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育毛サロン体験談2

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育毛サロン体験談2

ふたたびアートネイチャー

洗浄カナンバー1 噂のフルーツ酸
今回はアートネイチャーのサロン体験なのであるが……受付に向かうエレベーターを待っていると、ちょっとした事件が起きた。
私がエレベーターに乗り込み、5階のボタンを押すと、するりと背後からOL二人組が相乗りじてきたのだ。彼女たちは、7階のボタンを押す。しゃべりながら乗ってきたくせに、扉が閉まった瞬間、二人ともいきなり下を向いて黙ってしまった。すでに点灯している5階のボタンの横には、「アートネイチャー」の文字が鎮座ましましている。
静かにエレベーターは上がっていく。耐えきれない。すごく居心地が悪い。ちらちら見られているような気がする。……あの人、アートネイチャーに行くのね……カツラかしら……などと思われているにちがいない。
悶々としていると、「5階です」というアナウンスとともにエレベーターのドアが開いた。「AN」のロゴが柱に光る美しいエントランスが、われわれ3人の前に御開帳。やられた。豪華丸出しアートネイチャー。
 
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私は敗北感に包まれて、逃げるようにエレベーターを降りた。あわてていたため、一人の女性の肩にぶつかりそうになり、「すみません」と言おうとして声が出ず、「オフッ」という変な呼吸音が出てしまった。完令に挙動不審である。
意気消沈で受付に行くと、丸山さんがすぐにやってきた。あまりにいい笑顔をしているので、さっきのショックも癒されてしまう。
まさか、私が体験を予約するとは思っていなかったのだろう。
まかせてくれ。受けて見せようじゃないか、フルーツ酸!
ヘア・フォー・ライフ vs ヘア・コンタクト
まずは、前回来店時と同じ部屋で頭皮の状態をチェック。
前とほとんど変わらない。脂が膜のように覆っていて、毛の根元に白い垢のようなものもいくつか見える。スカルパンチを.週間前に受けたにもかかわらずである、「この状態を覚えておいてください」と内げられ、二人で席を立つ。
想像以上に広いフロアを歩き、目的のサロンルームに到着。壁には、カツラのポスターが貼られている。これが噂のヘア・フォー・ライフか。
これ、すごいカツラなんでしょう? ほかでも似たようなの出てますよね。女の子が腕にくっつけて、ぴーんとやってたやつ。
「あれはプロビアさんのヘア・コンタクト。まあ、くっつけるぶんには同じです。でも、うちのはネットでして、何度でも使えるんです。プロピアさんのは、膜みたいなやつでして。取っちゃうと、もう使えない。使い捨て。ウチのと違って、かなりかかりますよ」
と、丸山さんは自社の製品をベタ褒めしはじめる。
?はあ。でも、そんなにいいんなら、カツラ全部これにしちゃえばいいんじゃないですか?
「いや、これですね、この頭まるまるひとつぶんのをカットして、ハゲた部分に貼るんですけど・・
下に毛があると使えない。完全にハゲてるか、あるいはいつもきれいに剃ってなきゃいけないんで」
となると、使える人がかなり限られているのではないか。
で、あの……失礼ですが、これ使ってますか?
「いや・・・、私のは、これとは違うんです……」
え? 結局、使ってないんですか?
などとカツラ話に興じているとき、やっと美容師がやってきた。丸山さんがやるのだと思っていたので、思わず尋ねる。
「女性がやるんですか?」
「はは、やっぱりあれですか、女性のほうがいいですか、はは」
丸山さんは微妙にいやらしい笑いを浮かべる。
そんなことがあるかと、私は少々気分を害しつつ女性をチェックしてみる。おお、けっこう可愛いではないか。どことなく、04年度のイメージキャラクターの乙葉に似ていなくもない。
いいっスね、いいっスよ!
丸山さんはいやらしい顔のまま部屋を出ていき、さっそく乙葉さんは仕事に取り掛かる。

アートネイチャーのシャンプーって、こんなもの?

施術はシャンプーから始まった。つのよい洗髪だ。
い最近までホンモノの美容師だったというだけあって、手際シャンプーって、どのくらいの頻度でやるのがいいですかね?
