うつ病

うつ病を長引かせないために

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うつ病を長引かせないために

うつ病の経過

経過

最近「うつ病はこころの風邪だ」というフレーズをよく聞きます。うつ病の治りがいいことを強調しているようです。なぜ治りがよいことを強調するかというと、うつ病はきちんと治療すればよくなるのに、うつ病であることを否定したり、あるいは実際にはうつ病の患者さんがうつ病と診断されず、専門家の治療を受けられないために長期間苦しむことも多いのです。患者さんは、「自分がうつ病かもしれない」と思ったら早めに専門医に受診することが大切です。
それでは、専門家の治療を受けたうつ病の患者さんはどのような経過をたどるのでしょうか。
最近の研究でうつ病の経過はかなり細かいところまで明らかになっています。うつ病のなかには、うつ状態だけが出現する単極性うつ病(以下単極性)と噪状態も出現する双極性うつ病(以下双極性)があります。数としては圧倒的に単極性が多いのです。
発症年齢は、単極性では30〜40歳が多く、双極性はこれより約十年早く20〜30歳です。発病の時期が早いほど、将来再発する確率が高いことがわかっています。
うつ病は三〜六か月で治ることが一般的です。うつ病がよくなると、まずイライラ感、次いで不安感・憂うつ感が軽快します。その後おっくう感や根気のなさなどが軽快しますが、治るまでに最も時間がかかるのは「生きがいを感じられるようになる」ことです。つまり、焦燥感、抑うつ気分など比較的他人に訴えることの多い症状は治療効果を得やすいのですが、意欲や行動の抑制などは回復までに時間がかかることが多く、「生きがい」など個人の自己実現にかかわる問題は回復までに最も時間がかかります。
うつ病は、治療しているにもかかわらず、長引くこともまれではありません。この場合、イライラ感や抑うつ気分は軽快していることが多いのですが、意欲や行動は病気になる前に比べて十分回復していないことが多いようです。日本では一年以上うつ病が治りきらないときに「遷延化]という言葉を使います。外国では二年以上うつ病がつづくとき遷延しているというようです。
適切な治療を受けているにもかかわらず遷延化するのは、うつ病のなかで一五〜二〇%といわれています。うつ病が長引くと二通りの特色が目立ちます。一つのタイプは、不安症状、体のことを気にする(心気症状)、子供がえりなどが目立ち、一見、神経症(ノイローゼ)のように見えるタイプです。もう一つのタイプはブっつ症状のなかでも「やる気が出ない」「動くのがおっくう」など意欲や行動面にブレーキがかかりつづけるタイプです。アメリカのNIMHという施設の研究では、うつ病431例中35例ではうつ病が五年以上つづきますが、その後5年間に5%ずつ改善するとされています。したがって、あきらめないで気長に治療することが大切です。
気分変調症という抑うつ症状は、軽いが慢性化するものです。二十歳前後(高校から大学生といった方がぴんとくるかもしれません)で発症しますが、半数以上の人は抑うつ症状が十年以上つづきます。抑うつ症状の平均持続間間は15、6年といわれ、途中で症状が重くなりうつ病の診断基準を満たすことがあります。
