うつ病

女性の「うつ病」症例別

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女性の「うつ病」症例別

結婚後悔症

「こんなはずじゃない」と現実の結婚生活に落胆。
「結婚」は女性にとって人生の大きなターニング・ポイントです。しかし、純白のドレスに身を包み、幸せの絶頂に昇りつめた結婚式からまだ数日しかたたないうちに離婚してしまう「成田離婚」がふえているといわれています。
結婚生活に夢を抱いていても、いざ現実となると、とたんに行きづまってしまうカップルたちがふえているのです。
その背景には、何不自由ない環境で、欲しいものをすべて手に入れて育てられてきた「受け身」の若い世代の姿が浮き彫りになってきます。
離婚にまでは至らずとも、気持ちが冷めてしまっているのに結婚生活をつづけている場合は、新婚生活に喜びを見いだすことができません。
「この人ならきっと私を幸せにしてくれると信じていたのに……」と思い悩み、うつ状態に陥る心の病いを「結婚後悔症」と呼んでいます。
Aさん(24才)は2年間の交際期間を経て、2才年上の証券マンとめでたく結婚した女性です。彼との交際中はどんなに忙しくても時間をつくって、アフターファイブに映画を見たり、休暇をとってはスキーに出かけたりと、恋人時代をエンジョイしてきました。
Aさんはしっかり者で家庭的なタイプ。相手の男性は押しが強く、仕事もデキるタイプです。友人たちは「理想のカップル」とふたりを祝福しました。
しかし、結婚退職して家庭に入ったAさんは、結婚後、火が別人のように変わってしまったことに驚きました。
会社が終わるとまっすぐに帰宅していたのは新婚3ヵ月の間だけで、その時期がすぎると、毎日、残業つづきで帰宅は深夜です。酔って朝帰りになることもしばしばとなりました。日曜日は接待ゴルフでいつも留守です。Aさんが抗議をしても夫は仕事だから、しかたがない」と受け付けてくれません。
「この人ならば、きっと私を幸せにしてくれると確信していたのに……」とAさんは悩むようになります。
不満を夫にぶつけてヒステリー状態に。
しだいにAさんはふさぎ込むようになり、そのうち「結婚しなければよかった。私の人生はこんなはずではなかった」と夫に当たるようになりました。
ついには、突然、泣き叫んだり、怒りだしたりと、ヒステリーを起こすようになり、途方にくれた夫がAさんをつれて、心療内科に行ったのです。
Aさんは、結婚前に抱いていた夢と現実のギャップについていけず、うつ状態になっていました。Aさんが快方に向かうためには、原因をとり除くこと、つまり夫とすごす時間をふやすことが第一なのですが、忙しい仕事がら、なかなかそうもいきません。そこで、Aさんの症状が比較的軽かったことから、子どもをつくることをすすめました。女性の場合は出産によって価値観が変わり、そのおかげで人生に大きな意義を見いだすことも多いからです。
それから1年後、Aさんは無事に女の子を出産しました。今では見違えるようになって、たくましい母親ぶりを発揮しています。夫も子どもの誕生の喜びからか、早めに帰宅する日がふえ、夫婦のきずなを強めていったようです。
「成田離婚」と「新・成田離婚」
ハネムーン中に夫婦関係がうまくいかなくなり、帰ってきた直後に離婚してしまう現象を俗に「成田離婚」と呼んでいます。楽しいはずの新婚旅行ですが、そこでお互いのほんとうの素の状態を初めて見て「こんな人だったの
か!」と幻滅し、ケンカ別れというパターンは珍しいことではありません。
また、結婚式のあと、ハネムーン出発の前日は空港近くのホテルに泊まることが多いものですが、その一夜で破綻してしまうカップルさえいます。
結婚式は主役のふたりを大いに疲れさせるものです。そんな疲労感のために、お互いを気づかう余裕がなくなり、それまで隠していた本音が表に出やすい状態になって、ついにはホテルの部屋で大ゲンカというケースも少なくありません。結局、新婚旅行はとりやめという「新・成田離婚」もふえているようです。
●「結婚後悔症」のセルフチェック
次のうち、当てはまる項目が多い人ほど、この心の病を疑ってみる必要があります。
①結婚生活に対する理想だ局いほうだ。
②独身時代、結婚の条件の「3高」は絶対に譲れないと決めていた。
③夫はつき合っているときは理想的な男性だったが、いざ結婚してみると、まったく別人のように感じる。
④夫は家庭より仕事恋優先するタイプ。
⑤最近、グチが多くなってきた。
⑥家事で手抜きするようになってきた。
⑦八つ当たりするようになってきた。
⑧ひとりでいると涙が出てくることがある。

