うつ病の進行ー止まらない悪循環
仕事するふりをする自分が卑屈に思える
書類や資料、マニュアルなどの内容が、なかなか頭に入らない。そんなときはありませんか。
目では活字を追うものの、頭が読み取ろうとしない。何回読んでもいっこうに理解できない。視線は手元の書類に向いていても、頭の中では別なことを考えている。
こんなことが続いたら、一度、自問してみてください。集中できないのはなぜなのかと。
私の場合はこうでした。
プロジェクトに関わりはじめてから、帰宅は連日深夜、寝て起きたらまた出動のくり返し。疲労もたまり、集中力は低下していました。それでも書類はたまってい
くばかりで、ますます仕事に埋もれる生活が続きました。多忙でも、生活のリズムに強弱をつけて、適当に休みを入れたり、同僚との会話を楽しみながら仕事をこなせばよかったのですが、私はひたすら書類やメールと格闘していました。
人の集中力が持続できるのなんて、どんなに頑張ってもせいぜい2、3時間くらいではないでしょうか。限界を超えれば当然、頭は飽和状態になりますし、休憩が必要です。それなのに私は、書類を読み続けていました。いや、いま思えば、仕事をしているふりをしていたのです。
能率が上がっていないときは、まず気分転換をしてください。
背伸びをするなり、あくびをするなり、窓から遠くを眺めたり、リフレッシュルームで自動販売機の冷たいお茶でも飲んで一息つくのです。
頭の中がボーッとして、集中も能率も期待できないのに、息抜きもせずにひたすら書類やパソコンを睨み続けている。そんな非能率な状態に没頭していたら危険信号です。
仕事のはかどりが悪いのは気合いが足りないから、などと考えていませんか。
そんなふうに、疲れているのにひたすら自分を追い込むタイプの人に、うつ病は住みつくのです。時間がかかっているわりには成果が出せない。疲れているくせに休んだり気を抜いたりする選択を思いつかない愚直な人は、注意してください。
成果がともなわなければ、どんなに机にかじりついていても、単なるポーズと思われるだけです。
次の項目に思い当たるふしがあれば気をつけましょう。
①気が沈んでいる
②人の笑い声に気持ちが萎える
③気力があるふりをする
④サボっていると見られたくない
⑤がんばらないと叱られる気がする
⑥大あくびや伸びをしたいのに、まわりを気にしてできない
⑦仕事と戦っているふりをする
頑張っているふりをするとは、なんと哀しいことでしょう。ふだん真面目なあなたが、たとえ「今日はやIめた!」とさっさと退社しても、誰も怠けているとか、サボっているなどと陰口をたたいたりしません。もし、「陰口をたたかれている」と思い込んでしまうようなら、うつ病の前兆から兆候の段階に入っているかもしれません。
《ポイント》
睡眠不足は疲れを呼び、疲れれば集中力が低下し、必然的に処理能力も低下します。効率の悪さを気合いと根性で乗り切ろうとするのではなく、寝不足や疲労の原因を整理することが大切です。仕事のこと、対人関係、体調不良など、いろいろと抱えている悩み事を思うと眠れなくなる、というのが主たる原因ではありませんか。
処理能力が低下しているのに、さも平気なように振る舞うのはよくありません。問題をより複雑にしてしまいます。自力でなんとかしようとせずに、同僚や上司、カウンセラーや医師に頼りましょう。
怯えた犬のような目になる
神経系の病気であるうつ病は、痛みや痙學をともなったりする病気のように、症状を自覚しにくい病です。神経系の病気について少しでも知識があれば、おびえや妄想といった症状から、自分が普通でないことを知覚できるかもしれません。しかし、すでにうつ病に取りつかれて苦しみを感じていても、自分がどうなっているのか、まったく訳がわからないという人は少なくありません。
本人の自覚もないまま、うつ病が進行すると、やがて次の段階の病状があらわれます。私の場合は、目つきでした。
精神の状態は、顔つき、とくに目に出るようです。私の目元からは精気が消え、おびえた目線を人に向けるようになりました。まるで、傷ついておびえる犬のようにも見え、これには私も自分で気づきました。おそらく、周囲の人にもわかったでしょう。
