育毛

育毛サロン体験談

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育毛サロン体験談

アートネイチャー

最初にご紹介する育毛サロンは、アートネイチャーである。
設立は67年。床屋をとおしてカツラを販売するという旧来のやり方から脱却し、理容室を併設した総合サロンとしてチェーン展開するという革新的な手法を発案、業務拡大に成功した。いまでは、全国に約200店舗、従業員数1600名を数える巨大企業として、アデランスに次ぐ業界ナンバー2の位置を占めている。
 
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現在、カツラ部門では、ハリウッドの特殊技術を応用した「ヘア・フォー・ライフ」という粘着性の部分カツラで攻勢をかける。育毛業務では、「R‐02システム」と名づけられた育毛サービスを展開中。「育毛ファーストコース」として、カウンセリングとサロン体験一回分を無料サービスしているとのことで、さっそく電話予約した。
店舗は新宿本店。JR新宿駅中央東口から徒歩1分、ベネトンのテナントが人目をひくビルの中にある。エレベーターに乗り、目的の階へ着くと、広く清潔なエントランスが眼前に広がった。曇りガラスのドアのある木目の壁に、誇らしげに光る「AN」のロゴ。航空会社のオフィスみたいだな、とちょっと威圧されながら、受付へと歩く。
案内されたのは、これまたキレイな6畳ほどの応接室。壁には日本毛髪業協会が発行する賞状や、「段階的増毛法」のポスターなどが貼られている。問診票を書き終え、手持ち無沙汰にヘアスコープなどの室内備品をチェックしていると、背後から声がかかった。
丸山さん登場!
振り返ると、白衣の男性……カウンセラーにちがいない。誰かに似ている。そうだ、プロゴルファーの丸山茂樹だ。確か、本物はアートネイチャーのCMに出ていたが・・・。引退して天下ったのか、と思わせるほど似ている。
さっそくカウンセリングの開始だ。
「うーん、私から見ると髪はまだ多いですよ。まあ、将来的な心配というところですか」どことなく投げやりな声だ。もしかして、売り込む相手ではないと判断されてしまったのだろうか? それでは取材にならないではないか、と危惧した瞬間、丸山さんは告げた。
「最近はそういうお客さんがすごく増えているんですよ。20代でもかなり薄くなっている人がいますでしょう。いまはなんともないんだけど、予防したいっていう若い人がよく来ますね」
それから、丸山さんはアートネイチャーの育毛方針を説明した。
「基本的に、育毛とは、抜け毛が止まるっていうレベル。ボンボン生えてくることはありません」
丸山さんは問診票に目を通し、こう告げた。
「いまのところ、○○さん、これで薄くなるという原因はないです」
生活習慣は悪くないようだ。
つぎに、薄毛の要因ワースト3が説明される。まず、「遺伝」。男性ホルモンが多い人のほうがハゲやすいという。続いて、脂っぽい「食生活」。そして、最後が「皮脂」だ。
「皮脂が詰まって脂が外に出られなくなると、毛穴内部に溜まっちゃって、生えてくる毛の成長を妨げるんですね」
皮脂が酸化して毛穴に詰まってしまうと、固いフタのようになってしまい、もうシャンプーでは取れなくなる。すると、毛はうまく成長できず、どんどん細くなってしまうという。
「かなりハゲている人でも、ちゃんと毛穴は残っているんですよ。毛は簡単にはなくなりません。ただ、最終的に産毛のようになってしまうんです。そうならないように、毛穴から皮脂のフタを取って、毛の成長を妨げないようにしましょうというのが、ウチの育毛方法なんです」
ヘアチェック!
丸山さんはおもむろに立ち上がり、実際に私の頭皮を見てみようと告げた。いよいよヘアチェックである。
はじめに、頭皮を指で押さえつけるように揉まれる。私の頭皮はかなり硬く、血行が悪いとのこと。つぎに、150倍のスコープが私の頭皮に近づけられる。テレビの画面に映し出された私の頭皮は、うっすらと脂の膜がかかっている。それに、なにか白いものが、ちらほらと髪の根元についているようだ。丸山さんはスコープの動きを止めては、手元のボタンを押している.画面をキャプチャー(記録)しているのだ。
頭皮の状態は白くて、悪くないです。でも、ところどころ皮脂が詰まっています フタができているんですよ」
このフタのせいで(毛が)抜けているんですか?
「そうです。ですから、ワンランク上のヘアケアがいります。こちらでは育毛という言葉を使ってますけれども……」
と、丸山さんはさっそくそのアートネイチャーの育毛方法を解説し出す。
「つまり、皮脂を強制的に取っちゃう。脂を溶かす溶液をかけながら揉み出していく。そうすると溶液が白く濁ってきて、排水溝に白いバターみたいなものが出てくるんです」
それがシャンプーでは取れない皮脂のフタだという。
でも、脂っぽい人は、そのフタを取ってもまた数時間で脂が出てくるわけですよね?
「毛穴を開いたあと、プレローションっていうものを使うんですが、これが皮脂そのものをつくらせないようにします。いちおう、実験して認められて、特許も取ってるんですよ」
アートネイチャーでは、プレローション、スカルプローションという2種類の育毛剤を用意しているという。しかし、皮脂そのものをつくらせなくするとはすごい。そんな生理現象を左右するようなマネができるのか、と質問する。
「(取り乱したように)いや、ま、リアップ、リアップというのは、もともと副作用からできたものなので……」
ここで丸山さんは、唐突に大正製薬のリアップの説明を始めた。わけがわからない。
リアップは、ミノキシジルを主成分とする、日本で唯一の発毛剤である。ミノキシジルには血管拡張作用があり、血圧降下剤として使われていたのだが、体毛が濃くなるという副作用もあった。
このため、毛髪治療薬に転用されたのだ。
私も使ってみようかと考えたことはある。だが、循環器系に悪影響を与えるおそれがあるとのことで、使用をためらっていた。
実際、発売初年度の99年に起きた、3人の死亡騒ぎが記憶に新しい。大正製薬と厚生労働省は、「リアップとの因果関係は薄い」と公的な見解を述べた。だが、動悸やめまいなどの症状が多くの人に頻発したというから、関係性を完全に払拭するのはむずかしい。
丸山さんの秘密公開
「ただ、リアップといえど、効果としては……そんなに生えてくるものではないです。もちろん、ウチの育毛剤もですが、その……生えはしない」
丸山さんは、パンフレットをめくり、段階的増毛法と書かれたページを開いた。
そこには、痛々しい若ハゲの頭部が真上から写されており、増毛法により徐々に毛量が増えていく様子が示されている。むごいハゲが、いくつもの段階を経て、最後には立派なフサになっていく。
じっと見ていると、なんとはなしに哀れな感情がわき起こる。まるで実験動物みたいだ。ああ、こうはなりたくない……。
「さて、いまですね、たとえばですよ、(増毛処置前のハゲ頭を指し)こういう人がですよ、こんなふうに(増毛後の頭部を指差し)生えてくるというのは、根本的にありえない。ありえない!」
(圧倒されながら)そうなんでしょうねえ……。
「というかね、この写真、私なんですけどね」
・・・え?
「これ、カツラなんですよ。こうするとわかる」
と、丸山さんは、ふさふさした前髪を上げる。露わになったその額、前髪の生え際からは……なにやら薄い紙のようなものがはみ出ている。
驚いた。この紙みたいなものに髪がくっついているようだ。
おお、丸山さん、あんたカツラだったのか!
「ぼくも薄くなっちやった人なんですけどね(哀しく笑う)」
いや、すげえ……マジ、ほんとにわかんなかったスよぉ。
と、私もなぜか後輩言葉に。
しかし……興奮が冷めると……彼には失礼だが、カツラの人に育毛の話をされても説得力ないなあ、などという思いが胸に膨らむ。かなり脱毛の進んだ人に、カツラを動めるぶんにはいいけれど。
というか、丸山さん、あなた結局、カツラ売りか?
このカミングアウト、育毛サービスの営業としては逆効果のような気がする……。
「○○さんの場合、いまはそんなに症状出てないですけど、毛穴が詰まっているんで。まあ、将来的なことを考えてどうするか、ですがね」丸山さんは不吉な笑いを浮かべながら、一枚の写真をプリンターのトレーから手に取った。さきほどキャプチャーした私の頭皮の画像だ。いつのまにかプリントしていたらしい。
さきほどのとおり、フタがくっついて毛穴が詰まっているところが、ちらほらと見える。
「こう見てみますと・・あっ、毛穴が窪(くぼ)んでない! これ、きれいに窪むんだ、本当は!(叫ぶ)」
ええ……と、これ、でも! やっぱりシャンプーしたあとだったらきれいに窪んでるんじゃないですか!?(叫ぶ)
「(私を抑えるように)いやあ……まあ、いまどうこうなってるってわけではないんですよ。……ですけど、予防っていう意味で考えると、みなさん育毛剤が効かない効かないって言うんですけどね、
まあ、毛穴に皮脂が詰まってるので効かないっていうところですよね」丸山さんはさらに続ける。
「考えてください。たとえば、シャンプーにリンス、育毛剤買えば、1ヶ月1万円はいきますよ。
育毛剤だけで、平均6000円前後といわれているんです。1年間使えば、12万円。それで浸透しなきゃ意味ないじゃないですか。そこで、最大の効果を出すためにサロンがあるんです」
しかし、値段が……きっと高いんでしょう?
「ウチはね、安いんですよ」
と、自信たっぷりの発言。さっそく金額の提示となるようだ。
皮脂を取らなくてはいけない私は、ディープクレンジングコースか、トータルコーースになるという。違いを聞くと、トータルコースは、微弱電流を流す施術などがプラスされる一番ゴージャスなコースということだ。