わが子を愛せない症候群

子どもがうっとうしいなんて、母親失格!?
Nさん(28才)は、いわゆる「授かり婚」で、2年前に女の子を出産しました。しかし、出産してから今日まで、子どもを心底から「かわいい」と思ったことがないといいます。
「寝顔を見ているときは『かわいいな』と思うんです。でも、朝起きてきて、グズグズとまとわりつかれると、イライラして顔を見るのもイヤになります。
『あっちへ行って!』と叫んでしまうんです」
ごはんをこぼすなど、なんでもないことでもカッとして、子どもをたたいたり、けったりすることもあるといいます。そんなNさんを見ても、ご主人はイヤな顔をするだけで、何も言いません。
近所で会うおほさんたちを見ると、みんなニコニコしていて、楽しそうに育児をしているように思えます。
「子どもがかわいく感じられない。子どもを愛せない自分はけ親失格なのではないか……」という自責の念と罪悪感に悩みつづけるうちに、とうとうNさんは、うつ状態に陥ってしまい、精神科の門をたたきました。
このような「わが子を愛せない症候群]は、現代病のうつといってもいいでしょう。ハイテクやコンピューターの導入で世の中はたいへん便利になりました。しかし、便利すぎ、快適すぎるゆえに人間の五感や本能(母性本能も含む)、物事を判断する能力などが衰えて、心に大きなゆがみが生じているように思えてなりません。
相談相手や話し相手をつくることが大事
本来、生物学的に考えると「親が子どもを愛さない」ということはあり得ないことです。たとえば、野生のチンパンジーの場合、母親はたとえ自分の連れ合いの雄であろうと、自分の子どもに危害を加えるものには身を呈して必死に抵抗します。しかし、動物園で飼われているチンパンジーの母親は、同様の場合でも子どもを守ろうとしないことがあるといいます。人間の場合も同じことがいえるのかもしれません。
また、いま親となっている世代は核家族で育った人が多く、おじいちゃんやおばあちゃんの世代と密に接した経験を持つ人は少なくなりました。少子化のせいもあり、自分が子どもを生むまでは、赤ちゃんと身近に接したことのない人もふえています。特に都市部では近所づき合いも少なく、育児をするにも教わる相手は育児本などのマニュアルしかないというのが実情です。
しかし、育児というものはけっしてマニュアルどおりにはいきません。子どもが10人いれば、その個性も10とおり、育て方も10とおりなのです。ところが、マニュアル世代の若い母親たちは、育児本には書いてないような予想外のことが起こると、うまく対応できずに大きなストレスを感じてしまいます。そのストレスを子どもに向けて、たたいたりしたあとわれに返り、そんな自分を責めてしまうというわけです。
孤独な育児に追い込まれているNさんのような母親が最も必要としているのは、「赤ちゃんって、こんなふうに育てればいいのよ」「あなたはよくやってるわよ。大実夫」と日常の細かな相談にのってくれるような、アドバイザー的な役割を果たす人です。
Nさんには、「ほかの母親たちと友だちになること」「マニュアルにとらわれず、親や姑、近所の先輩ママなど、現実に子育て経験のある人に育児
の悩みを相談すること」「もっと肩の力を抜いて、育児をすること」というアドバイスがされました。
Nさんは、イライラしがちな時間帯には家にこもっていず、できるだけ外に出たり、同じ年ごろの子供を持つ友人宅を訪れたりすることにしました。
育児の悩みやグチを語り合える相談相手ができたことで、以前よりも子どもをあたたかいまなざしで見ることができるようになったといいます。
わが国でも増加してきている「児童虐待」について。
わが子を愛せない症候群の母親たちは「子どもを愛したい」と願い、また「自分にも子どもを愛すことができるはずだ」とどこかで信じている部分があります。そして、紆余曲折がありながらも、その方法を探しています。
