育毛

育毛について医者に聞いてみた

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育毛について医者に聞いてみた

日本毛髪科学協会

あなたは正常、ノイローゼ青年、大いに叱られる
はじめは、日本毛髪科学協会。毛髪と皮膚についての正しい知識を広く一般の人びとに理解していただくために、66年5月、厚生大臣(当時)の認可を受けて設立された公益法人である。北海道、東北、東京、長野、愛知、近畿、九州に7つの支部がある全国組織だ。医者ではないが、もちろん育毛サロンでもなく、中立団体である。そこで、前哨戦として潜入することにした。
ここは4200円で毛髪検査を行っている。商売抜きで私の髪を判断してくれるのだから、育毛サロンとは違った判定をいただけるのではなかろうか?
 
プロペシアやミノキシジルのジェネリックの通販サイトは、こちら[button size="large" color=“blue” url="http://craftheads.jp/products/list.php?category_id=41"]サプリ館[/button]
 
関ロさん登場!
場所は、新宿御苑からほど近い新宿一丁目。内部は普通の事務所といった感じだ。コピーをとっている女性に声をかけ、しばらく待っていると、いい感じにしなびたおっさんが現れた。50代はじめ、といったところだ。眼鏡をかけていて、髪は年齢相応よりいくらか薄い感じ。生え際と剃り込みには、てらてらと輝く頭皮が透けている。関口宏が眼鏡をかけて、もっと後退したら、こんな感じか。「じゃ、ちょっとお話しましょう」と歩き出す関口さんについていくと、かなり薄くなったすだれ
ハゲの中年男性が書類を持って目の前を足早に通り過ぎ、思わず、呆然と眺めてしまう。育毛サロンではまったくありえない、リアルな風景である。
相談場所は、事務所のど真ん中。オープンスペースもいいところだ。落ち着かない。視界の端で女性従業員がお茶をすすっている。ちょっと、ありえないぞ。こんなところで、なにを話せというんだ。
「で、あれですか、髪のご相談ですよね」
(やけくそで)ええ、かなり悩んでまして。もう、かなりまいってます。
育毛サロンには行ったかという質問に、私は、ぼんやりしていて、ついつい正直に答えてしまった。アートネイチャー、アデランス、プロピア、バイオテック、などなど……。
関口さんは、あっけにとられた顔をして、はあ、そんなに……と言った。やべえ、一社ぐらいにしとけばよかったんだ。全部言う必要なかった。関口さんの目つきから判断するに、どうも私はノイローゼ気味な人に思われてしまったようだ。
「……で、サロンではどんなことを言われましたか?」
髪は脂で抜けるらしくて、根こそぎ取られましたと告げると、とにかく状態を見てみましょうということになった。
事前に30本もの(育毛サロンでは10本程度であった)抜けた毛を持ってこいと指示されていたことを思い出し、ごそごそと鞄の中を探す。その拍子に、「ハゲを生きる  外見と男らしさの社会学」(須長史生著、勁草書房、99年)という緑色の本がどさっと落ちた。やってしまった。さらにノイローゼ疑惑を倍加させるアイテムのお披露目だ。平静を装ってそれを拾い、ビニールパック入りの毛髪を渡す。
関口さんは複雑な表情で抜け毛を受け取ると、私を奥の研究所的ゾーンヘ案内した。
研究室でヘアチェック
黄色い液体が乾いているシャーレやら、木の枠に突き刺さってアンデスの笛みたいに並ぶ大小の試験管、段ボール箱いっぱいのクスリの瓶、そんなものが上九一色村風にどかどかと机の上に積み重なっている。どうやらここでは、頭髪用化粧品に関する検査を行っているようだ。
隅っこのディスプレイの前に案内され、イスに座って頭皮にスコープをあてがわれると、画面にはおなじみの頭皮が映し出された。
脂、やっぱ多いですか?
「ないことはないけど、あるほうではないねえ……まあ普通」
これ、こういう根元にポツポツと白いのがあるじゃないですか? これがまずいらしいんですが……。
「このぐらいでは問題ないですよ。まあ、誰にでもよくあることです。あなたは、毛穴ひとつから毛が3本くらい生えているところもあるし。結局、販売促進策だったら、どこを撮るかでどうとでも言えるじやん?」
(じゃん……って、なに?と心のなかで突っ込みをいれながら)ということは、全然、健康なんですか!
「いや、この部分はそうでもない」と関口さんはディスプレイを指し示す。側頭部のうっ血だ。1ヵ月前バイオテックのときに見つかって、それ以来消えていないのだ。かなり皮膚がダメージを受けているという。
脂が酸化して炎症になったんですかね。
「いやあ、まさか。これ強くこすりすぎたか、かぶれたか、そういう炎症だよ」
私は育毛サロンに通うようになってから、自分ではことさら丁寧に洗うことを心がけてきた。これは、「洗い」すぎたのでなく、サロンで「洗われ」すぎたのではないのか?
「優しく洗えばいいんだよね。まあ、皮脂のせいで抜けるということは通常はないから」関口さんは諭すように言う。
「それじゃあ、毛根検査もいちおう、してみましょうか」
全然、正常じゃん?
関口さんが用意するのを待って、毛根検査のスタート。ディスプレイに、顕微鏡が拡大する私の毛根の映像が映し出される。
「全然、正常じゃん、これ」
正常とはどういうことか聞くと、「マッチ棒みたいになっている、ということ」
いや・・・ですが、これ、根元が膨らんでないから典型的な男性型脱毛って言われたんですが。
「んなことない。これ、このぐらい普通です。少し膨らんでいるくらいで大丈夫。男性型に関してはわからないの。その形からでは」
どういうことだろうか。関口さんはディスプレイに映る私の毛のうち、とりわけ細く短く弱々しい1本を示し、こう言った。
「男性なら誰にでも少しはあるけど、たとえば、こういう感じが男性型の毛」
あ、つまり、男性型脱毛の毛って……。
「そう、毛全体の大きさが小さいもの。ミニチュア版というだけ。つまり、細くて小さい毛がいっぱいあったら、男性型の可能性が高いの」
そうだ。男性型脱毛というのは、サイクルが短くなって毛が縮小するものであった。関口さんは続ける。
「毛根の大きさは人それぞれだから。当人の髪のなかでの大小で比べないとダメ。毛根からではわからない。必ずそういう見方をします」
この方法が正しいなら、男性型脱毛におけるサロンの診断は、毛の大さに対して毛根がどうのという話だったから、見当違いである。毛根の大きさには個人差がある。少々小さめだからといって、男性型脱毛だなどとはいえないのだ。私はいくつかのサロンで受けた断定的な暴言の数々を思い出し、憤慨しながら、あらためて自分の毛をチェックした。結局20本につき、明らかに細く弱々しい毛といえば3本程度しか見つからない。1割強。
では、どの程度、綿毛が混じると危険なのだろうか?
「誰でも、細い毛は1割くらいはある。まあ、3割超えるとどうかなって感じで、もっとあると、男性型脱毛かな」
しかし、ちょっとした疑問も頭に浮かぶ。このように洗髪後の抜け毛を採取するという方法では、拾いやすい太い毛ばっかり選んでしまう傾向があるだろう。
「そう、だからたくさん集めて平均化するのがいい。われわれでは、最低20本。わからなければ30本、ちゃんと見るには40本と考えてます」
もっと厳密にするには、シャンプーで抜けた毛全部から判断すればいいとのこと。
「ただし、あなたの場合はどうかな……ゝ」れ見ても1割程度だし、まあとりたてていま男性型ということはないと思います」

