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テレビ・ラジオショッピングの現場

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テレビ・ラジオショッピングの現場

不透明な通販番組の歴史
2ページ前に挙げた、「ジャパネットたかた」に代表されるように、今テレビ通販ほど群雄割拠
多士済々の興味深いジャンルはないのではないか。今や深夜放送枠をジャックしたかのよう
な、テレビの持つ能力をシンプルかつフルに稼働させた通販番組には、ウェブの世界にも多
数のファンサイトを出没させるほど、独特の魅力に満ちている。本章では、この通販番組の
現場について見ていくことにしたい。

薬の通販は、こちら→サプリ館

 そもそもテレビショッピングとは、テレビ局の放送枠を借用、購入、提携するなどの方法
で、通販ないしは通販利用企業の商品告知を地上波、BS、CSなどの電波に乗せて、成立
する。
この中には、独立した通販番組はもちろん、純粋なCMとしての通販スポットがある。これを利用する企業には、今や西友グループの傘下である二光や、日本人形作りの通信教育会
社「東京高等人形学院」が母胎の日本文化センター、大阪に本社を持つ日本直販(親会社は
総通)、などの老舗がある。
この通販スポットでの、商品説明のスタイルは今も昔もさほど変わらない。男女二人の司
会者が、まず「高枝切りばさみ」など商品の説明をし、「○○で困っている人」の姿を映し
出す。そして、商品が現れ、その商品を実際に使う場面が挿入され、その後実際の使用者
(本物の素人?)が「助かった」旨の感想を述べる(=褒める)。そして、司会者二人が再び
現れ、申し込み電話番号のジングルヘ繋ぐ。
ともかく、この「素人の大仰なリアクション」が見たいがために、その手のCMが流れる
と、私は子供のころから固唾を呑んで見守ってしまう。ほかに実演販売人が全編出てきて、
リアクションは声だけというのもある。
長年関心を持っていたこともあって、ぜひ取材してみたく各社当たってみたのだが、いず
れも「取材を受け入れる体制にない」と断られてしまった。過去の記事を検索してみても、
結局はっきりしたことはわからずじまい。やはり、ある種、独特の世界が形成されているようだ。

テレビ通販のイメージをガラリと変えた番組
今でこそ芸能人を起用した通販番組が花盛りだが、かつてその種の番組への出演はタレン
トの格を落とすといわれ、芸能界からはむろん、視聴者からも一段二段低く見られがちだっ
た。しかし、一〇年以上前から、きちんと視聴率を稼げる通販番組として続いてきた番組が
ある。それがテレビ朝日で二〇〇三年三月いっぱいまで放映していた『マーメイド』だ。
『マーメイド』の制作元は、同じくテレビ朝日系列の『ニュースステーション』や『TVタ
ックル』など、報道や情報バラエティで知られる老舗のオフィス・トウー・ワン。『マーメ
イド』にはCMが入らないが、テレビ朝日も制作者としてクレジットされており、通販企業
のいわゆる放送枠買取り番組とは一線を画す。話を聞くため、テレビ朝日にほど近い東京・
六本木のオフィス・トウー・ワンに出向いた。取材には同社MD事業部の山本清が応じてく
れた。
開ロー番、なぜテレビショッピングを? という月並みな疑問をぶつけると、山本は「も
のを売っている番組ではないんですよ」とニヤリと笑った。
「通常のお店って、ただものを買いに行くだけの場所じゃありませんよね。そこで得る情報に意味があったりする。やっぱり情報番組なんですよ。扱う品も自己満足の境地というか、
自慢のできるもの。二分は本当の欲求から八分は自慢したいがために欲しいような、そして、
自慢した相手に『いいな、いいな、俺も欲しいな』と言わせるような商品なんです」
確かに、年間およそ四〇〇品目に及ぶ同番組の商品セレクトは、マニアックというか趣味
性が強く、商品を巡るゲストを交えたウンチクトークが番組独特の雰囲気を作り上げる。
同番組は最初、深夜情報番組のIコーナーから『快楽通信』として始まり、やがて九三年
一〇月に独立。初代司会は松尾貴史、細川ふみえ、浅草キッドの四人だった。その後、九七
年一月『ミッドナイトマーメイド』としてリニューアル。この時番組の「顔」となった風見
しんごが登場し、いつしかタイトルから「ミッドナイト」も取れ、二〇〇一年九月まで彼が
司会を務めた。その後、司会は朝岡聡(元テレビ朝日アナウンサー)と龍円愛梨(同局アナ
ウンサー)となり、二〇〇三年の放送終了後も、後番組『うる蔵』『かう蔵』(いずれもテレ
ビ朝日系)に朝岡は出演を続けている。さらに二〇〇三年春から『シナモン』(テレビ東京
系)スタートして、風見しんごと乾貴美子が司会を務めている。
『マーメイド』が面白くなってきたのは、テレビ東京の『なんでも鑑定団』よろしく、商品
の価値を様々な角度から検証するスタイルになってきてからだと思う。『モノ・マガジン』誌編集長など毎回セレクションブレーン(コメンテーター)を招いて、そこにコレクターと
して知られる、ダチョウ倶楽部の寺門ジモンが絡み、マニアックなトークを展開する。
「最近は夜中でも主婦層が起きてご覧になっているようです。以前とはだいぶアイテムが変
わったのもそのせいです」(山本)
レアもののジッポーや限定モノのG-SHOCKなど、主に男性向けの商品が紹介されて
いるような印象があったが、同番組のユーザーが「女性が四割を占める」というのは正直驚
いた。現に、ロングセラー商品の筆頭は「マルセイユ石鹸」(三〇〇年以上の歴史を持つと
いうフランス産の天然油脂製石鹸)だそうだ。これは番組スタート以来八年の間、コンスタ
ントに売れ続けているという。
この『マーメイド』が通販番組のイメージをガラリと代えたことは評価に値すると思う。
関西テレビで放送中(毎週金曜深夜)の『真夜中市場』や、ヒロミとTAKE2が司会する
フジテレビの『東京天使』(木曜深夜)など、『マーメイド』が成功しなければ出てこなかっ
たろう。『真夜中市場』などは九六年二月スタートだから、こちらもこの種の番組としては
ずいぶん長寿となる。視聴者の立場に立った司会のハイヒール・モモコの本音トークが好評
で、関西のテレビショッピングではダントツの人気だ。

そして、今では通販はゴールデンタイムの視聴者参加型バラエティ番組にもなっている。
二〇〇三年四月から始まった、テレビ東京系の『直直限定! 通販バトル』である。毎回、
全国から選りすぐった、既存の通販で扱っていない二つのグルメ名産・特産品が出品され、
生放送で視聴者からの注文を募り、その数の多いほうが「販売権」を得るという内容。その
商品は抽選の上、実際に購入でき、同番組のサイト等でその後の注文も受けつける。テレビ
のメディア特性をこれまでになく前面に出した、新たなエンターテインメントだといえよう。