こうしたわが子を愛せない症候群と区別して考えなくてはならないのが「児童虐待」です。近年、わが国でも子どもに対する虐待が増加し、社会問題になっています。子どもを殺してしまうという最悪のニュースも珍しいことではなくなり、病んだ社会の一面をあらわしています。
かつては、殴るとか、つねるなどの身体的暴力を子どもにぶつける虐待が目立ちました。けれども、現在はその虐待が潜在化して、子供の肌話をしない「育児放棄」や言葉で子どもの心にダメージを与える心理的な暴力が横行していると専門家は指摘しています。
急増している児童虐待について、最近、厚生労働省は虐待行為の定義か拡大しました。親側のいわゆる愛のムチの論理をあきらかに排除し、子どもが苦痛を感じるかどうかを基準とする見解を打ち出しています。
Aちゃん(5才)の家庭では、父親が家族に暴力をふるうことから夫婦関係が破綻しました。夜、父親が婦ってくる時間になると、顔を合わせるのを避けるかのように母親が働きに出かけるという生活がつづいていたのです。
Aちゃんはひとりで夕食を食べ、ひとりで布団に入り、ひとりで起きて朝食も食べずに着がえ、幼稚園バスに乗るという毎日を送っていました。
このAちゃんの例は、児童虐待のうちの「ネグレクト」(保護の怠慢・拒否)と呼ばれる種類のものです。
虐待をする親たちは、自分も虐待を受けて育ったケースが少なくありません。そういう人たちは、たたいたり放置したりすること、つまり子どもを愛さないことを当たり前のように思っています。なぜなら、自分自身も親にそうされてきたからです。
このような場合は専門家のカウンセリングを受けて、「なぜ子どもを虐待するのか」という点をあらためて自身に問い直す必要があります。自分自身で虐待をやめる決意をしない限り、問題解決には至りません。また、子どもの健康や命に危険がある場合は、公の機関により、親子を一時的に引き離す場合もあります。
厚生労働省や警察庁では、児童虐待の早期発見や防止に協力し合いながらも、その対策に頭を痛めています。子どもをとりまく大人たちが目を配って、虐待から子どもを守っていくシステムをつくることが今後ともさらに必要となるでしょう。
厚生労働省が新たに児童虐待にあたるとした主な行為
・身体的虐待
殴る、ける、食事を与えない、冬に戸外に閉め出す、布団蒸しにする、一室に拘束する。
・ネグレクト
家に閉じ込める、病気になっても病院につれていかない乳幼児を家に残したままたびたび外出する、乳幼児を車に放置する、適切な食事を与えない、下着などを長期間不潔なままにする。
・心理的虐待
言葉による脅かし、無視や拒否的な態度、自尊心を傷つけるような言動、他の兄弟と著しく差別的な扱いをする。
・性的虐待
子どもへの性交、性的暴行、性器や性交を見せる、ポルノの被写体などを子どもに強要する。
●アメリカのカウンセラー制度
アメリカでは、次にあげるような2種類のカウンセラーが活躍しています。
一つは、専門知識を身につけた医療カウンセラーで、州ごとに試験などがあり、合格した人にのみ資格が与えられます。彼らは、スーパーバイザー的な役割を果たす精神科医の指導のもとで、メンタルな問題をかかえている患者たちのカウンセリングにあたります。
もう一方は、一般ボランティアとしてのカウンセラーです。こちらは、すでにリタイアしているような人生経験が豊富な人たちによって構成されています。特に資格試験や免許があるわけではなく、州によって認められれば、ふつうの人でもなることができます。
このようなカウンセラーは、「赤ちやんの育て方」など、さまざまな日常のささいな相談にのってくれる。隣のオジサン、オバサン的な役割を果たしています。
日本には、このようなシステムはありません。わが国でもアメリカのように、前者のような専門的なカウンセリングばかりでなく、後者のような気軽なカウンセリングのシステムが確立されることが切に期待されます。