重要なことは、「うつ病は治りやすいが再発しやすい」病気であるということです。うつ病が治って
から一年後に28%、五年後に68%、10年後に75%が再発したという報告があります。また、一回うつ病になると、そのうちの50%が再発し、二回なった人の再発率は七五%で、三回目以降では90%以上となります。ちなみに、双極性はさらに再発率が高く、一回目の人でも再発率は74%といわれています。
うつ病の再発を繰り返しているうちに蹄状態になる患者さんがいます。結果的にはこの人はこの時点で双極性だったとわかるわけです。単極性から双極性への移行は三回以内の病相で70%に起こり、83%で六回以内に起こるという報告もあります。つまり、はじめは軽症のうつ病でも何年も経つうちに蹄状態が出現する可能性があるのです。将来噪状態が起こりやすいケーースの特色として、家族に(噪)うつ病の人がいる、人を自分の考えに従わそうという傾向がある、うつ病が治っているときでも活動的で情緒不安定、白昼夢がある、うつ病によくなるか重症うつ病にかかったことがある、産後にうつ病になった、うつ病のときにほとんど動かなくなる(制止症状)、症状の日内変動がある、などがあげられています。
うつ病の患者さんのなかには、医療機関に何年もかかっている人もいます。しばしば長くかかっている患者さんから、「うつ病というのは治らない病気ですか」と聞かれることがあります。このようなとき筆者は、「もちろん治らない病気ではありません」と答え、「うつ病は腰痛と似た側面がある」と
話します。腰痛もギックリ腰を一回やっただけですんでしまう人と、何回もぶり返して「腰痛もち」になってしまう人がいます。それでも腰痛を「不治の
病」と思う人は少ないのではないでしょうか。うつ病も同じことで、.回のうつ病相は比較的治りやすいものです。何度も再発してうつ痛が持病のようにな
る人もいますが、けっして不治の病ではありません。
以上のことから、うつ病は基本的には高血圧や糖尿病と同じく慢性疾患であり、病気を治すことと同時に病気とのつき合い方に大きなウエートがかかる病気といえるでしょう。この点では、「うつ病は心の風邪」というフレーズは軽すぎて誤解を招く可能性があるといえるでしょう。
長い間うつ病にかかると、その人の感情や行動面に変化が起こる可能性も指摘されています。うつ病にかかる前よりも活気がなく、自信がもてず消極的で、心に余裕がなくなるというものです。
昔は、「うつ病は治る病気」という考え方が今よりも主流でした。今はむしろ遷延化する例が強調されています。このため、「抗うつ薬がうつ病の遷延化に関係しているのではないか」という疑いが指摘されています。しかし、現時点では抗うつ薬がうつ病を遷延化させるという証拠はみつかっていません。しかし、抗うつ薬の不適切な使用、例えば不十分な量を漫然と投与したり、早々と薬を飲むのを止めることがうつ病の遷延化を招いている可能性は否定できません。実際に、医療機関では、少しよくなると服薬を止め、また具合が悪くなる患者さんをよくみかけます。うつ病の患者さんは、うつ病の症状を治すだけでなく、今後再発しにくくなることを目標に腰を据えて病気や病院とかかわることが大切なのです。

