポイントとなるので、時間をかけて内製化していく、一定の期間まではアウトソーシングと併用で乗り切るなどの工夫が必要である。 また事業開始当初は、プランナーやマーケッターが市場の読み間違いなどから、大きな失敗をすることも多いと思われる。失敗に関しては、きっちりした評価は必要ではあるが、萎縮させても今の中国市場に合わない。失敗しない戦略を組むよりも、成功するための戦略をしっかり立案し、ある程度柔軟にチャレンジしてもらう風土作りは大事である。 それ以上にもっと深刻なのが、現地法人の董事長、CEOの存在である。日本DM学会の研究会でもよく話に出てきたのが、権限が全くない日本人董事長の存在である。 今の中国インターネット業界のスピード感は、日本国内にいる人たちにとって、全く理解できないと思われる。中国のスピードの速さとしてよく例に挙がるのが、共同購入サイトの急速な広がりと急速な衰退があげられる。2010年頃から急速な広がりを見せた共同購入サイトは、あっという間に陰りが見え、2012年9月のデータでは、6116件まで膨らんだサイトのうち、閉鎖されたサイトは3245件と約半数が淘汰された。 急変する中国で、日本にいちいちお伺いをたてなければ、PR予算すら決定できない董事長は問題である。多くの日本人董事長は、現場に決定権がないことを大きな問題であると十分認識しているものの、日本企業は現地に決定権を持たせていない。 現地法人に対する明確な評価基準は必要である。しかし決定権が現場になければ、中国でのスピード感にはついていけない。十分なデータが揃わなければ、キャンペーンに参加するか判断できないと言ってしまえば、データが十分揃う頃には、キャンペーンは終了している。多くの中国企業は、データが十分には揃わないまま、

董事長が意思決定している。それが今の中国である。 それと董事長の問題で言えば、董事長には中国人がいいのか、日本人がいいのかの選択にもなる。 ユニクロでは、柳井正会長が日経ビジネスのインタビュー記事で「僕が一番尊敬している」という人物がいる。現在、ファーストリテイリング社のグループ上席執行役員であり、中国事業部のCEOである潘寧氏である。日本経済新聞社によると、潘氏はユニクロの「中国の伝道師」と呼んでいる。潘氏は中国人留学生として来日し、店長候補から始めて店長になり、次に中国で生産管理を担うようになった人物で、現在の中国事業部の好調を支える重要人物であり、潘氏の活躍なくして現在の中国での成功はない。 日本人が董事長になるメリットと、中国人が董事長になるバランスを考えたときに、中国人を董事長にするメリットの方が大きいと思われる。中国の商習慣や、何より中国の消費者のことを理解できているのか?を考えると、中国人董事長の方が深く理解している。 日本人が董事長になった場合、3年後には帰国を検討しなければならない。ようやく物になりかけたところで帰国となる。日本人が董事長だといずれ帰国してしまい、長期にわたり現地スタッフの評価が難しく、またいくら頑張っても自分たちは経営トップにはなれないのであれば、モチベーションは下がり定着率は悪くなり、重要な通信販売のナレッジがたまりにくくなる。 優秀な人材を董事長に据えるのは、日中関係なく当然のことであるが、単純に日本人がいいのか、中国人がいいのかを考えた場合、中国人の方が、メリットが大きい。ただ内部統制の観点からも、董事長を中国人に据えたときには、総経理は日本人を据えるなどの相互監視も重要である。

メディアミックス戦略

日本から中国EC市場へ進出するために、マーケットリサーチや投資計画、董事長の人選、パートナー企業の
選定など十分な準備を整え、いざ進出した後に最初に取り組むべき課題は、購入実績を積み上げることである。

これはECでは極めて大事で、天猫などでは販売数量が消費者にすべて公開される。中国ではその数値の多さが、プロモーションにもなり、信用を高めることになる。逆に販売数量が伸びなければ、圧倒的に多い商品数の中に埋没し、売れない悪循環に陥る。 中国へ進出し、初期トラブルも一段落し、いよいよ本格的に商売を始める段階で、ある程度の販売数量を積み上げるプロモーション計画と、それに伴ってSNSなどへの口コミ対策が必要となる。中国ではロコミの依存度が日本に比べて非常に高く、ロコミを誘発しやすいプロモーション活動を考える必要がある。客観的データに基づいて、日本でも売れている、日本でも流行っているというのは、初期段階では大きなプロモーションになる場合もある。 また媒体ヘプロモーションを行うときに、ターゲット顧客に対して十分リーチができているのか、この点もチェックする。媒体に予算をつぎ込むのがPRではない。多くの企業が、媒体に予算をつぎ込んだが、購入に結び付かないケースもある。ターゲット層と媒体の閲覧層の、ミスマッチが起きている可能性が高い。 もう一つ有効なのは、TVショッピングやインフォマーシャルである。 TVショッピングは、ECへ誘導しアクセス数を増やすこともできる。 ECのみならず、リアル店舗も有効である。店舗で商品を手に取ってもらうだけではなく、実店舗があるというだけで信用度が増す。また店舗を中心としたロコミ戦略、020も重要である。 ありとあらゆる戦略をとり、初期段階で販売数量を積み上げ、中国の消費者から安心と信頼を勝ち得る努力が必要となる。

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今中国でECだけでは、成功する確率は高くはない。EC以外のメディアを幾つか組み合わせることが成功の確率を高くする。

日本ではネット専業業者、販売チャネルをECに限定して、それなりの業績を上げている企業はあると思われる。中国でもネット専業業者がいないわけではないが、はやり大半がC2Cに限定されており、企業としてのネット専業業者は数が限られている。中国ではネットで、どのようにしたら信用を勝ち取るかも極めて大事で、日本企業だということだけで、信用を得られる訳ではない。ネットだけで商売をするのは不可能ではないが、かなり特殊な商品などに限定される。多メディアとの組合せが、一定の販売数を確保できるまで極めて有効である。 この章のタイトルは「魔物が棲む中国通販に挑む」であるが、この「魔物」というのは、実は中国にはいない。本当の魔物は日本企業に存在する。 川出圭司氏の著書[中国市場の真相]に中国進出企業失敗の理由が6つほど述べられている。

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6番目の「中国に対して”上から目線”の企業が多い」という指摘は、この本ではなかったが、ほかの分野はほとんど同じような記述を行った。この[中国市場の真相]では、通販市場に特化した著書ではないが、6項目すべて日本企業に問題ありとしており、中国に問題があったわけではない。「魔物」は中国にはいないということが分かる。 ほかの著書の多くも、視線のあて方こそ違いがあるものの、大体似たようなことが記載されている。「魔物」がいるのは、日本企業である。 マーケティングとは、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動」であるとするならば、失敗した日本企業は、真のマーケティングが達成できていなかった。 中国と日本には違いがある。[中国市場の真相]では「日本人からみるとせっかちで危なっかしい中国人と、慎重すぎてやるのかどうか煮え切らないと中国人に映る日本人」と指摘されているような違いはある。 「中国ってとても悔い」「だまされるのではないか」と毛嫌いする人もいれば、逆に安易に進出を考え、十分な準備期間を設けず、「中国市場が伸びているから」という漠然とした理由で進出し、撤退している企業もある。 共に、情報を正しく認識しようとせず、正面を向いて中国市場と向き合っていないと思われる。日本市場であるならば、誠実に向かう日本企業も、中国市場となるとレベルを落とした考え方になる。残念ながら、このブログ執筆時点では中国通信販売で、真に成功している日本企業は、数える程度しかない。このブログが、中国通販を見直すきっかけになれば幸いである。

消費者ターゲット戦略

出展者利便性重視のアリババグルーブ戦略

中国のECビジネスの成長を支えてきたのは、中国No.1企業のアリババグループである。なぜ短期間にEC市場が中国の消費者に支持されてきたのであろうか。 その要因の一つは、アリババがECビジネスを強化するにあたって「出店者利便性」を重視した点にあった。この経緯について少し説明したい。 中国EC市場では、大きく分けて、C2C市場とB2C市場、B2B市場から成り立っている。[中国巨大ECサイトタオバオの正体]が指摘するように「C2Cは、現在の中国におけるネットショッピングの最大シェアを占めており、中国EC市場の大きな特徴になっている。特に「タオバオ」は中国におけるC2Cの8割を占めており、中国最大のC2C取引最大プラットフオームとなっている」としている。 同書によれば、アリババのトップである馬雲(ジャック・マー)氏は、インターネットビジネスに参入するにあたって、次のような方針を打ち出した。「馬実は、「タオバオ」では少なくとも3年間、出店料・手数料をすべて無料にすると立言した。その3年間は、収益を上げることを目標とせず、「タオバオ」というC2C市場を育てる準備期間にあてるべきだと考えたのだ。」

「その分、手数料を無料にすることで、より多くのユーザーにC2C取引を体験してもらい、ユーザー数を増やして市場を拡大させることを目指したのだ。」 要するに[タオバオ]は、まず出店者に通販ビジネスを体験してもらうという「経験価値」を重視した戦略を打ち出した。その戦略のもとに、無料サービスで通販機能のメリットを体得できたことは大きな意味があったといえる。
結局、同書では[タオバオ]を中国トップのネットショッピングサイトに成長させた大きな要因として、次の4つを指摘している。
1)[アリペイ]決済サービス
アリペイは、中国最大のオンライン決済サービスである。アリペイの登録を完了し、銀行口座からアリペイロ座へ入金を行うことで、ユーザーは[タオバオ]商品を購入することができる。
2)チャットツール[アリワンワン]
中国では電話代などの料金が一切かからない、知らない者同士が交流を深められるということで、チャットは日常生活の一部になっている。[タオバオ]はこういったチャット文化に着目し、ECに取り入れた。[タオバオ]はアリワンワンを導入することで、ECでもチャットによる値引き交渉を可能にしたのである。
3)信用評価制度
[タオバオ]では、商品を購入したユーザーが購入のショップに対して「好評(高評価)」「中評(中評価)」
「差評価(低評価)」という3段階で評価をつける制度を実施している。そのショップがどのランクなのかは、各ショップのトップページ左側に表示され、これが売上に大きく影響を及ぼしている。この信用評価制度は、
ユーザーとショップの双方において、オープンで透明性のあるシステムである。
4)ニセモノ排斥運動
[タオバオ]は信用問題を重視してニセモノ排斥運動に力を入れている。「7日以内であれば理由を問わず返品、交換ができる」「ニセモノがあった場合は、その額の3倍の賠償を行う」など、厳格な管理体制を取るようにしている。そうすることで、企業側の信用を高めると同時に、[タオバオ]自体のブランドイメージを高めているのである。