「うーん、2日にいっぺんとかでいいんじゃないですか? 皮脂って、取りすぎると悪いですよね。
毛穴が詰まるのもダメですけど、取りすぎるとかえって脂が出ちゃいますし」
毎日よく洗うべきだとするアートネイチャーの方針とは逆の驚くべき発言。教育が行き届いていないのだろうか?
そして、SQシャンプーによる洗髪だ。丸山さん日く、指定成分が入っていないということであったが、ここで実際の成分を見てみよう。
①ラウレス硫酸ナトリウム
②スルホコハク酸パレス2ナトリウム
③ラウラミドグルコシドベタイン
これは、丸山さんがいうほどよくない。②と③の成分は、それぞれスルホコハク酸を使用した弱酸性洗浄剤と、ベタイン系とよばれる低刺激洗浄剤だが、最大配合量のラウレス硫酸ナトリウムは、市販シャンプー成分の代名詞ともいえる洗浄剤だ。刺激性は高い。
これ、ダイレクトに指定成分じゃないっすか、丸山さん! どこが市販のものと違うんですか?
もっといいのがコンビニに売ってますよ!
フルーツ酸施術と灼熱スチーム施術
問題のシャンプーでの洗髪が終わり、早くも目玉のディープクレンジング。フルーツ酸施術だ。
排水された溶液を再利用できるポンプ付きの流し台が運び込まれ、仰向けに頭を寝かされる。透明なぬるい液体が髪にじょろじょろとかかってきた。おい、ちょっと待ってくれ、乙葉さん……、あんた手袋しているのか? そんなに手荒れするのか?
どのくらいの濃度のフルーツ酸なのか問いたが、わからないとの答え。頭皮にダメージのない妥当なレベルに設定されていることを祈る。10分程度でこの施術は終わったのだが、とくに刺激があるわけではなかった。水で洗い流された感じに近い。害はなさそうで、安心である。
乙葉さんは「こんなに脂が取れましたよ」と、使用後の溶液を見せてくれた。透明だった液体が、真っ白く濁っている。
続いて、フルーツ酸を洗い流すために再度のシャンプー、コンディショナーの塗布。
こうして、やっと育毛剤の登場だ。まず、プレローション。皮脂そのものをつくらなくすると丸山さんが大見得を切った代物である。塗布されるが、何も感じない。刺激性はないようだ。
そのまま蒸気ヘルメットで頭部を覆われ、足下には太陽光治療器が置かれる。有害な紫外線を除いた可視光線を当て、全身の血流を改善させるという。
しかし、頭も足も熱されて、ひじょうに暑い。朦朧としていると、隣の部屋から客と店員の話が聞こえてくる。どちらも男だ。自毛部分のカットに来たカツラの客なのだろう。サイドの髪を流してとかなんとか、理容師に注文をつけている。そのうちプロ野球の話になって、ダルビッシユはホンモノかどうかで熱心に語り合いはじめた。
「ダルビッシュ……日ハム」「東北高……ダル……ビッシュ」「イケメン……ア‐.フブ……ファン……クラブ……」
朦朧とする頭に、断片的な会話が渦を巻く。血流がよくなるというより、単にのぼせているだけのような気がする。

男性ホルモンを活性化しにくくする育毛剤

耐えられなくなったころ、乙葉さんが戻ってきた。スチーマーをはずし、もうひとつの育毛剤スカルプローションの塗布となる。
この両育毛剤は、クチナシ、クララ(苦参=くじん。胃炎などに効果がある)、エンメイソウ(延命草。胃腸薬として用いられる)という三つの生薬を主成分とするものだ。特許庁のデータベースでこの製品の特許内容に当たってみると、以下の記述が見られた。
「本発明に係る5αレダクターゼ(一般的表記はリダクターゼ、引用者)阻害剤は、クチナシの抽出物20〜40%、クジン抽出物30〜60%、延命草抽出物20〜40%の割合で混合したとき、それぞれ単品で配合したときよりも効果が高い」
この育毛剤がその働きを阻害するという5αリダクターゼとは、なにか?