すべてはインフォマーシャルの輸入から始まった

このところの通販番組の活況には、一〇年近く前から盛んに放映されるようになった海外
インフォマーシャル番組の影響が大きい。インフォマーシャルとはインフォメーションとコ
マーシャルを合わせた造語で、番組仕立てのCMといったほどの意味だ。
スタイルは、まず司会者が商品提供者か開発者(要はスポンサー)と組んで商品を紹介し、
様々なその道のプロフェッショナルを招き入れ(ないしは取材し)、いかにその商品がスグ
レモノであるかを謳わせ、最後には手に入れたくなるような気持ちにさせるという手法。ス
タジオ公開録画風だったり、ドキュメント風だったり、ディテールの違いはあるが、雰囲気は共通している。一言でいえば、なんともあざといのだが、テレビの魅力を最大限に活かし
て作られているため、つい見入ってしまうのだ。
九〇年代のはじめ、私がニューヨークにしばらく滞在した時、最も印象深かったのは、深
夜ホテルのケーブルテレビで漫然と眺めたインフオマーシャル番組『アメージング・ディス
カバリー』だった。そこで紹介されるのは一風変わった商品ばかりで、観客参加型なところ
も斬新。ケント・デリカット似の、いつもド派手なセーターを着たマイク・レビイが、やた
らと商品紹介者に茶々を入れるのも楽しく、これは日本で放映しても人気が出るだろうと思
っていたら、帰国して半年もせず、テレビ東京の『テレコンワールド』という深夜枠で吹き
替え版を放映しだしたのには笑った。
『テレコンワールド』は、米クァンタムと三井物産の合資会社、クァンタム・グローバル・
ジャパン(QGJ)と、テレビ東京全額出資のプロントによって九四年に放送開始され、現
在全国三〇局以上(民放、ケーブル、衛星放送)をカバーしている。その他の海外系インフ
オマーシャル番組には、『住商HSNダイレクト』(住友ホームショッピング)や『ショップ
ジャパン』(オークローンマーケティング)、『レスポンスTV』(プライム)、『ポシュレワー
ルド』(デジタルダイレクト)などがあり、向こうの番組をただ流しっ放しというものから、パーソナリティが番組ごと紹介するというスタイルもあったりで、いろいろ楽しめる。
三井物産と並んで住友商事が早くからこの分野に取り組んでおり、住商ホームショッピン
グは、スーパーのサミット、ドラッグストアのトモズ、カタログ通販の住商オットー、米国
アウトドアのエディーバウアー、本格イタリアンカフェバーのセガフレード・ザネッティー
などと同様、同社のダイレクトマーケティング部が運営している。商社の業務の中でも最も
消費者に馴染み深い部門といえるだろう。ヒット商品には米大リーグ、ダイヤモンドバック
スのランディ・ジョンソンも絶賛の(?)「ボディブレード」(一分間に二I○回もの反復運
動ができるという板状のエクササイズ器具)がある。
デジタルダイレクトは三菱商事の100%子会社で、九九年一二月設立と比較的後発。e
コマースやモバイルコマースに参入するエンジンとしての機能を担うべくスピンアウト(独
立)したという。通常、そうした領域にベンチャーで出ていくと、早々に力尽きてしまうケ
ースが多いが、テレビショッピングという強い「引き」で視聴者をウェブサイトに誘導し、
過去のアーカイブ(資料)化した商品を閲覧させれば……という目論見のようだ。提携サイ
トヘの情報配信にも同社は積極的で、放送枠購入も広告代理店を介在させず、テレビ局と直
接契約し、しかも支払いは売上げ歩合というのが同社のオリジナルなやり方。通販にありがちなハイリスク、ハイリターンをミドルリスク、ミドルリターンにしたと自負する。
オークローンマーケティングは大企業の後ろ盾なしで、八九年に来日したイリノイ州出身
のロバート・W・ローチが、九三年、名古屋に裸一貫で興した会社。来日当時のローチはま
だアメリカの大学院を修了したばかりの青年だったが、日本でビジネスを始める機会を窺い、
悪戦苦闘の末、取扱品である並行輸入ブランド品をテレビショッピングで紹介するチャンス
を得る。続いて手がけたドイツ製の染み抜き剤「ディディセブン」を自ら実演販売し、一気
に波に乗った。
しかし、なんといっても同分野で急成長を遂げたのが、同じく名古屋に九五年設立された
プライムだろう。二〇〇一年から翌年にかけて驚異的な売上げを見せた「アブトロニックス」
を手がけている。これは今話題のEMs(Electrical Muscle Stimulation=電気刺激による
筋肉収縮運動)というシステムを利用した器具で、腹部に巻いてスイッチを入れるだけで、
一〇分間で約六〇〇回の腹筋をしたのと同じ効果が得られるという。類似品がたくさん登場
したことでも話題になった。
このプライムは非常に合理的なアウトソーシング展開で知られる。そのテレマーケティン
グ委託企業、ツーウェイシステムについては、このページの後半で説明する。

こうした海外商品を主に抜うインフオマーシヤル企業は、日本製の商品も手がけている。
なかでもプライムが着々とそちらの方向に進んできており、「良品天国」「電脳電気店」とい
った国産品インフオマーシヤル(ホームショッピング番組と同社は称している)や、よりバ
ラエティ番組風の「特選!!テレビー番街」「実演販売テレショップ」を制作し、各局から
放送している。
その他に、「擬似ライブ」を「新演出」と表現する、九三年より放送の『痛快! 買い物
ランド』(梅宮辰夫・山田邦子などが司会)の東京テレビランド、『晴ればれハローショッピ
ング』(マッハ文朱と吉村明宏が司会)のベストワークなど、この種の番組通販は挙げたら
キリがない。

米系メディア企業流の通販「ジュピターショップチャンネル」

このような一連のインフオマーシャルの流れとはまったく別個に位置し、最近躍進目党ま
しいのがジュピターショップチャンネルやQVCといった外資系のショッピング専門チャン
ネルだ。いずれも商品調達から番組制作・送出、受注・配送まで、すべて自社運営がモット
ー。二四時間放送体制の下、自社内にコールセンターを持っているため、視聴者からの反響はリアルタイムで番組に反映される。
ジュピターショップチャンネルは住友商事グループの一員。住商と世界最大級の通信会社
米AT&Tのソフト関連グループ企業リバティメディア・インターナショナルとの折半出資
で設立されたジュピター・プログラミング(JPC)と、米国で最も長い歴史と人気を誇る
TVショッピング専門局ホーム・ショッピング・ネットワーク(HSN・全米放送局売上げ
第七位=一七九〇万ドル)が比率七対三で共同出資し、一九九六年一一月に誕生。パーフェ
クトTVI(現スカイパーフェクトTVI)を通じての放送を開始した。ケーブルのJーC
OMも同系列で、これをインフラとすると、コンテンツ提供がJPCという間柄で、ディス
カバリーやアニマルなどCSでも人気の商い無料チャンネルの多くはJPC提供である。
一方、日本では二〇〇一年四月よりオンエア開始という新参のQVCは、一九八六年に米
ペンシルベニア州に設立以来、着実に実績を仲ばし、二〇〇一年度には三大ネットワークの
一つ、NBCに次ぐ全米第二位の売上げ(三七七〇万ドル)を記録した、通販局の最大手。
九三年にイギリス、九六年にはドイツにも現地法人を設立、全世界で約一位二〇〇〇万世帯
以上の家庭に向けて、休みなく商品情報を配信している。
QVCのQは Quality=品質、Vはvalue=価値、cは Convenience=便利の略。QVCジャパンはQVCは60%、三井物産が40%出資の合弁会社で、現在、二四時間の放
送のうち一五時間が自社スタジオからの生放送である。二〇〇二年度の売上げは二三億円ほ
どとまだまだだが、来期見込みは80億円を予想している。
私は東京・中央区新川にあるジュピターショップチャンネル社本社を訪ねることにした。
いささか年期の入った縦に細長い建物は、とても放送局が入っていると感じられない。同じ
米系メディア企業でも、東京・大手町にあるブルームバーグの、いかにもハリウッド映画の
セット的な近未来っぽさで、訪れる者を面喰らわせるのとはだいぶ趣が異なる。
ただ、見かけと中味は大違い。一度中へ入れば、そこらじゆうが最新ハイテク機器で埋め
尽くされ、そのギャップに、まるでテレビのヒーローものの「敵のアジト」に迷い込んだ気
分を味わう。さらに、マーケティング部PR担当の中村久美子の案内で、フロアを上から案
内されるごとに、私の驚きは募った。
自前のコールセンターはオペレーター席二〇〇の規模で、二四時間六シフト体制である。
私の訪ねたのは午後三時ごろだったが、ほぼ満席。受注と同時に在庫データがリアルタイム
で表示、既存顧客からの電話には即時に相手のデータが映し出され、同時に商品データをモ
ニタリングしながら、オペレーターたちは質問に応じている。こうした刻一刻変化する受注状況が即時に番組に反映され、画面にも「注文集中」とか「残りあとわずか」などとクレジ
ットされる。この文字に観ている側は急き立てられるが、もちろん当てずっぽうに打たれる
わけではない。商品開発者を直接スタジオに招き、詳しい解説を施すといった手もたびたび
使う。そして、売れない商品は容赦なく下げられてしまう。
確かに同社のサービスは旧来の実演販売的なるものから最も遠いのだが、放送全体が醸し
出す、そのライブ感は香具師(やし)が作り出すそれにかなり近い。ソフィスティケーテッドされて
はいるが、とてもグルーヴィーなのだ。