自殺

誰かがうつ病になったとき、医療関係者を含めた周りの人々が最も気をつけなければいけないのが自殺です。わが国で年間に自殺する人は1998年から3万人を超えています。これは交通事故の三倍にもなります。特に最近では、全自殺者の約四分の一が65歳以上の高齢者で占められています。
昔から、「自殺者の三分の一が精神病の症状をもち、そのさらに3分の1がうつ病である」という有名な俗説がありました。最近の研究では、自殺した人をよく知っている家族や知人と面接し、自殺者
の生前の状態を精神医学的に診断した結果、対象の70〜80%が精神疾患に罹患しており、その
60〜70%がうつ病であるという調査もあります。
読者のみなさんは、うつ病の患者さんは「死にたい」という気持ちをもっていること、医者にかかったときに死なない約束をすると比較的自殺しなくなることを思い出されたでしょうか。このように、うつ病の患者さんにとって自殺は身近な行為なのです。うつ病患者の自殺率は約15%とされ、一般人の35、6倍もの危険率があります。また、精神科の対象となる病気のなかで最も自殺率が高いのはうつ病だといわれています。
うつ病のなかでも特に自殺しやすい状態があります。このような状態があると自殺しやすいという要因を危険因子といいます。うつ病患者の自殺危険因子は数多くあります。
過去に自殺しようとした人の10%は将来自殺行動を繰り返すといわれています。これは、一般人口の数百倍です。「狂言自殺」という言葉がありますが、患者さんが自殺を図る前に他人に電話やメーうつ病を長引かせないためにルをして知らせたりします。同じことが何度も重なると周囲も疲れてしまい、はじめのころより驚かなくなります。このようなケースでも一般人に比べてかなり自殺の危険が高いことを知っておく必要があります。
また、家族に自殺歴のあるケースでも自殺の危険は高いのです。
家族が自殺していると自殺に対する心理的抵抗が少なくなるからだという説があります。
自殺者の男女比は男性に多い傾向があります。逆に、自殺未遂者は女性に多いのです。しかし、専門職の女性は自殺率が高く、男性に近くなります。
うつ病の症状のなかにも自殺と関連深いものがあります。不安、焦りや妄想があると自殺の危険が
高くなります。また、高齢者で身体症状が気になってしかたないという場合も自殺の危険が高くなります。高齢者では執拗に便秘を訴えるケーースが多いのですが、周囲の人が「たかが便秘くらい」と思って対応していると不幸な結果となることがあります。注意が必要です。
うつ病の患者さんでも、アルコールの量が目立って増えたり、薬を飲みすぎてしまう場合も自殺の危険率は高くなります。このような情報を患者さんは病院に行っても医者に話さないことがあるので、
周囲の人が医者と連絡をとり情報を伝えることが大切です。
患者さんのなかでも、未婚、配偶者との離別、近親者の死を最近経験した人などは自殺の危険が高まります。うつ病の患者さんにとって、周囲のサポートがいかに大切かを物語るデータです。最近は老人の丁人暮らしも高齢者の自殺率も増加傾向にあり、今後国をあげて取り組むべき課題といえるでしょう。
うつ病者の自殺の危険因子
A.自殺のテーマ選択と自殺の徴候の特徴
1.患者本人の自殺企図と自殺暗示の既往
2.家族あるいは周囲に自殺があること(暗示効果)
3.直接的あるいは間接的な自殺の脅し
4.自殺の実行あるいは準備に間する具体的な考えの表出
5.自殺の主題選択と不穏が先行した後の「無気味な落ちつき」
6.自己抹殺や破滅および破局の夢
B.症状や症状群像にみられる特徴
1.激しい不安焦燥感
2.長期にわたる睡眠障害
3.情動と攻撃性のうっ槙
4.うつ病相の初期と回復期、混合状態
5.生物学的な危機の年代(思春期、妊娠期、産御期、更年期)
6.重度の罪責感と不全感
7.不治の疾患の存在あるいは心気妄想
8.アルコール症および嗜癖
C.環境状態
1.小児期の家庭崩壊(broken home)
2.人間的な接触の失敗あるいは喪失
3.職業上および経済上の困難
4.課題や人生の目標が達成できない
5.宗教的な絆の喪失

うつ病をこじらせるファクター

長引く要因

うつ病は治りやすいが再発しやすい病気であることを示しました。ひとたびうつ病にかかると、15〜20%は長引き、約半数はよくなっても後に再発するのです。
では、なぜ同じうつ病にかかっても治りのよい人と長引く人がいるのでしょうか。長引くタイプのうつ病ははじめから長引くとわかるのでしょうか。それとも治療しなかったり、受けた治療が悪いから長引くのでしょうか。この問題に対して現時点では明確な解答は出ていません。それでも、うつ病が長引く要因に関してはさまざまなことが明らかになっています。
病気になる前の性格が子供ぽかったり、依存的、自己中心的な場合は遷延化しやすいといわれています。また、性格とも関係するかもしれませんが、うつ病になる前から社会適応が悪い場合はうつ病も長引きやすいといわれています。うつ病だけでなく、他の精神医学的な病気に同時にかかっている場合はうつ病も長引きやすいことがわかっています。実際には、アルコール依存、過食症などの摂食障害、人格障害などがうつ病と合併することが多いようです。
うつ病遅延化の要因
1.病前性格
未熟、依存的、自己中心的、自信欠如、衝動性、白岡的
2.他の精神疾患との合併
アルコール依存症
摂食障害
3.身体疾患との合併
4.症状
・心気症状
・ヒステリー症状
5.治療経過
・早すぎる職場復帰
・心理的葛藤の深追い
・共感性の乏しい内向的な治療者
6.配偶者
・支配的・干渉的、積極的な妻
・優しすぎる夫
7.職場環境