これがアートネイチャーのシステムだ!

さて、これらのコースに含まれているホームケアセットの内容と値段を記しておこう。
1本で2ヵ月使えるシャンプーならびにコンディショナーがそれぞれ単価1500円。
育毛剤のプレローションとスカルプローションがともに単価6000円。
こちらも2ヵ月分だ。
クレンジングオイルは1本で1ヶ月分。単価は7000円。そして、頭をすっぽり覆うタオルターバンが無料でついている。
ホームケアセットだけで、年間17万4000円だ。これらを組み込んだディープクレンジングコー
スとトータルコースの総額を記そう(表1)。

アートネイチャーのコースと料金

アートネイチャーのコースと料金


比較対象がないので高いか安いかわからないが、年間50万円といえばけっこうな値段だ。
明らかにがっかりしている私に、丸山さんはあわてて告げた。
「あ、思い出した。ええと、会社の規定が変わっていたんです。サロンは最低6回から受けることができるようになったんですよ」
このタイミングで言われると、それ、隠しておいたんじゃないの?と疑ってしまう。
この施術、1回ずつ受けられないんですかね。いきなり長期契約っていうのは、どうも……。
でも、こういう機器って売ってますよね。よそで買ったほうが安上がりなんじやないですか?あと、ホームケア製品もバラ売りしてないんですか?
私が噛みつくと、丸ちゃんはまるでラフからのティーショットを池にインしてしまったかのような悲痛な面持ちで答える。
「社員としても社に対してお願いしているんですが、1回ではよくなったかどうかわからないので、
最低半年から1年という形になります」とのこと。
しかし、納得がいかない。効果が出るのに時間がかかるのはどんな治療だって同じだ。だが、年間契約でなければ患者を診ない病院がどこにあるのだ。せめて、エステみたいにチケット制などはないのか?
「ありません」ということだ。
私は具体的な施術内容の説明を求めた。丸山さんは、頭皮を柔らかくする空気圧マッサージ器や、引き締め効果のあるスプレーなどを使ったさまざまな施術を解説してくれた。
「いやいや、違うんですよ! ウチのサロンのものは(市販製品とは)全然違うんですよ! たとえば、サロンのクレンジング。これ、フルーツ酸というもので皮脂を出していく専門的な溶液を使います。アートネイチャーが独自に開発した溶液で、これがサロンの売りなんです!」フルーツ酸。これは、乳酸やグリコール酸、リンゴ酸など、AHA(アルファヒドロキシ酸)と総称される強酸成分のことだ。柑橘類に多く含まれているため、この俗称がついた。食べ物を生で食べることにこだわる生食主義者には歯が溶解している例が多く見られるが、それは果物や野菜に含まれるこの酸のせいだという。
エステや美容外科では、ニキビ跡やシミなどを取るために使われている。いわゆるケミカルピーリングと呼ばれるものだ。強制的に角質(表皮の上層を占める細胞層)を溶解するため、トラブルも多く、社会問題化した代物なのだが……。
--あのう、ですね。施術をする人は専門的な技術をもっているんですか?
「え!、そうですね。機械を使ったりとかですね」
答えになっていない。ちょっと待ってくれ、私は育毛剤ごときでかぶれまくった男だぞ。問診票にも書いたろうに……。頭をかかえる私に、丸山さんは洞々と説明を続ける。
「あとですね、ふつう、シャンプーには防腐剤とか入っているんです。指定成分といって、厚生労働省から肌荒れを起こす危険な成分が指定されているんですが、ウチのSQシャンプーにはそれが入ってないんですよ」
指定成分とは、人によってアレルギーやかぶれを起こす可能性のある成分だ。現在、医薬部外品(薬事法の規定で、化粧品と医薬品の中間に位置するもの)にのみ記載義務がある。