これは、男性の前立腺や睾丸、あるいはヒゲ、胸毛など、男性ホルモンによって発達する器官に多く存在している酵素であり、男性ホルモンのテストステロンをデヒドロテストステロンという活性型の物質に変えてしまう性質をもっている。
この活性化した男性ホルモンであるデヒドロテストステロンが、脱毛部位の男性ホルモン・レセプターに取り込まれると、通常の男性ホルモンでは見られない過剰な反応が起こり、脱毛現象などが引き起こされるという。つまるところ、5αリダクターゼの作用を阻害すると、デヒドロテストステロンがつくられにくくなるため、男性型脱毛は抑制されることになる。
こうした効果をもつ有名な薬が、フィナステライドという抗男性ホルモン薬だ。製品名はプロペシア。毛髪治療薬として国内で販売できる医療用薬物にするかどうか、現在、厚労省で審議中である。もとは前立腺肥大症の治療薬であるため、毛髪治療薬としても効果は折り紙つきだ。ただし、いまのところ未承認であるため、海外から個人輸入したり、医者から保険適用外で処方してもらう以外には、入手手段はない。
このほかに5αリダクターゼ阻害剤には、アートネイチャーの育毛剤に含まれているクチナシやエンメイソウなど、天然の生薬成分も数多く存在する。
医療機関ではない(医薬品は扱えない)育毛サロンは、こうした生薬エキスをメインに使わざるをえない。しかし、生薬では、フィナステライドなどの本格的な抗男性ホルモン薬と比べると、性欲減退などの副作用がない代わりに効果のほうも満足に足るものとは言いがたいようだ。たとえば前立腺肥大症の対策として、ノコギリヤシなどの5αリダクターゼ成分を含んだサプリメントが薬局やコンビニエンスストアで売られている。だが、こちらも予防になるかならぬかといった程度のもの
である。
さて、サロン体験に戻ろう。育毛剤の塗布のあとは、マイクロカレントという微弱電流で細胞を刺激・活性化する。乙葉さんは電流が通っているというグローブを使い、「単に指を当てているだけなんですよ」という程度の強さで頭皮をマッサージする。
続いて、電動マッサージキャップバイオウェーブを装着。なにやら内部に機械が仕込まれており、複雑な揉み方が可能になっている。これがなかなか悪くない。人の手の揉み方に近いという。
でも、そこで手持ち無沙汰に突っ立ってる乙葉さん、できればあなたのしなやかな指で揉んでほしいんですが……と言いたいが、気の弱い質なのでとうていムリでした。
ついで、頭皮を引き締める冷却スプレー・フリーズフォースの噴霧。最後に、ケラチンなどの入った髪質改善トリートメントを塗布して、約1時間弱の施術が終了する。
頭皮がカサカサになりました!
さて、乙葉さんに別れを告げ、またカウンセリングルームに。
揉み手で待機していた丸山さんに、再度スコープで頭皮を見てもらう。確かに毛穴はすっきりと開いている。ところどころ、まだ薄い膜が毛穴を塞いでいるところもあるが、脂はよく取れている。
「これ、何度かやると、完全に開くんですけどね」
でも、なんだか岸い感じがあるんですが。大丈夫ですか?
そう、このあたりから頭皮がむず岸くなってきていたのだ。
「ええ、強制的にやったんで、ちょっとここらへん、カサカサしていますね……」
スコープで見ると、確かに皮膚がザラザラになっている。なんてことだ、大丈夫か? 保温効果のあるプレローションを塗っても、こうなっているとは。
「でも、すぐまた(脂が出て)戻りますので大丈夫です」
あの、なんというか……これ、あんまり頻繁にできないですね。フタだけ取れればいいんだろうけど、もう頭皮全部がカサカサになってますよ……。
「そうですね、取りすぎると逆に抜けますから、ディープクレンジングは月に1回か2回ぐらいでいいんですよ。……で、これで、ウチの施術はすべて終わりなんですが」
さて、ここから売り込みが始まるかと思いきや・・・。
「ウチは予防程度でやっているんで、毛が生えるってことは、まずないんですよ。まあ、ウチじゃなくても、そうなんですけど。ただ、ウチはなんとか食い止めようということでやらせていただいてます。必ず、納得いただいてから始めてもらっています。ほかのサロンもまわってみて決めていただいてもいいです」
と、予想しなかったようなダンディな対応。契約しろだのしないだのの攻防戦が繰り広げられると予想していたのだが、肩すかしをくらってしまった。
「ただし、ひとつだけ、もしほかのサロンに行くなら、気をつけたほうがいいことがあります」
丸山さんは急にまじめな顔になって話しはじめた。なぜか小声だ。
「ほかのサロンに行ったとき、○○さんから価格表を見せてと言わないでも、先方から明らかにするかどうか、そこをよく見たほうがいいと思います。どこのサロンも、いろいろなものを組み合わせて(プランを)つくりますから。本当はもっと安いプランがあるんだけど、勝手に組み合わせて高いプランから売り込もうとするんですね」
さすが、長年高いカツラを売っているだけあって、売り込み方に詳しい。というか、丸山さん。あなたも前回、「じつは6回コースがあるんです」なんて最後になって付け加えたけど、……不問としておこう。
「もっとひどいところは、とりあえず安いプランで入会させて、あとからどんどん商品を売りつけてくる。「これこれが、ぜひあなたには必要ですよ、効果があがりますよ」なんて言って。ほんとに、よそは備品が高いんです。気をつけてくださいね」
こうしてアートネイチャーの体験は終了した。丸山さんはわざわざエレベーター前まで見送りにきて、「比べてみて、考慮に入れてください」というだけ。無理に売り込もうという姿勢は最後まで見られず、かなりの好印象であった。
……とはいえ、頭皮の橡みはその後数時間は続いたのだが。

テクノヘア

トークの魔術 マイナスイオンで毛は生える?