治りと治療法との関係

うつ病の治りは治療法にも影響を受けます。
まず大切なのは、休養をとることです。自分がうつ病であることを職場に知らせる必要があります。仕事をしているうちにうつ状態がどんどん悪化し、結局は余計に仕事を休むということも実際にはよく見受けられます。主治医に相談し、協力してもらい休暇をとれるようにするのも一つの方法です。うつ病を治療するには十分量の抗うつ薬が必要ですが、副作用や抗うつ薬に対する悪いイメージから、不十分な量しか抗うつ薬を飲まないうちに病院に来なくなる場合があります。「精神科医はたくさん薬を出すだけで話を問かない」という誤解もまだ広く信じられているようです。逆に不十分な薬しか出さない治療が問題なのです。現実には、専門家にかからないまま不十分な量の抗うつ薬を服用したまま遷延化している患者さんも少なくないのではないかと懸念されます。
同じく遷延化する要因として、うつ病のときに患者さんが話す葛藤に治療者が首を突っ込みすぎて、かえって逆効果になることが指摘されています。(特に急性期の)うつ病の治療では、患者さんの性格について深く考えさせることや環境の悪さを病気の原因と決めつけてはなりません。患者さんがうつ状態のときに悩んでいたことでも、健康になると本人の問題解決能力も回復して、自然に解決することが少なくありません。カウンセリングは病気が治ってから行うのが鉄則です。「カウンセリング」「癒し」などは確かに響きのよい言葉に聞こえます。「精神科医が話を聞いてくれない」という患者さんの訴えをよく聞くと、「うつになった原因を自分の生い立ちから振り返って発見しなければ根本的に解決しないではないか。それなのに医者は当たり前のことしかいわず、すぐ薬を出す。自分は根本的に治したいんだ」ということがよくあります。うつ病は脳の神経伝達物質のバランスが崩れる病気ですから、話をしただけでは過去のどんなに重大な発見をしても解決につながらないのです。アメリカで開発された認知療法や対人関係療法も、過去にさかのぼってその人の生い立ちと病気を結びつけるという作業は行っていません。
医者と患者の相性もうつ病の経過に関係するとの説があります。内気で共感性に乏しい医者にかかると治りが悪く、世話好きで共感性の豊かな医者にかかると治りがよいという説もあります。

配偶者との関係

配偶者の問題も重要です。一般にうつ病の患者さんは、外づらがよい反面、自分が心を許した人には批判的で要求水準が高いようです。配偶者が患者さんの甘えや攻撃性にどれほど耐えられ、うまく処理できるかというのが大きな要因です。男性がうつ病になったときには、積極的で支配的な妻は夫の甘えを受容しにくいものです。逆に、女性がうつ病になったときには、優しすぎる夫は奏の攻撃に耐えられないことがあります。
うつ病が長引く患者の夫婦関係について西園昌久先生は次のように特色をまとめています。第1に、表面的には夫婦の間に緊張、対立、憎悪などのネガティブな感情は目立ちません。第2に、患者は、夫であれ妻であれ、心のうちでは相手の立場を認めながらも、心のふれあいが体験できずに失望しています。しかし、その失望を口にすることを避けています。第3に、配偶者は理知的で自分の意見をはっきりもっている人が多いようです。そして社会でも家庭でも自分の役割をきちんと果たしているようです。第4に、診察場面では、患者さんか配偶者のどちらかが一方的に意見を述べることが多いのです。これに対してもう一方の配偶者は、ほとんど意見をいわず、「仕方ない」とあきらめている、すなわち自分の感情を必要以上に抑制していることが多いのです。第5に、配偶者にかたくなさ・プライドの高さが目立ちます。また、物事を全体からみるよりも部分的にみる傾向も強いようです。第6に、遂に患者さんは安心できる相手や状況では、しばしば傲慢・貪欲・強情になることがあります。
うつ病の人の病前性格は、内心ひとりよがりで信頼できる人に全面的に寄りかかり、受け入れられようとする傾向があるのです。
うつ病の素質をもつ人の「相手に寄りかかり、受け入れられようとする傾向」が、配偶者に受け入れられた場合は、その人はうつ病にならずに、仕事や任務に安心して専念するでしょう。しかし、この「相手に寄りかかる傾向」が受け入れられないとその人は警戒的になり、配偶者に心を許さなくなりやすいのです。この結果、配偶者もかたくなになり、後天的にうちとけにくい性格となりやすいのです。
このような①患者さんの「相手に寄りかかろうとする」一方で「支えを見失いやすい」性格と、②配偶者の本来「理知的」で「自分の考えに執着する」傾向に加えて、③配偶者が患者さんとのかかわりで身につけた防衛的態度が組み合わさってうつ病が治りにくくなるのです。配偶者のいる患者さんは、同行してもらい、こうした説明を受けてもらって、日常から注意することを強く薦めます。