リーブ21の黒い噂

商品の説明が終わり、質問はないかというので、私は具体的な改善例の統計的データを見せてくれと申し出た。
「いや、そういうのはないんですよ。生えてくるものでもないですし。(あわてて)いや、多少なら生えるかもしれませんが。で、リーブ21って知ってます?」
リーブ21? 発毛成功率96・8%で有名なところじゃないか。しかし、その名前がなぜ、いまここで?
「あそこ、あそこだけ発毛っていうことでやっているんです。でも、それがね、もう、ぎりっぎりっのところでやってる」
いつのまにか丸山さんの優しげな顔が一変している。
「アートネイチャーのアデランスも、こういうふうに(パンフレットを指差し)育毛ってことでやらせてもらってるんですよ。けれどね、リーブ21ではね、それ以上の効果を求める人は、クリニックに渡すんですよ!」
育毛と発毛。一般的には、前者は「髪が生えるように努力すること」を指す。だが、発毛となると、確実な結果が必要になる。たとえば日本で唯一、発毛剤として認められているのは、医薬品のリアップのみだ。
リーブ21は、医療行為のできない、ただのサロンというかエステですよね?
「(苦々しげに)そう。けれど、リーブは、お医者さんと提携しているんです。といっても、ほんとは、医者とは営利目的では提携できない。だから、リーブ21のほうから『効果を出したければ、お医者さんのほうに行ってください」と勧めるんです。しかも、それは客の意思で行かせなきゃいけない。そこで血液検査などをして、問題がないと判断したら、同意書を書かせて、リアップの中に入っているミノキシジルという薬を処方するんです! それも、飲むミノキシジルです!」
丸ちゃんの形相はどんどんと険しくなっていく。こいつは勝負師の顔だ。逆風のなか、果敢に2オンを狙う目だ。
えーと? その飲むミノキシジルって危険なんですか?
「これ確かにね、毛は生えます。ただ、副作用がすごい! ウチの会社でも実験でやってみました。
生えました、すごいレベルで。けど、体むくんだりしちゃう。
一番問題なのは、子どもつくったときに奇形児が生まれちゃったりするんです。ぼくも実験でやって、確かに生えたんですけど、そういう副作用があるので、この分野には手を出さないほうがいいって決まったんですよ!」
丸ちゃんは完全に我を忘れた様子で、リーブ21への憤怒を叩きつけまくる。
ただ、リアップに含まれているミノキシジルに、催奇形性(胎児に奇形を発生させる可能性)があると聞いたことはない。なにか、ほかの薬物と取り違えているのではないだろうか。
「とにかく、リーブはそういうことをぎりっぎりっの線でやってるんですッー これをはじめの段階では絶対言わないし、表沙汰にもしないんです! それに、リーブのそれは保険効かないんで、
べらぼうに高い! こんなもんじゃないですよッ(と卓上の金額プランを叩く)! おまけに副作用あったら、どうしようもない!」
なにがなんだかよくわからないが、大変なことになっているらしい。
「私だってね、副作用なかったらやりますよ! でもね、世の中ね、世の中! (壁の段階的増毛法ポスターの最初期の頭部、つまり自分のハゲた頭部を指差し)こんなになった人がね、あんなふうに(増毛完了の写真、つまり現在の自分の頭に近い頭部を示し)生えるなんて、ありえないんですよ!
まあ、生えたとしたら円形脱毛です。あるいは、クマ取ったりすれば生えますよ、タマー」だが、クマを取っても髪は生えてこない。たとえば、ハゲている人が前立腺ガンなどの手術で去勢しても、脱毛が止まるだけだ。

エステdeミロードの二の舞に?