身だしなみ症候群

それまでの家事の負担に職場でのストレスが加わって。
平成不況の中、賃金カットやリストラなど、サラリーマン家庭の収入の危機はつのる一方です。しかも、家のローンや子どもの教育費など、必要な生活費は増すばかりです。少しでも生活費の足しになればと、パートに出る主婦も増加しています。
しかし、家庭を切り盛りしながら仕事を持つというのはたいへんなことです。家庭でのストレスに職場での人間関係や仕事によるストレスが加われば、どんなにタフな主婦でもまいってしまいます。そのために、うつ状態に陥ってしまう主婦も少なくありません。
Fさん(43才)はひとり息子が大学に入学したのと同時に、学費の足しにと近所のスーパーにパートに出ることにしました。結婚前にOL経験があったものの、働くのは約20年ぶりのこと。
やる気満々だったFさんですが、その気持ちだけが空回りしてしまって失敗の連続だったのも無理はありません。
初めは親切にアドバイスしてくれていたパート仲間たちも、なかなか仕事を覚えないFさんにいらつきだして、しだいに遠ざかるようになりました。
失敗するたびに上司に叱責されたり、仲間に陰口をたたかれるようになったFさんは、しだいに仕事への意欲を失っていきました。そして、その影響は家庭内にもあらわれ始めたのです。
化粧や身だしなみに気をつかわなくなる。
パートに出ることで家族に迷惑をかけるのはイヤだからと朝早く起床し、今までどおりに家族の朝食や弁当をつくっていたFさんですが、け事がうまくいかなくなるのと同時に、それもだんだんルーズになってきました。家事全般に手抜きが多くなり、朝もパジャマのままで台所に立つようになってしまったのです。そのうちに、パートの仕事も休みがちになり、夫が仕事に出たあと、また寝床に入って眠ることも
一度や二度ではありませんでした。
このような状態を「身だしなみ症候群」と呼び、軽症うつ病のあらわれ方の一つです。こうなると、朝から何をするのもおっくうで、化粧や身だしなみに気をつけたり、おしゃれをする気にもなりません。パジャマ姿やノーメークでも平気になってしまうのです。
毎日がゆううつで、何もする気が起こらないのが特徴ですが、特に午前中は調子が悪く、何事にもやる気が起こりません。夕方になると体調が回復し、しだいに元気になってきます。
幸いFさんは入院治療により回復することができました。けれども、問題は、Fさんをとりまく家庭にあったのではないのかと考えさせられます。近年、女性の社会進出は当たり前のことになりました。しかし、家事や育児を主に担当するのは女性だという暗黙の
了解かまだ根強く残っています。だからこそ、Fさんは、家族に迷惑をかけないように無理をして家事をこなしていました。そんなFさんのSOSサインが「身だしなみ症候群」としてあらわれていたに違いありません。
特に共働き家庭では、家族がお互いに協力し合って、主婦ばかりに負担がかからないように気づかうことがよりたいせつになるでしょう。