うつ病に取りつかれると、極端にパワーがなくなります。そのせいで、物事に立ち向かう力が失せ、その気力のなさが目にもあらわれるのです。本人がいくら元気そうに振る舞っているつもりでも、普通の状態でないことが明らかです。
さらには、次のような妄想も少しずつ出はじめます。
①人の笑い声が自分を非難する笑い声に聞こえる
②人の話が自分の悪口に聞こえる
③のけ者にされているのではないかと疎外感を感じる
④自分は嫌われていると思い込む
⑤アドバイスを受けても勘ぐってしまう
こうした被害妄想も、おびえた態度の一因になります。
ここまでくると、すでにうつ病に絡みつかれている、いや、操られている状態で、周囲にも異変が伝わっているはずです。でも、本人が「おかしい」と思わない限り、まわりはどうすることもできません。
そして、もっと病状が進んで自分の世界に閉じこもる段階になると、目線は逆に動かなくなるようです。外からの情報を拒否し、遮断するようになるからです。見ようとする気力がなくなり、見る意識そのものが緩慢になるのです。
先に示した①〜⑤のほかにも、私はこんな内面の症状も自覚しました。
たとえば仕事のことで議論していても、だんだん話がかみ合わなくなり、さっき聞いたばかりのことでも、自分の記憶に自信がなくて、おそるおそる聞き返すことがありました。その場では聞かなくても、あとで再確認するということもたびたびでした。
一般に、うつ病になると判断が鈍くなるとか、優柔不断になるとよく言われます。
それは失敗を恐れるあまり、極端に弱気になってすぐに決められなかったり、判断そのものができなくなるからです。変な答えを出したら、たちどころに嘲笑や非難をあびるかもしれない。その恐さから、決められなくなるのです。これが日常化すると、すっかり自信を喪失してしまいます。
《ポイント》
私の場合、気持ちがすっかり萎えてしまい、さらに①〜⑤のようなやっかいな被害妄想にとらわれました。
こうした状況は、自分の力ではどうしようもありません。やはり、まわりの助けが必要です。周囲の人が気づいてあげること、そして味方がいることをわからせてあげてください。そして、何よりも医師の診察を受けさせることです。できるだけ進行をくい止めるためにも、日頃から気にかけて、声をかけたり話を聞いてあげてください。
《医師からはこのような助言がありました》
うつ病に起因する妄想には、いくつかの典型があります。
とんでもない病気になっていると思う心気妄想。自責感が強く、取り返しのつかないことをしでかしたと思い込んでしまう罪業妄想。自分はつまらない、価値のない人間だと思い込む微小妄想。今後、食べるものにも困るようになると思い込む貧困妄想などです。悪口を言われていると思い込む根底には、自分がつまらない人間だから、悪口を言われて当然という考えがあるといえるでしょう。
被害関係の妄想をともなうものは、「妄想型うつ病」と呼ぱれたりもします。
周囲に迷惑をかけていることを自覚し、不甲斐なさを感じる
被害妄想も出はじめ、私の症状は「頑張って乗り越えられる段階」を、もう過ぎていました。自分の意思とは違う別な力が神経を制御しはじめ、何をするにも思うようにいきません。呼吸器系、発汗やホルモンの分泌などを調節し、感情を支配する自律神経をうつ病に占拠された以上、最早本人の力が及ぶところではないのです。
日々の業務は、こちらの都合に合わせてくれません。鈍くなった脳みそに、たまった書類が追い打ちをかけてきます。「こんなはずでは!」と焦り、なんとかこの山を乗り超えなけれぱと努力します。でも、思うようにはかどらない。善し悪しの基準があやしくなって判断が遅れる。ミスが目立って気は沈むばかり。
「なんとかしなければ!」という思いから、「はかどらない理由」を探しはじめます。これがまたやっかいで、仕事をうまくこなせないのは、案件の理解不足であると判断してしまいます。それを補うには、ひたすら情報を収集して分析・整理しなければ……とさらに難しく考えます。休んでいる暇などないと気合いを入れたり、あがいたり。悪循環の思考からは、よい答えなど出てくるはずもありません。