洗う回数より食生活

私は、勧められる洗髪の頻度を関いてみた。
「それはね……」
と言って関口さんは立ち上がった。
「ちょっとこちらに資料がありますから」
私は関口さんのデスクに連れて行かれた。パソコンの画面には、縦軸にパーセンテージ、横軸は時間に設定されているグラフが広がっている。グラフの中では、一本線が徐々に右府上がりに上昇している。
「この線がね、洗髪したあとの皮脂の回復を示している」
それを見ると、洗髪直後でも皮脂は20%ほど残っているようだ。
「シャンプーで洗っても、全部取りきれはしないわけ。で、どんどん皮脂量は回復していって、6時間後には80%。24時間後に100%。一日で元に戻るわけ。だから、毎日洗っても問題ない」
私はグラフをじっと見た。しかし、24時間できっかり100%回復なんて、ちょっとできすぎてないか?
これが正しいとして、皮脂が回復した直後にまた洗うわけだから、結局、皮脂腺はフル活動しっぱなしということになりませんか。
「いや……まあ、そうでもない」
あるいは、逆に24時間以上洗わないと、皮脂が過剰になって不健康ということになるんですか?
「まあ、そこまでも言えない。そこらへんの実際はよくわからないという面があるんで。つまり、これは、頭はあんまり洗わなくていいと言う人がいますが、まあこういうデータがありますので、それは違うでしょうということを示したデータなんです」
む? 「頭はあんまり洗わなくていいと言う人」とは、五木氏のことか? くそ、助太刀せねばなるまい!
でも、毎日洗うなんてつい最近の現象ですよね。毎日洗うのがいいと勧めるということは、それ以前の時代の日本人や、いまだに頻繁にシャンプーする習慣がない地域の人は、頭髪や頭皮が不健康だったと否定されることになるんでしょうか?
「……うーん。いや、現在の皮膚医学では、そちらのほうが健康ではないかということです。よくわからない。だから……食生活だと思いますね、最近の人の髪が悪くなったのは。髪は血よ(けつよ)っていいますから、体が健康なうえで生えるものなんですよ」
関口さんは、続けて食生活と脱毛の原因を説明してくれた。マウスの実験では、自然食と高脂防食をそれぞれ与え続けて比較した場合、カロリー過多のマウスのほうは毛も生えにくく、死亡率も高いとのこと。
「あと、沖縄って長寿の国じゃん? でも、沖縄の平均寿命は日本で23位なの」
どうやら、そのようらしい。正確には26位であるが、沖縄の男性の平均寿命はがっくりと低迷しているのだ。
「つまり、若い人や中高年の人がよく死んじゃう。なぜか? その原因のひとつに、あそこは米軍基地があるから、アメリカの影響が強い。そのせいで、子どものころから高カロリー食ばかり食べ続けている。そうすると」
そういえば、ハンバーガーばかり食べ続けると人間はどうなるのかを実験したドキュメンタリー映画『スーパーサイズ・ミー」(モーガン・スパーロック監督、クロックワークス配給)というのがあった。まだ見ていないが、結末はどうなるのだろうか?
「そうすると、どうなるか? 早く死んでしまうんだよ。それで食生活改善運動を行ったら、死亡率がものすごく下がった地域が、実際に沖縄にある。なんにせよ、食べ物は寿命すら左右するから、髪みたいな余分なものはまっさきに影響を受けて当然ですよ」
関口さんによると、あまり欧米化されていない食べ物、つまり和食がオススメだという。とはいえ、とりたてて髪によい食べ物というのはないそうだ。結局、なによりもまずいのは「若い人が気にしすぎていることかもしれない」と、彼は付け加えた。
「髪にまったく問題ない人がね、ここにもたくさんやってくるんですよ」
明らかに私を意識した発言だ。懸念していたことだが、ついに説教モードに入ってきたぞ……。
「そういう見栄えとかを異常に気にする社会になってきた。私なんかはね、髪に対する意識なんていうものは、かなりつくられたものだと思ってますよ。だから、もう………心配するな!」
(ビビって)は、はい!。
「……って言いたい。男性型脱毛は、男性特有の老化現象なので仕方がない。遺伝的にも大きく左右されるし、ホームレスなんてあんなにしてても、ハゲない人は全然ハゲないでしょう」
そう、それもお聞きしようかな、なんて思ってたんですが。あんなに洗わなくてもハゲないっていうのは……どういうことですか?
「男性型脱毛のケがない人は洗おうが洗うまいが、脂が詰まろうがどうしようが、ヘッチヤラです」
ヘッチヤラ……。じゃ、なぜ誰もみんな、こまめに洗うんですか?
「んー……」
と、関口さんは詰まってしまった。
「まあ、清潔であるにこしたことはないでしょう」