日本では、通販ビジネスの成長期段階では、カタログ通販ビジネスが、業界の中核として成長してきた。ダイレクトマーケティングというと、「ダイレクトメール」や「カタログ販売」といった「紙通販」を頭に浮かぶ人がいると思う。日本の通販企業が急成長をし始めた80年代は、まだインターネットが普及していなかったので、ダイレクトメールやカタログ販売が主体で成長した。 その代表企業が、千趣会、ニッセン、ディノス、フェリシモ等といった紙媒体の通販企業であった。その後、テレビショッピングが通販ビジネスに参入してきた。 日本でネット通販が通販ビジネスとして世の中に認められるようになったのは、通販業界とは別の領域で、ECサイトビジネスを成功させた[楽天]と[ヤフージャパン]の功績が大きかったといえる。 インターネットの出現によって、「ネット通販」のウェイトが高まり、ダイレクトマーケティングの中に「訳述販」と「ネット通販」が共存している。 日本のネット通販の占める割合は、2011年度で26.7%にとどまり、まだ3分の1まで達していない。したがって、日本のビジネスモデルは、カタログ通販とネット通販の混合型を取っている、という特色があげられる。 ところが、中国では2000年以降、インターネットが急速に普及したために、紙通販よりもネット通販を活用するようになった。そのために中国の消費者はネット通販の良さを理解するようになった。中国で通販ビジネスでは「ネットショッピング」が主役を演じている。 1990年後半から2000年にかけて、インターネットが急速に普及した時期に、中国が飛躍的な経済成長を遂げたために、所得の上昇に支えられた消費者が、盛んな購買力を発揮するようになった。その消費者のニーズに買物の場を提供したのが「ネットショッピング」である。インターネットの売上規模に占める割合は、94.7%に達している。 この間、中国では多くのネット通販企業が登場したが、その中でも成長に大きく貢献してきたのはアリババグループである。アリババグループが、中国でネット通販を軌道に乗せるために、決済面、集客面でインフラ整備に多大の投資を行ったために、ネット通販が主役を演じるようになった。 問題は、こういったネットショッピングが、どのように受け入れられているのかである。中国の消費者で通販ビジネスに対する反応がかなり異なってくる。そこで、日本の通販企業が中国に進出する場合、どのような消費者層を対象にするか、という「消費者ターゲット戦略」の構築に十分な調査と時間をかける必要がある。

中国消費者ターゲット調査

日本の通販企業が中国に進出するためには、中国の消費者から支持を受け続けなければならない。そのためには、中国の消費者の嗜好を多面的に捉える現地・現場感覚を身につける必要がある。現時点では中国の現地・現場感覚が低いために、熱烈歓迎を受けている企業が少ない。 中国の消費者から熱烈歓迎をうけるためには、生活慣習から生じる購買嗜好パターンの調査研究に、長い目で投資を行う経営理念が必要とされる。 この経営理念を実行して、「日本の企業はコミュニケーション上手」と評価されるためには、どの消費岩瘤を狙うかという「消費者ターゲット戦略」に十分な時間とエネルギーをかける。 博報堂のチャイナビジネスプランニング局では、中国生活者に関して4年間にわたって調査を行っている。中国の生活所得瘤を3階層に区分している。この調査を通じて、中国の生活者の意識に関して仮説を導き出している。

1.中間層→堅実な消費行動層
2.富裕層下位→アグレッシブな消費行動層
3.富裕層上位→先進的な消費行動層

この調査では、階層ごとに新製品の受入れ度合いや衝動買いについて違いがあるという仮説を引き出している。この3階層による消費パターンの相違を比較してくると、中間居は安心・安全重視の消費パターンに近いこの層は、売手主導の購買充足パターンが成り立つ層であるといえる。一方、富裕層の下位、上位は、日本の消費パターンに近い。つまり、安全・信頼重視の消費パターンを重視し、買手主導の購買パターンが成り立つ層ともいえる。

80年代、90年代生まれがけん引する通販ビジネス3.0時代

中国では、2012年度、インターネット人口は5億8000万人に達しているが、そのうちで主力を占める世代は、80年代、90年代生まれの世代である。「80后」は1980年代に、「90后」は1990年代にそれぞれ生まれた[佳代を指す。この両方の世代を合わせると4億人で、中国全体の3害Uを占めている。 2020年に達した段階では、80后と90后は、20〜40歳になる。 2020年では、もはや若者ではなく、20代、30代の宗族形成期の主力消費者としての役割を担うようになる。 この中国の若者世代は、日本で言えば、団塊世代の子供の世代、団塊ジュニア世代以後とつながってくる。日本での80年代生まれ、90年代生まれと対比してみると面白い。日本でも80年代生まれの若者が、大学に進学し始めたのは、2000年に入ってからである。彼らが大学に入学し始めたころに、大学の授業でパソコンを使い始め、携帯電話が高スピードで普及し始めた時期である。そう考えてみると、中国の80后と団塊ジュニアは、いずれも、「インターネット世代」という共通背景を持っている。 一方、中国の90后と対応できるのが、日本では90年代生まれの世代である。この世代の学生は、2010年以降に進学してきた大学生に該当する。 90年代生まれの学生が、今後、10年間にわたって進学してくる学生たちは、「インターネット伊代」と呼ばれた80年代の学生とは異なって、スマートフォンやタブレットを使いこなす「マルチデバイス世代」に進化しつつある。 中国のネット消費者は、チャットやソーシャルメディアを活用し、商品に関する「にミを積極的に行い、そのロコミ情報に高い価値を置き始めている。中国ではコトラーが指摘している製品中心の「マーケティング1.0」や顧客中心の「マーケティング2.0」も同時に進行し、更にソーシャルメディアの急速な普及に伴って、価値中心の「マーケティング3.0」も浸透しつつある。 この価値中心のマーケティングは、企業の経済価値だけではなく、環境問題の解決から生まれる環境的価値、貧困社会の改革に取り組む社会的価値も、重要なマーケティング対象になってきたことを意味する。 EC通販業界でも、「ニセ物対策」を自助努力で真剣に取り組み始めており、社会的価値の向上を通じて「安心」→「安全」→「信頼」→「評判」への努力が進みつつある。 特に中国のEC業界では、消費者同士のC2Cが通販ビジネスとして急成長したこともあって、若い世代の友達同士だけではなく、年配層の間でも、家族同士のチャットや交流サイトは活発化しており、ロコミ効果が重要視されている。 中国通販ビジネスの今後の在り方としては、C2Cだけでは、商品に対する安心感や安全性が保障されないため、商品提供者側の責任体制を明確化したB2C体制の方向に変革していくと思われるが、それでも一方通行的なB2Cから提供される情報だけではなく、ソーシャルメディアと、双方向的に会話するチャットシステムを活用した「多数対多数の協働」へと進化していくことが予想される。 中国社会を構成している消費者、従業員、地域住民、地方政府、サプライヤー、外資系企業といったステークホルダー間のグローバル・ネットワークを通じて、多数対多数による「価値マーケティング」も進行し始めている。この「価値マーケティング」のネット社会が日中で同時並行的に進化し始めている、という実態を日本通販企業はよく認識する必要かおる。

残念ながら、一部の日中の通販企業を除いて、コトラーのマーケティングの段階説で言えば、1.0,2.0の段階でとどまっている。今後は、中国市場で通販ビジネスを展開するためには、3.0の「価値マーケティング」を通じていかに中国の消費者や通販業界に社会的貢献をするか、という高次元のビジョンやミッションを掲げて取り組んでいく必要がある。

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商品販売戦略

なぜ商品販売戦略が重要なのか?

中国市場向けに通販ビジネスを展開する際に、どのような消費者ターゲットに向けて、どのような商品を販売するかという、商品販売戦略の検討が重要になってくる。この場合の商品販売戦略という意味は、3つの段階を含めて考えていく必要がある。

1)「中国の消費者」にマッチした商品選定
2)「中国の消費者」が購入しやすい価格帯の設定
3)選定された商品をにどう販売するかという販売方法

通販ビジネスは、本来、ダイレクトにメディア(通信手段)を通じて消費者に販売するビジネスなので、「通信販売」と言われてきたが、この定義の中に「何を売るか」という意味での「商品戦略」が含まれていない。 通販業者は、「ダイレクトメール」や「カタログ」という「通信手段」を整備して、「商品」はサイトコンテンツの要素として扱われてきた。 ところが、中国でEC通販市場が急成長しだしたので、自社で扱っている商品をEC市場で販売しよう、という安易な気持ちでビジネスを始めているケースが多い。この場合、自社で扱っている商品は、日本の市場で支持されているために、「当社で扱っている商品が中国の消費者に受け入れられるかどうか」という疑問を持つこともなく、中国通販ビジネスに踏み切っている事例が多い。 しかし、ECを始めてみると、商品が思ったほど売れないという事態に直面して、初めて「果たして選んだ商品がこれでよかったのか?」という反省がでてきて、「商品の見直し」を初めて開始することが多い。 一方、メーカーの場合、事前に商品戦略が組み立てられているために、海外市場に輸出し、現地化して営業を開始する場合でも、「商品戦略」を意識的に検討している。機能面、品質面やブランド価値面で、本当に魅力的に見えるかどうかを確認する作業を行っている。 日本の通販企業が思うような売上が達成できないのは、その出発点となる「商品販売戦略」が時間をかけ吟味がなされていなかったケースが多く見られる。この問題はまさに第1の「商品選定」の問題である。 商品が選定され、それがまさに中国の消費者にとって「適品」で、「お買い得」と感じてくれる価格帯を選定し、「適価」であることと同時に、その商品をどのような販売戦略で売るのか、という面が含まれている。 販売したいと思う商品を買ってくれる消費者ターゲットを設定する際に、第2に重要なのは、消費者が喜んで買ってくれる価格帯を決めることにある。消費者も、その商品をいかに気に入ったとしても、価格帯が合わなければ、購入してもらえない。逆に、消費者が買ってくれる価格帯さえわかれば、商品コストや品質の仕様は商品開発段階で修正する余地が出てくる。したがって、商品販売戦略ではその商品にマッチした価格帯をどう見いだすか、ということに重点を置く必要がある。 商品販売戦略で第3に重要な点は、その価格帯でどう売っていくのか、という商品の売り方を決める必要がある。つまり、リアル店舗を通じて売るのか、それともEC販売のように無店舗販売で直接消費者に販売するのか、という点を事前に検討しておく必要がある。 本書では、EC通販を対象にしているので、リアル店舗での販売戦略については触れないが、中国の消費者を対象にするためには、リアル店舗販売よりもEC通販が、中国の消費者から見て利便性が高い、という評価を受けなければ買ってもらえない。初めからEC通販で販売したいと押売しても、消費者から見て買うメリットが明確でないと、販売は成功しない。 いずれにしても、どのような商品であっても、中国で販売活動するためには、その商品の買手にマッチした商品を選定し、適した価格帯と適した売り方をよく練っておく必要がある。