えー、それでアートネイチャーとアデランスで、日本毛髪業協会っていうのをつくったんですが、リーブ21だけ入ってこないんですよ。なんでかっていうと、規制を(アートネイチャーとアデランスに)決められちやうと、いろいろできなくなっちやうから。むかし、エステdeこヘロードってあったでしょ。あそこバンバンCMやってたんですけど、いきなりバーンって潰れたんです。すごいやり方してましたよ。お金が取れるお客さんからは100万とか200万とか取って、エステサービス売るわけです、何十回も契約して。でも、(金銭的に)厳しいお客さんには安くやるんですよ。その噂が広まっちゃってキャンセル、キャンセル。バーンって潰れちゃった!」
おお、なつかしい。エステdeミロード事件か。2000年末に自己破産した、当時、業界第3位の大手エステサロンだ。店舗数拡大による過剰投資ならびに、クーリング・オフ制度が収益の悪化につながり、205億円の借金をかかえて倒産した。
その後、顧客の役務未消化分に関する問題などがもちあがり、大きな消費者問題に発展。エステ業界全体が、販売上の規制を課される特定継続的役務提供と呼ばれる商法に指定される運びとなったのだ(ちなみに、特定継続的役務提供とは、訪問販売や通信販売、連鎖販売取引などと並び、消費者を保護するための規制が課される「特定商取引に関する法律」の対象となる商業形態である。エステのほか、語学教室、家庭教師、結婚相手紹介サービス、パソコン教室などが、このカテゴリーに含まれる)。
「これで、エステ業界は厚労省から規制が入ったんで、いろいろ決められちゃってるんです。サービスの価格とか回数も決められちゃって、規則のなかでやらされてるんです。それで、たとえばカツラとかもね、やっぱ値段が曖昧なところがあったんです、むかしは。アートネイチャーとアデランスはちゃんとやってたんですが、小さいところがね、いろいろそういうふうにやってきちゃって、厚労省から声がかかっちゃったんですよ。まあ、この業界は大丈夫でしたけれど」
ちょっと待ってくれ、丸山さん。私みたいな客にとっては、この業界が特定継続的役務提供に指定されたほうが損はない、というかむしろ安心なんですが……。それから、商法の規制に関する管轄は、厚生労働省ではなくて経済産業省のような気もしますが……。「まあ、ウチでは、頭皮だけは100%よくなる。いや、私もけっこう勉強しましたからね。自分がこうなったから……」
あのう、やっぱり、育毛やってたんですよね?
「そりゃ、やりこみましたよ! (声のトーンが落ち、少し哀しげな目に)ウーロン茶で頭洗ったり、アロエやったり、本でニンニクがいいっていえば、こすりつけて楳かったりね(と伏し目がちにひとり笑う)。○○さんもね、ま、そうなっても仕方ないっていうんなら、ウチのやる必要ないんですけどねえ。……で、体験、無料なんですが、どうします?」
遠回しに脅迫的な言い方だが、私はサロン体験を受けることを了承した。今日は予約がいっぱい入っていて無理なので、後日になるようだ。なかなか繁盛しているらしい。
フルーツ酸とやらがちょっと心配だが、受けてみないことにはなにもわからないし、それに、これは取材である。ここでつまずいていては、大手サロンをひととおりまわるという壮大(?)な計画が早くも水泡に帰してしまう。
それに……もしかしてフルーツ酸施術は、じつは育毛・脱毛予防にはすばらしく効果があるものかもしれない。
私は、帰宅後さっそく電話で予約を取った。次回は2週間後。どうなることやら楽しみである。

アデランス

毛穴をえぐる針の水これが驚愕のスカルパンチだ!
69年設立のアデランス。アートネイチャーの後発ではあったものの、積極的な宣伝戦略により、またたく間に業界で最大のシェアを勝ち取ることに成功。いまや、全国に236店舗をもち、従業員数は2000名を数える東証一部上場企業だ。総合毛髪メーカーとして海外進出もめざましく、アジア、ヨーロッパに商品を卸すほか、海外のカツラ会社を買収したり、アメリカに毛髪再生医療の研究所を設立するなど、多角的な事業展開を行っている。まさに業界のガリバーだ。
潜入の目的地は、新宿本社。東京メトロ新宿三丁目駅からすぐの年季の入った建物、ADビルに店舗がある。
ホームページを見るかぎり、無料サロン体験はなかった。どうやら、自腹を切らなければならない。残念!
本社ビルは、言っては悪いがアートネイチャーと比べるとしみったれたビルで、暗い印象を拭えない。受付の中年女性に名前を告げると、すぐにカウンセリングルームヘと案内してくれた。部屋の中には、テレビやヘアチェック用スコープなどの機材が並ぶ。また、カツラ商品のポスターなどといっしょに、日本毛髪業協会発行の賞状も壁に飾られている。
木村さん登場!
渡された問診票を律儀に埋めていると、茶髪の男がぬうと部屋に入ってきた。目つきが悪く、むくんだような顔つき。機嫌が悪そうで、なんだか嫌な威圧感を全身から発している。あれ、誰かに似ているな……と頭をめぐらせているうちに、ピンときた。木村だ。ダウンタウンファミリーの木村祐一にそっくりだ。
アートネイチャーのときみたいに、このカウンセラーもカツラなのだろうか? 注意して観察すると、毛にどこか張りがない。褪(あ)せたような茶色で、さらに生え際が見えない。かぎりなくダークだ。
「えー、それでは、いくつか質問させてもらいます」
木村さんはぼそぼそと低い声で話しはじめた。ひとしきりの応答のなかで、私はアデランスの施術はどの程度効果があるのかを聞いてみた。
「……まあ、かなり進行した人をフサフサにするのはむずかしいですが。えー、毛穴が毛穴としてちゃんと残っている人なら、毛は必ずどんどんと、また生えてきます」
おっと、かなり積極的な発毛宣言が飛び出したぞ。「どんどんと生えてきます」とは、アートネイチャーとは大違いだ。
ちなみに90年刊行の村上春樹著「日出る国の工場」(新潟文庫)では、「アデランスの人の話によるとハゲの原因の70%までは遺伝で、これはもうどんなに努力をしても努力するだけ無駄だということである」との記述がある。かなり前の情報だが、いまになって「どんどんと生えてくる」とは、たいした技術の進歩である。
「簡単に言いますと、ハゲるとだんだん髪が細くなってくる。これを健康な毛胞組織に戻せば、立派な毛がちゃんと生えてきます。毛穴があれば生える。けれども、急速に毛穴はなくなっていきますから、早く手を打たないといけない」
アートネイチャーでは、毛穴はなくならず、最後は産毛になると言っていましたよ。
いや、そんなには。
いと思うのだが……。
いや、そ
「……それじゃあ、アートネイチャーでは毛穴の奥のほうの説明を受けられましたか?」
「でしょうねえ」
と、木村さんは意味ありげな笑いを口元に浮かべる。
「えー、簡単に申し上げるとですね、ハゲてる人は毛穴が浅くなってるんです。浅くなると育毛剤が届きにくい」
えーと。単純に考えると、毛穴は浅いほうが、育毛剤の入りもいれより、なぜ唐突に育毛剤の話が出てきたんだ?
「つまり原毛が増える原因というのは、むかしとは食べているものが違っていること。あと、生活サイクルが違ってきているからです。それで、皮脂の分泌量が多くなっている」今度は原毛の原因に話がとんだ。ついていくのが大変だ。
あのう、ぼくはどちらかというと肉はあまり食べないし、仕事は朝早いから、ちゃんと夜は寝ていますが。
「まあ、人の感じ方で、脂が出ているのにわからなかったりするんで」
いや、いまは食生活と生活サイクルの話をしているんですが・・・。
「それより、ちょっと○○さんの頭皮を見ましょう。アートネイチャーにごちやごちや言われたんで、頭が混乱してるんでしょう」
うーん。一方的に押し進められている。まったくカウンセリングになっていないような気がするが……。

アデランスでないと、できない?