テレビ制作の未来を占う通販番組

セールスプロデューサーが陣取る副調整室は、スタジオ全体を見通すことができ、まさに
宇宙戦艦ヤマトのコマンドを思わせる。
九七年三月から、ジュピターショップチャンネルは二四時間(うち週一八時間が生)放送
体制に入ったのだが、九九年七月には待望の自主放送開始のキューがここから出されたのだ。
生放送時間も、その時から週六〇時間になり、翌年には一日約一二時間に拡大。二〇〇一年
には日本初の「二四時間ライブ」放送も実施、二〇〇二年には週111時間が生放送、アウトレットショップもお台場に開店するなど目覚ましい成長ぶりだ。
ちなみに初年度、番組を導入してもらったケーブル局は一一三局、売上げも一七億円だっ
たのが、二〇〇二年度はそれぞれ二八〇局、二七六億円と飛躍的に増えた。最近は高層マン
ションの建設等で生じる電波障害などから、ケーブル受信可能な地域も格段に増えてきたの
で、「お客様!」と視聴者に向かって語りかける「キャスト」(パーソナリティを意味する同
社独特の呼称。QVCではナビゲーター)を多くの人がすでに目にしているだろう。
次いでPR担当の中村に、わずか四人のスタッフで放送を運営できるという副調整室を案
内される。中村は、そこから1人のオペレーターが操作するという、自慢の六合のロボット
カメラ・システムの動作を説明してくれるのだが、私はただただ呆然。ふと、今放送が行わ
れているコーナーに目を遣ると、自走カメラがスルスルとキャストに向かって近づいてズー
ミングしていった。
一階に下りると、スタジオはメインとサブに分かれ、ジャパネットと変わらぬ雰囲気だ。
メインスタジオの四隅には、家庭の部屋の中を思わせるような簡単なセットが組んである。
このコーナーを順番に移動することによって、スピーディで視覚的展開もある生放送が可能
になってくるのだ。そして、サブスタジオは小さめだが、商品撮影など様々な撮影に対応ができるよう白ホリゾントになっている。
さて、緊張のスタジオを後にし、中村への質問タイムだ。まず素朴な疑問。ショップチャ
ンネルのコアな視聴層は主婦だというが、なぜ二四時間放送を?
「今は朝九時から深夜二時までが生放送の時間帯ですが、夜中でも注文は入りますよ。アメ
リカではすでに二四時間生ですが、備いている女性の支持が厚いんですね、夜一〇時から夜
中の二時にかけてが最も注文が集中します。主婦であっても、ようやく落ち着いて自分の時
間が持てるのが夜ですから、日本も次第に夜更かし女性が増えてきていますね」
従来のテレビ通販とショップチャンネルの最大の違いは?
「商品買い付けから配送まで一貫管理というのもそうですが、常にリアルタイムに進行する
インタラクティブな番組作りでしょうか。台本もI切なし。キャストは商品スペックを頭に
叩き込んでいますし、そのよさもモニタリングしてわかっています。そこで、お客様がどう
いうものを望んでいるかを自分で考えるから、純粋に販売員の気持ちになってお薦めできる
んです。お客様としては一人の店員を三〇分も独占できるんですから、かなりご納得いただ
いた上でのご購入が可能なんじやないでしょうか」
なるほど。私の目から見ると、キャストのトークはマニュアル風なところもなくはないが、開局当初はアメリカンスタイルの大仰な表現を、かなり日本向けの自然なトークに変えてき
たようだ。
「商品の特性を理解し、ストーリーを持たせて商品を語れるというスキルが必要ですね。一週間に七〇〇アイテム、うち新商品は半分程度紹介しますが、残っていくのはストーリーの
ある商品ですね」
そうだろう。私もこれまで商品紹介の記事をかなりの本数書いてきたが、商品自体になん
の物語も見出せないと、それがわずか数十行であっても、ひどく苦労を強いられた。中村日
く、化粧品、健康食品、掃除用具等リピート商品は常に在庫を切らさぬようにしているが、
ジュエリー、ファッションは意図的に売り切るようにしている、という。入手の困難さがそ
の商品の価値を高めるというのは、ブランディングの基本法則だからだ。

クールなアメリカ型テレビ通販

ジュピターショップチャンネルの社長・大橋茂は東大法学部卒業後、一九七三年に住友商
事に入社。以来、一貫して繊維貿易部門を歩んできた。八四年から七年もの間、米国住商ロサンゼルス支店勤務。その後アパレル系子会社社長を経験し、九八年からマーチャンダイジング本部長兼任常務として同社に赴任、副
社長を経て二〇〇三年より同職にある。ア
メリカもMDもよく知る人物としての抜擢
だろう。
「住友商事は住商オットーなど、このとこ
ろずっとメディア関連小売ビジネスに強い
関心を持ってきましたから、J-COMに
よってケーブルの敷設がなされた。では、
コンテンツが必要だとなって、ソフトだけでない番組供給の手だてとしてショップチャンネ
ルが上手く結びついた。アメリカではすでにケーブル加入者は六〇〇〇〜七〇〇〇万世帯に
達しています。一方、目本でも一四〇〇万世帯に利用されている(※目本の総世帯数は四五
〇〇万といわれる)。ま、そのうち契約者は四〇〇万件ほどですが、ショップチャンネルの
場合、J-COMを含め一二〇〇万世帯で視聴可能なので、それが強味ですね。もちろん、
ケーブルないしはCS契約者であれば、誰しも無料で見ることができます」
視聴者の内訳だが、都市圈が圧倒的とはいえ、最近では地方からも反響は届いているという。商品の好みに関して地域差は感じられず、売れる商品は東西を問わない。それだけ情報
が行き渡るようになっているのだろう。ジュピターショップチャンネルもその一翼を担って
いるといえる。
だとすれば、商品開発の難しさは、やはり年齢や階層的なゾーニング(区分け)にあるの
か。アメリカは徹底した階層社会だから、シアーズなどの小売業は明らかに中下層寄りに焦
点を当ててきた。本国のHSNもまた比較的大衆寄りであるという。しかし、大橋は日本の
通販の積極利用層の文化レベルは、もう少し「上の層」に位置づけられると見ている。それ
がショップチャンネルの扱い商品にも現れている。フィレンツェの老舗ブランド「アベラル
ド・ベッシ」、「ダニア・オブ・ニューヨーク」のジュエリー……すごくポピュラーなわけで
はないが、本邦では知る人ぞ知るといった、これからのブランドが並び、値段もそこそこす
る。好調な商品だと、一点で二値円ほど売上げることもあるとか。
「バイヤーも市場において新鮮な、ユニークな見せ方のできる品物を探してきますね。現代
の消費者は大変訓練されている。特に高度経済成長、バブル、カタログ通販……とありとあ
らゆる購買を体験してきた、三五歳から六〇歳くらいの女性-私どものお客様-は情報
を見抜く目を持っています。目的もなくテレビを眺めていても、ハンターのように反応しますよ、いい商品にはね(笑)」
「経験」に裏打ちされた選択眼で、瞬間的に良品かそうでないかを比較しうる、その「眼」
を侮ってはいけない。その厳しい眼に叶う商品を、MD担当者は日夜探し求めている。

スタートが遅かったラジオ通販

ショッピング専門チヤンネルが放送メディアにおける最先端の傾向だとすれば、昔ながら
の手法としてラジオショッピングがある。これが非常に堅調という話は関係者から聞かされ
ていた。とりわけニッポン放送(東京)の関連会社、ニッポン放送プロジェクトの最近の勢
いは注目に値する、と。それはひとえに局が通販の可能性を重要視し、同社と丁人のパーソ
ナリティのコラボレーションに多くを託した成果だという。私はそんな噂を耳にして、まず
はニッポン放送プロジェクト、メディア開発部副部長の新井勉とコンタクトを取った。
新井によれば、同社の通販はラジオ番組の1コーナーとして一九七六年にスタートした。
日本では文化放送(東京)が七三年に最初に通販の口火を切ったというが、ラジオというメ
ディアの生活感を考えれば、意外に取り組みが遅かった気もする。
「ラジオの場合、デイタイムとヤングタイム(夜)ではリスナーは違います。昼は主婦や自営業者、ドライバーが多く、工場などでは時計代わりに流されていたりといった聴かれ方を
している。そうした(労働の傍らで聴かれるという)媒体特性を持つので、パーソナリティ
とリスナーの間に強い信頼感があります」(新井)
それがゆえに、商品を宣伝することが両者の信頼関係を壊しかねない、という危惧があっ
たのかもしれない。