中国で注目されている商品群

中国に進出している通販企業の商品群は、次のような2つのタイプに分けられる。

1)安価で実行性のあるコモディティ商品群
この商品群は、価格競争の最も厳しい商品群が多い。安価で実用的な商品群は、中国の生産力を活用して、低価格戦略が次から次へと打ち出されて採算を維持することが難しくなる危険性を含んでいる。この分野の商品戦略は日本の通販企業にとってあまり有効とはいえない。

2)「個性」があって「意外性」や「高級感」のある商品群
この商品群は、すでに中国の消費者が強い要望を感じている商品群であり、ブランドの個性や好意的に受け入れられる情緒的価値を提供できる。また中国の生産力や技術力では簡単に対応できない商品群は、中国の消費者から歓迎される商品群である。ただ、これらの商品群も売れると分かれば、偽物作戦で追随してくるために、その追随を追い払うだけの対応戦略を考えておく必要がある。ブランドカを武器にECビジネスを事業化しても、特許や商標権で武装していない限り、模倣商品の攻撃を受けて存続が難しくなる。ファッション商品や化粧品や家庭雑貨商品に関しては、ブランド差別化を守りきることは困難なので、ブランドカや技術力だけに頼った商品差別化戦略だけでは、中国市場で成功することは難しいといえる。

いずれにしても、商品販売戦略を立案するにあたって、販売したいと思う商品群の対象カテゴリーと直接かかわってくる競合店に関するベンチマークを行っておく必要がある。

商品の品質問題

日本の企業の商品戦略は「品質が良ければ中国市場でも必ず売れる」という品質依存型が多く見られる。問題は中国の消費者が「品質」をどうとらえているかである。
この点に関して、[電通マーケティングインサイト]社では、2012年9月5日〜2012年9月19日に北京、上海、広州360人を独自調査した。
中国の消費者がオンラインショッピングで重視しているのは、「有名ブランド」であることと、「多くの人が使っていること」であると「品質」を保証されていた、という点を指摘していた。
そのためにも、消費者がこの商品を購入したい、と思わせる仕掛けとして次のような5段階を提唱している。

1.ターゲットを明確にする
2.明確にしたターゲットに対しての告知の強化
3.どのような商品なのかわかりやすく解説を
4.常に新鮮な情報を提供
5.顧客への対応は丁寧かつ迅速に

商品を販売する場合、その商品を買ってくれるターゲット消費者の設定と、その売り方、説明の仕方に関して、戦略を明確にした仕掛けづくりが必要である。
どのようなターゲットに、どのような商品を売ろうとしているのか明確にする方向性は、日本の通販ビジネスでも強調されてきた。
例えば「黒豆式。」の著者、井上敬介氏は「戦略を間違わず努力を続ければ、誰でもネットショップで成功できる」と主張している。「お客様に商品の魅力を徹底的に伝えること、獲得したお客様に商品やお店のことを気にいってもらい、何度もリピートしてもらうための対策をうち続けることができれば、ネットショップの運営は安定していきます」とあるように、現状を正しく認識し適切な戦略をうち続けること、そして着実な努力を継続していくことを提唱している。
特に井上氏は、3年間を一つのメドとしている。「私たちの目指すべきは、お客様に喜ばれる商品をつくり、その商品を丁寧にお届けし、何度もリピートをしてもらえる関係性をお客様と築くことです」と結論付けてしる。この考え方は、中国の通販ビジネスでもそのまま通用できる。

現地化戦略に沿った商品販売戦略

越境ECビジネスでは、せっかく中国市場を対象としても、テストマーケティング的な取引に終わってしまい腰を据えて長期的に取り組んでいく事業としての発展性は期待できない。
そこで、中国の消費者とダイレクトに接して、知名度をアップさせて市場対応力を強化していくためには、事業そのものを「現地化」する方策が考えられる。
中国では、中国国内で海外企業が進出する場合、投資形態により合弁、合作、独資(外資100%)の3通りに分けられる。

1.駐在員事務所の設立
2.合弁・合作企業の設立
3.独資企業の設立

「駐在員事務所」の場合は、マーケティングの主体は、日本本社が実権を握っており、現地の市場動向を本社にフィードバックする程度では、市場要望に対応するのには限界がある。
一方、中国の市場をよく把握している企業と合弁・合作を組むことにより、市場対応力は高まるが、問題はどこまで相手側企業に権限を委譲するかによって、その対応力にも差が出てくる。日本から派遣された幹部が実権を握っている場合、消費者のクレームや要望に対応するために、日本の本社からの指示が優先されると、せっかくの合弁事業も、本当の意味で現地化されたとは言いにくい。中国側の幹部と日本側の幹部とに政策面での食い違いができ、結局、合弁解消に至るケースも多い。
確かに、現地法人を設立することにより、中国市場に対応した柔軟なマーケティング活動が打ち出しやすくなるが、現地化したからといって、中国の消費者からのレスポンスを高めるマーケティング戦略とその実行力が伴わないと、投資金額を回収できないままに撤退する危険性も高くなる。そういった意味で、現地化戦略は「ハイリスク」のビジネスモデルであるといえる。
すでに類似商品が多くでており、商品だけの差別化戦略では、中国消費者からは認知してもらえない。中国ネットサイトに進出しても、知名度が低いために、消費者からの検索の対象にならない。
日本の通販企業の中で、知名度向上に成功して、売上を向上させた企業も出てきている。DHCがそれである。この点に関して「中国で売る!」で、次のような事例紹介を行っている。DHCは05年に中国化粧品販売を展開した。当時、化粧品は百貨店やスーパーの店頭で販売することが常識になっていた中国に、DHCは「通信販
売」という斬新な手法を持ち込んだ。DHCは、次のような知名度アップ戦略を実施した。

1)ネットユーザーの中で人気を博している韓流スターや香港のスターを起用した
2)繁華街で無料サンプルを配布
3)「携帯での無料サンプリング申込み」キャンペーン実施
4)中国進出最初の4ヵ月間で40万人の会員を獲得

DHCのように中国で通販ビジネスを軌道に乗せるには、中国の競争環境や販売チャネルをよく研究し、個別の要望に応えていく必要があるが、越境によるダイレクト・ビジネスでは限界があるので、「郷に入れば郷に従え」という言葉通りに、中国の企業と同じ土俵の上に乗って、中国の競争環境に機敏に対応できる現地法人を設立する必要がある。言い換えれば、中国の競争環境に耐えうる「ダイレクトマーケティング方法」を1から構築するくらいの本気度が必要とされる。

メディア戦略

働く標的(Moving target)に対応したメディア戦略

中国通販を分析する過程で気づいた点は、日本の通販企業の多くは、中国市場に対する理解が不足していることが原因で、受け入れられないということである。 中国の専門家がよく指摘しているように、「日本の企業は、郷に入れば郷にしたがえ」をもっと真剣に考える必要があると提言している。この場合の「郷」とは、「中国消費者」を指す。消費者のニーズも十分に把握せず買ってもらいたいと思っても、受け入れられるわけがない。成功するためには、中国市場内にきちっとした陣容を構えて、消費者の声や意見を誠実に聞くコミュニケーション戦略を正しく構築することが、「郷に入れば郷に従え」という意味である。 「郷」が違えば、違った戦略を組まないと、ビジネスは進展しないわけだが、トップ自ら、中国消費者を納得させ、安心・安全・信頼してもらうコミュニケーション戦略をしっかりと練り上げ、メディア戦略の構築に投資をする覚悟が必要である。 マーケティングに責任を負った幹部級のマーケティング・オフィサーの育成も重要である。戦略的マーケティングを立案するにあたって難しい問題は、購買行動が流動的でとらえにくい、という点がある。 そういった意味で、中国の消費者市場を「Moving Target」(動く標的)と呼ぶことができる。草むらから飛び立つ鳥を狙い撃つといった難しさがある。その難しさを頭に置いて、事前に戦略を練っていけば、成功するチャンスがある。

日本商品の認知度の低さ

越境ECの困難性として「知名度の低さ」が指摘できる。日本の経済産業省は、東日本大震災で被害を受けた産地を支援する貿易振興の一環として[越境ECビジネス]に補助金を投入し、積極支援を行ってきた。そこで越境ECビジネスが注目されたが、実際に進出してみると多くの問題点に直面した。 越境ECビジネスが、思ったほどに売上が確保できない。その要因の一つとして、中国の消費者が、商品をどのように捉えているか、つかめなかったことにある。越境ECでは、中国の消費者と直接コミュニケートできる機会が少ないために、どうしても消費者対応に遅れたことが原因となっている。 越境ビジネスで提供される多くの商品は、たとえ品質が良くても、消費者にブランドが浸透していない場合、中国のサイト内では存在感がうすく、目にとまりにくくなる。日本の通販商品は販売経験が浅いために、相対的に認知度が低く、中国に進出しても売上が稼げない、という点で苦戦をしている。特に中国のネットサイトには、多数の商品群が掲載されているために、目にとまる確率が低いのが現状である。そのため、消費者の目にとまるように多面的な情報を発信し、少しでも知名度を高めるメディア戦略に力を入れる必要がある。

