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医者が勧めるAGA(男性型脱毛症)治療2

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医者が勧めるAGA(男性型脱毛症)治療2

ふたたびパレスクリニック

初体験医者が行うヘアエステ

受付に行くと、そのまま診療室にまわされ、さっそくバイアグラ先生とご対面となった。
「えー、このあいだ採血したんですよね。で、結果が出てますから」
医者はピンク色の検査結果を出す。細長い紙切れで、いろいろな数値が印字されている。
「これ、欄ごとにあなたの結果と、正常値が並んで沓かれているからね。説明するから」
よ、よろしくお願いいたします。
 
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「まずね、一番。FT4っていう数値ね。これはね、甲状腺ホルモン。多くても少なくても髪に影響するからね。これが、あなたは1・345正常だね」
0・88から1・88までが正常値だから、ああ、真ん中ぐらいですね。
「つぎに血清テストステロン値ね。これが・・・これが?」
と、バイアグラ先生は突然押し黙った。沈黙が流れる。

化け物じみた数値!?
私は不安のあまりデータを覗き込んだ。私の血清テストステロン値は、6・0か。それで、正常値は……。
おいおい、0・1から0・9だと? 小数点以下じやないか!
ちょっと待ってくださいよ! 俺、いま、正常値の6倍以上もテストステロン出てるってことスか。明日ごっそりハゲるに決まってるじやないスか!
「いや・・ちょっと待って。これ、違うよ」
(絶望的な声で)……なにが違うんスか?
(溜め息&舌打ち)
「これ、女だ」
と、医者は私の名前の横の性別欄を指差す。「女」と印字されている。
「ああ、間違って女で処理されたんだな。これ、君の数値の横っちょに書いている0・1から0・9って、女性の場合の正常値だよ」
一挙に脱力する。まいった。
医者は、卓上の分厚い本を開いて、男性の正常ホルモン値を調べ出す。
「この本、見てごらん。成人男性のテストステロンは、3・0から8・2.だから、6・0は正常値だよ」
「わはは、よかったなあ。でも、これ名前からわかるよなあ、男だって。あっち馬鹿だなあ」
まったく、軽く薬害っぽい精神的ダメージである。
私のデヒドロテストステロン値発表!
「つぎ、これが一番問題だよ。血中のデヒドロテストステロン値。これが一番関係あるんだ」
5αリダクターゼで活性型になったテストステロンですよね。
でも、いわゆる男性型脱毛は、男性ホルモンが落ち込んでいけばいくほど、どんどん激しく
「そう。これ、正常値は、20代の男性では1600〜5650。30代では1450〜4600。40代で660〜3040」
私は、え!と、2160ですか。
「全然、大丈夫だ。どの年齢でも正常植だよ」
卓上に聞かれた医学書が明らかにしているように、年齢を経るごとに、テストステロンならびにデヒドロテストステロンの分泌は少なくなっていく。10代の思春期がもっとも分泌する年代なのだ。
ここでまた、基本的な謎が再燃する。
なっていくわけじゃないですか? だから、やはりレセプターの感受性の問題のほうが全然重要で、このデヒドロテストステロン値って、測ってもさして意昧ないんじゃないですか?
「うーん、だけどねえ。これが正常より多いとハゲやすいっていうのも一方であるからねえ」
この数値は、後にプロペシアを投与したとき、どの程度阻害されているか比較するためにこそ有効なものではないかと思うのだが。
実際、ここに来た男性型脱毛の人って、例外なくこの数値が高く出ていましたか?
「……まあ、傾向としてはある。飛び抜けて高いと、やっぱりハゲてる人は多いよ」
どのみち、レセプターの感受性が高まるなどの発症メカニズムについては、まだよくわからないことも多い、とバイアグラ先生は付け加えた。
「とにかくデヒドロテストステロン値は年齢で変動があるから、たとえいま少なくても、安心ではないんだよね。数年後にまた測ったら、いきなり正常植より高くなっているかもしれないし。いまのところは……毛穴を掃除することぐらいでいいと思うけどね」
いや、まだ調べられることはある。遺伝子検査によって、レセプターの感度そのものを測ってくれるクリニックが存在したはずだ。その名も城西クリニック。そろそろ予約を取っておかなくてはなるまい。

意外に安い薬物治療代

えーと、ちょっと将来的な話なんですが、たとえば、ここでプロペシアやミノキシジルを処方してもらうとすれば、いくらぐらいなんですかね?
「どっちも1カ月8000円くらいだから、まあ合計で1万5000円くらいね」
けっこう安いんと違いますか?
「高くやってるところもあるね。結局、自由診療だから、勝手に薬の値段決められるんだよね。でも、ウチはもう仕入れ値近くでやってる。ここより安いところは、まずないよ」
以前、日本毛髪科学協会で、医療クリニックで薬物治療を受けると月3万はかかるようなことを聞いた。確かに、それと比べて半額とはたいしたものだ。
あ、そうだ。最後に。今日の検査結果で、仮に、私のテストステロンとかデヒドロテストステロン値がかなり高く出ていたとしたら、いまはまだ大丈夫でも、プロペシアを予防目的で出したりしてましたか?
「いや、できなくもないけど、いま健康な人には、普通はやらない。あくまで治療だから。それにね、安全とはいっても、いろいろある薬だから」
あなたはとくに大丈夫だからということで、せっつかれるようにして、ヘアサロンヘとまわされてしまった。
お医者さまじきじき
そして、石橋先生と二度目の対面だ。「それではヘアエステいたしましょう」と、さらに奥の小部屋に通される。備え付けの洗面台とイス。簡素なサロンルームになっている。
あれ、先生がやってくれるんですか? 全部? マッサージとかも?
「はい、私がやります」
あの、本当に医者ですか?とついつい失礼なことを聞いてしまったが、まぎれもない医者だとのこと。これは最高にゴージャスなエステだぞ。
こうして、お医者さまじきじきの洗髪からスタート。使用するのは資生堂プロサイエンス・シャンプーだ。パンフレットには「ほかの洗浄成分に比べもっとも頭皮・頭髪への刺激性の低いAMTにタウリン類を配合することにより、さらに刺激性を減少」した製品とある。AMTとは、アシルメチルタウリン系という洗浄剤。タウリンはアミノ酸だから、これはまぎれもなくアミノ酸系シャンプーだ。悪くない。資生堂さん、これサロン用なんて言わずに、市販してくれませんか?
洗髪後はトリートメントの塗布。さらに、マイナスイオンによる殺菌効果もあるスチーマー施術が続く。オゾン方式でマイナスイオンを出しているようだから、結局はオゾンスチームと同じである。医療クリニックなのに、マイナスイオンなどという、効果がはっきりしていない施術があるとは……。
こういうの、ちゃんと改善したというデータがあるんですか?と聞くが、「へへ……、まあ。へへ……」
との答え。つまり、ないということか。
最後にマッサージ。なんとお医者さんが、一生懸命に私の頭と肩を揉んでいる。雑で適当だが、優越感にひたれて、なんともグッド……。だったのに、すぐ終わってしまった。10分揉むって言われてたのだけれど。
あれ? 終わりですか?
「ええ、終わりです」
5分しかやってないっスよ。
「(笑いながら)へへ……、終わりです」
(笑いながら)いやあ、まだ5分スよ。
粘ると、医者はプラスー分くらい揉んでくれた。さらに粘ると、プラス30秒。次は15秒くらいだろうか。優しい私はこのくらいで切り上げた。
最後に育毛剤を塗られる。「246プロサイエンス・薬用バイタライザー・シッケンBL」という、やたら長い名前の製品だ。これまた医薬部外品で、内容成分は完璧には把握できないが、細胞活性化成分であるタウリンが目玉のようだ。
こうしてヘアエステが終わり、受付の待合室へ。女性客のなかで落ち着かない気分で会計を待っていると、頭頂が薄くなった中年男性が、ふっと受付に現れた。処方便とシャンプーらしきものを受け取ると、うつむいて、おどおどと足早に帰って行った。
もっと、堂々としてもいいんだ。亜tいことしているわけじゃないのだから……と私は、中年男性の苦しみを我が身のことのように感じながら、手早く会計をすませる。
そしてやっぱり、おどおどと人目を忍ぶように店をあとにしたのであった。