男性型脱毛はホルモン感受性の問題

つぎに、関口さんは、5αリダクターゼがデヒドロテストステロンをつくるという説明を始めた。
ええ、聞いてます。そのデヒドロテストステロンが多いとハゲるようなことも聞かされました。
「いや、違うの。ホルモンが問題なのではなくて、デヒドロテストステロンを受け取るレセプターの感受性が高い人がハゲやすいんだよ」
育毛サロンでは決して聞けなかった説明だ。松崎貴氏の「毛髪を科学するー発毛と脱毛のしくみ」(岩波科学ライブラリー、98年)からこのあたりの詳細を引用してみる。
「男性ホルモンが多いために薄毛化がすすむのではなく、遺伝的な要因などによって男性ホルモンに対する感受性、あるいは遺伝子を受け取った後のプログラムに個人差があるために、男性ホルモン血中濃度が同じでも男性型脱毛が起こらなかったりするのです」
また、同書では、「前頭部の毛包と後頭部の毛包との間では男性ホルモンレセプターの量や5αリダクターゼの活性の差はみられなかった」という事実もあげられている。やはり、レセプターの感受性が部分的に高まることが、男性型脱毛の根本原因のようだ。
この感受性を抑えることはできないんですか?
「それは遺伝子の問題だからできない。けれども、仮に感受性が高くても、5αリダクターゼの作用を阻害すれば、デヒドロテストステロンもできないから、結果的に脱毛は抑制できる」
そして、関口さんは、フィナステライド製剤、つまりプロペシアを例としてあげた。現在、医療用薬物として厚生労働省の承認待ちの毛髪治療用抗男性ホルモン薬だ。以前も述べたが、これは育毛サロンで扱える生薬由来の5aリダクターゼ阻害成分などとはケタ違いのものなのだ。彼によると、5αリダクターゼはタイプーと2の2種類の酵素があり、プロペシアはそのタイプ2を強く阻害するという。
ちなみに、プロペシアの説明書の「臨床薬理学」の項目を読むと、タイプー酵素は、頭皮をはじめとして皮脂腺の大部分において優勢であって、全デヒドロテストステロンの3分の1を生成しているとある。これに対してタイプ2酵素は、髪の毛包組織、前立腺、乖丸などに存在し、全デヒドロテストステロンの3分の2を生成するという。
片方を抑制するだけでは不十分じゃないのですか?
「まあ、両方を強く阻害する薬もあるけれど、プロペシアと比べてほとんど効果が変わらないんだよね」
つまるところ、脱毛は毛包組織内のタイプ2酵素によって引き起こされると考えてよいようだ。

プロペシア(フィナステリド)のリスクとリターン

「まあ、そういうことで世の中にはいろんな説にもとづいていろんな薬がありますけど、いいですか、医者はなんでも処方しますから……」
あなたみたいな人は気をつけてください、と言わんばかりだ。
「まだどこの国でも認められていないものでも、輪入しちゃって使いますから、一部の医者は。治験(臨床試験)薬としても使えるでしょ、ああいうふうに投与するんです」
いずれ、医療クリニックにも乗り込むつもりでいたのだが、こんなことを聞かせられると、ちょっと怖くなってきた……。
「たとえばね、プロペシアにしろ、男の赤ちゃんが奇形になるということが知られている。それも、いろいろやってわかったことで、薬には、あとから副作用が判明することがあるんです」
だけど、欧米をはじめ外国では、医療用薬物として毛髪治療に使われてますよね。
「でもね、こういう薬は発売前の治験でも2年ぐらいの臨床データしか取りません。だから、プロペシアでもまだ5〜6年のデータしかない。若い人が十年、数十年使った場合、どうなるかわからないですよ」
なんということだ。プロペシアは男性型脱毛症の人にとって「最後の光」と騒がれているものなのに。やはり、危険なものなのか?
「まあ最低でも、子どもをつくるときは断薬するね。それ以上に、人間の体はすごく複雑なんです。
なにか薬を与えたときに、その人にどういうことが起こるかはわからない。とくに、こういうホルモンをいじるような薬は」
むずかしい問題だ。ずば抜けて効果があるならば、ある程度の副作用なら甘んじて受け入れる人は大勢いるだろう。私の髪だって、将来どうなるかわからない。すべて、リスクとリターンの兼ね合いが重要ではないだろうか。
「副作用はあっても、効くことは効くんですよね」と念を押してみるが、関口さんはどうも渋い顔をする。彼によると、薬には一般的に有効率というものがあり、どんな薬でも6〜7割は保証されているという。
「ただしね、それがまあ、発毛剤の場合、産毛程度のものも勘定に入れている。リアップにしろプロペシアにしろ、満足できるかなっていうレベルだと、1割からまあよくて3割、その程度。たとえば、もしリアップがよかったら、育毛剤はリアップだけになってるはずでしょ? でも、そうはなってないでしょ?」
言われてみれば、そうですが・・。
「まあ、プロペシアに関しては、投薬前の遺伝子検査で、効きそうな体質があるかどうかはある程度わかります。受容体の感受性が高いかどうかがわかるんです」
たとえばこの近くの城西クリニックあたりで実施している、と関口さんは付け加えた。ナイスな検査じゃないか。将来、自分が男性型脱毛でハゲるかどうかも、予測できるという。ただし、遺伝子情報を他人にさらしてしまうことになるが。
私の目がきらりと光ったのを見て、関口さんはあわてて補足する。
「でもね、こういう薬物治療は病院処方なら月3万くらいかかる。個人輸入でプロペシアのジェネリックを個人輸入すると数千円だが偽薬であっても自己責任」

育毛剤が効かない理由

それでは代替療法としてはなにが適当なのか、ぜひ知りたいところだ。自宅で医薬部外品などの育毛剤を使用することは、どの程度、効果的か開いてみた。
答えは、「まあ少しは効く人はいるでしょうが」。やはり積極的ではない。それはそうである。育毛剤が効かないのにはわけがあるのだ。
数々の育毛剤の研究開発に携わった武田克之氏の著作によると、現代の育毛剤は、その開発段階において、「①生理機能の活性化、②血管作動性の増強、③酸化還元機能の究進、④毛髪代謝の賦活」という条件を満たしたものについて、「動物実験を行い、育毛効果をたしかめて、同時に安全性の試験も行」ったものだという。具体的には、小動物の毛を剃って皮膚の生理機能を確認したり、耳に穴を開けて血管新生の具合を確かめたりして、効果が測定される。このように、哺乳類一般の体毛
を対象に試行錯誤が行われているレベルなのだ。
「発毛の機序が解明された現在でも、残念ながら生育に関しては科学的にほとんど解明されていないと言わざるを得ません。(中略)毛の発生はさせられるが、正常のヘアサイクルを持った毛にはできないのです」(井上哲男・ハ木原陽一 「毛髪の科学と診断」薬事日報杜、02年)
男性型脱毛の頭皮において発毛を促す段階は、まだまだ先のことである。
まあ、私の場合、一度育毛剤でかぶれたこともあったので、なかなか使いづらい面もあります。
「いや、そもそも育毛剤のなかには、かるーく、わからないくらいのかぶれを起こさせて生やさせるというのがあるんですよ。こういう刺激が人によっては効くということもありますから」
「刺激療法」。円形脱毛患者に対してよく行われるのだが、皮膚がかぶれるほどの強い刺激を与え、休止期毛の細胞分裂を強制的に再開させるというものだ。たとえば、かつて大ブームを巻き起こした101という育毛剤は、この手の極端なケースだった。成分がすべて明らかにされなかったため、国内では承認されなかったが、中国で行われた毒性検査では、ラットの奇形を生み出すなどの報告も見られたという。毒物に近いような刺激成分が混入していた疑念は消せない。
気にしないこと
「でもねえ、一番重要なのはねえ、気にしないことです。われわれが見てもね、全然、まったく心配ないのに、仕事が手につかなくなっちゃっている人なんかもいっぱいいるんだよ。これはね、もう当たり前だけども、髪がなくても元気にしている人はいっぱいいます。ある程度まで追いつめられたら、もうこれでいいんだと考える。自分のもっている可能性から考えたら、髪なんてほんのささいなことでしょう。ねえ、どうして、そうならないのかと!」
(ビビって)い、いや、まあ、テレビや雑誌でいろんな宣伝やってますよね。ああいうせいもあいや、私はひきこもりでは……。
ると思いますけども。
「まあ、あれだけ宣伝していたら、普通の人はテレビの言っていることが正しいと思うしねえ。だから、あなたも、そんなにとらわれない。それでひきこもりになったりね、ノイローゼっぽくなってですよ、あなたも自分でいろいろ調べているみたいだけど・・・」
くそ、完全に勘違いされている。ノーモア説教。話を変えねば。
それで、あの、最後にですね、毛髪診断士について聞きたいんですが。育毛サロンのカウンセラーとかは、ここの資格をもっているんですか?
「(困った顔で)ええと、それはねえ……アデランスとかアートネイチャーは、もともとここの会員だったんですよ。法人会員だったんですけどねえ」
どうなったんですか?
「やめてもらったんですよ、こちらから。リーブさんはもう、はじめから断っています。アデランスさんとかでもね、あまりにもたくさん、消費者センターとかに非難の声が届いているんでね」
まあ、そういう感じですよね……。
「私らは社団法人なので、育毛サロンのように、なにかを勧めたりはしませんが、ここで調べて問題があったりした場合、必要であればお医者さんを紹介することはしてます。まあ、ウチでは皮膚科とか、偉い顧問の先生かおりますからね」
そう、私としてもつぎは、とっても偉い先生のいる皮膚科を訪ねてみるつもりなのだ。
「まあ、でも」と関口さんは立ち上がった。
「いずれにしても、治らない人は治らない」
ほとんど自分に言い聞かせているような印象であった。
相談料4200円を関口さんに手渡し、日本毛髪科学協会の取材は終了。かなり有益な取材であった。どうも、私は客観的に見ても「全然心配ない」程度のようだ。また、いまのところ男性型脱毛でもなさそうである。
とはいえ、適切なスキンケアと将来的な脱毛への対処つまり、よりよい洗浄剤と、未承認薬の詳細この2つは未来の私のために(そして、あまねく脱毛に悩む人たちのために)、ぜひとも押さえておかねばならない。新たな決意を胸に、私は新宿をあとにした。