中国EC通販ビジネスにおけるメディア戦略の特徴

中国通販ビジネスを支えている消費者は、都心部を中心とした富裕層と地方を中心とした新興市場とに大きく分かれている。消費者とコミュニケーションを行うメディア戦略の在り方も、都心市場と地方市場とでは異なってくる。 ただ、ECビジネスでは店舗販売や製造業マーケティングで用いてきたメディア戦略とは相違点がみられる。同じECビジネスでも、日本と中国とでは異なっている。そういった相違点を論じる前に、中国ECビジネスにおけるメディア戦略の特徴を簡単に説明することにしたい。 中国にも拠点を置きながら、ソリューション事業を展開している「イー・エージェンシー社」によると、中国ECビジネスで参考にすべきメディア戦略の特徴として次のような4つのサイトをあげている。

1)総合ポータルサイト
ポータルサイトは、検索エンジン、ウェブディレクトリ、ニュース、オンライン辞書、オークション、メールサービスなどのサービスを提供し、利用者の便宜を図っている。
ポータルサイトのビジネスモデルは、サイトの集客力を生かして広告や有料コンテンツで収入を得ることである。
中国で総合ポータルサイトの代表例としてSINA新浪公司とQQがあげられる。 SINAのサイトでは、ランキング、ニュース、エンタメ、スポーツ、バラエティなどが掲載されている。他方、QQサイトでは、ゲスト、映画・ドラマ、DV、エンタメ、ニュース、スポーツ、ファッションなどが掲載されている。

2)コミュニティサイト
第2はコミュニティサイトである。このサイトの特徴は、関心や興味を共有する人々が集まる、情報交換などのコミュニケーションを中心としたSNSサイトである。中国におけるSNSサイトの例として、徴博,人人網等がある。「徴博」はWeibo(ウェイボー)と呼ばれ「小さなブログ」という意味である。中国では、短い言葉で気軽につぶやけるのがウェイボーでヒットした。
ウェイボーは、内容に関してブログとSNSの中間のようなイメージである。関係性を重視しながらも、140字という制限で中身を濃くしようという発想がうかがえる。ウェイボーは50%以上が携帯電話・スマホからの閲覧、書き込みが行われている。
このSNSサイトでは、企業も消費者と一緒になってチャットやメッセンジャーを使って、消費者の本音を聞き出すのに、コミュニティサイトを活用するようになっている。特に日本企業は、中国の消費者の価値硯がつかめていない場合が多いので、中国人スタッフを介在して、双方向的なコミュニティサイトを積極的に活用する必要がある。

3)女性サイト
第3は女性専用のポータルサイトである。美容やファッションを対象にしたポータルサイトが人気を呼んでいる。代表的なのは「太平洋女性網」で、1日のべ1 3 0万人近くのユーザーを集める。他にYOKA時装網でファッション性の高さで定評があり、一日のべ200万人のユーザーを集める。

4)動画系ポータルサイト
動画系ポータルサイトは、無料コンテンツを視聴することができる。ビジネスモデルとしては、無料配信で視聴者を集めて広告モデルで収入を得るコンテンツの種類が豊富であるため、ポータルサイト系映像配信が良く利用される。動画系サイトとしてよく利用されるのは、「土豆網」があげられる。
中国ではメディアプランを立案するに際して、これらの4つのサイトメディアから選んでいる。日本よりも中国の方がECメディアに依存する割合が高いので、最適なメディアプランを立案するには、それぞれのECメディアの特性をよく研究しておく必要がある。

富裕層に向けたメディア戦略の特徴

中国の富裕層は、面子を重んじて、中間層が手を出せない海外ブランドや高額商品を好んで購入する傾向が強い。一級都市、二級都市では、日本以上に欧米系のラグジュアリー・ブランドが売れている。中国の富裕層は、海外に出かける人も多く、高級品の価値を見極める経験価値を身につけている。
こういった顧客対象に向けたブランド戦略は、単に商品の品質だけではなく、ブランドを訴求するメディアも選別する。選択眼の高い顧客に対しては、インターネットメディアとしては、検索エンジン、専門サイトが有効であるといわれている。[イー・エージェンシー社]では「高額商品はマスメディアとの連携で検索エンジン主導。そこに専門サイト、ロコミサイトを絡める。ブランディングのウェイト次第でポータルサイトの利用」を勧めている。 以上のことからも、高級ブランドをマーケティングする際には、検索エンジン及び専門サイトを通じて、富裕層向けのコンテンツやニュースに力を入れているポータルサイトを選んで、顧客との関係性を高めるメディア戦略に重点を置く必要がある。 この分野では、すでに欧米のラグジュアリー・ブランド企業が、中国市場で効果的なメディア戦略を収っている。彼らは、単にインターネットメディアだけに頼らずに、富裕層向けの雑誌メディアと検索メディアを有機的に連動したクロスメディア戦略を実践している。欧米のラグジュアリー・ブランド企業は、中国市場における富裕層と関係性を保つメディア戦略に初期の段階で十分な投資を行っている。 一方、日本の企業は、品質的には欧米の高額商品と大差がないのに、中国の消費者にラグジュアリー・ブランドとして評価してもらえないのは、富裕層に対するメディア戦略が欠落している場合が多い。

中間層に向けたメディア戦略の特徴

中国では、80年代生まれの消費者から新しい中間層が誕生しつつあり、ECビジネスの重要な顧客対象とみなされているが、この層は、まだ大学を卒業して社会経験が浅く、高級な商品を買えるだけの経済的余裕がない層である。 ただ、学生時代からインターネットを駆使して、自分たちの欲しいブランド商品をネット通販で安く購入する経験を積んできている。また、オンライングームやチャットなどを通じて交流サイトをフルに活用し、ロコミを活用したC2Cの経験を持っている。 彼らには、SNSやBBS、BloRのロコミコミュニティ主導型のメディア戦略が有効であるといわれている。インターネットメディアの活用は、友達や家族とのロコミュニケーションが主体であり、この交流サイトの中に入り込まないと、メッセージが伝わらないために、通販企業としても、そういったSNSの公式アカウントを設定し、仲間意識でコミュニケーションをとっていく。
一方通行的なコミュニケーションでは、情報発信者は「訴求対象者」にメッセージを送り、それを受け身的に受け取る立場に置かれてきた。しかし、SNS時代に入ってくると、ブロガーとかインフルエンサーが情報発信者として登場してきたので、こういった情報発信者と接点をどう保つかというメディア戦略が重要になってきている。
そうなってくると、メディアプランナーは、中国人と日常用語で対話できる人でないと務まらないので、そういった人材を現地で、どう育成するかという人材育成面に対しても積極的に投資をしていく必要がある。

メディアプランナーを支援するサポート会社

中国の消費者と日常会話ベースでコミュニケーションができるメディアプランナーをいかに社内で育成するのか。中国人であろうと、日本人であろうと、メディアプランナーは、訴求対象者である潜在的な買物客に対して、自社の商品を買い続けてくれる「ファン客」を増やしていく責任がある。 こういった「継続客」を増やすのは、単にメディア戦略だけではなく、商品そのものが買物客にとって「適品」であり、価格も「適価」でなければならない。また、潜在的な買物客に訴求する「コンテンツ」も魅力的で、心に響くものでなければ通じない。 しかし、そういった「適品」「適価」な商品を持っており、魅力的な「コンテンツ」を企画していても、それを欲しがっている買物客に伝わるようなリーチがないと、認知されないまま終わってしまう。 一方、中国の消費者とのメディア接点は多岐にわたるために、訴求したい買物客にメッセージをリーチさせるためには、どのメディアを組み合わせればよいか「メディアの最適化」を十分に調査・研究する必要がある。 幸い、インターネットが普及するにつれて、アクセスデータを詳細に収集し分析できるようになった。したがって、メディアが買物客に接点をもてたかどうかという点に関しては、「アクセス解析」のソフトをつかえば、迅速に把握できる。 問題はこういった「アクセス解析」ツールを使って、アクセス数の低いメディア戦略を修正し「最適メディア戦略」を打ち出す必要がある。「メディア解析力」を各通販企業のメディアプランナーに求めるとなると、人材育成の面で間に合わない、という事態が発生する。そこで、外部コンサルタント企業を活用して、メディア戦略を分析してもらって、できるだけ早く最適なメディア戦略を打ち出せるようにする。 日系のサポート企業が、多方面で活躍している。まずはメディアプランナーを任命し、自社の戦略的マーケティングに沿ったメディア戦略を立案し、その支援体制として外部のコンサルティング会社と同盟を結んで、対応することにより大きな間違いを未然に防げる体制を整備する必要がある。

広告戦略

マス広告の限界

中国の消費者から商品を買ってもらうためには、メッセージを届けるメディア戦略を構築すると同時に、そのメディアを通じて、どのような内容をどのような方法で伝えるか、という広告戦略を立案する。
商品を買ってもらうことによって売上は回収できるが、その商品を買う必要があるのか?という理由づけや、買うことによって生活に役立ち、楽しい体験が得られる、というメッセージを伝える必要がある。
そのためには、生活面でどのようなベネフィットや価値観に興味を抱くのか、リサーチや対話を通じて、価値観を共有化する努力を積み重ねていく。
リサーチ活動は、単なる通販企業の調査部門だけの仕事ではなく、営業、生産、財務、人事といった企業のすべての担当者が一体となって行う。
広告と言えば、マス媒体を通じて不特定多数に向けてメッセージを発信する方式が一般的であった。中国では商品が十分に普及していなかった時代では、商品を大量流通させマス広告に資金を投下することにより、普及率マーケティングが有効に作用した。大量広告を投下することにより、認知度を高めることによって市場占有率を上げる方式が通用した。
しかし、同業他社も同じ方式をとってくると、そういった広告投資は十分な効果を得ることができなくなり、中国でも広告の費用対効果が低下し、マス広告が経費の無駄使いになり始めている。