雑誌「週刊SPAI』の広告などで見かける、日本毛髪業協会所属のテクノヘア。設立は95年だが、精力的な事業展開で全国に36店舗をもつまでに成長した、名古屋発の中堅育毛サロンである。
どうやら、かなり儲かっているらしい。というのも、転職支援サイト「リクナビ」内に、以下のような驚くべき求人広告が記されていたからだ。
題して「楽チン契約の秘密」(原文どおり)。
「(客一人あたり)一回の契約が数十万以上になります。金額的に「簡単に契約できなさそう」とお考えですか? でもここのスタッフは皆20代のごく普通の女の子ばかり。じつは話し方にコツがあるんです。強弱の方法や、お客様の観察方法など。そのノウハウがあるから、結構簡単に仕事が取れます。たとえばあなたが一日一人、20日で20入接客すれば、700〜800万円を売り上げられるシステムが、ここにはあるというわけ」
従業員1人、一ヵ月700〜800万売り上げられるとすると、一年で8400万〜9600万!「結構簡単に」 一人で1億近く売り上げるだと?
さらに求人広告を読みすすむと、現れたのは、にこやかに微笑む女性の写真が3つ。それぞれ車のキーだの、ブランドもののアクセサリーやバッグを手に、満面の笑みを浮かべているではないか。
「頑張って働いた自分へのご褒美。VW『ポロ』新車のキー。一括で買いました♪」
「ブルガリのオニキスペンダント。18万円。友達からも羨ましがられちゃいます」
「エルメスのエールバッグ、22万。新品をブティックで買いました」
こんな求人広告を衆目にさらしているからには、最高の施術を行ってくれる育毛サロンなのだろう。もし、私を圧倒させてくれたら、カウンセラーの方々には、ぜひとも車はワーゲンと言わずポルシエ、エルメスはエールと言わずバーキンを買っていただきたい。
山田さん登場!
きっちり真贋見極めさせてもらいましょう、と私は一路、新宿南口店へと潜入に向かった。場所は、雑居ビルの6階だ。すさまじく稼いでいる(らしい)わりには、こぢんまりとしている。店舗の中も、以前取材した大手に比べるとかなりチープな感じだ。もちろん、内装など施術とは関係ないのだが。
案内された部屋で問診票を埋めながら待っていると、カウンセラーがやってきた。
「失礼しまぁす。きょうの担当をさせていただきまあす。よろしくお願いしまあす」
25歳程度であろう、茶髪の女性だ。気が強そうでちょっと太めなあたり、山田まりやを思わせなくもない。
問診票をもとにした簡単な質問が終わると、さっそく山田さんは頭皮チエックに移った。私の髪をまさぐりながら、頭皮をクソミソに言いはじめる。
「頭皮の色もよくないですねえ。普通は青白い感じが一番ですが、赤いような、黄色いような。血行不良を起こしていますねえ」
アデランスやアートネイチャーでは、頭皮は健康と言われたのだが……。体調によって違ってくるのだろうか。
それから、マイクロスコープでのチェックに移る。画面には、もう何度も見た自分の頭皮が映っている。いつもと同じ、白っぽい頭皮である。どこが黄色っぽいのか尋ねようとすると、「あー、脂がやっぱり多いですよお! 頭皮はとても不健康!」と、新たな一撃が加わる。
(イライラしながら)昨日の夜、洗ったんですが、不健康ですかね?