東大病院

脱毛現象に興昧なし未承認薬をぶった切る

今回は、東京大学医学部付属病院の皮膚科。こういう大学病院は、基本的に紹介制だ。これは、軽い病は町医者にかかるべし、という厚生労働省の暗黙のお達しによるものだが、じつは裏技(というほどのことでもないが)がある。
東大病院のような総合病院は、たいていが厚労省から特定機能病院に指定されている。こうした施設では、医療費とは別に特定療養費を受付時に支払うことで、受診できるようになる。たとえば、東大病院は3150円、慶応病院なら5250円だ。知っておくと便利である。
院内に足を踏み込む。だだっ広い1階ロビールームは老人でいっぱい。だが、受付カウンターを挟むとそこはバラ色の世界。若い看護師が忙しく働いている。予約番号を告げると、問診票とICカードを渡される。各階診療科の外側の待合室で待ち、このカードが鳴ったら、診察室前の中側の待合室へ。ここで名前が呼ばれるまで待機する。
俺、大それたことしてないか?
外来の前のソファに腰掛け、待機している患者たちを見回す。なんだかものものしい雰囲気だ。ときおり、「メリーさんの羊」のメロディが勢いよく鳴り出しては止まる。これが、カードの呼び出し音なのだ。
しばらくすると、顔に包帯を巻き付けた若い男性がやってきて、私の隣に座った。髪は……かなり薄い。とたんに、自分がなんという大それたマネをしているのかと不安になってしまった。
当たり前だがこの入、顔の皮膚病でここに来ている。髪どころではないのだ。取材のために読み込んだ皮膚病の症例写真が、頭のなかでフラッシュバックする……。そう、皮膚疾患は激増している。とくに、大気汚染と紫外線の影響で発生する悪性黒色腫(皮膚ガンの一種。ホクロから変化する)
は深刻だ。ほかにもアトピーやらなにやら、肌の病はいや増しになっている。
やっぱり私は大それたことをしている。いくら潜入取材とはいえ、ほんのちょっと分け目が薄い程度で大学病院にやってくるなんて、国民健康保険料を7倍ぐらい取られるべきだ。すみません、私のせいで、みなさんの受診時間をほんの少し奪い取ってしまいます。ゆるしてください。そのかわり、正しいヘアケアの方法を調べて社会に還元しますから……。と祈るような気持ちでいると、私のメリーさんの羊が待ってましたとばかり勢いよく鳴きはじめた。
待合室に入る。そして、意味もなく散発的に咳き込んだりして病人のふりをしていたのだが、ついに出番がまわってきてしまった。ダメだ。日本毛髪科学協会のときみたいに、ノイローゼに思われるだろう……ちょっと薄くなったぐらいで東大病院にやってきた人なんて、ほとんどいないはずだ。だが、「男性型脱毛のご相談も受け付けます」って、ばっちりホームページに盲いてあったのも確かである。恥はかきたくないが……世のため人のため自分のため、頑張るしかない。覚悟を決めて扉を開けた。

思いもかけぬ大舞台!