販促主導の広告戦略

日本では、普及率マーケティングが有効に作動した際には、テレビや新聞といったマス広告が重視されたが、中国では、サンプル配布や店頭でのイベントといったセールスプロモーションが重視されてきた。 [中国人に売る時代!]によれば、「日本企業が、良い商品を持っていながら消費者へのアプローチが弱い大きな理由の一つは、中国での販売やコミュニケーション手法が単一で、多様かつ有効なビロー・ザ・ライン活動を展開できないことにある。」と指摘している。更に回書では、「中国市場でビジネスを成功させるためのポイントは、チャネルにある。具体的にいうと、モノを売るための3つのチャネル、つまり、コミュニケーションチャネル、流通チャネルと販売チャネルである」と述べている。 広告の世界では、マス媒体を使った広告を「アバブ・ザ・ライン」(above-the-line)と呼び、店頭での販促やサンプル配布やダイレクトメールといったセールスプロモーションを「ビロー・ザ・ライン」(below-the-line)といって区別してきた。中国ではマス広告だけではなく、営業サービスや店舗販売サービスを連動させたプロモーション・ミックスをフルに動員して、消費者を説得していくマーケティング活動が重要であると主張している。

マス広告からネット広告重視へ

マス広告は、投資金額の大きい割には成果が低くなってきているが、ネットメディアを利用すれば、広範かつ長期的に情報を広めることができる。
しかも、ネット広告はコスト的にも優位性を持っている。オンラインの広告費用は、テレビや新聞などオフラインの広告費用の10分の1程度である。
[中国3億入富裕層と商売する方法]では、検索サイトは「購入者に認知させるための有効な手段である」と述べている。その理由として「日本でもそうですが、中国のインターネットユーザーの大半は、情報収集の手段として検索サイトを利用しています。一般的に、全ユーザーのおよそ七割が検索サイトを日常的に使用しているといわれていますから、いかに検索サイトが重要であるかが分かるでしょう」と述べている。
中国でユーザー数の多い検索サイトは百度である。百度の利用状況は、一目平均10億ページビュー、月間平均が300億ページビューとなっている。

その本では百度で利用できる広告サイトとして4種類のサイトを取り上げている。
1.リスティング広告:指定した検索キーワードが検索結果のト位に表示されるようなプログラムを行うことができるサービス
2.ブランドリンク:Webサイト名や企業名、商品名を検索した場合、検索結果とともに画像も一緒に表示できる検索連動型画像付きの記事広告
3.行動ターゲティング広告:ユーザーの行動・関心事項の属性に合わせた広告をバナー形式で表示ユーザーの嗜好に合わせて広告を見せる方式
4.バナー広告各種:検索結果の画面や、百度の各コミュニティページなどに、バナー広告を張り付けることが出来る

百度では、実際に検索サイトヘ広告を出した場合の、結果報告も行われる。出向時間帯中の時間別のアクセス数や、クリック数、どんなキーワードで検索された時にアクセス数が増えるのか、などのレポート結果が提出される。検索サイトを活用することで、中国人にもっと「知る機会」を与える必要がある。中国で「知られる存在」になることが、売れる商品への第1歩である。検索サイトを賢く利用することでチャンスを広げることができる。
このような広告は、日本のネット通販企業でもよく利用されているが、問題はこういった広告がどのようなコミュニケーション効果を生み出しているか、という点を絶えずチェックして、軌道修正を迅速に行っていくマネジメント体制の確立が必要である。つまり、広告によってどの程度集客できたのかを確認し、その集客した顧客を購買客から継続客へと転化するためのアクション計画を準備しておく必要がある。

ネット通販の広告戦略の目的は集客戦略

ネット通販の広告戦略の目的は、いかにネットショップに顧客を集客するかという「集客戦略」にある。店舗販売のように、人通りの多い立地に店舗を構えていると、店舗自体が広告塔になって顧客を集客する役目を果たしてくれるが、ネットショップの場合は、店舗に代わる集客戦略を打ち出さないと、誰も訪問してくれない。
そのために、毎日あるいは週単位や月単位でどの程度の顧客を集客するかに神経を使っているショップが生き残っている。
ネット通販企業を成功させるためには、サイトにどう集客するか、という戦略が必要であることは理解できるが、分析してみると、商品サイトに来て買ってください、という「売手市場対応」というプッシュ型戦略が優先し、「買物客」が喜んでサイトを訪問してもらえるような「買手市場対応」というプル型の戦略が欠落している場合が多い。
むしろ、市場が成熟してくると、買物客が率先して検索してショップを訪問してくれる「来客戦略」の方がこれから重要になる。「中国版ツイッターウェイボーを攻略せよ!」は、以下のようなフェリシモの事例を紹介している。
1)日本の人手通販企業であるフェリシモは、中国でウェイボーといったソーシャルメディアを、企業文化や理念、認知を口コミでじっくり、ゆっくりと広めていくためのプラットフオームとして活用する戦略を取っている。
2)フェリシモはウェイボーを使って、社会性や公共性のメッセージの強いプロジェクトを数多く行っており、転送されやすいコンテンツを増やし、顧客が自らフェリシモのサイトに「来客」しやすい環境づくりを行っている。
3)フェリシモにとって、タオバオもウェイボーも一つのPR窓口であり、そこを入り目として、どんどん自社サイトに呼び込むことが目的である。フェリシモは確固たる理念を持ち、地に足をつけながら、タオバオ、ウェイボーといった新しいツール、マーケティング手法を駆使し、着々と固定ファン会員を増やしている。
このようにフェリシモは、単に売上を高めるための集客戦略ではなく、中国で社会的貢献に努力しており、この社会的貢献の一端を担っていくインフラを提供している。こういった社会的視点に立った集客戦略は中国においても注目される。

ECショップとソーシャルメディアの融合

マーケティング3.0時代に入ってくると、買物客同士が多面的にネットワークを形成するために、1.0時代、2.0時代のように、売手が一方的に広告や販促を通じて自己のショップに「集客」するだけではなく、買物客がロコミやソーシャルメディアを通じて、信頼できるショップやブランドのサイトにたどりついてくれるという「買物客本位」の経営が力を持ち始めた。この関係を図式化したものが「買物客本位の経営ハブ」である。

 

この関係国では、1.0時代、2.0時代に体系化されたECショップの「集客」→「接客」→「遊客」の流れに付け加えて、3.0の時代では口コミやソーシャルメディアと連携しながら「送客」→「禅客」→「聴客」のプロセスが加わってくる。 「送客」とは、ソーシャルメディアを活用してリアル店舗の顧客を「ネットショップ」に送りこまれた客、という意味である。「探客」とは、買物客は生活の場面で、今、自分が必要とするものや欲しいモノや情報を自主的に探索する段階の客を意味している。買物客は、売手から発信される情報に対して受け身的に反応するのではなく、自己の生活場面から要求されるニーズや願望を顕在化させるために、買物情報を積極的に探索する能動的な買物客が登場しつつある。そのために、顧客に対して直接売り込むのではなく、通りすがりについでに足を止めて店内に入ってくるような自然な流れを構築する必要がある。 対話できるインターネットメディアや相互に会話を楽しめるチャット、ソーシャルメディアが手軽に消費者同士で活用できるようになったので情報探索者としての「禅客」の存在が注目されるようになった。 買物客同士がC2Cの関係でロコミを通じて情報探索し始めると、その対話や会話(おしゃべりや井戸端会議)に耳を傾ける「聴客」の存在がクローズアップされるようになった。特にコミュニケーションの分野でも、「聴き上手」になることが重視される。まずは耳を傾けて、顧客のつぶやきや悩みを聴く姿勢が重要になってくる。 企業からの情報発信でも、買物客に対して、これまでは自分たちの売り込みメッセージを一方的に伝えることが主であったが、企業広報の段階でも「良い企業はコミュニケーションが上手」といわれるようになり、消費者やステークホルダーと、同一目線で話し合える環境が重視されるようになった。最近のソーシャルメディアでは「会話型コミュニケーション」(Conversation)、つまり、ロコミ的会話を通じてメッセージが拡散していく効果を重視している。 特に中国の消費者はこういった対話をしてくれる「聴客」を大切にする文化かおり、それをビジネスモデルにしたタオバオが一大C2C市場を形成した。そういった視点で見ると、中国では多数対多数の3.0時代のソーシャルネットワークが買物客から支持されていることが理解できる。 ただ図に示しているような「ECショップゾーン」と「ソーシャルメディアゾーン」の融合も、すべてが円滑に循環するわけではない。通販企業の対応が悪ければ、「客」がそれぞれのレベルで離散してしまい、ら旋階段を上へ登っていかない現象が発生する。そういった意味で、せっかくサイトを訪問してくれたのに購買に結び付かないで、途中で顧客が離散してしまうケースが多いが、「買物客本位の経営ハブ」が離散しないでうまく循環するためには、節目でデータを蓄積していき、その原因を迅速に突き止めるマネジメント能力が要求される。

買物本位のハブがなぜうまく作動しなかったのか?