生活に密着した商品のセレクトー「ニッポン放送」

新井は「傑出して情報紹介が上手い」ために、通販パーソナリティとしても信頼を勝ち得
た、件の桜庭亮平アナウンサーの名を挙げる。
「ラジオは確かにつけっぱなしで『ながら』で聴く人が多いから、繰り返し効果は認められ
ます。しかし、同じ商品でも午前と午後では相手が違うということを、桜庭はよく承知して
いますね」
放送は、いずれも月〜金で桜庭の持ち番組『朝刊フジ』の中で午前五時半頃の『おはよう
リビング』、さらに午前一〇時二〇分頃と午後二時半頃の『ハローリビング』、とそれぞれ約
五〜六分ずつ通販コーナーを担当。以前はそれぞれ別々のパーソナリティで別々の商品を扱っていたのを、二〇〇二年九月三〇日から方向性の転換を図り、午前・午後の『ハローリビ
ング』は「一日一商品」となった。
紹介商品の選択はアイテムごとに担当が分かれ、決定会議に出る前に各自何点かに絞り込
んで持ち込む。そして、商品が決まると構成会議を開き、そこで取引先も交えて、伝え方に
関しIからやり合うのだという。
「ライターも加わりますが、最後には商品担当者が原稿を考えます。それを桜庭が見て意見
を述べる。時には真っ赤に添削され、元原稿とはまるで変わってしまうこともあります。そ
れだけこだわってるんです」(新井)
ラジオの性質上、生活に密着した商品が主に扱われる。お茶、海苔、梅干などのほかに、
数の子松前漬け、湯ノ谷切り餅といった季節商品も「前買っておいしかった」とリピーター
がついて、よく売れるという。
ほかに例を挙げると、パシュミナセーター、カシミヤマフラーの二本組や羽毛布団などち
ょっとした贅沢品もかなりの出血価格(それぞれ一万円前後)で提供したため、約二〇〇〇
件売れた。また、新年初売の恒例になっているのが、〇・二カラットのダイヤプチペンダン
ト五〇〇〇円で、これなどは約七五〇〇件も売れたという。『ハローリビング』では、売れ筋の中から毎月「月間MVP」が選ばれるのだが、変わったところでは、電動歯ブラシやイ
ヤースコープ(ライト付きの耳掻き)などもかなり売れた。
ラジオ通販の場合、商品は必ずスタジオに持っていくという。ラーメンなら作って畷る音
を、海苔ならおにぎりにしてパリッという響きを伝える。臨場感が命だからだ。
「新入生にランドセルというテーマなら、小一になる子供を連れていきます。『バウリンガ
ル』なら当然、犬もいっしょ。ちなみにその時の犬は放送中まったく吠えず、最後になって
ようやくワンと。それが『もうイヤだ』と訳されて、なんて冗談みたいオチがつきましたが
(笑)」(新井)
ライブだからこそのハプニングを、「物語」に変える技術。それを持っているのが桜庭の
ようだ。

互いの信頼が「見えないものを買う勇気」を支える

日を置いて、私は午後の放送を控えた、桜庭亮平アナに話を聞くことができた。
毎朝二時半に起きて三時半には局に入るという桜庭の持ち番組は、午前四時半から六時ま
でのいわゆる朝ワイド。その放送がすむと、翌日の打ち合わせの後、わずかな仮眠を取って、午前八時半から一一時まで放送の『うえやなぎまさひこのサプライズー』内の通販コーナー
に備える。そして、午後一時からは『テリー伊藤 のってけラジオ』内の通販コーナーに登
場。午後三時半に同番組が終わっても、そのまま帰宅できることは少なく、今度は通販関連
の打ち合わせや会議が続くという。
「毎晩、床に就くのはやはり夜の一二時くらいですね。はっきりいって、体はもうボロボロ
(笑)。アナウンサー歴は二〇年になりますが、これまでどちらかというと、電リクやバラエ
ティが多くて、そうした番組の中にも、必ずといっていいほど通販はコーナーとしては存在
していましたから、通算六年くらいはやっているでしょうか。そこでもまずまず売れてた実
績はあったんですが、二〇〇二年から本格的に任されてみて、おかげさまで数か月で前年比
二五〇%という実績を出すことができました」
しかし、曲がりなりにもアナウンサー、「リビングパーソナリティ」として通販を受け持
つばかりでなく、「人様の番組の中でもやるというのは考えられない」ことだった。
「その番組のテンションもあるし、それを乱したくありませんからね。ぼくだったら歓迎し
ませんよ」
出しゃばりたくはなかったが、社長からも「せんだみつおだったら自己宣伝だと喜んで引き受けるはず」と諭され(?)、思い切って取り組んでみることにしたのだという。
「通販で見えないものを買う勇気を支えるのはリスナーの信頼ですよね。自分の経験に素直
に耳を傾けてくれているのは他のコーナーと変わらない。放送がどれくらい伝わっているか
のバロメーターになるってことでは、むしろ、売上げという目に見える形で現れますから、
聴取率より励みになるかもしれない(笑)。返品率がすごく低いんですよ。それもラジオ通
販の特徴かな。テレビと違って、パーソナリティが高いところにいないでしょ。仲間意識が
強いんだな。話す言葉も、すっと耳に入るようなわかりやすさを意識しますね。『掃除機の
吸引力は三五〇ワットのハイパワー』と言われても、パッとわからない。だから『吸い込み
仕事率』はどれくらいと説明したり、マッサージチェアがどう気持ちよいか表現するのに
『プロの指圧師が人間椅子になったみたい』と喩えてみたり・:・:」
商品企画にも関わる桜庭は「朝刊フジ・オリジナル東京醤油ラーメン」を作った時も、自
ら食べ歩きをしたり、事前にメーカーに試作品を送ってもらって試食したという。元々ラー
メン好きで、自分の舌で確認しなければ気がすまなかったようだ。
「将来は、家や部屋をリフォームするテレビのバラエティ番組のように、生活全般のトータ
ルコーディネート的なことが通販でも可能ではないか、と思ってます」桜庭は二〇〇二年春に『朝刊フジ』が始まる前、それまで担当していた番組が終了した後
のいわゆる充電期間として、産経新聞に一年間出向し、実際に夕刊フジの記者を経験したと
いう。
「芸能、経済、政治、一通り回りました。『どうせお客さん』という意識は避けようという
ことで、けっこう仕事をきっちり振られました。二〇〇一年の9・11テロの時は、早朝呼び
出され、AP配信だったか英語の紙三枚渡され、いきなり『記事にしろ』ですよ。大学時代
にもないくらい苦労して、辞書片手に訳しました(笑)」
そうした経験が担当番組だけでなく、通販での口上にも生きているのではないだろうか。
ラジオもテレビもデフレ不況以降、広告収入は減る一方で、メディアとして新たな自己検証
を迫られた結果、通販の捉え直しが起きているともいえるのだ。

ロングセラー
1946年に完成、翌年8月に販売を開始以来、50年にわたっていま
だに高い人気を誇るロングセラー、中山武快癒器。実にユニークな形
状で、さしずめ占代魚の目玉といったところ(写真下)。現在では、プラステイック製の台座の上に、クッションが効いた金属の球が用途(首
筋・肩の付け根用か背・腰用)によって2つないしは4つ並び、その突
起でグリグリと背中を刺激する、脊椎矯正器だ。
「この球と球の間隔はね、どれもぴったし6ミリ」
と当年(2003年)とって84歳の開発者、中山式産業社長の中山武
欧は快癒器を手に語る。
「人間、体の大小は様々だけど、骨になれば変わらんから。頚椎や腰
椎にちょうどよい幅は6センチと決まってるの」
はじめは銀座や上野の松坂屋など、デパートに直接持ち込んでは
販路を開拓したが、'49年には国内特許を得て、'51年頃に本格的に
通販に進出。昭和30年代を通じ、主に大衆向け雑誌を告知媒体に
して成功しているご58年にはDM方式によるメールオーダー部門を新
設、'61年には厚生(現厚生労働)省より医療用具認可を得てもいる。
中山は、通販に本格進出した当時を振り返る。「リーダーズ・ダイジェ
ストの方式に倣って、支払法を先払いから後払いに変えたら3倍の売
れ行きを示したな。2%くらい不払いの客も出たけど、みんな真面目で
意外だった。2%なら無視しても、まったく問題ない数字だからね」
通算で650万台ほど売れ
たという、通販における歴史
的な商品を、肩の凝る原稿
書きの合間に私も愛用中。
通販の歴史にグリグリと想
いを馳せるのである。