そこには、我が目を疑う光景が広がっていた。まず、かなり頭の薄い中年の医者がイスに腰掛けている。そして、その背後には、なぜか6人ほどの若い白衣がずらりと並んでイスに座っている。
誰もがまだ若い。20代前半だ。女性が2人。残りは男。明らかにインターン生である。……知らぬ間にこんな大それた舞台が用意されていたとは。ホンモノのめまいがした。
医者がイスを勧めながら口を開く。
「彼ら実習医なんですが、よろしければ同席させていただいていいでしょうか?」
よろしければ退席していただきたいのだが、インターンを追い出すほどの深刻なことでもないので、気がひける。よりによって、なぜこんなことに?と悩んでいると、インターン生のなかに、ものすごく可愛い女の子がいるのが目の端に留まった。なんてことだ。あんなに可愛くて、東大医学部ときた。畜生、このあと、みんなで飲み会か。こいつら全員ナイスな人生歩みやがって。受けて立とうじゃないか。こう見えても、俺はじつはOBだ。あろうことか、おまえらの先輩だ。マジで、
生き様、見せつける。対極の文系の代表として戦線布告だ!
ええ、同席していただいてかまいませんよ! 全然かまいません!
「ありがとうございます。そうしますと……(問診票を見て)えI、頭部の異常ですね」
ええ! 半年ぐらい前から、抜け毛が増えてきたかな、というような事態にですね、ええ!
陥りましたものでして!
「脱毛が気になるということですか?」
ええ、以前、ちょっと育毛剤でかぶれたこともありまして。それに、ちょっといまも側頭部にですね、炎症があるというようなことを言われましてですね。まあ、診てもらおうかと。
それでは……と、医者はインターン生のひとりに目で合図した。その学生が立ち上がって、こちらへ向かってくる。医者は言った。
「それでは、初めての患者さんということで、医学部の学生さんにカルテを取らせていただいてかまいませんでしょうか?」
かまいませんかもクソもない、もうこっちに歩いてきているじゃないか。もう完全にテンパっている私は、たいそう気前よく答えた。
ああ、かまいませんよ! どうぞ! どうぞ!
しかしだ。このまだ20歳程度と思われる若いインターン生が、なんとも頼りない毛髪をしていた。
細い猫っ毛を短めに刈って、むりやりウェットタイプの整髪料で立ち上げている。そのため、みごとに地肌が透けてしまっているのだ。しかも、かなりの茶髪。いいのか……? 国民の皮膚の守護神たるべき東大皮膚科に、こんなド派手なカラーリングのヤツがいて。畜生、格好つけやがって……
やっぱり合コン多いですか? 今晩ありますか? 俺も連れて行ってくれませんか? などと混乱していると、インターン生が口を開いた。
「状況が気になり出したのは、いつからですか?」
え? ええ。抜け毛が気になったのは、もう一年以上前です。それからは……むしろ、進んでいるんじゃないかと思います。
「橡くなったりしますか?」
インターン生は、やたら真剣な顔で私に問いかける。もしかして、梅毒だとかガンとか重大な病気が背後にあるのではないかと思っているのかもしれない。もしかして、いいヤツなのかもしれない。
アレルギーに関する質問が続き、最後にインターン生は私の頭をまさぐり、頭皮を調べはじめた。
カルテにはマイナスの記号が書き連ねられていく。そして、インターン生は言った。
「とくに炎症はないですねえ」

脂で毛は抜けません

こうしてインターン生による問診と触診は終わった。彼はそそくさと元の席へと帰っていき、私はふたたび医者と向き直る。
「うーん、とくに問題はないみたいですね」
私は、日本毛髪科学協会で、側頭部に炎症があると指摘されたことを告げた。
「拡大すれば、あるかもしれませんが……。でも、視認できない程度ではなんともないと思います」
肉眼で見えなきや問題ではないというのは、けっこう大雑把である。
あと、ですね。抜け毛が気になるもので。お恥ずかしいことにですね、私、育毛サロンに行ったんですよ。
「お・・・ほう」
医者は一瞬、ほおを歪ませた。インターン生のなかにも、ひょいと頭を上げる者がいた。
そうしたらですね、脂が詰まって、炎症を起こして髪が抜ける、と言われたんですよ。私はやけに脂が多いみたいで、脂漏性脱毛症とも言われまして。
医者は怪冴な顔をした。
私の頭皮、脂で抜けてませんでしょうか?
「いや……ありえませんよ。脂で抜けるということはめったにないですよ」
日本毛髪科学協会で言われたとおりである。やはり、これが医学的な見解ということになるのか。
「脂漏性皮膚炎というものはあるんですよ。で、そういった皮膚炎自体がひどくなると脱毛する場合も確かにありますが、あなたは脂漏でも全然ないですし……。そもそも、脂漏性皮膚炎自体がまれで、よっぽどひどくならないと脱毛にならない。毛はそんなに簡単に抜けません」
ちょっと待った、脂漏性脱毛症って言葉、ないんですか?
「脂漏性皮膚炎というのはありますが、脂漏性脱毛症というのはあんまり一般的ではないですね」
抜け毛の原因の大部分は脂漏性脱毛症です、みたいな宣伝をしているところもあったんですが・・・。
医師は、しかめつらをして首を横に振った。
消費生活総合センターの育毛サロン被害情報で、「ありもしない病名を告げられて」という一節が
あった。そもそも脂湿性脱毛症という言葉自体が、あやふやなものだったとは。
しかし、脂自体は、詰まることは詰まるんですよね。
「そんなのはほっとけば問題はないわけでね。詰まったとしても、自然に排出するようになっているのが人体ですから。何カ月も洗わないでいたりすると、少しは影響するかもしれませんがね」
なんということだ、それなら、数週間なら洗わなくても問題はないということか。非常識健康法、俺もやってみようかな?
「男性の場合、頭の前とかてっぺんとかがだんだん少なくなってくる。でも、これは普通の生理現象、加齢現象で、誰にでも起こることです。なにか皮膚に異常があって抜けるということとは、まったくの別問題ですよ」
その、男性型だとしたら、そういうものを予防したりとかできないもんですか。
「(投げやりに)それはねえ、無理ですよね」
ヤバい。もう取材が終わってしまいそうだ。当たり前すぎることだが、この医者、ハナから男性型脱毛を病気とはみなしていない。
重々しい沈黙が……。私ひとりが大間抜けだ。医師の背後のインターン生も、まさかこんなイカれた代物が、自分らのOB生だとは思うまい。女の子は、興味津々といった感じで大きな目を見開いている。俺を見ないでくれ……。
(伏し目がちに)それで、ですね。その育毛サロンではですね、低周波や高周波といった機械で電気刺激を与えたりするんですが、こういうのは大学病院の先生からみて、どの程度効果があると考えられますか?
「いや、それはわからないけれども……。電気を既に流すのは、ちょっと安全とは言い切れないですよね。というか、そういう治療が必要な肌なのかどうかということですが。やっぱり、やる側が責任もってやらないとダメなんじゃないですか」
低周波を使って、ビタミンcを肌に送るとかいう手法は、そこらへんの町の皮膚科でもやっているようですが。
「そういうものの効果は、わからないのです。つまり、データが、ちゃんとした証拠がない。だから、医療行為としては認められていません。確かに自由診療でやっている医者もいますが、まあねえ、いろいろな医者がいますしね」
さすが最強大学病院といった風格をかもし出しながら、医者は答える。くだらん質問はやめて、一刻も早く帰れと言わんばかりだ。

皮膚科御用達ノブ登場!