カズオさんとシノブさんの場合

では、前のページで登場したカズオさんやシノブさんの治療はうまくいくでしょうか、それともこじらせそうでしょうか。うつ病をこじらせるファクターという観点から考えてみましょう。
カズオさんは、うつ病になってからまだあまり時間が経っていません。そのせいか本人は自分がうつ病であることを認めたくない気持ちがあるようです。誰でも自分がうつ病だと認めたくないものです。しかし、カズオさんの場合はそれだけでなく、うつ病の症状である自責感、すなわち「病気というより自分がだらしないからこんなことになるんだ」と自分を責めることに影響を受けているのです。
この結果、治療中断という現時点では最悪の展開となっています。家族や会社の人もカズオさんの状態をどうとらえていいかわからずに困惑しています。しかし、幸いなことに本人は眠れないことに対して薬を飲みたい気持ちはあるようです。そこで、家族といっしょに受診し、医者から病気の説明を
受ければ、家族は治療に協力してくれる可能性が高いと思われます。また、仕事をしても手につかない状態なので、すぐに休養する必要があります。診断書を提出して、会社に協力してもらう必要があるでしょう、カズオさんの場合は、ほかにうつ病をこじらせるファクターがなさそうなので、家族と会社の理解と協力を得られれば、治療に専念できそうです、ただ、会社の状況は深刻でストレスフルなので、早めに復職すると病状が再燃する危険が高いと予測できます。
シノブさんも自分がうつ病と認めたくない気持ちが強いようです。また、友達もシノブさんがうつ病だとは思っていないため、「薬に頼るな」など「健康人」にする話をしています。患者さんが自分がうつ病であることを認めたくないと、得てして医者の話よりも友達の話を重視してしまうのです。これだけでも治療五かなりマイナスなのですが、さらに悪いことに、患者さんが治療に不信感をもつと薬を飲んだあとに副作用が出やすいのです。副作用は、薬の副作用そのもののこともありますが、飲んだ薬の薬理作用と関連のない場合も多いのです。シノブさんの場合は、服薬直後に息が苦しくなったということですが、元来心臓や肺の病気もなかったことから、抗うつ薬の直接の作用ではなかった可能性も十分考えられます。
シノブさんは、家庭環境もやや複雑です。夫は短気で考えていることがすぐ顔に出てしまいます。
夫は、「守りに回ると弱いタイプ」といえるでしょう。これではシノブさんが「具合が悪い」といいにくい状況です。娘は、シノブさんが具合が悪いのは自分のせいと思う反面、自分への攻撃だと無意識に感じているようです。このため、具合の悪いシノブさんをみていると罪悪感を感じ、そこから開放されようとして「後ろ向きに考えてもしかたない」と逆にシノブさんを攻撃してしまうのです。
知らず知らずのうちに家庭内でこのような人間関係となっているため、家族は「薬よりもカウンセリングを」といいやすいのでしょう。具合の悪い状況で他の治療に先駆けて、娘の結婚の事情やそのときの家族の意地を張った感情を明らかにすれば、うつ病はこじれてしまうでしょう。家族にうつ病のことを知ってもらい、シノブさんが心身を休めて治療に専念できる状態をつくることがポイントとなるでしょう。未来を予測するうえで、夫や娘の「懐の深さ」が大きく作用すると思われます。