さっそくヘアチェックが始まる。画面に映し出された頭皮は……アートネイチャーのときと変わらないようだ。毛穴は薄い脂の膜に覆われていたり、フタがついていたりして、やはり、きれいには窪んでいない。
ひととおり画像をキャプチャーすると、木村さんは写真をプリントアウトし、ファイルの中のさまざまな毛穴の写真が比較されているページを開いて、私につきつける。
「これ(ファイルの毛穴が窪んでいる写真)と比べていただくと、○○さんの写真の毛穴はほとんど開いてない。脂が詰まってます。もともと太い毛が細くなって、すごく毛穴が浅くなっています」
毛穴の中のことなんて、スコープだけでわかるんですか?
「そう。結局、一番まずいのは、皮脂ですから。えー、○○さんはいろいろなこと、どーのこーの考えてますけど、詣で抜けてます。毛穴が変形していますから」
なんでそんなことがわかるんだ、と悩む私をさしおいて、木村さんはおもむろに紙に絵を描き出した。私の毛包組織の絵だという。
毛包組織の構造について、ここで説明しておこう。まず、毛が生えている漏斗状の皮膚組織全体を毛包と呼ぶ。この毛包内のもっとも深部に毛乳頭というものがあり、これが毛の根幹だ。
この毛乳頭が活性化すると、それを取り巻く毛母という組織も増殖し、毛が成長していくのである。
木村さんは、ボールペンでガリガリと「○○さんの毛包組織」を描きながら、つぎのような説を展開し出した。
「(皮膚表面に近いぶどうのサヤ状の組織を示し)これが皮脂腺といって、脂をつくる工場。これが双田さんの場合どんどん大きくなってしまって、ものすごく脂が出るようになってしまっている。この皮脂腺が肥大しすぎて、毛の毛母細胞を奪い取ってしまっている。毛穴自体も変形して、浅くなっている。で、抜けている」
皮脂腺が毛母細胞を奪い取る? 私はそんなにものすごい脂性なのか。
「(頭皮表面を塗りつぶしながら)ここに皮脂膜という膜がもうできてしまってるんですが、これはすぐに酸化されてしまうので先に取る。そして、毛穴に詰まっているこの脂とフケが混ざったケラチンリングをこそぎ取る。開いた穴に皮脂腺の肥大化を防ぐ薬をつける」
ケラチンリングとは、アートネイチャーがいうところの「フタ」とみていいだろう。
でも、逆に取りすぎて害はないんですか? 朝シャンなんてあまりよくないとか言われてますが……。
木村さんは、あからさまに首をかしげ、やれやれといった様子で言った。
「皮脂はね、取らなきゃいけないんですよ。酸化して固まったら、シャンプーではもう取れない。
定期的にアデランスで根こそぎ取る。そして、脂が出たら、その日のうちにアデランスのシャンプーで全部取っておけば、クリーンな状態と小さな皮脂腺を維持できる。この毛穴の掃除は、アデランスでないとむずかしい。アデランスでないとできない」
そのケラチンリングとやらは、洗浄力の強いシャンプーでも取れないんですか? 台所洗剤でも取れない?
「いや。アデランスで溶かさないと取れない。○○さんね、いろいろな情報で混乱していると思いますが、今日からちゃんとやっていかないと、今日から。どんどん若ハゲが進行していきますから」
ちょっと待ってください。いま、今日からって言いました?
「(私の頭を見ながら)ええ、今日から始めないと大変ですよ」
40代前半でサムライに?
なんだ、この展開の早さは? 思わず頭に手をやる。俺はそんなにハゲているのか? ヤバいのか? 昨日ごっそり抜けたとか? いま透けて見えてるとか? 蛍光灯の光の角度のせいか?
思わず前髪を気にする私に、木村さんは、とどめの一撃を食らわせた。
「えー、あのですねぇ、○○さん。男性の髪は5〜6年で生え変わるんですが、いまの髪の状態はむかしと比べてどうですか?」
そ、そりゃあ、抜け毛は気になりますよ。額もいくらか後退したかな。
「だいたいでいいんですけどね、24歳ごろの髪の量とか質を10とすると、いまはどのくらいです?」
どうかな。まあ……8割くらい、かな……。
「5年後には、34歳にはですね、いまの全部の髪はモデルチェンジしているんですよ、いまの8割。
その後はその8割。そうすると、このままだろうか、ってことなんですがね。考えてみればわかると思うんですけどね」
つまり、5年ごとに8割残して抜けていったら、10年後には6割強、15年で半分……。母さん、
私は40代前半で早くも完全にサムライ頭になります。七三ヘアがきれいなバーコードになるでしょう。
恐れおののく私を尻目に、木村さんは毛根の検査をしましょうと、机の上を片付け出した。事前の指示に従って私が持ってきた10本の毛を、プレパラート(ガラス板)に接着し、顕微鏡で見る。画像はテレビに送られる仕組みだ。
「正常な毛根っていうのは、毛の太さの3倍あるんですがね」
彼は手元のファイルをめくり、正常な毛根を見せた。その写真と比べると、画面に映し出された私の毛根は明らかに細く、毛の太さの3倍などない。2倍あるかないかといった程度だ。
「これも育っていない……えー、これ○○様の毛で間違いないんですよね?」木村さんは不吉なことを言いながら、深刻な顔で毛根をチェックしていく。毛の太さの3倍もある毛根は、ついにひとつも見つからなかった。
でも、毛根の太さって個人差があるんじやないですか?
「いや、正常な毛根とは明らかに違いますよ。女性の毛と比べてみればわかるんですけどね」あのですね、皮脂がそこまで悪影響をおよぽすなら、遺伝的にハゲにくい人でも、髪を洗わないと例外なくハゲてしまうということになると思うんですが。
「ええ、そうです」
それなら、浮浪者とか、全然髪を洗わないと思いますが、けっこう髪がありますよね。モサモサな髪もいるし、ハゲの割合は通常人とさして変わらないような気がしますが、ああいう人はどうなんですか……