通販を支えるシステム

運送、受注、印刷、データ管理……
「通販は装置産業である」とは、多くの取材先から聞かされた台詞である。つまり、多くの
企業が店舗を持たないため、自らヘッドクォーター(司令部)化し、経費や時間効率追求の
ために、積極的にアウトソーシングを利用しているというのだ。
まず第一に、運送に関しては、これは間違いなく専門業者の力を借りねばならない。また
受注やフルフィルメント業務も、分担ないし、完全委託することでスリムな経営を維持して
いるところが多い。カタログなら製紙および印刷会社との大がかりな取引は不可欠だし、特
にネットに重点を置いた通販でなくとも、顧客のデータ管理も大規模になれば、情報処理サ
ービス会社のサポートを受けねばならない。
ここではそうした通販企業のサポーターをいくつか紹介し、ユーザーと企業を直結するかに見える通販が、直接・間接にかかわらず、いかに多くの人たちの力から成り立っているか
を明らかにしていきたい。
中堅テレマーケティング企業-「ツーウェイシステム」
大阪市西区に本社を持つツーウェイシステム(以下ツーウェイ)は中堅のテレマーケティ
ング企業だ。テレビショッピングのプライム(九五年設立、第4章参照)を筆頭に、多数の
通信販売を受託し、通信販売業界の成長とともに拡大した。
テレマーケティングとは、文字通り、電話を主として、ファクス、インターネットなどの
情報通信技術を、計画的・組織的に利用した新たな販売技法のこと。日本国内の主なテレマ
ーケティング業者には、現在はCSKグループの一員で東証一部上場企業の最大手ベルシス
テム24や、NTT系のNTTソルコ(東日本)およびNTTマーケティングアクト(西日本)、
三井物産が親会社のもしもしホットライン、CSKと似た背景を持つシステム会社のトラン
スコスモス、ベネッセのインハウス(内部)・コールセンターが独立したテレマーケティン
グジャパンなどがある。が、これらはバックに大資本が控えており、ツーウェイのような独
立系は少数派だ。これまで私は、このテレマーケティングがなんであるか、よく理解しないまま、自身がエ
ンドユーザーとしてその恩恵を被ってきた・つまりヽ家電やパソコン機器のサポートセンタ
‐などに電話を入れる際、企業の内部にかかっているものだと錯覚していたのだ。おそらく、
多くの一般消費者もそうではないだろうか。しかし、この大リストラ時代、あらゆる製品が
ハイテク化し、マニュアルも分厚くなる丁万、この重要なサポート業務に対し、その要員を
内部で養成するとなれば手間も暇もかかる。そこで、前記のようなアウトソーサー(代行業
者)が台頭してきたのだ。
こうした業務を、プログラムの企画から運営・管理まで一括して請け負う会社のことを、
英語ではテレマーケティング・サービス・エージェンシーと総称する。日本ではまだまだ業
界自体が新しく、最古参のベルシステム24すら一九八二年の設立だ。ツーウェイも、テレマ
ーケティングに参入したのは八七年である。
「基礎は1人企業などに回線を用意し、オフィス応対をする秘書代行で築いたんです。最初
はわずか10回線、オペレーターも10人ほどでした」
と語るのは、同社の業務推進部統括部長の渡具知直也だ。もっとも、二五歳で取締役の渡
具知は創業当時、まだ小学生。東京に出張で来ていた渡具知とは、滞在先のホテルで顔を合わせたが、その若さには驚いた。
今ではツーウェイの回線数も数百となり、登録オペレーター数も一五〇〇人(そのうち常
時就業者が六〇〇人)、コールセンターも大阪に七センター、東京に2センター、鳥取に1
センター。三六五日二四時間体制を誇っている。渡具知は九九年頃からのアルバイトスタッ
フで、オペレーター出身。
「『フロムA』で見つけたんです。いったん入った大学を中退し、大学入学前の目標を再度
目指したいと大学受験を決め、取りあえずバイトでも、とやってみるとこれが面白くて……」
すぐにアルバイトリーダーになり、SV(スーパーバイザー=現場管理者)に昇格。二〇
〇〇年四月に社員となり、翌二〇〇一年にセンター長に就任。二〇〇二年六月、役員に就任
している。渡具知自身の出世ぶりが、同社社長・千田敏雄氏の人材起用の最たる事例である。
年齢・性別にかかわりなく、実績を残す者が昇進をしていくという考えを貫いている。
「それぞれのテレマ会社にカラーがあると思います。受託している業種も様々ですし、通販
と一括りに言っても、媒体もカタログ、DM、チラシ、新聞、テレショップ……インバウン
ド、アウトバウンド専門や、カスタマーサポートを得意とするところなどいろいろです。ク
ライアントの規模が大きいと、一つのセンターがほぽその社の業務をまるごと受けるということもあります。うちはどちらかというと、『深く踏み込んだ関係』でのおつき合い、人間
的な応対がウリでしょうね・都心と比較して、割と安価で優秀な人材を確保できる沖縄にセ
ンターを出す同業者も多く、人材の取り合いになってるようです。各自治体の誘致も盛んで、
当社も二〇〇四年四月に三五〇席以上のコールセンターを鳥取に本稼働させます。実験操業
として、二〇〇三年六月より一部稼働しています」

電話は「不夜城」に繋がる

さて、テレマーケティングほどカタカナが飛び交う業種も珍しい。渡具知の話はやはり実
地にコールセンターを見せてもらったところで、紹介するのがいいだろう。私はあらためて、
本社内にあるセンターを訪ねることにした。
ツーウェイは、大阪市西区の歩いて一分とかからない距離の二つのビルに、都合七フロア
分(本社が入るビルにコールセンターが四つ、別のビルにCRMコンタクトセンターが三つ)
を持つ。訪れた時はすでに夜だったが、いずれも盛んに稼働していた。
「コールセンターは電話主体。コンタクトのほうはウェブ、ファクス、葉書を含む総合対応
をしています。メールをベーシックにし、電話応対を後に、あるいはファクス記入漏れにコールバックをしたり、などです。cRMとはcs(Customer Satisfaction=顧客満足)を
超えた Customer Relationship Managementの略です。かつてこうしたコールセンターは
コストセンターと捉えられていましたが、今ではむしろ、よい応対をすればライフタイムバ
リュー(一生を通じた価値のある)・プロフイット(利益)を生むプロフイットセンターと
捉えられています」
渡良知はセンターをガラス越しに案内しながら語る。
「大きな仕事はどうしたって大手に流れる。コンペでなかなか勝てないんです。社長の千田
(敏雄)のログセは『岸いところに手の
届くサービスをせんか』。うちらのよう
な中堅は誠意のあるサービスに力点を置
いていくしかない」
通販の利用申し込み手段としては、相
変わらず電話がトップで61・1%。郵
便がそれに次ぎ、ネットはまだ約21%
にすぎない。やはり、電話の応対次第で生きも死にもする販売なのだ。センター内には商品の実物が置かれるコーナーもあり、オペ
レーターの一人が応対中に駆け寄って、卓上掃除機を手に取ってなにやら確認している。商
品への問い合わせの電話が入ったのだろう。こうしたきめ細やかな対応が契約に即結びつく。
「コスト意識を明確に持ってもらいたいので、各センターで独立採算性を採っています。セ
ンター長はみな若く、二〇代から三〇そこそこ。配置人員のプログラミングがカギを握りま
す。ただテレショップの場合、コール数は季節や天気、曜日、休日前か否かなど様々な要素
が絡み合って変動します。ゴールデンタイムの裏番組のパワー如何で投入人員を考慮したり
ということもあります」
サーバールームという精密機器が収容されるスペースにはPBX(Private Branch
Exchange=構内電話交換機)という、電話局で使われている局内交換機に対応する、外線
と内線、内線同士を交換する装置や、ACD(Automatic Can Distributor=着信呼自動分
配装置)という、着信したコールを自動的に管理、分配する装置などがついている。これら
を使えば、次々に入る着信コールを、その時点で手の空いている、あるいは次の応答を最も
長時間待っているオペレーターに均等に回したり、また各オペレーターの「スキルに基づい
たルーティング(分配)」をすることも可能だ。ただし、初期投資には最低数千万円はかかるという。
「人間関係以外は全部見られる。トイレ休憩のランキングも出ますよ。コール応対は早くて
も遅くてもダメ。長すぎれば非能率、短すぎれば″やっつけ″ということになります」
これらでオペレーターの勤務ぶりも掌握できる、と渡具知は言う。
「大きな媒体が投下される場合、放送終了後一〇分間にとんでもない数のお客様からコール
が集中することもある。一瞬に集中するコールをいかに効率よく、取り漏れ(放棄呼)なく
応対できるのかを考えて人員配置をします」
それにもIVR(lnteractive voice Responce=自動音声応答)などの最新機器が効果を
発揮する。