中国の通販ビジネスは急成長しているのに対して、日本の通販ビジネスはEC以外の分野では足踏み状態である。その対策として、中国通販ビジネスヘの進出に対する関心が高まってきた。 [日本人が知らない中国インターネット市場]では、楽天が中国から早期撤退を余儀なくされた要因の一つとして、中国ニーズにマッチするサービスが提供できていなかった点を以下のように指摘している。「過去にオンラインショッピング市場に参入して失敗した苦い経験をもつ百度は検索ポータルとしては圧倒的なシェアを占める。その白‘度が、百度サイト内に楽酷天へ誘導するようにしたものの、勢いがあったのは最初だけで、後は低空飛行となった。立ち上げ時はキャンペーン的に誘導をかけたものの、その後は百度にアクセスしても楽酷天を探すのは難しい状態となり、ユーザーが楽酷天の存在に気づくきっかけがまるでなかった。」 つまり、せっかく楽天と百度が提携して、百度のもつ顧客を楽天サイトに送客することを狙ったが、お互いのインフラがうまく作動せず、「送客」⇒「集客」という形で経営のハブがうまく作勤しないために、売上が上がらず、やむなく撤退にいたったと推察できる。これは、客をうまく回していく循環経路の設定に十分に時間をかけて検討してこなかったことが原因になっていたと思われる。つまりマネジメントの仕方に問題があったといえる。

楽天ウェブサイトのクオリティの向上

一方、中国内でソーシャルメディアを活用して、うまく経営のハブを循環させて企業や製品の認知度・知名度の向上を図ろうという動きもでてきている。ウェイボーといったソーシャルメディアをビジネスに結びつける方法に関して「中国版ツイッターウェイボーを攻略せよ!」は以下のように説明している。
「まずは、日常的につぶやいて多くのフォロワーを集めることで、企業や製品の認知・知名度の向上を図ること,そして、もちろんウェブサイトからもウェイボーに行けるようになったり、いいニュースがあったときには、そのページをすぐに自分のアカウントで具有したり、つぶやいたりできるなど、ウェブサイトも作りこんでおくのが望ましい(SMO=Social Media optimizationソーシャルメディア最適化)。さらにソーシャルメディアから自社のウェブサイトに呼び込み、そこからECサイトに誘導して商品を購入するといったビジネスモデルを確立できるのが理想だろう」
こういったECサイトとSNSとの融合は、中国でもこれからの課題であるが、自社ECサイトに外部の顧客をしかに呼びこんでくるかという課題は、広告の投資効果を高める上において重要になってくる。

日中間のネット通販ビジネスに対する相互の理解と信頼関係の構築

中国の消費者は、日本の商品に接することで品質の良さやブランド価値を理解する機会は増えているが、問題は認知度が低いために、継続的に購入してもらいファン化するには、企業ブランドや企業コミュニケーションに対する理解度や信頼度の構築が不十分である場合が多い。一方で、絆づくりや信頼関係の構築を通じて、社会貢献責任や中国社会とのつながりを強化する企業広報活動に戦略投資をしていく必要がある。

この点で、日本ダイレクトマーケティング学会が発行する[Dired Marketing Review vol.12]で上智大学の新井範子氏は[リレーションシップマーケティングについてのダイレクトマーケティングの方向性]というユニークな論文を発表している。 その論文には「ソーシャルメディアが発達した現在、企業は消費者とダイレクトなコミュニケーションが可能になり、それに伴いマーケティングのアプローチも様々な変化がみられる。ダイレクトなプロモーションなど以前はみられなかったアプローチが可能になってきた現在、ダイレクトマーケティングの意味も広く考えるべきである」と主張している。 ソーシャルメディアの普及によって、これまで不特定多数を対象にしてきた一方通行的な広告の在り方も、双方向的なコミュニケーションに大きく変革しつつある。 新井氏と同じ視点にたって、米国のT.L.Tutenはすでに2008年に’Advertising 2.0: SociaI Media Marketingin a Web 2.0 Worldl’という本を出版している。まさにソーシャルメディア時代における広告は、人と人の結びつきを促進するRelationship Managementの視点を取り入れるべきと主張している。 新井氏は、先述した論文で「リレーションシップマーケティングやダイレクトマーケティングの施策としてCRMという言葉は切り離せないものである」と述べ、CRMについて次のように説明している。「CRMとは企業と顧客がより価値を創るために、識別した顧客のことを知り、顧客として持続し、協調するための包括的な戦略と過程であり、リレーションシップマーケティングという言葉と互換性を持つためにCRMとリレーションシップマーケティングはほぼ同義語であると考えられている」 新井氏の論文に興味を待ったのは、CRM(Customer Relationship Management)において顧客との長期的な結びつきを考える場合、信頼関係をどのように構築するかに関する知見であった。 [信頼の構造:こころと社会の深化ゲーム]では、「やくざ的信頼関係」と「恋人的信頼関係」の2通りを区別している。顧客との関係性を持続させるために、ポイント制度など金銭的な優遇策による「やくざ的信頼関係」と感情的なコミットメントを重視する「恋人的信頼関係」の2通りがある。 中国の広告戦略では、単にマスメディアを使った認知度向上だけではなく、サンプルの無料提供やイベントを通じたプロモーション活動との組合せが重視されているが、この広告戦略による信頼関係は「やくざ的信頼関係」の構築に貢献する。 他方、ツイッターやチャットを通じて、親しい友達関係を構築してお互いに感情的に結びついていく信頼関係の構築は「恋人的信頼関係」に該当する。中国でSNSを中心としたソーシャルメディアが急速に普及しつつあるので、日本の通販企業も、中国のソーシャルメディアのネットワークに入り込んで、交流サイトを楽しむ、といった関係性の構築に対しても、時間をかけて投資をしていく必要がある。 従来、中国の消費者と日本企業との信頼関係の構築方法は、商品の品質や利便性を強調した一方向的なコミュニケーションが中心であったが、むしろこれからは、中国の消費者とチャットなどを通じて、親しく交流して信頼関係を強化していく必要がある。そのためには、日本企業も韓国の企業のように中国市場に入り込んでフェイス・ツー・フェイスで付き合っていくといった徹底した現地化戦略が要求される。

現地化通販とCRM戦略

中国の消費者に向けて、自社ブランドの認知度を高めていくためには、マスメディアを活用した広告戦略も有効であるが、通販ビジネスの本来の狙いである「購買客」「継続客」を創出するためには、認知度優先の広告戦略は経費の無駄づかいに終わってしまいかねない。そういった意味でも、継続客との関係性を強めるCRMを重視する必要がある。
ダイレクトマーケティングは、個別の顧客に対応するマーケティング手法である。ダイレクトマーケティングは、CRMの理論的枠組みを提供してきたといえる。したがって、中国消費者の対応戦略を考える場合、CRMを活用することはそれなりの意味を持っているといえる。 CRMとは情報システムを応用して、企業が顧客と長期的な関係を築く手法を意味している。詳細な顧客データベースや販売購入履歴を元に、商品の売買から保守サービス、問合せやクレームヘの対応など、顧客とのやり取りを一貫して管理することにより実現する。ニーズにきめ細かく対応することで、顧客の利便性と満足度を高め、常連客として収益の最大化をはかる。 越境ECサイトでは、日本の企業が「提供する商品を気に入ったら買ってください」という販売形態をとっているために、中国消費者の刻々と変化する要望に機敏に対応できない。 越境ECビジネスの場合も、出店する際には買いやすい価格帯や商品の好みなどを、事前に調査してビジネスをスタートさせるが、消費者は、サイトに出店している他のネットショップを逐次比較しながら、自分の好みに合った商品を選んでくるので、最初は飛びついて買ってくれたが、その後が続かず、継続購買に結びつきにくいというケースが出てくる。 通販ビジネスは、初回購入客を継続客に転化して初めて採算に乗るようになる。そのためには、まずは集客し、買物客に転化し、更に継続客に転化するプロセス全体を個々の顧客ごとに管理する「顧客関係性マネジメント」(CRM)が要求される。 越境ECビジネスでは、こういった顧客のプロセス全体を管理し、それぞれの局面で的確な販促計画を臨機応変に実行することが難しい。CRMをきめ細かく実行しようとすると、現地で専任のCRM担当者が個々の消費者の購買歴や、中国語で販促に対する反応を考慮して、的確な対応策を支援するCRMシステムが必要になってくる。

物流戦略

ネット通販を支える宅配物流

日本では、ネット通販が普及する前から、ヤマトホールディングスが消費者からの小口荷物の宅配ビジネスを成功させてきた。この宅配システムは、まさに消費者から消費者へ配送するC2Cの仕組みを物流面で先駆けて確立してきた経緯かおる。ヤマトの宅配便に対応して、郵便局も、個別配送の事業に参入し、多くの通販企業は通販メールやカタログ雑誌の配布面で郵便局を積極的に活用した。 一方、百貨店も、消費者向けの個別配送を実施してきた。百貨店は独自の配送網を整備して、配達面では運送企業に委託して物流面でのB2C体制を確立してきた。 日本の通販企業は紙媒体で確立した物流面での宅配システムは、倉庫企業や運送企業とタイアップして、それぞれの企業の目標にマッチした宅配システムを確立してきた。 小口商品を消費者の自宅まで届ける商流プロセスに加えて、カタログで欲しいと思った商品を発注する場合、はがき、電話、ファックスといったアナログメディアを活用していたが、インターネットが普及するにつれて、コンピュータの画面から人力できるようになり、消費者からの発注システムがデジタル化されたことは、物流面での大きな改革につながった。 特に宅急便の場合には、委託した小荷物が、消費者の手元にいつ届くかという問合せに即座に対応できる「荷物追跡システム」の整備は、消費者に対する安心感を提供するサービスとして高く評価されるようになった。このことが契機に、宅急便システム領域に商流システムと並行して情流システムが一元管理されるようになり、物流面での繁雑な事務処理の軽減や、倉庫、運送、発注をつかさどる各物流業者がデジタル・コミュニケーション・ネットワークを構築し、コスト合理化だけではなく、配送サービスのスピードアップ化に大きく貢献するようになった。
日本では 楽天やヤフージャパンは「マーケットプレイス事業」を推進する前から、個別配送を可能にする物流インフラが整備されていたので、EC通販に特化した物流システムを自ら戦略的に整備する必要性がなかったといえる。
他方、日本のネットショッピングを支えるフルフィルメント・サービスを戦略的に展開して成功しつつあるのがアマゾンジャパンである。アマゾンジャパンは、独自のフルフィルメント・システムを確立して、マーケティング戦略の一環として「無料配送戦略」を打ちだし、即日配送、翌日配送といったサービスを武器にして、
日本におけるネット通販ビジネスでトップ企業にランクされるようになった。

中国ネット通販業界における物流システムの現状

中国でもEC通販が急速に発展したので、宅配ビジネスが急成長を遂げつつある。[中国ネット通販成功の方法]によれば、「2008年における全国荷物急送サービスの3分の1の業務はECによるもので、ECによる荷物急送サービス取り扱い件数は5億件を超えた。」
確かに、中国でもネット通販ビジネスを支援する宅配サービス事業が物流業の一環として全国的広がりを見せている。しかし、その主たる担い手が中小企業で占めているために、宅配サービスの質に関しては不安を抱えている。この点に関して[中国消費市場への挑戦]は、宅配事業会社の実態について以下のように説明している。
「全国規模で急激に拠点綴を広げ、会社規模を拡大しているのが、宅配事業会社である。インターネットを販売する企業にとっては、全国規模でネットワークを持つ物流・宅配の存在は必要不可欠である。しかし、宅配事業会社は中国全国に数千の数があり、その品質水準にバラツキがあり、会社としての経営状態にも不安が残る会社も少なくないのが実態である。」
こういった問題点を含みながらでも、中国でのネット通販の物流面で関与している「荷物急送サービス企業」が育ちつつある。[中国ネット通販成功の方法]では、中国の荷物急送サービス企業として4種類のビジネスモデルを指摘している。