自分がうつ病になったらどうしたらいいか

うつ病は誰にでも起こりうる病気です。読者のみなさんは、もし自分がうつ病になったらどうするでしょう。今まであまり考えてこなかった人が多いのではないでしょうか。
一番大切なのは、自分の体の不調に気づくことです。うつ病の初期には、体がだるかったり、疲れたり、胃の具合が悪かったり、食欲や性欲が落ちるなど体の不調が現れます。これだけでは、体の病気の可能性がありますから、かかりつけのお医者さんにみてもらい、体の病気があるかどうかを調べることが大切です。
通常、うつ病では体の不調ばかりでなく、精神・行動面でも変化が起こります。眠れなくなったり、寝ても目が覚めやすくなります。うっとうしい気分がつづき、何かをするのがおっくうになることがあります。自分の置かれた状況を悲観したり、すんだことをくよくよと後悔します。今まで興味があったことにも興味がなくなります。しかも、これらの症状は、眠っても回復せず、朝は特に憂うつな気分におそわれます。このように文章にすると、うつ病はわりとはっきりした症状があり、病気になった本人にとってわかりやすいのではないかと、みなさんは思われるのではないでしょうか。しかし、実際にはこの程度では病院にはかからないか、かかっても内科で体の検査をするだけの人はかなり多いといわれています。
うつ病の人が具合が悪くてもなかなか病院にいかない理由はいくつか考えられます。一つは、うつ病の患者さんのなかには、自分の体の変化に気づきにくい人がいるという説です。このような人は、何かに没頭する傾向があります。仕事や家事を一生懸命にしていると、多少具合が悪くても自分のライフスタイルを変えません。こうしたタイプの人はうつ病に限らず、病気になっても発見が遅れやすいのです。
もう一つは、体の具合が悪くても「自分が病気だ」とか「自分はうつ病である」という事実を認めたがらない人です。前のページに登場するカズオさんは、自分の不調に気がついていましたが、会社にいけなくなるまで自分の行動を変えませんでした。病院へいっても、「自分がうつ病である」という事実を受け入れられずに、通院を止めてしまいました。丁万、シノブさんも自分がうつ病であることを認められず、「自分は体の病気だ」という考えにしがみついています。この結果、服薬も通院も止めてしまいました。カズオさんやシノブさんと同じように、「自分はうつ病だ」と何となくわかっていながらこの事実を
認められない人がたくさんいます。この結果、「気持ちの問題」「体の病気」「自律神経失調症」「更年期障害」、さらに最近では「男子更年期障害」などと自分を納得させ、うつ病の治療に入っていけない人が多いのです。
精神分析では、このようなうつ病患者の行動を「失ったものを失ったものとして受け入れることの失敗」「真の断念を拒み、悔やみつづける」と理解します。確かにうつ病の人が何かを失ったと悲しむときは、単に悲しみというよりも、「こうすればよかった」などと自分のやり方次第では何かを失わずにすんだはずだというように、その人の万能感は残されたままのこともしばしばあります。
うつ病の患者さんのなかには「自己の万能感を維持したい」という願望が強い万万、他人へ依存することを極端に嫌う人がいます。病院に来ても、調子が悪そうなのに表面的な話だけをして早々に帰る人もいます。また、会社に自分の具合の悪い話を伝えるのを嫌う人も珍しくありません。妙に何かを背負い込んだり、力んだ印象を与える人も多いのです。
以上のことをまとめると、「自分の不調を早くみつける」ことは、簡単なようでなかなかできないことなのです。この背景には、うつ病の患者さんがもつ独特の心性、特に「自分の万能感にしがみつく傾向が強く、(健康の)喪失を喪失ととらえにくい」ことがあるということです。うつ病の患者さんの万能感が傷つくのを少しでも和らげるには、うつ病は「特定の人がなる精神病」ではなく、「誰にでも起こる、治療によって回復する病気一であることを医者や周囲の人が繰り返し伝え、本人にわかってもらうことが大切です。
次に、自分でも「自分はうつ病じゃないかな」と恩ったらどうすればいいでしょうか。一番大切なのはよく休むことです。休養とは、肉体的なことばかりでなく、精神的な休養も含まれます。つまり、体は休めていても、休んでいることが「気が気でない」状態だと十分に休養がとれているとはいえないわけ
ですじっつ病になりやすい人は、まじめな人が多いので、休の具合が悪くても今までどおりのペースで仕事をしようとしますごっつ病の思考さんはよく「気力でがんばる」という言葉を使います。しかし実際には頑張ろうとしても集中力は落ちるし、仕事の能率はあがりません。このようなときは、「休が休むように要求している」と考えるべきです。