五木寛之氏の場合

いまや、私の脳裏は群れなす浮浪者たちのイメージで埋め尽くされているのだが、そこに場違いにもある紳士の姿が紛れ込んでいる。そう、彼こそは、70代前半にしていまだ驚異的な毛量を誇っている、直木賞作家の五木寛之氏である。今回、独自の非常識健康法を引っさげて、対アデランス戦のために登場していただこう。
この五木氏。どのような健康法を行っているのか……と興味あるところだが、なんと、彼は髪を洗わないことで有名なのだ。
最近の著作(「養生の実技」角川Oneテーマ21、04年)によると、「新人作家の頃は年に二回ほど洗っていた」のだが、いつしか春夏秋冬の四回に。そして最近は「加齢臭が気になってきたため」「2カ月に一度くらいの割合で洗っている」とのこと。だが、2ヵ月に一度でも彼にとってはオーバーペースらしく、「ときどき洗髪するようになってから頭がカユいという感覚が生じてきた」という。彼は自らの健康法の由来を以下のように説明している。
「私があまり髪を洗わないのは、若いころしきりに海外を歩き回ったときの観察による。いまは違うだろうが、インドや東南アジア諸国には、一生髪を洗わない人びとがたくさんいた。(中略)また世界各地でスラム街を根城にしているバガボンド、路上生活者、苦行者など、ほとんど髪の毛が腰まで伸びていたり、垢だらけのまま頭上を覆っていたりする。そういう人びとに禿頭の人が見られないのは、じつに不思議だった。まさか髪の毛の濃い人がホームレスになるわけでもあるまい。洗髪をしないことと、脱毛とは関係がないと私は思う」
別の著書『こころ・と・からだ」(集英社文庫、98年)からも引用させていただこう。
「これはまったくの独断ですが、最近の男性の頭髪の活力のなさは、ひょっとしたら少年時代から毎日、シャンプーをしつづけたせいではあるまいか、と思えてなりません」
シャンプーをしないからこそハゲない。まさしく五木パラドックス。なぜ、こんなことがありえるのだろうか。不思議極まりない。
さて、カウンセラーは、あくまでも五木寛之氏のことではなく、浮浪者について回答した。
「まずは、ああいう人たちはここが(自分で描いた図の皮脂腺を指し)大きくない。……それと、もし、ああいう人たちが髪を洗ったら、全部取れちゃう。あれ、上にのってるだけでしょ?」
の、のってるだけ?
なんと失礼なことをおっしやる。五木氏は、大事な人に会うとか、パーティーの前などの晴れの場に、相手のことを考えて洗髪すると書いてある。ごっそり落ちたら大変だ。
「えー、浮浪者とかは……ああいう方たちは、ストレスもなく、人間的妄想もなく、そういうことでここの肥大化がスタートすることがない。だいたい、こう薄くなってくる人は、神経質ですとか、気にしてたりとか、繊細な心の持ち主なんで、そういう人がああなることはないです」
おい木村。五木氏の諸作品がいずれも、ストレスも人間的妄想もなく書かれたなどというのは、ある意味スゴい文学論だぞ。
「ま、あの人たちは、ここ(皮脂腺)は大きくなってないのは間違いないです。けれども、頭皮は汚い」しかし、どんなに汚かろうが、ハゲなければ全然かまわない。ふさふさの五木氏の頭皮は「シベリアの凍土のように表層が固まってくる」とあることだし。
「ですから、○○さんはいかに皮脂腺の肥大を止められるかということです。皮脂腺が肥大する性質なのは間違いがない」
むーん。仮にそうだとしても、ケラチンリングを取るケアはずっとやり続けないといけないんでしょう?
「全然、全然、全然。こういう毛穴が手に入れば、維持していくだけなんで。ただ、アデランスにやらせてもらえるのであれば、簡単にこんな毛穴が手に入っちゃいます。けど、一定期間アデランスに通ってもらわないといけません」簡単に手に入っちゃいますとは、大きく出たものだ。

カツラはカツラで、成功です!