城西クリニック

髪はおまかせ日本最大ヘアメディカル方式

ついに城西クリニックの潜入取材である。ここは、日本最大の毛髪治療グループであるヘアメディカルグループの東京支部だ。薬物による治療のほか、植毛、精神科までそろっているというから、まさしく髪の総合治療院である。
それにしても、ここの人気は大変なものだ。なにしろ、予約がなかなか取れない。私も、一ヵ月半ほど待たされて、ようやくこの日を迎えることができたくらいだ。
場所は西新宿。でかいビルの15階にテナントがある。足を踏み入れて驚いた。すばらしい内装だ。
受付には、仕切り代わりに高価そうな薄い水槽がディスプレイされている。青い照明にライトアップされ、中ではぐるぐると気泡が渦巻いている。水の壁の向こうで、てきぱきと働く看護師が、これまたべっぴんぞろいである。なんたる繁盛ぶりか。まるでニューヨークのセレブ御用達デンタルクリニックだ(もちろん行ったことないけど)。
謎の女医登場!
問診票の空欄を埋めたあと、雑誌をめくりながら順番を待っていると、ついに名前が呼ばれる。同時に、女性の医者が奥から歩いてくるが……女医とは想像していなかった。彼女に連れられて別室に移動するが、どうやら診療室ではない。机とイスだけがある、からっぽの部屋である。
簡単な問診が終わると、診療システムの説明だ。今日の初診は1万5000円とのこと。事前に把握していたが、なんとも高い。ほかの美容・形成外科も調べたが、初診料はだいたい5000円が相場なのに。
「まず、採血検査をしていただきますが、それで問題がなければお薬を処方いたします。そのあとは診療費込みで月3万円です」
薬は1回につき1カ月分処方されるという。このため、このクリニックには月に一度のペースで通うことになる。ちなみに、血液検査は半年に1回だ。
質問はないかと言うので、私は脂と脱毛の関係などを彼女に聞いてみた。
「私は医師ではないので……ちょっと、わかりかねます。あとで、先生に問いていただいたほうがよろしいですね」
あれ、あんた医者じゃないの? 白衣を着ているし、どうやら看護師でもなさそうだ。彼女によれば、カウンセラーだということだが……謎だ。もしかして、このヘアメディカルグループの経営組織の関係者なのだろうか?
気になるプリント
彼女は、最後に薬の注意事項ということで、私に2枚の紙を差し出した。「治療内容説明書」「理想的な一日の流れ」と書かれたプリントだ。淡々と注意事項を話し出す。
「お薬の副作用で、めまいとか立ちくらみとかが起こることがあります。もしそういう症状が出たら、先生にご相談してください。あと、なにか体調が悪いときも、お薬の量を調節しなければなら
ないのでお知らせください。ほかの病院でもらったお薬も、全部教えていただくことが必要です」
机の上に広げられたパンフレットには、巨大な赤い字で「お薬を勝手にやめてはいけません」と書いてある。ミノキシジルに関する注意であることは確かだ。よく知られているように、降圧剤はいきなり止めてはならない。降圧剤から離脱するためには、徐々に投薬量を減らす過程が必要となる。突然の断薬はリバウンドによる血圧の急上昇を招き、人によっては死亡する可能性があるのだ。
とはいえ、断薬についてまで指図するようなことは、塗布の使用のレベルではあまり聞くことがない。手元の「治療内容説明書」を見ると、「治療中一時的に体毛が濃くなることがあります」とのただし書きがある。これは明らかに、経口の際のミノキシジルの副作用だ。
もしかして、パレスクリニックでは「まともな医者なら投与しない」と言っていた飲用のミノキシジルを扱っているということなのか……。
謎の女性は注意事項をあらかた読み終わったあと、「私どもではこういった製品をつくっているんですが」と、シャンプーやコンディショナー、そしてサプリメントなどのパンフレットを広げた。
「治療効果を高めるためにこういった製品もお勤めしております。受付で購入できますので、ご検討ください」
「理想的な一日の流れ」というスケジュール表にも、このヘアメディカルグループが販売しているシャンプーやコンディショナーあるいは健康食品が、すべて組み込まれている。けっこう手広くやっているようだ。
さて、診察の前に調べることがあるというので、ホンモノの看護師に連れられて、別室に移動。
まず、写真撮影。「下を向いて、もっと下!」などとガミガミ言われながら、頭部にカメラのフラッシュを受ける。続いて体脂肪測定だ。手を伸ばして金属の棒を握ると、私の体脂肪率が白日の下に数値化される。18%? げ、イチローより10%も多いが……。「デブですか?」と聞くと、そんなことはないらしい。男性の場合、20%くらいまでは適正とのこと。

脂は取ってもしょうがない!