専業主婦症候群

こんな無価値なことをずっとつづけていくのか……。
今日の日本では、女性は結婚するまでに仕事を経験している人がほとんどですが、結婚後あるいは出産後は家庭に入って専業主婦になるという選択をする人は依然として多いものです。
しかし、最初は主婦業に充実感を感じ、エンジョイしていても、年月がたつにつれて、しだいに心に暗雲がたちこめてくるケースがふえてきました。
専業主婦になると、食事の支度や掃除、洗濯、育児などで忙殺される毎日がつづきます。一日のほとんどの時間を家の中ですごし、出かけるといっても近くに買い物に行くぐらいで、顔を合わせる人といえば、いつも家族や近所の人たちばかりです。そんな生活がつづくうちに、すっかり社会から隔絶されたような気持ちになりかねません。
こうして「このままでは社会からとり残されてしまうのではないか」という不安感や焦燥感にさいなまれていく20〜40代の主婦がふえているのです。
特に、今までの仲間が仕事をつづけ、着実にキャリアアップしていく話を耳にしたりすると、「自分はこの先もずっと、こんな無価値なことをつづけていくのか」とむなしさを感じ、悩みはよりいっそう深くなるようです。
このような状況で、しだいに心のバランスをくずし、うつ状態に陥ってしまう女性も少なくありません。
「社会に出たい」という思いはつのるばかり。
Gさん(33才)は、はた目には恵まれた生活を送っていました。職場結婚した夫は一流企業の課長で、収入の面では申し分ありません。子どもは2才の女の子で、かわいい盛りです。
しかし、家事と育児に追われる毎日の中で、自分の自由時間はほとんど持てません。同居の姑は、風呂場に少し湯あかが残っているだけでも皮肉を言うような人柄でした。気晴らしに、夜、夫に子どもをあずけて、久しぶり
にOL時代の友人とカラオケに行ったりしたら、姑に「なんて身勝手な母親なの!」と怒られます。不満をぶちまけるにも、毎晩、帰宅の遅い夫は話し相手にもなってくれそうにありません。
そんなGさんの心強い育児仲間だった友人も、最近、子どもを保育所にあずけてパートに出るようになりました。
すごく生き生きとしている友人を見ると、自分も「外に出て働きたい」という思いはつのりますが、そんなことを口に出せる雰囲気ではありません。
Gさんはしだいに食事ものどを通らなくなり始め、不眠にも悩むようになって、うつ状態に陥っていきました。
そんな妻を見かねて、夫が精神科につれていったのです。
Gさんには念入りなカウンセリングが行われました。そして、夫に対しては、もっと妻の気持ちのよりどころになるように説得がつづけられました。
また、社会に出たいというGさんの願いを実現するために、家庭の環境をととのえるような指導もなされました。
こうして半年後に、Gさんは娘を保育所にあずけて、パートタイムに出ることになりました。「自分の仕事を人に評価してもらえる。それだけで生きがいを見つけられた気がする」とGさんは言っています。

スーパーウーマン症候群

重要なポストについている既婚の女性に多い。
「スーパーウーマン症候群」?聞いただけではカッコいいイメージの言葉です。しかし、これは実のところ、知らず知らずのうちに心身をむしばむ深刻な心の病なのです。この病気は、仕事も家事も完璧にこなさないと気がすまない完璧主義で、がんばりやの女性にみられます。特に重要なポストにつき、バリバリと仕事をこなして
いる既婚の女性に多い傾向があります。
ある有名デパートのバイヤーとして第一線で働くHさん(36才)は既婚で、小学生の娘ひとりのは親です。担当は婦人雑貨ですが、仕入れ先を積極的に開拓して、売れ行きも好調なことから、仕人れる商品の選択などはすべて彼女の裁量にまかされていました。
有能な彼女は海外に買い付けに行くほど、多忙な日々を送っていました。しかし、家に帰れば晩ごはんも必ずつくり、家事も一切手抜きをしません。夫は家事に協力的な人ですが、少々ズボラな面があり、Hさんはついつい口を出したくなって、結局のところ自分ですべてやる羽目になります。
そんなHさんの実力が試されるときがきました。デパートのリニューアルです。この時期は家にも書類や資料を持ち帰り、娘や夫が寝静まったあとも睡眠時間を削って仕事をしました。その結果、リニューアルは大成功し、彼女の評価はさらにアップしたのです。
仕事も家事も完璧にこなそうとがんばりすぎて、心身が疲労。
けれども、それから間もなく、Hさんは動務中にめまいを起こして、早退せざるを得なくなりました。「ここ数日の疲れが出たのだろう」とたかをく
くっていましたが、そのうちに不眠に悩まされるようになり、体がだるくて仕事にも集中できません。さらには下痢と便秘を繰り返したり、通勤途中に貧血を起こしたりして、ついには生理不順にもなってしまったのです。
毎日つらそうにしているHさんの様子を見かねた同僚が、彼女を婦人科につれていきました。そこで婦人科の病気ではないと診断され、心療内科に行きました。
Hさんを検査した結果、ストレスが原因の「軽症うつ病」と診断しました。典型的な「スーパーウーマン症候群」に陥っていたのです。仕事も育児も家事もすべてを100点満点にやろうとがんばったために、心も体も疲労しきっていました。それをなんとかだましながら働きつづけ、リニューアルが終わって緊張が解かれたときに、一気に疲れが出てしまったのでしょう。
彼女自身、がんばりすぎは百も承知でした。しかし「なんでも完璧にこなさなければいけない」という強迫観念から逃れられなかったのです。その気持ちの底には「だから女はダメなんだ、と言われたくない」という歯を食いしばるような思いがあったようです。
いろいろとカウンセリングをつづけるうちに、Hさんはまかせられる仕事は部下にまかせ、夫のズボラな面にも目くじらを立てないようになっていきました。こうして肩から力が抜けてきたと同時に笑顔も戻ってきて、夫からも「最近、生き生きしているね」と言われるようになったそうです。