ということで、具体的にアデランスでは、どんな施術をするのか聞いてみた。「まずは、詰まった皮脂を溶かして、ぐじゅぐじゅにして、針で掃除していく。スカルパンチっていう、針のような水を出す機械で」
(ビビりながら)針? 髪に悪いかな、なんて思ったりしますけど・・・。
このとき、突然木村さんは自分のアクマを指差し、小声で「カツラです」と言った。そして、照れたような顔をした。
……? わけがわからない。意味不明で面白すぎる。笑いを必死でこらえねばならない。もしかして「髪には悪い」という言葉に反応したのだろうか? 確かに、彼の髪は赤茶けていて、乾燥している。つまり、自分の髪はカツラだから傷んでいるように見えるが、サロンの施術ではこんな赤
茶けた髪にはならないということか?
えー……(一一一一言葉に詰まる)つまり・・・・:カツラで?
「(微笑みながら)ええ、カツラはカツラで、成功です!」なにが成功なんだかよくわからないが、私に自慢されてもどう対応していいのか不明だ。つまり、
彼も結局、カツラ売りだということなのだろう。ちなみに02年の業界ヒアリング資料では、アデランスのサービス売り上げの内訳は、カツラ75・4%、育毛17・9%、増毛6・7%となっている。
私はここで、アートネイチャーで聞けなかったカウンセラーヘの質問を思い出した。
ええと、あなたはこのサロンで育毛の施術をされたのですか?
「(考え込み)やってた時期もあります……。ただ、これは、管理するのが大変で。ぼくはこういう仕事をしていますから、お客様のお話を聞かなきやならない。時間がなくなっちゃった」
ここで仕事をしていながら、施術を受ける余裕がない? このカウンセラーはそんな忙しいのだろうか。というか、俺のせいか? 俺があなたの育毛タイムを奪っているのか?
「まあ、2週間に一度通ってもらえればいいだけですよ。治すのは簡単なことなんです。髪の手入れを始められると、ぽんぽん太い毛が生えてきます。どんどん毛根が深くなっていって、マッチ棒みたいな毛がいっぱい出てきます」
(「じゃあ、あなたもやってください」と言いたいのを我慢しながら)ふつう、どのくらい通うんですか?
「ぼくの感覚だと1年。1年でしっかりとした毛根を手に入れて、あとは自宅でケアするだけです。
ただ、そのためには、ほんとに一刻も早く始めていただかないと」
(「じゃあ、あなたも一刻も早く始めてください」と言いたいのを我慢しながら)でも、いきなりはちょっと……。
「○○さんの場合は早めに手を打たないといけない。ぼくも、あなたの頭をこれ以上悪くしたくない。だから、今日これから、よろしければ○○様の頭皮を掃除させていただきたいと思います。体験なので、お代はいただきません」
え? 無料サロン体験? それはありがたいが……・」れからすぐに?
「ぼくはこれから、ほかのお客様の診断をしなければいけません。上のサロンの人に○○様の症状を伝えておきますので、どうでしょうか?」
こうして意外なことに、ヘアチェックからそのまま無料体験を受けることになってしまった。
しかし、確かホームページのヘアチェック情報では、皮膚温度測定、脂分測定などの検査があったのだが。あれは省かれてしまったのだろうか?

アデランスのサロン体験開始

上限に赴くと、ずらりと個室が並んでいる。これらはもともと、カツラ使用者のための理容室である。月に一度ほど、カツラ使用者は伸びてきた自毛部分をカットするためにここに来るのだ。どこからか密やかにシャワーの音が聞こえるだけで、フロアは静まりかえっている。
通されたのは、洗面台に大きな鏡がある小さな部屋。個室で区切られているところをのぞけば、普通の床屋となんら変わらない。壁には、散髪の代金表や、新製品のカツラ、育毛機材のポスターが貼られていた。イスにかけると、木村さんがさっそく施術に入る。
「まず、スカルプクレンジングで表面の脂を取らせていただきます」
あれ、そういえばこの人、ほかのお客様の診断はどうなったんだ? 木村さんはそ知らぬ顔で、クレンジング剤をゴリゴリと擦り込むように地肌に塗りつける。髪が引っつれて、痛い。専門の美容師などはいないのだろうか?
契約したら、これからもずっとあなたがやってくれるんですか?
「いや。専門の人がいます」
CMを見ると、女性がやりますよね?
「オンナが、いい?」
めったに聞くことのないダイレクトな表現に度肝を抜かれ、私は「そういうわけではないんですが」と小声で弁解せざるをえなかった。
毛穴への擦り込みが終わり、背後を見ると、古ぼけた巨大なヘルメット型の機械が目に入った。
アクティブ・アロマスチームというものだ。
ヘルメットをかぶると、徐々に蒸気が吹き出してくる。55℃で15分も頭部を暖められ、かなり意識が朦朧としてきたころ、やっと木村さんが戻ってきた。ごつい機械がのった台車を押しながら……。
スカルパンチ登場!
こいつがスカルパンチか。針のような水を噴射するという無骨な本体からは、丸いシャワーヘッドがひょろりと伸びている。
私は断頭台に据え付けられる囚人みたいに、首を洗面台におろした。
「痛かったら言ってくださいね、弱くしますから」
?ちょっと待ってください、そんなに痛いんですか?
木村さんは、むりやり私の頭頂にシャワーヘッドを押し付けた。耳元で機械が唸り出す。
……だが、たいして痛くはない。髪になにか当たっている程度だ。なんだ、このぐらいだったら大丈夫……だったらよかったのだが。
痛い、痛い! 痛い!
「水圧、下げましょうか?」
(手を振り回しながら)おい、ちょっと待て! 痛エエー
こ、これが スカルパンチか!
まるで、生け花の先生が出来の悪い弟子に全力で投げつけた剣山がみごとな角度で頭に突き刺さったかのような激痛に襲われた。私は絶叫し、頭をそらして逃げ出さざるをえなかった。
「じゃあ、出力、かなり下げてみますんで」
木村さんは機械をいじるなり、またシャワーヘッドを構える。
圧倒的に気がすすまないのだが、やめてくれとも言えず、私はしぶしぶと頭を台におろした。
お願いしますよ……あ、ちょっと、まだ痛い。
こうして3分たらずではあったが、どうにかスカルパンチが終わってくれた。わけもわからないうちにシャンプーが泡立てられる。
かすかに流れているジョージ・ウィンストン風のピアノBGMが心地よく、安堵のあまり気絶しそうになってしまった……。

アデランスのシャンプーの実体は?