トークは伝染する

「お客様それぞれのスピード、要求に合わせたトークの展開が必要です。各オペレーターが、
いかにコールストラテジー(電話戦略)を持っているかが問われるんです」
「一人前になるのに各人に対し数十万円の投資をしている」と、渡具知は同社自慢のトレー
ニングセンターを見せてくれる。講習室にはプラズマディスプレイが二台も置かれる。ここでまず、ビデオを見て手順を学び、端末研修を積む。その後、テストをクリアし、トレーナ
ーつきっきりのロールプレイングを経て、応対がOKとなれば晴れて「デビュー」となる。
新人の研修期間は七〇時間(業務により異なる)だが、そこで「一〇〇点」を取るまではオ
ペレーションには入れない。
「トークは伝染するもの。だから、応対の優れたスタッフの間に新人を配置し、自然と学ば
せるんです」
オペレーターの就労体制についていうと、オフィスアワー(朝から夕刻まで)が基本で、
コアの三〇〜四〇人にプラスアルファをコール数の予測に基づいて配置する。カタログ通販
の場合は一定雇用だが、テレショップの場合は直前で媒体が決まることが多い。その際、臨
時スタッフの雇用はフリーダイヤルで随時募集し、登録課で調整する。もちろん、臨時採用
といえども前記の訓練を受ける。
「ES(Employee Satisfaction=従業員満足度)なくして、CSはありません。じっと同
じ端末の前から助けませんし、クレーマーなどにかなり厳しい言葉を投げつけられたり、精
神的にも大変な仕事なので、他業種と比較すると定着率は高いとはいえません。女性が多い
職場ですしね。勤務時間管理をキッチリさせるため減点制を導入するなど、自己責任をはっきりさせる反面、誕生日有給休暇制度やバースディカードを贈るなど、働きやすい環境作り
には配慮しています」
と弱冠二五歳のこの青年重役は淀みなく語る。オペレーターのうちの何人かは、かつての
彼の同僚。彼らは依然アルバイトという立場で働いている。
「芝居やバンド活動を優先したり、司法浪人中だったり……夢を追っている、いろんなコが
いますよ。時にはライブに招待されて出かけたり。そういう時は昔に戻りますね」
フリーターを一概に悪くいう向きもあるが、終身雇用制が崩壊する中で、こうして緩やか
に仕事をしていくスタンスがさらに一般的になっていくのかもしれない。渡具知にはたまた
まビジネスの才があって、出世の道も開けたが、格段の気負いも感じられず、実に自然体な
のが印象的だった。

宅急便が築いた通販インフラー「ヤマト運輸」

最近、流通に関する話題の中で、「ロジスティックス」という言葉がよく聞かれる。物流
と混同されやすいが、辞書を引くと「1.記号論理学 2.兵略術」(『新英和中辞典』研究
社)という訳語が載っている。この場合は、もちろん後者の意だ。兵端というのは軍事用語で、戦闘の最前線への物資の補給や後方支援のことを指す。戦争
において、輸送路をきちんと確保しない、あるいは整備を怠ったまま戦線拡大を急げば、前
線部隊の孤立化を招き、やがては敗北へと繋がる。戦争の場合と同様、流通の世界でも今、
ロジスティックスが重要視されているのだ。
これまで物流は、輸送・配送および(店頭での欠品を防ぐ在庫確保を目的とした)保管が
主であると捉えられていた。しかし、コンビニや外食産業に代表されるチェーン・ストアが、
鮮度重視、店頭在庫圧縮を強く意識した物流の効率化を図り始めたころから、単に物流(配
送)センターあるいは倉庫から店舗までの配達スピードだけでなく、店舗での荷降ろしや陳
列作業、商品の改廃のスピードまでもが問題視されるようになった。そのため、これまでの
「物流」概念を「ロジスティックス」として再考する必要に迫られ、現在の運送会社は複合
的なサービスを展開するようになった。そして今、通販こそが、その機能を最大限に援用し、
成り立っている産業だといえるのだ。
例えば、代引き(商品の配送時に料金と引き換え)という仕組み一つ取っても、配送員に
これを委託するわけだし、時間や場所指定配達など、通販のニーズから確立したサービスも
数多い。私は業界最大手のヤマト運輸に、この協力体制の成立に関して話を聞くことにした。広報部広報課長の大庭正久の段取りで、宅急便部宅急便課課長の本間耕司と、セールスプロ
モーション部法人営業課の村瀬雅彦が協力してくれた。
紛れもない宅配便の創始者であるヤマトは、一九七六年にそのサービスを開始している。
七三年のオイルショックまでは、同社の業務は他の運送会社同様、BtoBが主体であっ
たが、その後のインフレと景気低迷の中、同社二代目社長の小倉昌男はそれまで郵政(と今
は死語と化した、駅留めが基本のチッキ・国鉄小荷物=八二年に廃止)の領分だったCto
C(消費者闇取引)に目をつけたのだった。小倉が「メニューを牛丼に絞り込んだら、利益
が増えた」という吉野家の新聞記事を読んで、宅配に特化する着想を得た話は有名だ。
「初めはなかなか苦戦したんですが、取次店を経由して(荷を)簡便に出せるようになって
から広まり、翌日配送も可能になった五〜六年後には続々と競合も参入してきました」(本間)
やがて、八六年のコレクトサービスの開始によって、BtoC(企業対消費者)の通販
代引きモデルが確立された。
「CtoCネットワークに乗せたいという時代ニーズがあったんですね。ついでに決済も
やって欲しいと。八八年スタートのクール宅急便で産直モデルが生まれ、生鮮品を消費者に
直接届けられるようになった。これがエポックメイキングでした」(本間)

だが、その当時、青森では免許がなく、福井には支社がないなど、全国配送網の整備には
時間もかかった。また、規制緩和に到るまでの旧運輸省・郵政省の圧力も相当なものがあっ
た(そのあたりは小倉の自叙伝『経営はロマンだ!・ 私の履歴書』〔日経ビジネス人文庫〕
に詳しい)が、八四年度には取扱個数一倍五〇〇〇万個強となり、ついに郵便小包を追い越
した。

中小荷主を支援するシステム

「この二〇年の仕事は、人を入れ、店を作り、決められた面積にまず荷物を増やすというこ
とでした。しかし、これからの仕事は、お客様にお荷物をお渡しする一瞬までサービスの内
容を高めていくこと。今はクロネコカードという、品質保証書をお荷物と同時にお渡しし、
[着」のお客様のために、ストレスを減らすシステム整備に全力を上げています。通販と我
が社は相身互い。通販の成長がなければ、ここまで宅急便も拡まらなかったのでは」(本間)
[着】の客の評価が高まれば、通販会社の信用も高まる。二〇〇二年一〇月には配達員(S
D=セールス・ドライバー)全員に携帯電話を所有させ、不在配達の際の対応をいっそう機敏にした。法人営業課の村瀬によれば、コンビニが集配と同時に着荷ポイントとなるシステムの導入
も試みられているが、いずれも試験的段階だ。
「直近では、am/pmジャパンさんが二〇〇三年三月中旬からテストを開始され(取材は
同月上旬)、当社も参加しています」
ヤマトは、九七年にクロネコメール便を開始、カタログ配送などに重用されるようになり、
翌年には「時間帯お届け」サービス、二〇〇一年にはクレジットカードで事前決済ができる
クロネコ@ペイメントと、通販荷主へのサポート体制を着々整えてきた。現在、コレクトサ
ービス契約は一三万社に及ぶ。集金の有無にかかわらず、締切後五日で決済し、指定銀行に
振り込むという「すべて立て替え払い」は、中小や個人レベルの荷主に大変有利なシステム
だ。カード決済は一か月、コンビニ決済でも締めは週末まで待たねばならない(なお、一般
的には代金回収手段として代引きは約三〇%の割合。クレジットやコンビニ利用も増えてい
るが、まだ郵便振替が多い)。
最大のライバル佐川急便は、配達時のカード決済に二〇〇〇年から踏み切ったが、これは
データ送信に携帯電話を利用するため、プライバシー保守に若干の問題があるといわれる。
また、「カード会社は小口の取引先には手数料も高く取って、それがハードルになる」(本間)とも。それをヤマト(正確には関連会社のヤマトコレクトサービス)が代行することで、八
種類のカードが使え、分割手数料も一律商品金額の五%というのが「@ペイメント」のサー
ビスだ。
二〇〇二年には、届け先に事前に着荷の日時を知らせ、都合が悪ければ、事前変更が可能
な「宅急便メール通知サービス」を導入。そして、同年一〇月からは、返品ニーズに合わせ
た「宅急便引取サービス」を開始した。これは契約荷主の顧客が、荷主に返品商品引き取り
を依頼すれば、指定日時に回収に赴く「CtoB物流」だ。
ヤマトはまた「クロネコ探検隊」という、宅急便を利用して商品を取り寄せられ、また、
コレクトサービスで支払可能なeショップばかりを集めた検索エンジンサイトも一九九八年
から運営している。四万人を超える同社のSDが積極的に取引先を開拓し、二〇〇三年六月
一日現在、登録店舗数は一万二〇二店を数える。他のショッピングモールサイトと違い、出
店費用を一切徴収しない。つまり、それ自体をビジネスとするのではなく、小口の取引先が
通販に乗り出しやすいようにする支援ツールとしているところが出色である。自店のホーム
ページがなくても、出店を希望する店には関連会社のヤマトシステム開発が別途対応している。