待合室に戻り、30分ほどで再度呼び出しを受ける。ついに医者と面談だ。
診療室に入ると、大柄の、というか太った医者が、こちらを見て微笑んでいる。強いて言えば、眼鏡をかけた若乃花。年齢はまだ若く、おそらく30なかばと思われる(ついでに体脂肪率もそのくらいか)。髪は、やや短めに刈り込んでいる。とりたてて薄くはないが、地肌は少々見えている。
「あー、あなた、必要ないみたいですがねえ……」
開ロー番、甲高い声で若乃花先生は言った。
「どこが気になりますか?」
いえ、一年くらい前、ちょっとよく抜けたんですね。透けた感じになりました。いまは……
どうかな、あまり変わってないような気がするんですが。
「抜けたの、ストレスかもしれませんね。遺伝的な要因はどうですか?」
父が50代なかばで、薄くなってますね。
「じゃあ、遺伝ありますね。生え際は実際どうですか? どんどん後退していますか?」
ええ、眉毛から手のひらすっぽり入りますね。
「ああ、でもそのくらいは年相応じゃないですか。29ですよね。自然現象の範晴ですよ。明らかに、急速に額が広くなってきたとかそういうことだったら、考えたほうがいいですけどね」
私はかつて育毛サロンに行ったことを告げ、脂が多いかもしれませんと告げた。若乃花先生は私の髪をかき分けて地肌を見る。
「……うーん。でもね、午後に行ったんでしょ?」
はい、たいてい午後に。
「それじゃ誰だって脂はいっぱい出てますよ、これはまったく普通です。普通の頭というか男性特有の頭」
そうだ。言われて気づいたが、確かに、脂が多いだの少ないだのは、来店時間で大きく変わっていたのだ。アホだ……気づかなかった。
「脂が詰まって抜けるってことはないです。抜ける人が脂っぽいだけです。脂で抜けるなんてことはないんです」
じつは、ほかの医者にもそう言われたんですよ。てことは、脂は取っても仕方ないんですか。
「取っても、出ます。つぎつぎ出ます。取ってもしょうがない。ぼくはそう思いますよ。……まあ、でも、取るにこしたことはないです」
むう。なにを言っているのかわからないぞ。
つまり、脂で髪がどうこうなりはしないけれど、清潔にしておくのにこしたことはないということですか。
「そう思いますよ、ぽくは。だから、ウチでもシャンプーつくってますから、それで毎日洗ってくれればいいです。まあ、育毛サロンのことをどうこういうわけではないですが……(にやりと笑う)医者の立場から言わせてもらえば、われわれは、そういうところでダメだった人を相手にしてますからね。洗ったりマッサージして生えるんなら、誰でも生えるでしょ」
あのですね、こういう説明も受けているんですよ。皮脂腺の中でできるデヒドロテストステロンが脂に入っていて、それ自体が毛根に作用してしまうから、脂は取らなければならない。
「ねえっスよ」
と、医者は私が言い終わらないうちに、吐き捨てるように言った。
「そもそも、基本的に脂はデヒドロテストステロンでなくて、むしろテストステロンでも出ます。
もちろん、脂の中に全然デヒドロテストステロンが入ってないとは言いませんよ。けれどね、毛乳頭でつくられて作用するものに比べたら、全然問題にならない程度スよ」
ここらへんの説明は、パレスクリニックと正反対、というよりいわゆる一般的な脱毛のメカニズムだ。脂は男性型脱毛を促進するものではない。こうとらえても、いいのだろうか?
ヘアメディカル製品をお使いください
それではヘアケアについて聞きたいんですが、やっぱお勤めはアミノ酸系シャンプーになりますか?
「基本的にシャンプーってのは弱酸性のアミノ酸系。それはもう、ずっとむかしから言われてることですよ。これはもう当たり前のことで、いまさら始まったことじゃないスよ」いや、市販のはそうでもないみたいですが……。
「それじゃ、ぼくがお勤めしましょう」
と若乃花先生は、自社製品を説明し出した。
ヘアメディカルグループの独自製品であるMDスカルプシャンプー。これには、3つの種類があるという。まず、皮脂の多い人のためのタイプー。普通の男性用で、脂がよく取れるという。つぎに、血行促進成分が多く入っている冷え性の人向けのタイプ2.最後に、界面活性剤が少なくマイルドな敏感肌の人向けのタイプ3。
通常価格1本7350円のところ、クリニック特別価格で5880円。
肝心の洗浄剤の名称は医者も知らず、製品も医薬部外品であるため把握できなかったが、アミノ酸系界面活性剤が主体であることは間違いないようだ。
このMDスカルプシャンプーのパンフレットとしてついてくる「髪の洗い方マニュアル」では、こんなふうに説明されている。
「NPO法人フューチャー・メディカル・ラボラトリーの医師たちの考え方としては、市販されている一般的なシャンプーやコンディショナーは、洗浄基剤として合成系の界面活性剤を使用していることが多く、基本的に頭皮や身体に害を及ぼすものと考えています」
フューチャー・メディカル・ラボラトリー。ヘアメディカルグループと関係の深い組織だ。理事長はリアップなど数々の育毛剤を監修した武田克之徳島大学名誉教授だが、これを読むかぎり、彼も合成シャンプー反対派だったようだ。ですけど武田先生、プレ・リアップシリーズのシャンプーは合成系の界面活性剤の代表であるラウレス硫酸ナトリウムが主要成分となってますが、リアップの監修者としてどうお考えになられますか……?・ それに、アミノ酸系洗浄剤といえど、合成系の
界面活性剤には違いないのですが……。
ともあれ、このMDスカルプシャンプーは「頭皮や毛幹にとって害を及ぼさぬように」つくられたものであるという。
若乃花先生はシャンプーについては一家言もっているようで、さらに説明を補足してくれた。
「界面活性剤っていうものが、そもそも肌にはよくない。こういった成分は肌に炎症を起こす可能性すらある、だけどそれを使わないと汚れが取れない、こういう矛盾があるんですよ。でも、使わざるをえないから、いい界面活性剤を選んだり、濃度を調節して洗浄力に差をつけたりして、いろいろとわれわれは研究している。あと、よい天然成分もたくさん入れてるんですよ」
でも、天然成分とか入ってても、結局すぐいっしょに流しちやうわけで。効果は期待できるんですか?
「まあ、そういうのはおかず。そういうふうに考えたほうがいい。
シャンプーで毛が生えるってこと、聞いたことある? だから、ここで処方されるお薬が第一で、あとはおかず」
(ぼそりと)おかずが高くつくのは困りますけどね……。