1) 中国郵政(チャイナポスト)のような全国をカバーする国有企業。
2)中国国内の民間人手早急サービス会社。「順豊速通」「園通早通」などがある。
3)中国国内の中小規模の民間荷物急送サービス会社。特定の都市ではスピーディで安価という長所かおるが、全国をカバーするには至らない。
4)外資系の荷物急送サービス会社。

この中で、宅配サービスの質の面で注目されているのは「順豊速達」(SF.EXPRESS)である。同社は1993年に設立されたが、それ以来、他社に比べて幾つかの点で競争優位性を維持している。
同社の会社案内では、「会社設立後、SFエクスプレスは常にサービスの向上に力を注ぎ、市場ニーズにお応えするよう努力してきました。アジア地域(香港、マカオ、台湾を含む)において、市場開拓、物流、エクスプレスサービスなど、幅広く事業分野を確立し、中国全土に営業所を展開。同時に積極的な国際ネットワークの
拡大を続け、サービスネットワークは現在、韓国、シンガポール、マレーシア、日本、米国をカバーしています」と紹介している。
日本には東京に「順豊エクスプレス株式会社」の本社があり、大阪には「大阪サービスセンター」が設置されている。

この「順豊」の競争優位性として「中国消費市場への挑戦」は次のような点を指摘している
1)全国全土をカバーしており、そのすべてを直営で管理している。
2)小規模な品物から、一定の人きさの商品まで取り扱っており、日本の宅配会社に近い。
3)従業員約7万人、口々の配送個数が約85万個である。
4)中国内に自社の営業ネットワークを2400ヵ所以上もち、自社保有白砂よ、4000台以上、サービス範囲の広さをカバーしている。
5)サービス内容としては、特安、保価、代収貨款などの顧客ニーズに応じたサービスを展開している

中国ネット通販における物流投資競争の激化

ただ中国のネット通販事業の急速な拡大が続いているため、貨物の急送に宅配業界の処理能力は追いついていない。この点に注目して、日本経済新聞社も「中国ネット通販 物流競争」という見出しでその動向を報じている。その中で注目すべき話題としてアリババ集団の投資競争を取り上げている。
「最大手のアリババ集団(浪江省)も1月、順豊連連(広東省)など大手宅配業者や投資会社の復星集団(上海市)などと組み、商品配送網を整備する計画を公表した。投資額は1000億元(約1兆5千億円)。8~10年以内に、注文を受けてからどこでも24時間以内に商品を配達できるようにする。」
一方、[中国ネット通販成功の方法]によれば、「タオバオ内のC2Cネットワークショップの多くは個人事業者か中小企業であり、大型のB2Cのような経済力がないために、一般的には低価格という優位性をユーザーにアピールするものの、配送料の徴収を行っている。」
この点を改善するために、アリババは物流戦略の抜本的な改革に取り組み始めたと思われる。
すでに中国や東アジアに進出している日本の宅配企業にとっても、中国の通販市場の高い伸び率は、商機到来で積極的に事業拡大を図りつつある。特にヤマトホールディングスは、国際物流の強化に取り組み始めている。この点に繊研新聞社は、ヤマトホールディングスの国際物流に関して次のように報じている。
「ヤマトホールディングスは、那覇空港の沖縄ハブを活用し、保税蔵置場を設け「沖縄国際物流ハブを5月稼働させた。また羽田空港の隣接地には、海外・国内物流の結節点となる「羽田クロノゲート」(羽田CG)を9月下旬に、大都市圈の即日配達を実現する一つ目の「厚木ゲートウエイ」(厚木GW)を8月11日に稼働させる。こ
れらの3種類のスーパーハブで国内とアジアの「宅急使」ネットワークを結び、企業物流の全体最適化を支援する構想だ。宅急使サービスは上海、香港、台湾、シンガポール、マレーシアで提供しており、このノウハウは日中内販や日中間の国際物流にも活用されている。」
ヤマトホールディングスが、C2Cを基盤にした宅配ビジネスのノウハウをEC通販のB2C領域へ事業拡大することを通じて、中国及び東アジアの通販物流面で積極的な貢献が期待される。

総括

中国消費者ターゲット戦略に関する本気度

事業を展開する出発点で、中国の消費者と日本の消費者では、その反応の仕方が異なる、ということは承知の上で中国通販を始めたはずである。問題は、ビジネスを始めてみると、思っていたように中国の消費者が反応してくれないという難問に、なぜそうなのか、ということが十分に説明できないままになっていた。 中国の多くの消費者が日本の商品を漠然とではあるが好意的態度を抱いている。そういった人にきちっとメッセージが届いているのか、またそのメッセージをどう理解してくれているのか、という中国消費者ターゲットの反応を本気になって把握しようという気構えが欠落している場合が多い。 中国の消費者の購買プロセスや価値観を十分に把握しないまま、売上が伸びないと早々に撤退するために、成功事例が出てくる余裕がないというのが実態である。 中国の消費者を喜ばせるという顧客満足を優先させるよりも、自社商品がいくら売れるか、達成度で判断するために、消費者ターゲットの知識ベースが蓄積されない。現場の担当者は売上不振をどう挽回すればよいか、という解決策が打ち出せないで悩んでいる。 しかし、実際に事業を根気よく実践に移していて継続していると、具体的に消費者の反応もつかめるようになり、軌道修正もしやすくなる。 その際は、できるだけ現地が主体的に行動できるように、予算面や本社からの応援といった環境整備も必要である。 その中にあって、競合企業の動向を先読みして、首尾一貫しマーケティング活動を展開している企業は成功している。もちろん、最初から好みや購買慣習を完全に把握することは不可能である。その場合は、購買行動に精通しているコンサルタントや中国のマネジャーに、その戦略的マーケティングの推進部隊に参画し、初期の目標に向かって精力的に推進する実行責任体制を明確にしておく必要がある。
中国のネットビジネスでは、安全、安心、信頼の面で幾多の問題を抱えているが、急成長し続けているという事実から判断すると、EC通販は中国の消費文化に適しているといえる。そういった意味で、商品を売ることよりも、中国の消費者の気持ちや価値観をよく理解するための「中国消費者ターゲット戦略」に経営的視点から本気で取り組んでいただきたい。

販売戦略に閲する本気度

商品販売戦略で本腰を入れて取り組むべき課題は、中国の消費者が魅力を感じて買ってくれる商品を真剣に探し出する必要がある。
日本で人気の高い商品を中国の消費者が買える価格帯で、しかも分かる言葉で説得力を持って売っていくという一貫した態度を表明する必要がある。そのためには、まずは社内の営業スタッフが、売りたいと思う商品のセリングポイントを明確にし、それをサイトデザインに反映させる、という点まで社内で商品開発方針を決めていく必要がある。
同じ商品でも、中国の消費者の目で選択した商品でなければ、日本のブランド商品だからという理由では、中国の消費者は買わない。
中国では店舗数や車の保有台数が日本に比べて少ないために、家電や化粧品、ベビー商品、書籍、ソフト関連といった広範囲にわたる商品群がネット通販の対象になっている。
中国市場で買ってもらうためには、どのような買い方をするのか、どういう生活背景を持っているのか、情報収集と分析に資金を投資し、それを商品企画に反映させるといった努力が必要である。
日本の通販企業でもネット通販が主役になり√商品を販売する共通基盤ができつつある。 両国の消費者は、ネット通販を通じて商品を購入することが可能になり、決済、個別配送、発注方法といっ
たインフラが整備され、また中国では、自分の欲しい商品を異なった国のネット通販サイトで購入できる「越境EC通販ビジネス」が成立している。
しかし、インターネット技術を持ってさえすれば、中国運販市場で成功するとは限らない時代に入りつつある。むしろ、販売したいと思う商品の売り方を、個々の商品に落とし込んでいく必要がある。
商品販売戦略の一環として、現地化ビジネスを立ち上げ、要望に機敏に対応し、その対応能力をいかに身につけているかという点も重要である。少なくとも日本以上に商品を販売するにあたって、コミュニケーションを重視する必要がある。好みの変化と厳しい競争環境の中で、勝ち残っていくためには、生活習慣や購買パターンにマッチし、現地に即したマーケティングカが大事である。商品開発及び商品供給体制を確立して、市場の要望に迅速に供給できるSCMの構築能力が必要である。

メディア戦略に関する本気度

中国の消費者は、ニュースや世の中の出来事について、メディアを通じて情報収集活動を行っている。したがって、メディアプランを立案する際にも、媒体社に任せきりではなく、どのメディアに対して消費者がどのような接点を持ち、それを購買行動にどう活用しているかという実態把握を積み上げていく。それと同時に、競合企業のメディア戦暗面で、打ち出し方をベンチマーキングしておく必要がある。メディア戦略に対して、単に予算をつぎ込むだけではなく、メディアと消費者との接点をどう改善していくか、という面でも本気度が必要である。
メディアプランに際して専門家の助言は必要であるが、アクセス状況から購買行動に至るプロセス全体をマネジメントするメディアマネジャーは自前で育成していく。
そのメディアマネジャーに、客観的データをタイムリーに送り込むメディア分析の整備も必要である。中国EC市場では、日本のEC市場と同様、多面的なメディアが使用されている。
特に中国でよく活用されているECメディアは、検索エンジン、SNS、ポータルサイト、専門サイト、BBSなどである。こういったメディアに消費者がアクセスレ問合せをしたり、発注したりするたびにデータが取れるので、アクセス履歴や購買履歴を細かく分析することによって、消費者に最適なメディア計画が組めるようになる。
メディア分析サービス機能は、ほとんど日本と変わらない水準に達しつつある。
一般的なデータの信ぴょう性は、中国の場合、各所で問題を抱えているが、ECメディアのデータに関しては数値化されているため急速にレベルが高まっている。
日本の通販企業が中国に進出する際には、メディア分析に力を入れ、試供品の配布や各種のイベントを頻繁に行い、消費者を引き付けておくだけの販促企画や価格戦略をきめ細かく打ち出す必要がある。
こういったマーケティング・サービスを、中国で専門的に展開している日系のコンサルタント企業も増えてきているために、そういった分析と販促戦略の連動をうまく連携させて、集客力と継結構人率を高めていく努力が必要である。そのためにも、現地で顧客対応専門のCRM要員の育成とその仕組みづくりに投資していく。