ここで、シャンプーについて詳しく突っ込んでおこう。シャンプーとはいったいなにか。これは、界面活性剤という成分を合んだ、毛髪用の洗浄剤のことである。
界面活性剤は、水と油を混ぜ合わせる成分。脂分を含んだ汚れを、水に溶けやすくすることで対象から引きはがす。界面活性剤は大きくいって、植物に合まれる天然洗浄成分、脂肪酸ナトリウムなどの石けん成分、そして化学工業の産物である合成界面活性剤の3つに分けられる。先の2つは扱いづらいので、いわゆるシャンプーの洗浄剤となると、たいていが合成界面活性剤を使用することになる。合成界面活性剤はそれこそ星の数ほどあるので、どんな洗浄剤を使っているかでシャンプーの質が決まるといえる。
さて、アデランスのドスカル・スカルプシャンプーの主要洗浄成分は、スルホコハク酸パレス2ナトリウム、ラウレス3酢酸ナトリウムの2種類であった。
スルホコハク酸パレス2ナトリウムは、コハク酸を使用した弱酸性洗浄剤。一般に、弱酸性洗浄剤は肌のpHに近いためアルカリ系の洗浄剤よりも刺激が少ないとされ、洗顔料などデリケートな部分用によく使われる。ラウレス3酢酸ナトリウムも、合成界面活性剤のなかでは比較的肌への作用が穏やかといわれているものだ(ちなみに、ラウレス硫酸ナトリウムという、広く使われている指定成分の洗浄剤と名前が似ているが、まったくの別物だ。酢酸と硫酸では性質が大きく異なる。一般に、硫酸を含んだ洗浄成分は脱脂力・刺激性が強いので、肌の弱い人はとくに気をつけなければならない)。
総論すると、アデランスのシャンプーは肌の健康を意識したシャンプーだといえる。少なくとも、市販のものよりはずっと良質だ。
洗髪が終わると、木村さんは排水口に溜まった白いネバネバしたものを見せてくれた。これがスカルパンチでこそぎ出された頭皮の皮脂ということだ。湯葉をひとつまみちぎったような感じである。確かに効果のほどは申し分ないということはわかった。
続いて木村さんは、濡れた私の頭を遠赤外線ドライヤーで乾燥させ、育毛剤のドスカルEXローションを頭皮に塗り込む。この育毛剤には、センブリエキス(血行促進)、グリチルリチン酸ジカリウム(殺菌)、ヒノキチオール(細胞活性化)、ダイズエキス(男性ホルモン抑制)など、種々の生薬成分が含まれているという。成分自体はどれも一般的なものだ。とりたてて特徴はないが、まんべんなく効能が詰め込まれた平均的育毛剤といえるかもしれない。
これでサロン体験は終了。無料体験は簡易版であり、契約するとさらに施術は増えるという。

アデランスの「お勧めサービス」とは?

私たちはふたたびカウンセラールームに戻った。金額交渉の前に、アデランスの施術の特徴を記しておこう。
アデランスの施術には、3つのコースがある。健康な頭皮の維持にフューグロウ、抜け毛防止にドスカル、髪の成長をサポートするディオロスの3つだ。木村カウンセラーは、「あまりハゲてない人向け」「ちょっとハゲた人向け」「かなりハゲた人向け」とそれぞれのコースを説明した。これら3つのコースは、さらに脂性タイプと乾燥タイプ、あるいはダメージヘアタイプなどに分けられ、全部で7つのプランが用意されているという。
それぞれのプランごとに、使用されるヘアケア製品や機器が違う。また、今回の簡易コースでは1つしか使われなかったが、フルコースでは育毛剤は2つ使われるようだ。こうしてアデランスは、宣伝でうたわれるように全14種類もの育毛剤を用意している。関連するヘアケア製品も膨大な数だ。資金力を活かして国内外のさまざまなメーカーから商品を買い集めているところが、アデランスの育毛サービスの最大の特徴といえるだろう。
コース説明のあと、こちらから金額の説明を要望する。料金表を見せてくれと頼んだのだが、「人それぞれ違うので、そういうものはない」とのこと。その代わりに出されたのが契約書だ。サインをすれば法的効力をもってしまう、3枚つづりになったホンモノの契約書がいきなり出てきてしまった。ともかく、金額を見てみよう(表2)。

アデランスの施術・製品と料金

アデランスの施術・製品と料金


 
「○○さんは1年コースがいいですから」
そう言って、木村さんはお勤めサービスの合計額を紙に計算しはじめた。
その1年分の内訳は、施術24回とホームケア製品14万7200円のほかに、オプションのデュアルプレケアとフィジカルエステ12回9万6000円が加わり、合計64万3100円となった。
けっこうするなあ……と内訳を眺めていると、妙なことに気づいた。説明を受けていないサービスが入っている。
ちょっと待ってください。9万6000円のフィジカルエステって、なんですか?
「ああ、これですか? これは髪をよくする。状況を改善する。タンパク質を入れる」
わけがわからない。契約書を見ると「傷んだ髪の健やかさを取り戻すためのヘアケアです」とある。タンパク質を髪に塗布するサービスらしい。
ちょっと、これ、いりませんよ。髪のダメージなんて後回しでいいです。
「いや、でも、髪、よくなるので、セットで受けたほうがいいです」どうも納得がいかないでいると、「では、施術12回の半年コースはどうですか」
木村さんは新たに計算しはじめた。さっきと同じ内訳で、36万5500円だ。それでも渋っていると、「とりあえず、施術6回分だけでも購入したらどうか」
と迫る。一転して、ヘアケア製品はすぐに必要ないとも言う。

発毛効果は約束されていない?

どうしよっかな、と契約書に目を通していると、重大な一文を見つけた。
「ヘアサポートアクアの「役務」は、脱毛予防と育毛効果を目的としたヘアケアです。発毛効果をお約束するものではありません」
ちょっと待ってくれ。聞いていないんですけど。しかも、目の前のカウンセラーは「大い毛がぽんぽん生えてきます」などと口にしていたぞ。
脱毛予防といったレベルでも効果があるなら万歳なのだが、売り方がとてもひっかかる。ふと見ると、木村さんの仏頂面が増していた。時刻は午後8時半。もう帰りたいのだろうか。密かに貧乏揺すりをしている。
「もし、本当に○○さんがその状態を維持したいのであれば、アデランスでやったほうがいいと思いますよ。まあ、そうでないなら、別にアデランスでなくてもかまわない」
データはありますか? いままでこのサロンの施術を受けた人の改善結果を統計的に取ったものとかです。
「そういうのは、ないです」
吐き捨てるようにそう言って、木村さんは突然腰を上げた。
「それでは……またやる気になりましたら、あとでこちらに電話くれますか。今日はここで」時計をちらちら見ながら、私が腰を上げるのを待っている。帰りたくてたまらないのだろう。去り際、名刺をくれるよう求めたが、持っていないとのこと。カウンセラーが自分の名刺を持っていないとは、ちょっと信じられない。
木村さんは、「仕事がありますので」と言って、私ひとりをエレベーターに乗せた。予想していた営業攻勢はないに等しかったものの、なんとも後味の悪い体験となってしまった。
 
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