このように同社は、中小荷主に有利な様々な付加サービスを用意し、小倉が標榜した小口
取引を大きく束ねて、いっそうの掘り下げを怠らない。
「二〇〇二年度連結ペースで約九七二〇億円の当社の売上げのうち、七〇%は宅急便が稼ぎ
出しています。宅急便扱い個数のうちコレクトサービス利用は五・九%で、売上高は一九〇
億円に上ります」(大庭)
これはJADMAの掌握する通販業界の総売上高(10ページ参照)と同社のシェアを照ら
し合わせてみても、さらに巨大な市場像を浮かび上がらせる。つまり、そこから漏れる零細
通販企業群の存在こそが、今後の通販業界のカギといえるのだ。私はそこに強い関心を抱き、
ある中小通販の事情に詳しい人物への接触を試みた。

通販コンサルタントー「若松事務所」

ここまで通販が注目されるようになると、当然、そのコンサルティングを生業とする人々
が現れる。私が見たところ、通販がeビジネスとリンクするようになって、それはまさに玉
石混淆の様相を呈している。そんな中、中小企業寄りの活動スタンスで、豊富な経験を重ね
てきたのが東京・飯田橋の若松事務所代表・若松透だ。北海道に生まれ、一九七三年に明星大学理工学部卒業後、日本事務サービスに入社した若
松は、日本初の通販専用パッケージソフト「通信販売管理ソフト」を開発した後、同社の通
販営業部長として主に中小企業の通販指導をしてきた。同ソフトは八年間でヱハ○社を超え
る販売実績を上げ、業界ナンバーーシェアを獲得。本業の傍ら、各通販セミナーの講師も務
め、二〇〇一年四月には独立している。同年六月からは日本流通産業新聞に「通販コンサル
タント・地方旅日記」を約一年間達哉。それが翌年九月に『こだわり通販道』として上梓さ
れた。また、二〇〇三年二月からは同紙に「中小通販クリニック」を連載中。中小の相談役
(七年間で一五〇社)という旗幟をより鮮明にしている。
「もちろん大手のご相談も受けますよ。ことに現状の単品通販の隆盛を受けて、参入希望も
後を絶たないんですが、多くの大手の営業は頭の切り替えができていない。店舗と同じよう
にすぐ反応があると思っている。マスマーケティングから離れられないんです。そして、妙
に合理主義だから、思ったように業績が上がらないと、すぐ撤退となってしまう」
若松もそんな大企業のコンサルティングをいくつか引き受け、苦い思いをしたという。大
手はまず「別法人を立て、責任の所在を明確にすべき」が若松の持論だ。そして、社格に即
した先行投資は覚悟せよ、とも。若松の舌鋒は鋭い。「大企業はすなわち大信用を背景に持つ。しかし百貨店なら、少し前まで通販事業部はまず
左遷先。返り咲きを夢みて、ただただ大過なくその日を送ることしか考えられない責任者の
下では、否応なく士気も下がるでしょう。もったいない話です」
その反面、「お金のない人たち」は志も高く、意欲があると中小の挑戦を評価し、時には
手弁当でも、地方企業の応援に駆けつける。今、新規参入の中小企業が猛烈な勢いで市場を
拡大しており、「まさに下克上の世界」の通販業界を、野武士のスタンスで渡り歩いている
といえるだろうか。
もっとも、中小企業にとっても、通販が先行投資型の事業であることに変わりはない。ま
ず一円の売上げもない時点で商品開発費用がかかり、パンフレットやカタログ、請求書や封
筒類の印刷費、場所代や電話新設費、システム導入など受注体制作りにもまた金がかかる。
人員がいなければ採用しての人件費も要する。
「時間的には超特急で三〜四か月、普通半年から一年の準備期間が必要。費用も五〇〇万円
くらいは見積もらないと。軌道に乗せたら、今度は販促費を考えなきや。新聞、雑誌、テレ
ビ、ラジオ等のマス広告宣伝費やカタログ同送、商品同梱、サンプル費用等やたらとかかる」
もちろん、商売のスケールによって匙加減は変わるが、本格的な通販の形を取るとそこまでの話になる。端的にいえば、若松の仕事は、T人の目利きとして、それらの絵図を描くこ
とだ。法的問題を含めた目安を立て、各費用を算出、見込み客の獲得、リスト業者の利用な
どを考える。また、立ち上げだけでなくテコ入れにおいても、休眠顧客の優良顧客転換法な
ど創案し、一部あるいは全作業を代行指揮する。
ちなみに、JADMAの二〇〇二年度の調査によると、通販企業は販促費に平均で年間売
上げの約二五%をかけているという結果が出ており、規模が小さい程その比率は高い。つま
り、年間売上げ一億円を目指す企業は、二五〇〇万円以上を販促に費やしていることになる。
「黒字に到るまでには、少なくとも三年を要すると考えねばならない。母体を別に持ってい
るなら、そこからの利益で費用を捻出すればいいが、全額借入金で立ち上げてまで、実施す
るにはリスクが大きすぎる。資金繰りには十分注意が必要です。ことに二〇〇〇年ごろから
ブレイクした健康食品ブーム以来、すなわち、ぼくがコンサルタントとして独立してから現
在に至るまで、相談案件のほとんどは健康食品といっていいくらい、この分野は(新規参入
で)ひしめきあっているけど、『通販がいいと聞く。健康食品が売れているようだが、なに
を売ればいい?』といったレベルの相談者も多くて……」
と若松は、いささかうんざりといった様子で苦笑してみせる。若松によれば、健康食品は一般食品と違い新規開発商品が次々と出現し、かつ寿命が短い特徴がある。つねに商品開発
の努力が必要なジャンルといえ、それだけ通販向きなのだ。それも重いカタログ主体の総合
通販より、DMやネット中心で小回りの利く、中小の業者のほうが向いている。その際、
「顧客」を「個客」として扱い、悩み解消の会話から入るなど、専門的知識を十分に生かし
たアドバイス・セールスをする必要がある。また、「売りたい」気持ちを前面に出さず、ま
ず健康ノウハウを売りにすべきだ。
「でも、最後に問われるのは商品ですよ。健康食品は顧客の健康上の悩みに付け込んだ事業
であってはならないし、健康食品通販事業の成功、失敗は資本の大小ではなく、『本物の商
品』『嘘を言わない会社』がキーワードだって、ぼくは考えている」