広告戦略に関する本気度

第4の広告戦略に対しても本気度が必要である。ネット通販ビジネスでは、ネットショップに訪問してくれないことにはビジネスが成り立だない。
この広告投資に関しては、日本も中国も必要性が高いが、その効果については、中国のほうが反応は高い。
いくら日本商品の品質が良くても、その存在価値が消費者に伝わらないのでは売りの完結に繋がらない。最初は、無料サンプルやプレゼントと織り交ぜ、消費者に使用してもらって、体験を積んでいただくというプロモーション活動も必要である。ただ無料サンプルを配るだけではなく、無料サンプルが契機となって、リピート買いへと進化させ、更にロコミを拡散して次第に購買層を増やしていくといった販促戦略を推進していくだけのマーケティングカが要求される。
ただ中国でも次第に消費者の選択眼が肥えつつあるために、不特定多数を対象とする広告ではなく、企業と消費者との信頼を勝ち取る絆づくりといった、双方向的コミュニケーション戦略が必要になっている。中国の消費者も、商品の特つ特性や価格だけではなく、企業自体がどこまで社会的貢献や環境的価値に重点を置いているか考慮し、「信頼できる企業」とコミュニケーションをしたいという要求が高まりつつある。そういった意味で、ECコミュニケーションとソーシャルメディアとの連動の構築に本気になって取り組む必要がある。

物流に閲する本気度

中国のEC通販ビジネスで今後、本気度が最も要求されるのが物流戦略である。通販ビジネスの物流に関しては、日本ではクロネコヤマト、佐川急便の功績もあって、個別配送のインフラが整っているために、現在では即日配送といったスピード重視の時代となっている。配送日のスピードアップに拍車をかけているのは、アマゾンジャパンである。アマゾンは配送日のスピードアップだけではなく、無料配送を戦略的に打ち出している。
一方、中国では、ネットショッピングが急速に普及したために、ようやく、個別配送の整備が進みつつある。
ただ両国のネット通販で物流戦略が重視されるにつれて、運送会社、倉庫会社、通販会社とのコラボレーションが進展しつつある。更に商品提供企業との連携も進んでSCMの一元管理も進みつつある。
これまでアマゾンのように通販業者がリーダーシップを発揮するSCMが構築されてくると、顧客の視点から見ると、わざわざ小売店舗に買物に出かけなくても、居ながらにして商品が家や勤め先に送られてくるために、次第に小売企業の顧客が通販企業に奪い取られる危険性も高まる。
DM学会が主催した研究会では、物流だけを切り離して縦割りで管理するのではなく、製造から販売まで全体のプロセスにかかった諸経費を横串管理していくことの重要性が指摘、強調された。この考え方をTCM(Total Cost Management)と呼んでいる。つまり、販売施策にかかるコスト、広告施策にかかるコスト、SCM(在庫管
理、ロット、SKU)といったコストを横串で管理するやり方である。特にどの施策がどう全体の収益に結びつくかということが一目で分かるようにすることが大切であると指摘していた。

考察と今後の課題

以上が本研究内容の総括部分であるが、中国ではアリババグループ360buy.com、中国アマゾン、日本では楽天、ヤフー、アマゾンジャパンなどが、それぞれの国でEC通販ビジネスとして収益を上げており、今後とも成長していく可能性が高い。
その根拠として、すでに楽天は1兆円、アリババは15兆円の取引金額に違しており、通販ビジネスの中で、ネット通販ビジネスのシェアは年々高まりつつある。現時点では中国と日本ではEC通販ビジネスモデルの成熟度の面で相違点が見られる。ただ、こういった格差は、次第に縮小してくる。
両国のビジネス展開の在り方について、幾つかの共通点が見られる。

1)消費者信頼性を重視した関係性マーケティングが注目されてくる。
2)商品販売戦略面では安心・安全・信頼をベースにした商品が注目される。
3)顧客のコンタクトポイントを重視した顧客関係性の分析が注目される。
4)広告戦略面ではインターネットとソーシャルメディアとの連動が注目される。
5)物流戦略では、通販会社、物流会社、運送会社のコラボレーションが注目される。

このような研究結果を踏まえて、日本の通販企業が中国市場に対して、どのような取り組み方が考えられるだろうか。

このブログでは、通販ビジネスの比較研究から得た知見として、「越境EC通販」にしろ「現地化EC通販」にしろ、日本のダイレクトマーケティングカでは、中国市場を攻略することの難しさが浮かびあがってきた。その困難性として、日本の代表的なEC企業が短期で撤退したことが証明している。
中国ECビジネスでの困難性の第1は、中国消費者の趣向や市場特性を十分に調査しないままに、中国政府のECビジネスの市場開放を受けて、一気に参入したことによる準備不足が一つの原因になったと思われる。もう一つは、急速に進化する要求に機敏に対応出来ない弱さがあった。
それ以外に、関税、コスト、供給体制の困難性に直面した。現地化ECビジネスでも、中国消費者に対する認知度の低さや、CRMやSCMの構築面で困難性を抱えている。日本市場では、会社一丸となって展開できるが、一部のスタッフのみで市場の特性を把握できないままに進出したため、中国の通販ビジネスに受けられなかった、と指摘できる。
日本通販協会の柿尾理事が「中国通販業界発展白書」の2010年I1月の時点のインタビューで中国連販の発展
に注目している点として、次のような3点を指摘している。

1)インターネット人目の急激な上昇
2)旺盛な消費意欲(目本製品に対する高い評価)
3)通信販売の事業環境の整備(物流、決済、法務等)

この注目点を中心に少し考察してみたい。
このうち、1.の指摘は、現在も成長の特徴として大きな原動力となっている。これは、2013年も傾向に変化がない。急激な成長を成し遂げている。2.で指摘している旺盛な消費意欲は、インターネット人口の上昇に伴って高い意欲がある。しかし、尖閣諸島の問題前後より、日本商品に対する神話は大幅に低下したように思える。そのことによって、日本ブランドに期待して進出した通販企業は、思うような成果が得られなかった。一方すべての日本ブランドがマイナスになっているわけではない。尖閣諸島の問題後も好調な売上を伸ばしている企業も多数ある。特にネット販売という分野に限定すると、他の業種に比べると影響は少なかったようである。 3.の基盤整備に関しては、決済面では大幅に整備された。エスクロー決済サービスや代引きが充実している。物流に関しては、日本と比較すると問題点は多いが、急速にサービスが向上されている。法整備に関しては、不十分な面が多いが、消費者レビューが充実しつつあり、法整備の不十分さを補っている点も指摘できる。 中国市場も「価値主導のマーケティング」が重視され、この点は日本と全く同じである。 SNSと通販の運動、スマホからの売上拡大、モバイルファースト化、020を含めたオムニチャネル・リテイリング(Omni ChannelRetailing)など日本と中国で共通する話題も大変多い。 両国の通販は、共通するビジネス・スタイルもある一方、日本から中国に進出する場合は、中国に適した徹底的なローカライズも必要になる。このローカライズ戦略で最も大切な点は、日本の通販企業が中国の消費者ターゲットに誠実に向きあって対話する意志があるのか、という点である。日本の通販企業が本気になって中国消費者ターゲット戦略を打ち出すと、その奥には広大な市場機会が待ち受けている。 1970年代に米国のコトラー氏が日本を含めた東アジアの企業が、米国市場に乗り込んできて成功していった実態を分析して「The New Competition」という本を出版したことを思い出すが、その時代に米国の市場で徹底的にマーケティングを実践したトヨタ、ホンダバイク、ソニーなどは、トップ自ら本気で米国市場の攻略に取り組んだ。米国ではまさかと思っていた日本企業に市場シェアを奪われていく事態が起こったわけである。 そういった過去の米国市場の取り組みと対比してみると、中国通販ビジネスでは、その当時のトヨタ、ホンダバイク、ソニーのような市場シェアを確保するまで、あきらめないという粘り強いゲリラ・マーケティングが欠落しているように感じる。 日本の通販市場と価値観の面でも共通化する部分が期待できるが、中国通販ビジネスで日本の企業が成長していくためには、中国市場の特性を十分に研究した上で、両国の相違点と共通点を十分に把握して、中国に特化したビジネスモデルを本気になって構築していく必要がある。つまり、何か欠けているかといえば、中国の消費者を本当に喜ばせる商人的本気度ではないかという点である。かつて米国でできたことが中国でできないはずがない。
まずは、単なる消費者ではなく、「中国」の消費者をどう理解するのか、という点から始めることが大切であると総括しておきたい。

2012年は日本の通販業界にとって、別の意味で大きなターニングポイントとなった。 まずはヤフーと楽天の、ほぼ同時撤退である。当時の日本流通産業新聞の記事にも「楽大の事業活動は鳴かず飛ばず」「ソフトバンク陣営が一歩リードしている状況にある」とあるように、楽天は苦戦、ソフトバンクがやや有利に展開していると思っていた。楽天も苦戦はしているが、1年程度で成否を判断するのは早く、これから様々な戦術がお披露目されるであろうと思っていた。 しかし、突然撤退か発表された。我々はこの発表には大変驚いた。なぜ、これはどの短期間に撤退を決断したのか。孫氏が「アジアの圧倒的ナンバーワンとなり、今年中にはeBayを抜いて世界最大のeコマース市場になる」と宣言していたのは何だったのか。 ただ、中国にいる日本人の中には、撤退は時間の問題と分析していた人も多かったようで、その辺りにおいて、日本にいる我々には正確な情報が人手、分析ができなかった。日本と中国では、大きな情報ギャップが存在しているということを我々自身が認識した。

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