飲むタイプのミノキシジル出します

最後に若乃花先生は、以下のように私の診断をまとめた。
一時期多く抜けたのは、ストレスの可能性がある。また、現状は年相応といえるが、家系から判断すると遺伝的に男性型脱毛の疑いはぬぐえず、将来的にいつスイッチが入るかはわからない。
「だから、ここで遺伝的傾向調べればいいんですよ」
ありがたい申し出だ。もちろんそのために来ているのでもある。はたして、お値段はいかはどか。
「遺伝子検査費が1万9000円。あと今日の初診料は、お薬処方しないので採血しないから1万円。だから、今日は2万9000円かかるね」
高えな……。
思わず言ってしまう。おいおい、「iPad」が買えるじゃないかと、俗な考えが胸に渦巻く。しかし、未来の自分の状況を知るためには仕方ない。持ち合わせが足りないので困ったが、クレジットカードで支払いもできると言うので了承する。
「それで、もしレセプターの反応性が高いと出たら、予防でプロペシア……つまりフィナステライド出すこともできますからね」
それって、大丈夫なんですか?と思わず聞いてしまう。
「ぼくら統計もってますから、必要であると判断したら出しますよ。でも、使ってみなきゃわからない。それでもダメだとしたら、植毛とかみなさんそうしてますから。ここで全部まかなえるんですよ。なにもかも大丈夫ですから」
なんだか、イケイケドンドンといった感じの、かなりマッチョな方針みたいだが……。
薬を使っても思ったほど効かない人は、やっぱりいるんですね?
「検査して感受性が高ければ、それは効きやすいけど、効果は人それぞれですから」
とすると、100%近く発毛するなんて言っている育毛サロンとかもあるんですが、あれはお医者さんから見たらどうなんですか?
「(苦笑)リーブ21なんかはね、薬使ってるみたいですよ。実際、いまここに来るお客さんも言ってますからね。でも、たぶん、ここと同じことまではしてないんじゃないかなあ」
どういうことですか?
「(誇らしげに)ウチでは飲むタイプのミノキシジルも出しますから」
予想が当たった。しかし、こいつは、パレスクリニックで「まともな医者なら処方しない」とまで明言されていた危険な薬のはずだが……。
本来、すでに使用されていない降圧剤ですよね。飲むとなると、副作用がかなりあるんじゃないですか?
「ないっスよ」
若乃花先生は平気な顔で言う。
「あったら、ぼくらこんなゆっくりしたこと言ってられませんよ。まあ、量は調節しますよ、少量でも生えることは生えるんですから」と、余裕たっぷりな回答だ。
ほかにも投与する薬はあるのだろうか? パレスクリニックで使用するという、スピロノラクトンなどのアンドロゲン遮断薬(レセプターに先回りして封じるもの)、また女性ホルモンのピルなどは扱っているか聞いてみた。
「まさか、そんなものは使いませんよ。男性にとって危険でしょ。だって、それ、デヒドロテストステロンだけでなくテストステロン自体も働かなくしちゃうんだから。おかまになっちゃうでしょ」
おいおい、なんてことだ。かなりマッチョだ。同じ毛髪治療クリニックといっても、パレスクリニックとは、まったく正反対の方針である。わけがわからない。どちらを信じろというのか?
予防すべきか、せざるべきか……
「じゃあ、採血してもらって、その結果を見て治療を決めましょう」と、若乃花先生はこの診察を締めくくった。
さきほど写真を撮られた部屋で採血。これで私の遺伝子情報が第三者の手に渡る……と考えると、ちょっと怖い。遺伝情報はプライバシーのなかのプライバシーだ。もちろん、いい気はしない。
会計はクレジットでお願いする。読み取り機にカードを通し、出て来た紙にサインし、今日の取材はすべて終了。帰り際、シャンプーを勧められたが、とりあえずパンフレットだけいただいた。
さて、勢い余って遺伝子までさらけ出してしまったが……。仮に感受性が激しく高いと出たら、プロペシアによる予防を勧められるかもしれない。それを服用すれば、確かに予防はできるだろう。
しかし、そこまでするべきなのか? ハゲたらハゲたでいいじゃないか? いや、それも困るしな……。いったい、私は髪とどうつきあっていくべきなのだろうか。いまさらながら根本的な問いに思い悩みつつ、クリニックをあとにしたのだった。

藤澤皮膚科

洗いすぎてはいけない脱ステロイド・スキンケア
今回は、藤澤皮膚科に潜入である。ステロイド剤(副腎皮質ホルモン。強力な抗炎症作用をもつ)を可能なかぎり使わずにアトピーを治す療法を、脱ステロイド療法という。藤澤皮膚科は、この療法を提唱する皮膚科のなかでも筆頭格の存在だ。このため、目下、皮膚科医の主流を成す日本皮膚科学会と激しい対立を繰り広げている。
現在、日本皮膚科学会の理事長は東京大学大学院医学系研究科の玉置邦彦教授だ。となると、脱ステロイド療法の先陣を切る藤澤皮膚科に潜入すれば、以前受診した東大病院と対極の情報を手に入れられるかもしれない。私は、また新たなるヘアケア術を得んがために、一路、練馬区の西武池袋線大泉学園駅へと向かった。

ステロイドvs脱ステロイド

じつはこの藤澤皮膚科、04年6月に、治療行為の是非をめぐって元患者に訴えられ、敗訴している。脱ステロイド療法における医師の過失が初めて認定されたため、話題になった事件だ。
原告はアトピー性皮膚炎の8歳の女の子とその家族。女の子は99年、別の病院でアトピー性皮膚炎と診断され、00年4月から藤澤皮膚科に通院。ステロイドを使わず、別の塗り薬などを使う治療を約3ヵ月間続けたが、全身に湿疹が広がり、約3分の2の頭髪が抜け落ちたり高熱が出たりしたという。
判決では、医師の処置が不適当だったとして640万円の賠償命令が藤澤皮膚科に下された。また、ステロイドによる「適切な治療」を施すため、女の子には金沢大学に入院する処置が取られた。
金沢大学はステロイド推進派の屋台骨として有名だ。日本皮膚科学会内の「アトピー性皮膚炎・不適切治療健康被害実態調査委員会」の委員長であった竹原和彦医師が所属している大学である。
この一連の事実が示すように、脱ステロイド治療は、炎症のコントロールが効かなくなることが多い。とくに、強力なステロイド治療を行っていた人がそれを止めると、抑えていた炎症が一気に表面化し(いわゆるリバウンド)、壮絶な苦しみを味わうことも、まれではない。こうした治療は、ステロイドによって症状を抑えていく手法を取る現代の主流医学にとっては、まったく受け入れがたいものだろう。また、得体の知れぬ民間療法などのいわゆるアトピービジネスに付け入る隙を与え
ることも確かである。
ただし、その一方で脱ステロイド治療により回復した人も少なくない。ステロイドの長期使用は、免疫機能を低下させ、感染症にかかりやすくさせたり、ひどい皮膚炎を併発させたりするため、そもそも望ましいことではない。完全にステロイドに依存していた重症のアトピー患者が、それなしで生活を送れるようになったという事実は重要だ。
リウマチや喘息など、長らくステロイドで症状を抑え続けねばならない慢性病はほかにも多いが、少なくともアトピー性皮膚炎の場合、その治療にステロイドが必ずしも必要でないことを示した点は評価すべきだろう。一定の成果をあげている医師による脱ステロイド治療には、それ相応の価値を認めるべきではないだろうか?
目下の興味は、こうした脱ステロイド治療を行う医師がいかなるヘアケア術を授けてくれるのかということだ。
医院は大泉学園駅からほど近い、小さな雑居ビルの中にある。
平日午後5時半。裁判で負けたから、閑古鳥だろう……などと軽い気持ちで足を踏み入れると、受付近くまで人がぎっしり。さらに、上階が待合室になっており、そこも人でいっぱい。大繁盛だ。
患者は子どもからおとなまで年齢問わずといった感じだが、やはりアトピーが多いようだ。顔全体が赤く腫れている女性など、なにかただごとではない。
受付にどのくらい待つか間くと、2時間はかかるとのこと。結局名前が呼ばれたのは、3時間近く経過したころで、私はその間、外出許可をもらいロイヤルホストで食事をし、帰ってきてからさらに数冊の漫画本を読破してしまっていた。