やっぱり、脂がハゲの主要原因ということですか?
「ええ。脂が浮いちやってるんですよお。この白い部分が脂。脂がすごい出てるって感じ。全然、よくないです」
「そうです。これだけ脂がありますからあ、皮脂が毛穴の中に詰まってぇ、髪が抜けてしまうんですよお」
私より汚い頭皮?
完全に気分を害している私は、ここでいつもなら出ない暴挙に出た。
すみませんが……ちょっとあなたの頭皮見せていただけませんか?
「……私のですかあ?」
山田カウンセラーは、あからさまに嫌そうな顔をした。もう、眉間にばっちりシワがよってしまっている。素が出た感じだ。
あの、普通の頭皮って直接見たことがないんですよね。きれいな写真だけ見せられて、私の頭には脂が詰まっていると言われても、ちょっと信じられない部分があって。すみませんが、お願いできますか?
「あー、はいはい
はい。(溜め息)……でもお、女性と男性はホルモンも違うし……」
でも、脂で抜けやすくなるっていうなら、男女共通ですよね。
「(だるそうに)あI、はいはい……」
それから山田さんは、欧米人がやるように、「オウ、ノウ」という感じで肩をすくめた。舌打ちまで出かねない様子だ。意を決して頼み込んだ私も、少し後悔するくらいのげんなりとしたムードが狭い室内に充満する。
山田さんは、しきりに溜め息をつきながら、だるそうにスコ〜プを自分の頭に当てた。待望の「女性の頭皮」が画面に映し出される一瞬である。
映し出された映像は……まことに言いにくいのだが、いや、はっきり言わせてもらおう。山田さんの頭皮は、私の頭皮よりもずいぷんと汚かった。皮脂膜はグロスを塗り込んだように分厚い層をなしていて、ギラギラと輝いている。ほとんどの毛穴にはプツプツと白い皮脂が卵のように詰まっている。あまりにグロい。
あの、これも、脂、出すぎということになりますか……?
「(自分の頭皮を凝視して)これ、汚い……」
ついうっかりとそう言ってしまい、山田カウンセラーはすかさずスコープを頭からはずそうとしたようだったが、一転して、頭皮をこまめに探り出す。
「でも、でも、たとえば、こことか、頭皮、白いのわかりますか。ここはきれいでしょう」
でも、毛穴開いてませんね。皮脂が詰まっているし。
「でも、シャンプーのあとはもっときれいなんですよお」
それは誰だって当たり前だ。それなら、私の頭もシャンプー直後に見て判断してくれればいい。私は礼を言ってやめてもらった。

脱毛原因はホルモンなのか脂なのか?

彼女はショックを隠せない様子だったが、なんとか説明を続けた。「……でもぉですね、たとえば、同じくらい脂が出ていても、女性と男性どちらがハゲな
いかといえば、女性なんですよ。ホルモンが違いますから」
だったら、ホルモンが悪いわけで、脂自体はあんまり関係ないということになりませんか? あれだけ脂があったって、あなたはいっぱい髪があるし、将来も田丿性みたいにハゲたりはしませんよね。じつは、あれで健康だってことはないですか?
「でもお、皮脂は酸化して、酸化皮脂になるのでぇ、やっぱり取らなければいけないんです!表面に脂が溜まっているということは、中にも脂が溜まっているということです,表面に酸化した皮脂がフタをしていてぇ、申にも酸化した皮脂が溜まっている状態です!」
だから、それはあなたも・・・と言いかけたものの、強烈な脱力感に襲われて、やめた。
「○○さんの場合、頭皮も硬かったですから、血行不良も起きています。あと、男性型脱毛に加えて、○○さんは脂も多いので脂漏性脱毛症もいっしょになっている、だから抜けるんですよお」
え? 私は……脂漏性脱毛症なんですか?
ショックだ。私は病気なのか?