なんか……その……お、お勧めのシャンプーとかないですか?
「まあ、あることはありますが、それがほかのものと比べてとくにいいというわけではないですよ。普通のシャンプーでいいと思いますが」

ノブ ヘアシャンプー

ノブ ヘアシャンプー


 
(弱々しく)まあ、そこをなんとか。
医者は、ファイルが並ぶあたりを探って、緑の小冊子を取り出した。
ノブのパンフレットだ。ノエビアが医者と提携して販売している製品である。
ノブ・ヘアシャンプー250ml、1600円)の説明を読むと、「頭皮へのやさしさを考慮し、刺激が少なく洗浄力がマイルドな弱酸性のヘアシャンプー」とある。こういうので、汚れ取れますか?
「大丈夫ですよ。もちろん」
先発するのはどのくらいの頻度がお勤めですか?
「男性の場合は、毎日洗っていいと思いますよ」
ん? 洗ってもいい、ということは、洗わなくてもいいということですか?
「……いゝ兄、洗ってもまあ害があるというデータもないので……。脂を気にされるのであれば、毎日洗ってもいいんじやないかということです」
日本毛髪科学協会でもそう言われたが、なんか煮え切らない。
えっと、つまり毎日洗わないと、酸化して皮膚にダメージということなんでしょうか。
「いや、まさか。そんなにすぐに肌はどうこうなりませんよ」
わけがわからないぞ。どういうことだ? 非常識健康法に一理あるのかないのか、はっきり教えてくれ!
さっき先生がおっしやったように、自然になんとかするのが人体なら、毎日は洗いすぎということになりませんか? 問題になるのは、何カ月とか洗わないときでしたっけ。
「うーん、ちょっとよくわかりませんね。どのみち、いいも悪いも、信頼に足るデータがないので……」
どこか曖昧だが、先に進もう。今度は洗浄剤成分について問いてみる。
あの、シャンプーは、このノブのシリーズのほかに、石けんを勤められたりしますか?
「アトピーの方には勧めるときはあります。ですが、人によってそれぞれなので、必ずこれを使え、ということはないですねえ。普通のシャンプーで、問題があるとは私は思いませんが……」と、医者は顔を曇らせる。
「(ノブのパンフレットを指して)まあ、こういうシャンプーも、はっきりとこういうものがいいという証拠があるわけじゃないんです。なんとなく、皮膚が敏感な人は、こっちのほうが使いやすいかもしれないかなっていうくらいで、お勤めしているだけで」
結局、こういう化粧品についての、信頼に足るデータそのものが、ほとんどないということですか。
「まあ、そうですね」
しかし、「いいという証拠があるわけじゃない」製品なのに、なぜどこの皮膚科でもこればかり用意しているのか。とにかく、後日調べた洗浄成分。
①ラウロイルメチルアラニンナトリウム
②ラウラミドプロピルベタイン
アラニンはアミノ酸だから、①はアミノ酸系洗浄剤。②は洗浄助剤のベタイン系だから、こいつはかなりマイルドなアミノ酸系シャンプーだ。合格。看板に偽りなしである。

消費者センターヘお行きなさい!

どうにも話がうまく流れず苦慮していると、医者はやれやれといった顔つきで話し出した。
「まあ、脂とかそういう話ならですね、消費者センターとか(苦笑)にね、行かれたほうがいいんじゃ
ないかと思います。(さらに苦笑)医学的にはあなたの場合は、まったく脂が多いとかいうことはありませんので」
行ったよ、消費生活総合センター・・・。どうも、私は悪徳育毛サロンに洗脳されたかわいそうな人物扱いされているらしい。まったく、育毛サロンさんに対してなんて失礼なことを。
ですがね、ホームページで男性型脱毛のご相談も受け付けますってあったものですからね。
「うーん……。ですが、ほんとの男性型脱毛っていうのはですね、もう見てわかりますから。前頭部から頭頂部にかけてかなり薄くなっていれば、そうなんですから」
それではモロに男性型脱毛の人が来たらどうするのか尋ねると、医師は顔を曇らせるばかりで答えない。どういうことなのか。まったく、全男性に対してなんて失礼なことを。
治療しないまでも、男性型脱毛かどうか判定する血液検査をやったりとかはしてませんか?
「男性ホルモンが多いと抜けやすいっていいますから、血中テストステロン値は調べられますよ。でも、それはほかの病気を診断してなんらかの治療をするためのものですから、ちょっとここではできませんね」
ちょっと待ってくれ。日本毛髪科学協会でも言われたことだが、男性ホルモンが多けりゃ抜けるというのは単なる俗説で、本質的には男性ホルモンの受容体の問題のはずだ。私がそのことを話すと、医者はうーん、と無愛想にうなった。
「まあ、そういう研究も盛んなんでしょうけども……」
恐れ多いことながら、この先生、脱毛現象そのものにまったく興味がないうえに、毛のことに詳しくないのではなかろうか。

ウチでは絶対に使いません

たとえば、万有製薬ってメルダ社の完全子会社から、プロペシアという毛髪治療用の薬が出るようなんですが。これ、もともと前立腺の治療薬なんです。ああいうの、認可されれば使えたりするんじゃないですか。
「(露骨に嫌な顔で)いや、使いませんよ。ウチでは」
使わない?
「そういうものは処方できませんよ、安全とは言い切れませんから。男性ホルモンを抑える薬というのは、体にいろいろと副作用がありますから」
確かに……もちろんもともと前立腺肥大症の、つまり中・高年以上の人のための薬ですね。
でも、製薬メーカーは成人以上なら安全って言ってますが。
「いや、全身的にどういう影響があるかまったくわからない。男性ホルモンはいろいろな役割をもって分泌されていますから、それを止めたとしたら、まず若い男性では、たとえば精子をつくる能力が落ちる可能性があります」
東大のお医者様から「処方できない」宣言が出てしまった。メルク社危うし! とはいえ、これは私としても残念だ。これは、最後の希望と巷で騒がれている薬なのである。未来の私のためにも、ここで簡単に引き下がるわけにはいかない。
でも、世界中で使われていますって宣伝にはありますよ。そんなに危険なものですか?
「人間の自然な状態に手を加えるということは、もうこれは、まともな治療とは言いがたい。そういうのは、自由診療(苦笑)ですよ。自分の体をどう変えるかということですから、医学というより薬で美容整形するという感じになります。その人が自分で将来のリスクを全部引き受けてやってもらう以外ないですね。どうなるかわかりませんけれど」
間もなく承認されれば、保険効くかもしれません。それでも、使えない?
「ウチでは絶対に使いません」
断言ときた。
医者のなかには、リアップとして売られているミノキシジルを処方するところもあるそうですが、ここではどうなんですか?
「(さらに苦笑)ミノキシジルは、降圧剤ですよね。一部の医者でやってる人もいるんでしょうけど、ウチはそんなことはやりません」
そして、また無言。きっとこの医者、髪を気にするなんてこと自体、馬鹿げたことだと思っているのだ。彼の薄い頭髪が如実に示している。私みたいな医学を究めた人でもダメなんですよ、受け入れなさい、とでも言わんばかりだ。
「ウチでは、円形脱毛症とか炎症による脱毛であれば治しますが、それ以上は……自由診療とか自己責任でやってもらうしかないですね」
東大の先生に「どうなるかわかりませんが」「自己責任で」なんて言われちゃ、おいそれとできるわけもあるまい。あなたのおかげで、美容外科がみんなヤブ医者に思えてしまう。
あれですかねえ、先生。美容外科医って、やっぱ医者のなかでも、出世できなかったとか、ドロップアウトとかしちゃった人なんですか?
うわっははは!と、突然、医者は大笑いした。
「いや、そんなことないよ! そんなことない!」
後ろのインターン生たちも笑っている。彼らのツボにはまってしまったようだ。
「(苦笑)いやあ、なかには立派な人はいると思いますよ、なかにはね」
医者はものすごくうれしそうに話す。一挙に顔が明るくなってしまった。
「東大でもいないわけじゃないですよ、美容外科の人は。広告とか看板出してる人もいますし。まあ、つまり、いろいろな事情があるし、医者としてはじめの問題の立て方と、どういうふうに生きるかというその人の人生ですから。それがいいと思えばやる、それだけの違いですから。他人がどうこう言う必要はないですしね」
まあ、正論なのだが、そのわりには美容外科と自分の間に一線を画しているような口調だ。
私が本当に言いたかったことは、ちょっと違う。美容外科や育毛サロンといったコンプレックス産業で立身出世した人を調べてみると、どうも「そうしたかった」という個人的な理由だけでなく、「そうせざるをえなかった」という社会的な側面を感じざるをえない面があるのだ。
ただし、この問題はテーマからずれる。これ以上の言及は避けよう。
医者はまだうれしそうな顔だ。なにがツボにはまったんだ? まあ無知でアホな質問だと思っているのだろうが、先生、そんくらいにしといてください。私はいたたまれなくなって席を立ち、礼を言って退室した。