藤澤医師登場!

衝立で仕切られただけの診療室へ足を踏み入れる。
院長の藤澤重樹医師は49年生まれだから、55歳である。その歳にしては、老けている。惜しいかな、白髪のうえ、髪も薄い。おでこが丸見えで、完全な男性型脱毛といえる。それに、かなり疲れているようだ。目がしょぼしょぼしている。このとてつもない数の患者を毎日毎日さばくとなると、かなり重労働なのだろう。さらに、木曜日には日大板橋病院でアトピー外来まで請け負っているという。お忙しいところ、私ごときが来て、すみません……。
髪の相談は後回しで、皮膚から診察してもらう。ちょっとしたテストというか、実験である。私はスラックスを引き上げて、くるぶしを出して見せた。100円玉ほどの範囲に4〜5個の小さな湿疹が散らばっている。
これ、アトピーではないんですか? 去年くらいから出てるんですよ。ときどき、ここだけそれで、ですね。この湿疹、じつはちょっと前に地元の皮膚科にも診てもらったんです。
プツプツ出てきて、ちょっと偉くなります。
「これはただの湿疹だね。で、きみ、ほかにアレルギーはある?」
花粉症や鼻炎にかかりやすいことを話すと、「アトピー性皮膚炎ではないけど、アトピー体質ではあるね」。アレルギーが出ないように気をつけねばならないらしい。
そう、私はこの取材に先駆けて、別の皮膚科にかかっている。藤滞皮膚科と診察内容を比較しようと思って、地元の町医者を受診してみたのである。
そこは、家族で経営しているらしき、自宅兼用のおしゃれな建物の皮膚科で、ピアス開けやイオン導入によるニキビ治療なども行っているところであった。医師は、痩せぎすで地黒の若い医者(おそらく20代後半で、名字から察するにおそらくここの息子。将来の院長か?)。彼が、私の湿疹に処方したのは「メサデルムクリーム」なる塗り薬。とくに使用法に関する説明はなかったが、処方箋を見ると「効き目がとても強いステロイドです」とある。気になってどのくらい強いのか調べてみると、「非常に強力」というランクに位置することがわかった。ステロイドの強さは最強の1群から最弱の5群までに分かれており、これは2群に属するという。「お薬110番」というサイトでは、メサデルムについてつぎのような注意書きがある。
「かなり強力なので、症状の重いときに用いるほか、苔癖化した湿疹など皮膚が厚くなっている部分に適します。一般的に、顔など皮膚の薄いデリケートな患部には使用されません」
私の湿疹は、3〜4つ程度のほんの小さな出来物が浮いている程度だ。普通の人なら、ほっておくだろう。しかも、肌は苔癬(たいせん)化などしておらず、患部の皮膚はなめらかだ。あの若い医者自身も「たいしたことはない」と明言していたし、素人目でもそんなにひどい様子ではないのだが……。
使用法の注意すらなかったのも気になる。1日3回、薄く塗る。—週間使って改善されないなら、すぐにやめる口頭でこの程度の説明は欲しかったところだ。
さて、藤澤皮膚科の潜入に戻ろう。
で、このメサデルムっていう薬なんですが、結局、使おうか迷ってまして。まあ複数の医者にかかるのはいまや常識っていうんで、こっちにも聞いてみようかと思って来たんです。
藤澤医師の顔をうかがうと、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「この程度のものに、そんな強いステロイドを出して……」
抑えた口調からでも、本気で怒っている感じが伝わってくる。やはり、藤澤医師にとってもありえない薬だったようだ。ここまでとは想像していなかったが・・。
あの若い医者、いろいろしつこく質問したから、俺に対して嫌がらせしたんじゃないだろうな。
医者のなかには、患者には抗生物質を安易に与えるくせに、自分の家族にはできるだけ与えないなどというのもいるというが……などと考えていると、突然私のスラックスのポケットから、ガリザリガリバリバリリリリ、と巨大な音が鳴り出した。きゃあ、と背後で看護師が叫ぶ。
ヤバい。なんてことだ、録音用のポケットレコーダから音が出ている! しかも、最大音量だ。
きっと、くるぶしを出したまま動いたため、ポケットの中でホールドスイッチがはずれて再生ボタンが押されたのだ。こりゃ城西クリニックの中を私が歩いている音だ。あろうことか、藤澤皮膚科内に城西クリニックが出現してしまった。
一瞬血の気が引いたものの、私は冷静に対処した。ポケットの中で停止ボタンと録音ボタンを押し直し、今度こそしっかりホールドをかける。なにをやっているかバレたろうか? うーん。弁解しようかな、と思ったがやめる。
背後で看護師が、「なに、いまのいったいなに?」と騒いでいるが、藤澤医師はポケっとしているし、なかったことにしましょう。強引に潜入取材続行だ。