仕事への影響が目立ってくると、同僚や上司、部下たちも、不満や苛立ちを示すようになります。申し訳ない思いと不甲斐なさは、間断なくあなたの神経を痛めつけます。悪循環は加速するのです。
ここまで来ると、誰かが「大丈夫か?」と声をかけてくれるはずです。重要なのは、この瞬間。深く考えもせず、ただ「大丈夫です!」などとオウム返しをしてはいけません。がんばりと根性が売りのタイプの人は、ついそう答えてしまうかもしれませんが、「大丈夫ではありません、助けてください!」という一言があなたを救うのです。
当時、私の席の後ろに直属の上司のデスクがありました。椅子からずり落ちそうになっている私の後ろ姿を見て、その上司が「大丈夫か?」と声をかけてくれました。一日のほとんどの時間、自分の席から動かない私を奇異に感じ、見るに見かねて問いかけたのだと思います。
「大丈夫です! ご心配ありがとうございます」
私は、元気を装って答えてしまいました。「大丈夫ではありません!」と「HELPカード」を使う選択肢も知恵もなかったのです。
ここで簡単なテストです。あなたの様子を気にしている上司と話すことになりました。「仕事のはかどりはどうか?」「睡眠はとれているか?」「体調はどうか?」
「家族に心配事はないか?」「期待している。やってくれるか?」「何か要望はあるか?」これらの問いかけに、あなたはどう答えますか。
次のように答えることができたら、あなたは救われるでしょう。少なくとも、いまの悪循環から抜け出すきっかけはつかめるはずです。
①仕事のはかどりはどうか?
(あなた)若干、遅れ気味です。
(上司)原因は何だ?
(あなた)原因を一つずつ洗っているところです。急いで究明するよう指示しています。
(上司)遅滞は損失だ。報告を待っている。
(あなた)はい、承知しています。
②睡眠はとれているか?
(あなた) よく眠れません。睡眠時間は2、3時聞くらいです。
(上司) 何が理由か?
(あなた) 残業で帰宅が深夜になります。加えて仕事のストレスが……。
③体調はどうか?
(あなた) よくありません。自律神経がおかしいようです。
④家族に心記事はないか?
(あなた) 家族は大丈夫です。私の健康をずいぶん心配しているようです。
⑤期待している。やってくれるか?
(あなた) この仕事は、私には荷が重すぎます。
⑥何か要望があるか?
(あなた) いま、体調がよくありません。医師の指示に従うつもりです。体調が戻ったら、また誠心誠意会社のためにがんばりますので、とり急ぎ休息させてください。
愚直な私は、こんなふうには答えられず、はかどりを聞かれれば、遅れを叱られていると早とちりをし、睡眠や休養を尋ねられたら「みんなと同じ程度には」などと気を遺っていました。「顔色が悪いぞ」と気遺われても、マイナスの印象を与えるのを恐がって元気を装う始末。留守家族のゴタゴタなども胸にしまい、「がんばります」と弱々しくファイティングポーズを見せる、お利口さんだったのです。
弱音を吐いたが最後、なんとかバランスを保っていたものが一気に崩れていく。
その恐怖に、私はおびえていたのです。
上司への嘆願は、病気の症状とは別のつらさをともないますが、命には代えられませんよ。「いったん治療に専念すれば、またチャンスが来る」と開き直れないでいると、悲劇は深まっていくばかりです。
《ポイント》
ほうっておくと病気は進行します。そして悪化の方向に加速します。うつ病は、「急いでなんとかしろ!」とあなたを急き立てるでしょうが、もう気合いや意気込みの問題ではありません。
まずは、本人ががんばりを放棄することです。また、「医師に相談したいのだが、どうだろう?」と誰かに打ちあけることです。打ちあけられる相手がいなければ、自分で決断しましょう。午前中を休んで、病院の受付まで足を運んでください。病気の認識があるかないかは、生死を分けるポイントです。
遅れを取り戻そうと休日に仕事をする