プロペシアはどこへ行く?

やはり、正規の医者では相手にされなかった。まだ毛量のある私の場合、当然ともいえるのだが、今日の調子では本当の男性型脱毛の人が来ても、相手にされないで追い返されるだろう。
さらに気がかりなのは、プロペシアなどの薬が認可されたのに、正規の医療が脱毛治療にまったく理解を示さないことである。このプロペシア、いったいどんな位置づけになるのだろうか? バイアグラのことが思い出される。
ED(勃起不全)治療薬のバイアグラも、かつては、自由診療を行っているクリニックで処方してもらったり、個人輸入して自己責任のもとで使用するしかなかった。こうした曖昧な状況のもとで死亡事故も出たため、旧厚生省は99年、ついにバイアグラを国内の医療用薬物として認可したのである。ただし、医療費抑制政策の一環として、保険適用外という条件をつけられた。
ちなみに、健康保険法では、保険治療と保険適用外治療(つまり自由診療)は同時に行うことができない。また、日本の医療の主流である医師会は保険治療のみを正統な治療とみなしており、ほかには理解がない傾向がある。一方、患者の側には用途面の気恥ずかしさがある。こうした制約のため、認可前に大変な話題になったわりには、医療機関でバイアグラを処方してもらう人たちは多いとは言えない現状だ。いまだに、個人輸入で使用する人が後を絶たない。うがった見方をすれば、国が
かつての未承認薬の個人使用に関してお墨付きを与えてしまったとも言える。
プロペシアも同じ道をたどるのだろうか? 今日の取材の調子では、どうもそのようである。
大正製薬が、リアップをはじめから大衆薬で売りたがったわけが判然とした。日本では医療用薬物としてこのようなライフスタイル・ドラッグ(生活改善薬)を出したところで、まともに扱われることは望みにくいからである。

太陽油脂ー皇族御用達?古き良き石けんは、いまも現役

頭髪を洗う際の洗浄剤として、アミノ酸系シャンプーと石けんのどちらを選ぶべきだろうかとかなり迷った末、私は試験的に石けんを使ってみようと決心した。なぜか? その大きな理由は、ある不確定情報が耳に入ったことによる。それは、天皇家は石けんしか使わないという噂である。ありうるぞ……。
昭和天皇が病気になったとき、手術しないと治らない状態だったのに「現人神のお体にメスを入れてよいものか」ってことで会議が開かれたくらいだ。どんな代物かわからぬ新発売の製品などでなく、念には念を入れて、その性能が歴史に裏打ちされている石けんを愛用しているとしても、おかしくはない。
思えば、皇室の男性陣、つやつやと立派な御髪をしておられる方が多い。もしかして石けん、やっぱりいいのかもしれない。それに、御料牧場の肉なんてとうてい食えないが、石けんだったら明日にでも手に入る。石けんひとつでウルトラセレブ気分間違いなしだ!
と、いざ使いはじめた石けんだが、なかなか自分に合うものが見つからない。そもそも、そこらで売っている石けんは、「純石けん」ではなく、合成界面活性剤が普通に入っている「複合石けん」が多かった。やっと、脂肪酸カリウムないし脂肪酸ナトリウムのみを洗浄成分とする「純石けん」を入手。だが、使いにくいといったら、ない。ハンパなく、きしむのだ。数社の製品を試してみたが、使用感において満足できるものは、まだない。
長谷川さん登場
ここで徹底的に石けんについて知るべきだと思い立った私は、石けんメーカーの太陽油脂に取材を申し込んだ。
本社で出迎えてくれた広報担当の長谷川治さんは……おお、豊かな髪のダンディなおじさんだ。
石けん一筋で健康な頭髪。説得力があるぞ。さらに事務所内をすばやく一望。これといってすだれハゲのような人はいない。まあ、いたとしても、基本的に男性型脱毛は洗浄剤とは関係ないのだが。
広い別室に案内されて、いよいよ取材の開始である。
「あれはね、台所洗剤と同じなんですよ!」
長谷川さんは開ロー番、合成シャンプーに対して、高らかに宣戦布告をした。
多くの市販シャンプーには、ラウレス硫酸ナトリウム(別名ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)という洗浄剤が主要成分として配合されている。これは一部の育毛サロンにも見られたとおりだ。この成分は、確かに、台所洗剤(あるいは洗濯洗剤)の主要成分でもある。化粧品での表記とは違って、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムと表記されるが、まったく同一のものなのだ。とはいえ、台所に使われているという意味では、石けんだって同じである。
「けれどもね、石けんと合成洗剤だと、もうまったく性質が違うんです」