脂は取りすぎない、シャンプーは使わない

それでですね、皮膚のケアなんですが、どうやったらいいんですかね。
「体は洗っちゃダメなんだよ、こう、ごしごしこすったりね、絶対ダメ。お風呂にもそんな入らなくていいよ。入るときは洗浄剤とかは使わないでね」
……風呂に、入らなくていい? 呆然としている私に、藤澤医師は言う。
「あのね、脂とか垢っていうのは、体を守るために出ているんだから、ついていて悪いってことはないの。そんなに取るものじゃないんだよ。こういう考えが、いまどんどん出てきているんだよ」
と、藤澤医師は卓上のプリントを私に渡す。
「日経ヘルス」(日経BP社)掲載記事のプリントである。アトピー・乾燥肌治療に関するもので、国立病院機構九州医療センター皮膚科科長の今山修平という医師が筆を執ったものだ。
「肌をふやかさない 保温剤もつけない 「風呂断ち」療法で肌のバリアが回復する」と小見出しがあり、「わき、陰部、足の裏、足の間のみ石けんで洗う」「髪・頭皮は湯ですすぐ(シャンプーは使わない)」「顔や体は極力濡らさない」と、風呂断ちのやり方が説明されている。この方法によって、外界に対応するために人体が自ら適切な皮膚状態をつくり出すという。
五木寛之氏をさらに超えて
あえてなにも手をかけないことで、人体の自然治癒能力を引き出す。こいつはすさまじく「非常識健康法」に近い。だが、これを忠実に実行するとしたら、「頭皮は湯ですすぐ」だけだから、シャンプーは永遠に使わないってことになるのか? 無理だ……そんなこと!しかし! しかしですよ。
これね、乾燥肌とアトピーの対策じゃないですか? これ、私がやってもいいんですか?
「でもね、君もアトピー体質だよ。
アトピーに限らず、脂っていうのはね、大切なんだよ」
とくに乾燥肌でない普通の男性でも、頭をシャンプーで洗わないほうがいいんですか?
「うん、どうしても髪の汚れが気になるなら、2〜3日にいっぺんくらいなら、まあいい。でも、肌のためにあまり強いシャンプーとかで洗ったりはしないようにね。
頭皮に負担かけないようにね」
いや、あの自分、脂がちょっと多いと言われたこともあってですね。いや、そうでもないらしいんですが、まあ、ちょっとこれ見てくれませんか?
私は自ら髪を選り分けて、ずいと頭皮を藤澤医師の鼻先に押し出した。
「いや、とくに普通だよ」
でも、以前ちょっと抜け毛が多くなってですね、ここらへん透けたんですよ。
「うーん、でも、この毛量は年齢相応でしょう。髪はね、男なら歳を取ると抜けちやうんだよ。それが自然なんだよ。でも、もし一時期、変に抜けたというなら、洗浄剤が強かったかもしれない。石けんにしなさい」
不安になって来たんだね
もはや未承認薬について見解を聞くとか、そういうムードではまったくない。別世界だ。イメージ的には、上野公園のあたりに近い。呆然としていると、藤澤医師は優しい目で私を見た。そして一言。
「そうか、君……不安になって、来たんだね」
なんだ、一瞬、心を動かされてしまったぞ……。初めて、患者というか人間として取り扱われた気すらする。
このとき、裁判の結果にかかわらず、ここが繁盛するわけがなんとなくわかった。こういった人柄でなければ、患者に我慢を強いる脱ステロイド療法などできはしまい……。
「それでね、この足の湿疹だけれどね、痒みがひどくないようなら、あまり洗ったりしないで様子を見ていいと思うよ」
しかし、こちらとしては、この医師がこの湿疹にどんな薬を出すのかちょっと興味が沸いている。
痒くなったらどうしたらいいかしつこく聞くと、「うーん、君、家が遠いのか。そうしたら、いちおう処方しよう。痒くなったら使ってみて」とのこと。ラッキーである。
こうして受診が終わり、会計をすませて薬局へ向かう。壁には、藤澤医師の対談記事が壁に貼られており、「一年間に1回しか入浴しないチベットでは、アトピー患者が存在しない」という彼の発言が見られた。
もちろん、チベットにアトピーがいないとしても、その要因はほかにいくつも考えられる。みんな体に寄生虫がいるとか、空気がきれいでアレルゲンが少ないとか……。とはいえ、洗浄回数は少ないほど肌にはよいのではないかという考えは、常在菌のレクチャーも受けている私にとって魅力的であった。現実的にどこまで私に可能かはさておいて。
薬局からいただいた薬はグリパスC。痒みを抑える抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンが主成分だ。地元の医者と比べてみると、あらためてその治療方針の違いが明らかだ。同じ湿疹に対して、かたやかなり強いステロイド剤、こちらはムヒのような痒み止めである。
クリニックの取材でも感じたことだが、同じ医者といってもこれほど違うと、もうなにを信じたらよいのかわからなくなる。たとえばフケ症の治療でも、同じ治療法にはなりえないだろう。
複数の医者にかかってみることがどれだけ重要か、思い知らされた取材であった。