「そうですよお。男性型脱毛と脂漏性脱毛症はいっしょに起きるんです」
と、私よりも脂の多い山田カウンセラーは、その説明を始めた。5αリダクターゼがテストステロンを活性化するという、例の話だ。
「この活性化されたテストステロンは、まず皮脂腺を攻撃します。だから、皮脂腺が大きくなってしまうんですね。そうするとたくさん脂が出て、髪の毛が抜けてしまうんです」
たとえば、思春期のニキビも、テストステロンと5αリダクターゼが結合して皮脂腺を活発にするから起きやすくなるらしいんですが、思春期で髪は全然抜けないですよね。頭皮だって脂はたくさん出てるわけですが、どうして思春期に髪は大丈夫なんですか?
「それは……あれですね。ホルモンて、増えていくものなんですね、歳を取るごとに。だから、男性ホルモンが増えて、5αリダクターゼとの結びつきが増えてくることでどんどん攻撃して、抜け毛が増えてしまうんです」
歳とともにホルモンが増えていく説って、あるんですか? ホルモン量のピークって、20代前半らしくて、それからは徐々に低下していくようなんですが。男性だって、しまいに更年期障害とか起きますよね。
「(しばらく考えて)それはですね。年齢を重ねていくと、細胞自体に悪い活性酸素とかが溜まって、弱く老化していきますよね。いまは、若年性更年期障害ってありますし、悪い影響を受けやすくなってくる。えー、免疫自体も弱くなるのでえ、こういう影響を受けてしまうんですよお」
うーん、なにを言っているのか全然わからない。
これ以上突っ込んでも、どんどんタチの悪い客と化していくばかりのようなので、ともかく実際の施術をしてもらうことにした。
マッサージチェアはいいけれど……
施術の流れについて簡単な説明を受けてから、個室に移動。ほかのサロンと同様、備え付けの流しがある狭い部屋だ。
まず、クレイ(粘土)シャンプーでの洗髪からスタート。汚れを吸着する粘土が入っているシャンプーだという。髪を扱う手際がかなりよい。聞くと、山田さんはもと美容師であるという。このあと、頭皮と皮脂腺の炎症を抑えるという生薬配合のトニックを頭に塗り、スチームで毛穴を開く。
私の頭は炎症を起こしているんですか?
「皮脂腺が肥大するということは、つまり、炎症を起こしているということですのでぇ」
すると、炎症を起こしている頭皮と皮脂腺に熱を加えていいんでしょうか?
「うーん、そんなに熱くないのでぇ。それに、育毛剤とかで炎症を抑えますよぉ」
言うに言われぬ不安をかかえたまま施術を受け続けるが、一点、悪くない仕掛けがあった。イスがマッサージチェアになっており、スチーム中は延々とマッサージしてくれるのだ。髪にはどうでもよいものの、かなり気持ちがいい。こちらをローンで購入したいくらいだ。
このあと、ハーブスカルプシャンプーで再度洗髪が行われる。こちらは、セージ、カミツレなど‥‥‥11種類の植物エキスが入っているという。でも、すぐに洗い流されてしまうのでもったいない。ほかのサロンの施術でも疑問だったが、育毛剤ならまだしも、シャンプーに大量に植物などのエキスが入っていて、なんの意味があるのだろうか?