石けんは残留しにくく肌に優しい

長谷川さんによると、石けんは、すぐに石けんカスになって洗浄性を失ってしまう。この点がじつにいいのだと言う。石けんカスとは、水道水のミネラルと石けん成分がくっついて、つくられるものだ。こうなると、界面活性能力が失われてしまうのだ。
「だから、すすぎがはやい。髪や肌に残りにくい。水であっという間に効果がなくなっちゃうからです。これに対して、合成洗剤はね、そもそもミネラル成分の多い硬水が基本の欧米で、工業用洗浄剤として使用するために、石けんカスになりやすいという石けんの性質をあえてなくそうと開発されたものなんだ」
つまり、合成洗剤は、水道水のミネラルと反応しにくく、石けんに比べるとすすぎに時間がかかる。つまり、髪や肌に残りやすい。これに対して、石けんはすぐ石けんカスになるので、残留性が低く、肌に優しいということのようだ。
洗剤としての性能の低さが、逆に人体への安全を保証しているのだという。これだけ聞くと、いいことずくめのようではあるが……。
ただし、一方でアルカリが悪いってのもよく言われますよね。肌に刺激があるとよく間くんですが。
「だけどね、温泉なんてアルカリ多いでしょ。みんな好きこのんで行くわけです。石けんはpH10程度で、アルカリ温泉も同程度」
確かに、以前愛用していたアルカリイオン水のミネラルウォーターも、9ぐらいはあった。
「アルカリ自体は、そんなたいしたことないです。しかも、肌には中和能力というものがあって、すぐに元に戻ります」
ただ、肌に中和能力があるとはいっても、髪には中和能力はない。アルカリによってキューティクルが開いた場合、脂が内部に浸透するまで待たなければ、あの髪のきしみはなくならないだろう。
長谷川さんによれば、「その場合クエン酸のリンスを髪につけていただけば解消します」とのこと。
ちなみに、このクエン酸のリンス、髪をコーティングしたりするわけではなく、表面のpHを変えるだけだ。弱酸性の水ならなんでもいい。むかしながらに酢を薄めたり、ビタミンCの錠剤を水に溶かしても代用できる。

天皇家と石けんの謎

続いて長谷川さんは、環境問題においていかに石けんの使用が有益であるかを話し出した。こういった問題もじつに重要ではあるのだが、この本のテーマとはずれるので、申し訳ないが割愛させていただく。さて、本題に突入だ。
天皇家は石けんしかお使いになられないというようなことを小耳に挟みまして。それが本当だったら、やっぱり石けんってじつはいいんじやないのか、なんて思ったのですが。
「いや、ちょっと……それは、なかなかコメントできないなあ」
そう言わずに……。
「まあ、その、問題がありますから。どこどこから卸しているとか知られたりしますとね、こう、取引先に迷惑をおかけしたりするのでね」
えっと……取引先? なんでそんな具体的な話になったんだ? 別に太陽油脂が直接この件に関係あるなんて言ってないのだが・・・。
えー、はっきりしたことはおっしやれないと。
「まあ、そういうことで、お願いします」
黒い、黒いぞ、とことん黒い。ピンポイントでこの会社と関係がありそうだ。銀座あたりの有名百貨店から、トラックいっぱいの、太陽印の石けんが、晴海通りをひた走っている様子が目に浮かぶぞ……。
じやあ、つぎ。あのですね、女性誌で、愛子様がアミノ酸系シャンプーを使われているって見たんですよね。サンナホルっていう、1万3000円くらいする超高級シャンプーなんです。芸能人もよく使ってるなんて噂で。一般的に、敏感肌には石けんかアミノ酸かっていう選択があると思うんですが、石けん側としては、どうなんですか、あのアミノ酸系シャンプーは?
「あれはね、よくないです。分類でいえば、アミノ酸系とか、あとベタイン系とかいうものは、両性界面活性剤っていう部類に入るんですがね。もともと、洗浄助剤で手触りとか改善するために入れられていたもんです。結局、こういうのはトリートメント効果とかがある分、頭皮に残留します。
一見、みずみずしい感じがするでしょ。あれが結局くっついているんですよね、肌に。しかも、肌と同じ弱酸性だから、残りやすく、徐々に体に浸透していく。だから、もっといけないですよ」
じゃ! あ、あ、愛子様、大変じゃないスか。石けんをないがしろにした宮内庁の責任問題だ……。
私がけしかけると、長谷川さんも少々興奮気味に。
「しっとりするとかいうのは、肌に界面活性剤が入ってしまうために、そんなふうに思わされてるだけなんですよ。肌のなかで、水と脂が乳化しちゃってる! ダメなんですよ! 女性で髪が薄い人いっぱいいますでしょう? 朝シャンなんかもするもんだから、肌が傷んじゃっているんですよ」
女性の脱毛の原因については、けっこう複雑ではあるが、ヘアケアのしすぎで頭皮が傷んだためという可能性も見逃すことはできないだろう。そもそも、産後でもない女性が、それも若い女性が薄毛になってしまうこと自体、どこかがおかしいと考えざるをえない。

石けんと皮脂と常在菌

かたや、石けんの問題点といえば、やはりいまや相対的にかなり扱いづらいものになってしまった点だ。また、製品によっても大きく使用感が異なる。低洗浄力とは思えないものから、なぜかちょっと洗い上がりが岸くなったりするものまで。この点を長谷川さんに聞いてみた。「使用感の違いは……原材料の違いじゃないかなあ。ウチはたとえば牛脂は使ってないんです。あのBSE(牛海綿状脳症)の影響でね。全部、植物油にしているんだけど」
ただし、髪がきしんでしまうという使用感そのものについては、成分が吸着しないという石けんの利点と表裏一体なので、ある程度、仕方がないという。石けんを使うということは、玄米ご飯を食べるのに近い感覚がある。健康に対する意識が高くないと、なみいる使いやすい製品をさしおいて、あえて使おうという気は起こらないだろう。
「われわれも、これからはいろいろ工夫しようと思っているんですが」
と長谷川さんは付け加える。とはいえ、製品の根本的なところが変わってしまうのも困る。「パッケージを工夫してくださいよ」などとさしでがましいアドバイスをするが、実際そのくらいが限度かもしれない。
で、長谷川さん、どのくらいの頻度で頭洗ってますか?
毎日洗うべきとよく言われてますが・・。
「わたしね、週に2回です」
「いや、毎日洗う必要はないですよ」
長谷川さんは皮脂の重要性を話し出した。いわく・・・誰の肌にも常在菌というものが存在している。この常在菌は、皮脂の一部を分解して脂肪酸とグリセリンにし、汗と相まって弱酸性の皮脂膜をつくる。この皮脂膜が、ほかの有害な菌の繁殖を防ぐ。だから、皮脂はめったに取るべきものではない。洗いすぎは常在菌を失わせることになり、結果的に肌のバランスは崩れ、健康が保たれなくなる。
「むかしだって、そんなに洗ってなかったでしょ。洗いすぎはよくないです」
商品を売る側とは思えないような良心的な台詞で、太陽油脂の取材は終了。洗浄剤としての石けんの株は大いに上がった。ただし、肌に合うものを探す手間や労力はかかる。こうなると、合成界面活性剤側の最先端であるアミノ酸系洗浄剤も気になってくる。いい勝負になるのではないだろうか? さらに取材を続けていこう。最高の洗浄剤を見つけるためにも。
 
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