ふたたび城西クリニック

これが私の遺伝子だ!謎のナンバー23‐16
最後の潜入取材は、ふたたび城西クリニック。ついに、遺伝子検査の結果発表である。
この1カ月あまりの間に、どこかの誰かが私の遺伝子をのぞき見て、ハゲるだのハゲないだの、将来は前立腺がヤバいとかヤバくないとか、やっていたのだ(この遺伝子検査は、男性ホルモンレセプターの感度調査なので、泌尿器科における前立腺病の遺伝子診断とほぼ同じととらえてもいい)。
医師は……あれ? 前の若乃花先生ではない。今度は、なんか岩城混一みたいな感じのダンディなおっさんだ。髪はちょっと白髪まじりという感じだが、豊かなほうだろう。
「前回、遺伝子の検査をご要望されましたね」
声も、いい感じに枯れていながらどこか優しい。こいつはモテるぞ。
「こちら、結果が出ていますので、まずお渡しします」
謎のナンバー 23ー16
渡された紙には「andr0gen receptor 遺伝子多型」と書かれている。
そして「検査結果」として、「CAGリピート数23」「GGCリピート数16」と記されている。
「ちょっと説明させてもらうと、これはアンドロゲン、つまり男性ホルモンのレセプターの遺伝子の解析なんです。ただ、ひとくちに遺伝子っていっても、いろいろな構造があってね。これは塩基というものがいくつもつながって構成されている。……ちょっと生物の勉強みたいになっちやうんだけどね」
岩城医師はニヒルに笑いながら、紙にアルファベットを書き出す。C、A、G、T。
「シトシン、アデニン、グアニン、チミン。この4つの塩基の組み合わせによって、あらゆる塩基はつくられている。そのなかで、CAGの配列がいくつもいくつも繰り返されて並んでいるところがある。これが、男性ホルモンのレセプターに関するところであろうといわれてるんです。あと、GGCの配列が多いところもそうであろうと分子生物学ではみなされている。この2ヵ所の数値をデジタルで解析して、どのくらい繰り返されているかを数値化するものが、この検査なんです」
それが、このリピート数ってヤツですか。
「そう。たとえば、あなたの場合、CAGリピート数は23.そして、GGCリピートは16。これを足すと、39になります」
まわりくどくて嫌な予感がする。もしかして、悪い宣告が待っているのか……。私がハゲ体質なら、もう、はっきり言ってくれ!
「そして、われわれのデータでは、このあなたの39という数値は……」
(イライラしながら)リピート数は?
岩城医師は、軽く咳払いをして私を見た。芝居はいいから、早くしろ!
「ハゲやすいともハゲにくいともいえない境界域とみなしています。細かくいうと、39に加えて40、41。この3つの数値は、男性ホルモンの影響を受けやすいとも受けにくいともいえないと考えられます」
なんだかよくわからないけど、ついに、結果が出た。なんという、ありがたいことか。そして、まわりくどかったことか……。
親父には悪いが、私はあんまり遺伝的体質を受け継いでいないようだ。ほんと、親父すまない。
えIと、つまり、私はまあ普通というか、平均、真ん中ってことですか?
「ええ。まあ、そう考えてもいいです」
医師の説明によると、
このリピート数が多いほどハゲにくく、少ないほどハゲやすいそうだ。つまり、39以下はハゲやすい。41以上はハゲにくい。
「そう、反比例。まあ、分子生物学ではこういわれているわけですね」
てことは、39の私は境界域のうちでも、いくぶんハゲやすいほうになるが。
「まあ、そうですが。けれど、ひどくハゲやすい場合、34とかもいます。逆に43、44といった人も平気でいるんです。それを考えると、あなたはボーダーライン。年齢相応に近いハゲ方をすると思われます。もし、いまよく抜けるとしたら、ストレスとかほかの原因を疑ったほうがいい」
私の場合、生活習慣ならびにストレス管理、ヘアケアが重要であるという。
実際、ハゲている人は軒並みこの数値が低く出ていますか?
「まあ、そうですね。傾向としてはあります。プロペシアなどの抗男性ホルモンを服用した場合、効果が高いですね。そういう方には、男性型ですから、ぜひやりましょう!という感じです」
たとえば、私くらいの数値の人に、予防でプロペシア出したりは……。
「いやあ、しませんね。効果が弱いですし、ほかの要因だと考えられますから。ただし、この数値が34とか、かなり危うい人には、まあ予防として服用することも勧めないわけではないです」

脂は男性型脱毛と関連しない

では、どんなヘアケアをしたらよいのか。まず、脂が脱毛原因であるという説について尋ねた。
「脂で抜けるということは、男性ホルモンとは別次元ですね。ただ、まれにですが、過剰な脂が炎症反応を起こして抜ける場合はあります。でも、地肌が真っ赤っかになったりした場合ですよ」
この見解は、東大病院をはじめ多くの皮膚科と共通する。通常の男性にはほとんど起こりえないようだ。
つぎに、脂の中にデヒドロステロンが入っているため、脂自体が男性型脱毛を促進するという説の真偽を問いただしてみる。
「いやあ、ないね。ない、ない。そんなことより、毛乳頭周辺で起こっている反応が問題とされますよ」
さらに、シャンプーについての考え方をうかがう。
「市販のシャンプーは女性のためにつくられているから、毛のキューティクルの補修とかそういうところにばかり目が行きがちです。頭皮にもいいものとなると、ほとんどないですね」
岩城先生はMDシャンプーのパンフレットを私に差し出した。男性には洗浄力の強いタイプーをお勤めするという。
あの、先生はなにをお使いになってるんですか?
「ぼくですか? ぼくは……あの、タイプ3ですね」
え、やっぱりマイルドなのを使うんですか? もしかして、乾燥肌なんですか?
「イヤ、脂はよく出ますけども、まあぼくはこう髪が長いので、タイプーだとごわごわしちゃって。
だから、まあ3つめのものを使ってます」
と、なにかバツが悪そうな顔で微笑む。
石けんについてはどう思いますか?
「あれは、洗浄力がすごく強い。いくら無添加でも、人間の肌にはよくないと思いますよ。炎症が起きやすい。しかも、こう、ゴワゴワガシガシきちゃうでしょう?」
これは、予想しない答えだ。石けんは(確かに製品によってばらつきはあるが)低洗浄力である。というより、ここのMDシャンプーの説明書にも「天然成分の石けんを使用して洗髪するのがよいのですが現実問題として十分に汚れが取れなかったり」とある。基本的事実については社内で合意に達していてくれないと混乱するじゃないか。
「まあ、あなたは今回は治療の必要はないと思われます。シャンプーは受付でも売っていますのでご検討ください」
私は礼を言って退出。こうして城西クリニックの取材は終了した。

遺伝子検査はどこまで有効か?

私の遺伝的傾向としては、とくに男性型脱毛が進行しやすいタイプではなかった。ただし、この結果をそのまま鵜呑みにもできない。
たとえば、私は、前立腺関係の疾患に関しても、とくにかかりやすい体質ではないということになる。だが、リスクを高める生活を続けていれば、その限りではないだろう。
前立腺の病気は、明らかに増えている。前立腺ガンは、現在アメリカで死因ナンバーワン。欧米型のライフスタイルを踏襲していくかぎり、いずれ日本でも死因のI位にのぼりつめることだろう。
仮に遺伝的には前立腺の病気にかかりにくい人であっても、後天的な要因によって発症・進行し、命にかかわる大事態に陥っているわけだ。事実、若年性前立腺ガンなども増加しているという。ホルモンバランスに大きな影響を与える環境ホルモンの関与も取り沙汰されているから、これは間違いなく、後天的な影響である。
となると、同様に髪に関しても、男性型脱毛にかかりにくいはずの私が、なんらかの影響で、いきなり若ハゲを発症し、予想を超えたスピードでサムライ化してもおかしくはない。
結局、男性型脱毛に関しては、まだまだ研究不十分な段階なのだ。そもそも、遺伝子一般の作用機序もまだ十分に解明されていない。「遺伝子は単独ではたらくわけではなく、第一の遺伝子が活性化されることによって第二、第三の遺伝子が次々とはたらきはじめるのが普通です」「ある生物学的現象は多数の遺伝子の協調の結果生じることであって、たった一つの遺伝子によって決まることではないのです」(前掲「毛髪を科学する」)
今回解析した遺伝子とて、男性型脱毛発症における単なる一因子以上のものではない。体のどこで、どんな遺伝的なスイッチが、いつ、なぜ入るかは、わからない。
しかし、すべての取材が終了した。いま、私は態度を決めなければならないようだ。いかなるヘアケアをするか、育毛剤は使うのか、いずれ発毛剤にまで手を出すか……。いったい私は髪とどうつきあっていくのか? 脱毛博士、君は髪になにをしてあげるのか? 私は、髪になにをしてあげるのか。