本来、人間は動きたいときは動き、休みたいときは休めるようにできているのです。ところが、「こうすべきだ」という自分に対する要求が高すぎると、自分の状態を無視して頑張ることに馴れてしまいます。頑張ったことで周りから評価されれば、頑張ることが習慣になり、わざわざ「頑張ろう」と思わなくても根をつめてしまいます。
元来ごっつ病になりやすい人はまじめで几帳面、責任感の強い人です。反面融通がきかなかったり、気持ちを切り替えにくいという短所もあります。
休むためには、家族や同僚の協力が必要です。ところが、「自分が困ったときに人の援助を求める」のはなかなかむずかしいものです。うつ病の患者さんは、自分が具合が悪いとわかっても、「自分さえ頑張れば」という気持ちが強く、なかなか周囲の人の協力を得ようとしません。周囲の自分に対する評価が下がることに対して無意識のうちに抵抗があるのかもしれません。
うつ病にかかったとき早めに休養をとるためには、他人に自分が病気であることを知られたくない気持ちを抑えて他人の協力を得ることが大切です。
はじめてうつ病にかかると、カズオさんのように「自分は精神的に弱い人間なんだ」と考えてしまいがちです。だから他人にも「自分がうつ病だ」といいにくいのです。しかし、うつ病は脳内の物質のバランスが崩れる「体の病気」です。肺炎にかかった人が仕事を休むのと同じ理屈で仕事を休めばいいのです。積極的に有給休暇をとったり、家事を他人に任せましょう。
しばしば、うつ病がなかなか治らない患者さんが病院に来ます。薬はきちんと飲んでいるし、「家では何もしていません」というのです。このような患者さんのなかには、入院するとよくなる人がいます。どうも、家にいるのと入院しているのとでは休養のしかたが違うようです。仕事をしている人だと、入院すると今までの生活をあきらめやすいようです。また、主婦だと家にいると家事と生活習慣の区別があいまいで、ついつい夫の世話を焼いてしまうものですが、入院すると文字どおり「三食昼寝つき」の生活を送れるわけです。徹底した休養がどれだけ大切かを示しています。
うつ病の治療で休養と並んで大切なのは服薬です。うつ病は脳の病気ですから、薬を飲んで脳内の物質のバランスを元に戻せばいいのです。「気のもちよう」ではうつ病は治らないことを肝に銘じておきましょう。
うつ病を治療する抗うつ薬は、効果も安全性も確立した薬です。ただ、欠点として効果が出てくるまでに時間がかかることがあげられます。患者さんが抗うつ薬を服用してから効果を自覚するまでにおよそ二、三週間かかります。しかし、副作用はもっと早くから現れることが多いのです。抗うつ薬の副作用は患者さんも薬を服用する前に副作用の知識をもっていして薬を飲めるでしょう。ると安心
抗うつ薬は、脳の物質のバランスを調整するものなので、飲みつづけなければ効果は出ません。「今日は調子がいいから飲まないことにしよう」とか「調子がいいから量を減らそう」などと考えて服薬が不規則になれば、効果は不十分になる可能性があります。これまでの研究で、「薬を十分に飲まないとうつ病が慢性化しやすい」ことがわかっているので注意が必要です。また、薬は症状が消えてからも半年から一年くらいは服用しなければなりません。よくなってすぐ止めると、再発を予防しにくいことがわかっています。
最後に、自分がうつ病になったかどうかを確かめるためのチェックリストを紹介しましょう。次頁に示したのは、SRQ‐Dとよばれるチェックリストです。東邦大学で開発されたもので、正式名称はSelf‐ Rating Questionnaire for Depressionといいます。
SRQ‐Dには、全部で十八間の質問があり、それぞれ「いいえ」「時々」「しばしば」「常に」の選択肢のうちから自分に当てはまるものを選んで該当する場所に印をつけます。
採点は、「いいえ」は○点、「時々」は一点、「しばしば」は二点、「常に」は三点として計算し、得点を合計します。ただし、質問2、4、6、8、10、12、の6問は得点に加えません。

うつ病チェックリスト

うつ病チェックリスト


 
合計得点が10点以下の場合は正常、11〜15点はボーダーライン、16点以上はうつ病の疑いがあるとされています。ただし、質問のなかには身体症状を聞く項目が多いので、体の病気をもってい
る人や、具合が悪くなる前から不足愁訴をもっている人の場合は得点が高くなりやすい傾向があります。このような人々がSRQIDを行う場合は、慎重に判断する必要があります。
 
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