通販を媒介に通販を拡める「ペン」

取材の最後に若松は、
「通販サポーターとしてはこんな仕事をしてる人たちもいるよ」
と、一枚の名刺をコピーして渡してくれた。
若松にもらったコピーは、ペンという京都の会社の社長の名刺だった。金座光、在日コリアンニ世だ。取材にはまず同社の営業部マネジメント課課長の森本祥司が応じ、同社の概要
を説明してくれた。
ペンは同送サービスという、通販の支流的産物とでもいうべき事業を主に抜う広告代理店
で、一九九一年創業。同送には九八年、中堅総合のジェイ・オー・ディー(本社・愛知)と
提携する形で乗り出し、その後も、月々の出荷数一万件、カタログ部数三万から五万部とい
う中小通販企業を中心に提携を進めた。現在は四〇社の「受け皿」を持ち、一〇〇〇万人以
上に向けてのサービスも可能となっている。
同送は顧客リストの有効理由を目的に、それまでは自前のリストを持つ通販企業自身が手
がけるケースが多かったが、ペンは専門エージェントとしての機敏性を謳い、中小のクライ
アントをつかんで、ここ数年非常に伸びてきている(二〇〇二年度の年商約一五位円)。
たとえば、有名な通販企業A社(ホスト)が顧客にカタログなどを送る際に、それほど知
名度のない通販企業B社(ゲスト)のDMや販促物を、何がしかの金額を受け取って同封す
るとする。この場合、B社の商品がA社の商品とバッティングしなければ、A社にとっては
副収入に繋がると同時に、商品ラインナップの間接的な増強をも意味する。またB社側にと
っても、既に築き上げられたA社の「威を借りる」ことができるのだから、絶大な費用対効果が望めるというわけだ。
「広告主とタイアップ企業双方が、資金・人材面で勅けないところをサポートするわけです。
ただ、両社の思惑が食いあって、本業に影響が出ないよう、その相性が問われますね。一梱
包に入れる同送は多くて五社分までです」
と語る物腰柔らかなマネジメント課の森本は、いわば通販で成功した企業とこれから通販
に乗り出していこうとする企業の仲を取り持つ媒酌人。同社のサービスの特徴は、バラエテ
ィに富んだ商品ジャンルに分かれた各社と提携していることだ。
旅行、健康食品、美容関連品、産直品、貴金属、美術品等々の通販企業から、広告主は自
社にとって最も有効な連携を選べる。メニューはカタログ同封を含めて、商品同梱(商品の
中に宣伝物)、単独DM(タイアップ会社の所有リストの宛名でDM送付)、電子メール広告
(DM同様/この場合アドレス)の四つを揃え、それらを組み合わせた展開も当然あり得る。
いずれも大元の通販会社の「紹介挨拶文」が必ず入るので、顧客は不信感を持つことなくク
ライアントの宣伝物を受け入れ、高い受注率が期待できるという仕組みだ。
例えば、リップやネイルを中心としたあるメイク化粧品会社が、幼児用品を抜うペンのタ
イアップ企業二社の商品送付に乗じて、サンプル付きカタログを同梱で配布した場合などは、子育てに追われつつもお洒落心を嬬らす母親たちの強い関心を引いて、レスポンス率からい
えば、二・〇〜二・一%という予想以上の商い効果を得た。
このマッチングの妙によって、両者の相乗効果を生み出すのがペンの仕事だ。その組織は
クライアントを探して企画提案するセールス部隊と、通販企業とリレーションシップを取り
プログラムを考えるマネジメント部隊に大きく分かれる。森本は「商品の違いだけでなく、
表現の違いも問われる」という。
「クライアント企業の信頼性がどの程度のものかを、まず、われわれが見極めて、媒体企業
に審査してもらいます。その地域だけでロコミで評判になっているような、ホンマもんの品
物が埋もれてることも多いんです。せやから、皆さん方にぜひ拡めたい。うちらも一所懸命
になりますわ」

薄利多売の新たな情報産業

商品・媒体・ツール(表現)でレスポンスが変わるように、手間賃もそれぞれの規模で当
然変わる(大体一部につき三〇〜五〇円)が、通常最低二〜三万のロットからのところを、
リスクの少ない件数(最低一〇〇〇件)から試験的に始めることができ、受注状況を見て徐々に件数を増やせる点も、ペンの長所だろう。
そこでホスト通販会社が得る分は、一件当たり10〜25円、利用件数や会社が多くなれ
ば、塵も積もればでかなりの収入となる。こうしたダイレクトレスポンス広告の雛型を、社
長の金座光は九八年のアメリカ商工会議を見聞して得たという。
「いうたら、通販いうビジネスはいい意味でも悪い意味でも洗脳ですわな。消費を喚起する
のにどれだけの苦労が要るか……。商売する以上ボランティアやないんやから商業主義は大
切。せやけども、道徳=品質とのバランスが取れてへん、悪しき商業主義が横行しとんのん
が、この通販業界ってとこなんやね。私らがお手伝いしたとこに、なにか間違いがあったら、
責任問われるし、被害も被る……怖いわあ」
豪放屁落な気性、大柄で野太い声の金はズバリ核心を衝く。ずいぶん大胆なことを言うが、
言葉に濁りがなく清々しい。
「去年(二〇〇二年)のダイエット茶騒動ね。あれ明らかに毒やとわかっても、嘘、騙し、
ハッタリで売り抜けようとする連中がおる。せいぜい、そういった暗部を、正しい利用の仕
方を訴えることで、マスコミのみなさんにもえぐり出して欲しなあ」
高校卒業後、西陣の帯屋で働いたという、叩き上げの京商人の金は、自らに植え付けられた「商道」に忠実でありたいという。
「確かに通販は利益率も高いけど、その分宣伝して、嘘、嘔し、ハッタリになっていく。本
物のいい商品を作りながら潰れてく会社が日本全国どれくらいあるか。苦しさの中で本質が
問われるんや。金儲け主義は混ぜもんを作る。テストマーケティングはクライアントのため
でもあるけど、うちらにとっても自己防衛の意味があるんですわ。韓国でも嘘が多く、通販
は期待ほど浸透してへんしな」
在日社会の成功者である金の友人は、「北」「南」両方同じくらい。両者の蝶番のように、
腹蔵なくつき合ってきた経験が、その見事なビジネス感覚に結びついている。
「カタログハウスさん、ええ会社やな。一〇〇点とはいわんけど、そやかて九〇点は付くな。
あそこもいうたら『信者』に支持されてはる。囲い込み、ええ意味での洗脳が上手やね」
金は取材の最後に、集めているという、母国・韓国に伝わる族譜を見せてくれた。日本国
内での南北朝鮮統一のための運動や、韓国では、両親を亡くし貧しい祖父母に引き取られた
交通遺児育英のチャリティにも情熱を燃やしている。スケールの大きな金の唱える「商道」
が、まず通販において復権することを祈らずにはおれない。通販は彼のような「縁の下の力
持ち」に支えられている。

欧米型通販のパイオニア
「リーダーズ・ダイジェスト」(Reader's Digest)はいわずと知れたア
メリカの誇る総合月刊誌。 1922年の創刊以来読み継がれ、アメリカで
は現在1250万部発行、世界60か国に19の言語の海外版があり、そ
れを含めると3000万部超、世界最大部数の雑誌だ。ハンディーなA5
サイズの同誌は、新刊書や雑誌記事の抜粋と要約、そしてオリジナル
の記事から構成される。発行元のリーダーズ・ダイジェスト・アソシエー
ションは同誌の他に、書籍、レコード、オーディオ装置などをクラプ組織
を通じて販売。米国で6000万家庭、海外で5000万家庭の情報が含
まれるデータベースを所有しているといわれ、現在ではタイム・ワーナ
ー社のダイレクト・マーケティング部門のひとつとなっている。日本語版
は、終戦直後の'46年から発行されてきたが、'86年2月号をもって廃刊
となった。
この日本版「リーダイ」(と略称された)を出版していた日本リーダ
ーズ・ダイジェスト社(以下、日本RD社)も本家に倣い、'49〜'50年ごろ
から、「リーダイ」誌上において通信販売を実践している。そこで「先
払いから後払い」という、画期的な料金システムを敢行。やがて、リピ
ート読者獲得のため、本誌自体も店頭販売から会員制の定期購読
システムに移行し、通信販売が未発達な日本社会に衝撃を与えた。
'52年にはレコード通販も開始し、その後の通販レコードブームの火付
け役となった。
このように同社は続々と、アメリカ仕込みのダイレクト・マーケティング
のノウハウを日本に浸透させていく。雑誌の商品広告を見て購入し
た消費者に対して、新しい商品情報を次々に送り届けるDMを日本
に初めて持ち込んだのも同社である。
次第に日本版独自の編集方針を打ち出すようになった「リーダイ」
誌だが、100%翻訳誌のイメージを払拭できず、一部の根強い読者
層のみに支えられる状況が続いた後、最新米文化紹介誌としての
役割を終えることになる。だが、雑誌メディアがそのまま通販媒体とな
る手法は、その後のカタログ時代を先取りしており、日本独自のカタロ
グの雑誌化に結びついていくのである。
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