「つくられたもの」を疑え

もう30になりました。いまのところ、3日にいっぺん、洗浄剤を使って洗髪することにしています。それ以上洗髪の間隔を開けると、不快感が先立って、なかなかむずかしいです。1週間我慢したら、痒くて死にそうになりました。
洗浄剤は、アミノ酸系シャンプーにするまでもありませんでした。運よく見つけた使い心地のいい石けんを使用してます。安くてラッキーです。あと、皮膚を大事にしようと心がけているので、育毛剤は使わなくなりました。効果が怪しいため、サプリメントも摂っていません。その代わり、野菜をよく食べてます。
こうしていると、そんなに変わりはしないものの、前頭部の透け感はあまり気にならなくなってきました。頭頂部の縮れ毛がなくなったことも付け加えておきます。なぜだか、さっぱりわかりませんが、あの陰毛のような毛には、ほとほとまいっていたので、かなりラッキーです。
これは、あくまで「私の場合」である。
AGA(男性型脱毛症)には、単純に決着のつかないたくさんの問題を残しているのだから。
髪を毎日洗えばいいのか、そうでないのか。
石けんを使えばいいのか、アミノ酸系シャンプーのほうがいいのか。
プロペシアや飲用のミノキシジルは、扱うには危険すぎる代物なのか、そうでないのか……。
専門家から、たくさんの回答があったのはご存知のとおりだ。誰の言い分から、どんな論理を導き出すかの選択は、各人の自由だ。最終的には、その人のライフスタイルの問題に帰すと思われる。
ハイリスク・ハイリターンの未承認薬治療に挑む決意を固めた人もいるだろうし、あるいはいくつかの育毛サロンに心惹かれた人もいるかもしれない。ただ、筆者としておさえておいてほしいのは、以下の点だ。
①たいていの育毛剤は壮年性脱毛(男性型脱毛)にはさして効果がない。なぜなら、男性型脱毛はあくまで内分泌の問題だからであり、血行促進などをしてもたかが知れているからである。
②未承認薬をはじめとする治療は、あくまでもハイリスク・ハイリターンな手法であるということ。進行した男性型脱毛に対処するにはこの手法しか残されていないが、同時に危険も多い。
しかも、必ず効くとも限らない。医療事故が起こっても、自由診療では患者の自己責任である。
つまり、政府は責任をもたず、補償しない。承諾書を書くなどして医療契約を交わす以上、薬を処方した医師の責任を追及することもむずかしい。治療は医者任せにせず、知識を蓄えたうえで、あくまでも医者を利用するような気概で行うのが正しい。
③髪は脂のせいではめったに抜けない。脂が多く分泌するのは、脱毛現象と同時に起こる、男性ホルモンの作用の結果である。脂自体が男性型脱毛の直接的原因になるということはない。
④毎日髪を(あるいは肌を)洗わなければならないという言説は、日本式清潔志向の産物であり、それが健康をもたらしてくれるという医学的な裏付けはない。むしろ、常在菌などの研究により、ゆきすぎた清潔志向は、いずれ覆される可能性がある。
⑤洗浄剤は、ピンキリである。いかなる洗浄剤も、基本的に肌にダメージを与える。低い洗浄力の製品で丁寧に洗うことが、長期的にみて肌に望ましいといえるだろう。
⑥医者といってもさまざまな治療方針をもっている。仮に軽度の皮膚炎であっても、複数の医者にかかることは必要かもしれない。多くの皮膚炎には、抗菌剤(抗生物質)やステロイドが使用される。しかし、このような薬物をできるかぎり使用しない正規の医者も存在する。大きく分けて、医者には、現代医学に全幅の信頼を置くタイプと、自然回帰志向の強いタイプとがいる。
病気の種類や症状にもよるのでどちらがいいとは一概にはいえないが、信頼できる治療をするところを選ぶのが肝心だ。
⑦健康な人には、サプリメントはとくに必要ではない。むしろ、長期間の大規模な疫学調査では、予期されなかった副作用が発見されはじめている。
⑧男性型脱毛症には決定的な対処法がなく、またそもそも「病気」ともされていないため、毛髪関連業界には胡散臭い商売が跋扈しがちである。それらは、いわゆるインチキ東洋医学やインチキ民間療法などの領域からやってくる傾向がある。インチキなものを見分ける方法を記しておくとすれば、以下のようになる(出典は本多勝一「はるかなる東洋医学へ」朝日文庫、04年)。
(1)「なんでも治る」とする型のもの。
(2)異様に大金をとる(型のもの)。
(3)異様に宣伝する(型のもの)。
そして最後に、もっとも重要なこと。
皮膚炎による抜け毛や円形脱毛などは、できるだけ早く病院で治療しなければならない。だが、男性型脱毛は、どこまでいっても病気ではない。仮に薬物を使用して抑制するにしても、生涯続けるわけにはいかない。いずれ祈り合いをつけなくてはならないのだ。男性型脱毛は、男性の自然な生理現象、老化現象なのだから。
日本毛髪科学協会で「髪に対する意識なんていうものは、かなりつくられたものだ」という言葉をいただいた。だとすれば、人が自分自身と折り合うことをむずかしくする、この「つくられたもの」こそ、ここまでわれわれの髪に対する意識を肥大化させている元凶といえるのではないだろうか。この「つくられたもの」に、ノーと言うことが必要である。
たとえば、最近の「つくられた」事例。資生堂が新製品の育毛剤アデノゲンの発売にあわせ、以下のような広告を衆目にさらして問題を引き起こした。
「薄毛はあなた一人の問題ではありません。子孫も迷惑です」
「薄毛の人は出世しても部長止まり。偉くなるのは薄毛ではない人のようです」
なんということだ! これを使えば子孫が迷惑しないということは、遺伝子のCAGリピート構造でも変えてくれるのだろうか? それはまったくありえない。
このアデノゲンなる育毛剤は、脳代謝改善薬としてよく使われているアデノシンという物質を含む商品である。アデノシンは、アデノシンEリン酸(ATP)の原料であるから、いわば毛根に直接エネルギーを与えるタイプだ。この本を読了してくださった人なら周知のことであろうが、こうしたタイプの育毛剤が内分泌の問題である男性型脱毛の根本的改善にかかわることはない。本人の問題すらまったく解決できないレベルの代物である。
 
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