もし、あなたが頑固なまでに正攻法で突き進むのなら、うつ病はさらに増殖を続けるでしょう。やっかいな性格に、やっかいな病気が宿り、さらに事態を深刻なほうに向かわせるのです。その結果、まわりの人にも組織にも迷惑がかかります。
うつ病患者は不眠を訴えます。眠れば力もわいてきますが、いまだ自覚せず病院にも行かずにいれば、不眠の原因さえつかめません。
なぜ眠れないのか、なぜ仕事がうまく回らないのか、なぜ考えがまとまらないのか、なぜ人の目が恐いのか、なぜ自分を責め立てるのか……一見ち止まって考えれば「何か変だ」と気づきそうなものですが、まだ自覚がなかった私は、見えない何かにおびえながら、ひたすら仕事と格闘し続けていました。この段階で通院し、薬に頼って強制的にでも睡眠を取っていればと、いまは思います。 よいがんばり家さんは、とにかく予定日までに仕上げようとします。そのためには、深夜も土日も関係なくがんばります。休息時間さえも惜しんで没頭する。その甲斐あって、期待どおりに仕事は完了し、評価をいただき、次のミッションにつなげていきます。
同じがんばり家さんでも、うまくいかない場面で自分を責めたりせずに、「原因はほかにもある」と適度に責任転嫁できる人は、仕事に押しつぶされることなく、次のチャンスもめぐってきます。よいがんばり家さんとして成功するタイプです。
うつ病を引き入れてしまうタイプの人も、同様にがんばり家さんです。あるラインまでは着実に成果を積み重ねていきます。しかし、ある時点からあっという間にうつ病患者になるのです。その線を決めるのはただ一つ、難しい状況において楽観的になれるかどうか、開き直りができるかどうか。そこが分かれ目です。
私は要領が悪いコツコツタイプ。ウサギとカメのカメでした。かけっこなどの競争が苦手な子供で、運動会は雨天中止を願ったり、仮病を装うこともありました。
理由は簡単、足が遅かったからです。
組織に入ってもそうでした。とろいタイプの私は、人が休んでいるあいだに追いつくしかなかったのです。
「今日はこれで切り上げる。明日できることは明日!」といった切り替えもできません。しかし、時間をかける割には、成果が上がらない。焦る気持ちは増すばかりで、頭はつねにレッドゾーン状態でした。「あとは天に任せる」とか「また、次があるから」と健康的にあきらめたり、気を取り直す気楽さが足りなかったのです。
私のようなタイプは、壁にぶつかっても、そのまま突っ切ろうとします。そのためかなりの無理をします。難局を乗り切ってしまわないと不安でたまらないので、ひと休みする気も起きません。
思うように進まないことを重圧に感じ、「自分のせいだ」と自責的になっても、「原因はほかにあるのでは?」などと思考の転換ができないのです。その挙げ句、つまずき転んで、まわりに迷惑をかける羽目になり、チャンスも失ってしまう。信頼関係もこじれて、後悔してもあとの祭り。踏んだり蹴ったりです。
土日の休日は、わずらわしさのすべてから自分を解き放してください。仕事の片鱗さえ思い浮かべないように。
土日に、本や資料をにらみつけて、あれやこれやと考えても、何の足しにもなりません。何かを得たような気がするだけで、実際は次の災いをまねくはずみにしかなりません。休み中にがんばれぱ次の一週間、少なくとも月曜日は乗り切れるなどと思わないでください。それは、浅はかな思いつきでしかありません。
《ポイント》
仕事はなんとかなるものです。遅れていれば「遅れているぞ」と誰かが教えてくれます。もちろん、どうしてもしなければならないものはあるでしょう。でも、それさえも、いざとなれば人が手助けしてくれます。組織とはそんなものです。
休日も休まず仕事に打ち込んでも、長い目で見れば期待したほどプラスには作用しません。逆に、がんばりすぎて体をこわせば、その損失は組織にも自分にも計り知れません。何より、疲れ切ったこころと体では、いい仕事ができるはずがありません。
医師に相談して、体の不調を訴えましょう。過度の責任感は、まわりにとっても迷惑です。とにかく病気を受け入れ、治療をはじめることです。
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