空の巣症候群

子どもが巣立ってしまい、心のよりどころを失う。
女性が働くことが当たり前となった現代、フルタイムの仕事という形態をとらなくとも、生きがいを求めて積極的に社会参加する女性がふえています。
彼女たちはパートに出たり、カルチャーセンターなどで勉強したりしてがんばっています。そのほか、ボランティア活動に打ち込んだり、子育てが一段落したあとに再就職したりなどなど、その方法はさまざまです。
一方、専業主婦として、家庭をひたすら守りつづけている女性もまだまだ少なくありません。そのような人の夫はたいてい会社人間で、なによりも仕事を優先し、家庭のことは妻にまかせっきりにしています。夫との会話や交流もあまりないために、妻は子育てのみを生きがいとし、やがてわが子に過剰な期待と愛情を注ぐようになります。
しかし、子どもは必ず親離れをするものです。就職したり、結婚したりして自立していきます。そのときがくると、これまで子どもだけを生きがいにしてきた母親は自分だけがとり残されたように感じ、心にポッカリと穴があいたような虚無感にとらわれるようになります。そして、行き場のない孤独感を抱えて、ふさぎ込むようになり、うつ状態に陥ってしまうのです。
このように、子どもが自立したあとに、母親が心のよりどころを失う。心の病を「空の巣症候群」と呼んでいます。
少子化・高齢化社会では誰もが「空の巣」の予備軍。
Dさん(57才)は、典聖的な専業主婦です。ひとり息子は結婚し、夫は定年を迎え、これからは夫婦の「第2の人生」のスタートだと思っていました。
ところが、仕事一筋の会社人間だった夫は定年後もDさんをほったらかしにして、ゴルフやパチンコなどにうつつをぬかしています。趣味もないDさんは、家にいてもすることかありません。「これではダメだ」と思い、パートに出ることを考えましたが、「世間体が悪い」と夫に反対されて、その願いはかないませんでした。
それ以来、Dさんは生きがいを失って、何をやるにもやる気がわきません。やがて言葉や行動に異常がみられるようになって、私のクリ二ツクにつれてこられたのです。
診断結果は、心因性の軽症うつ病で、典型的な「空の巣症候群」であることがわかりました。そこで、夫と息Fさんを含めたカウンセリングを行い、どうしたらDさんに生きがいを見いだしてもらえるかを考えていきました。
その結果、夫は自分勝手な態度を改め、Dさんといっしょにできる趣味を始めることになりました。また、息子さんにもいい意味でDさんを頼りにすることを指導しました。
こうして、Dさんはしだいに元気をとり戻していったのです、最近では、カルチャーセンターに通って、新しい人生を見つけようとがんばっています。
今、わが国では少子化か進んでいるため、各家庭では子ども中心に生活が営まれ、子どもを溺愛しがちな傾向がみられています。しかも、日本は世界一の長寿国であり、子育てが終わってからも残りの人生はたっぷり用意されています。こうなると、誰もが「空の巣症候群」の予備軍であるといっても過言ではありません。
心が空っぽになる前に、子育てが終了後の人生設計を立てて、少しずつ準備をしておくことが、よりたいせつになってくるでしよう。
「空の巣症候群」のセルフチェック
次にあげるような状況や症状があったら要注意です。
①夫は仕事人間で家庭をかえりみないほうだ。
②夫婦の会話はあまりない。
③子どもだけが生きがいだ。
④息子の結婚後も世話をやいている。
⑤息子のことで嫁とトラブルを起こす。
⑥最近、息子が冷たくなってきたと感じる。
⑦家にいても、やることがない。
⑧最近、夫にやたらとグチや文句を言うようになった。
⑨外に出かける意欲がなくなってきた。
⑩家事がチグハグになってきた。
 
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