続いて育毛剤の塗布。この育毛剤は、特徴的な2つの成分を配合しているという。調べてみると、確かに市販の育毛剤にはなかなか見られない成分であった。
まずはモノニトログアヤコール。これは、毛根部のエネルギー代謝酵素(ATP)の働きを強める作用があるといわれている物質だ。ペンタデカン酸グリセリド(ライオンの育毛剤「薬用毛髪カイノベート」などに配合)と似たような働きがある。
つぎにクロラミンT。強い酸化作用があり、5αリダクターゼとテストステロンの結合を阻止する働きがあるという。ただし、この成分は、かつて上水道の消毒などにも使われた塩素剤だ。刺激が強く、もちろん指定成分で、配合量も定められている。人によっては、かぶれるおそれも強い。ほかにも血行促進物質がいくつか含まれており、1本2万1000円。かなり高価な代物となっている。
あの、不整脈の気(け)があるんですが……
育毛剤を塗布した頭皮に、櫛状の低周波器で電流を流す。その際、右手にマイナスの電極を握らされる。ビリビリと手に刺激がある。私の体が通電しているのだ。
「普通、肌には異物が入ってこないようにバリアゾーン(角質などからなる表皮組織)というものがあってえ、水分が浸透しません。だから、低周波を使って一時的に、そのバリアゾーンを広げるんですねえ。育毛剤の成分に電圧をかけることによって、育毛剤を深部まで浸透させることができるんですよお」
典型的なイオン導入法の説明だが、もっと詳しくその働きを述べると以下のようになる。
水溶性の物質は、水に溶かすとプラスかマイナスかどちらかの電荷を帯びる。これらの水溶液を塗った肌にマイナスの電極を当てると、マイナスの電荷を帯びている水溶液中の物質は電気的に反発し、角質の奥にまで浸透する。
このイオン導入法は、美容外科や一部の皮膚科においても、おもにビタミンC誘導体などの抗酸化物質を皮膚に浸透させるために使われている。根気よく繰り返すと、ビタミンCのメラニン抑制作用でいくらかシミが薄くなったり、抗炎作用でニキビやニキビ跡が改善することもあるようだ。
いちおう、体に電気を通すことの安全性について聞いてみた。
「心臓の弱い方はお断りしているんです」
不整脈をはじめ、軽度であってもなんらかの心臓病が疑われる人や高血圧の人、あるいは過度に肥満している人なども、避けておくべきだという。私は軽い不整脈の気がある。父方、母方双方に、心臓病の気がある人がいるのだ。
その旨を伝えようか迷っているうちに、施術は終わってしまった。私にとっては、あまり強い出力ではちょいと危険かもしれない。
酸化、酸化、酸化尽くし
そして、高周波施術。今度はなにも揺らない。頭皮に電極部分を当てるだけだ。小さく蚊の飛ぶような音がし、独特のオゾン臭が立ちのぼる。
「この高周波で、結合してしまったデヒドロテストステロンを、もとの2つの物質、5αリダクターゼとテストステロンに分解します。もちろん、結合を防いだりもします。高周波はオゾンを発生していますので、そのオゾンの効果なんです。あと、オゾンにはほかにも、殺菌消臭効果がありますので、あわせて頭皮をキレイにするんですよぉ」
でも、こうやって頭皮表面で発生したオゾンが毛根に届くんですかねえ。
「え……。でも、さっきのスチームにもオゾンは入っているのでえ。あの、あたし、この匂い大好きなんですよぉ。お布団干したときの匂いみたいじゃないですかあ?」
だが、じつはオゾンとは、そんな日向のお布団のような牧歌的気体ではない。強力な酸化物質で、濃度によっては粘膜や呼吸器系に障害をもたらすものなのだ。超高度では紫外線を吸収してくれる、生物にとって必要不可欠なものであるオゾンだが、地表近くでは単なる大気汚染物質でしかない。
春先には安全に生活するための環境基準値に肉薄するほど濃度が上がり、大きな環境問題になっているほどだ。
大丈夫だろうか山田さん、あなた胸いっぱいに吸い込みまくっているけれど……。テクノヘアに労働組合はあるのかなどと、よけいなことを心配してしまう。
さらに、バイオプトロンという機材を使った太陽光施術が行われた。アートネイチャーで足に当てられたものと同じだ。ただし、今回は頭皮に照射となる。この施術の際、頭皮に高濃度酸素水(オキシスプレー)というものを吹きかけられた。
「酸素が通常よりいっぱい入っている水なんですけどぉ、バイオプトロンの効果を高めるんですよ」オゾンに続いて高濃度酸素。酸化しすぎて皮膚が老化しないだろうかと懸念してしまう。
これで施術は終わった。ひとり部屋に残され、髪をセットする。鏡の横には、マイナスイオングッズのポスターがベダベダと貼られている。私も一時期、ハマったものだが……育毛にも効果があるのだろうか?
部屋に戻り、まず山田カウンセラーに言われたことは、サロン体験中に85本もの髪が抜けたということだった。
「シャンプーでは、1日の抜け毛の3分の1が抜けるんですねぇ、だからあ……」
私は毎日255本抜けているということですか?
「そうですねぇ。ウチでは、1日に抜けるのは50本から70本って言われてますから、それだけ抜けるとお……」
?もう光速でハゲていくってことですかね? あさってサムライみたいな。
「そうですねぇ。この○○さんのペースだと、月に……」
(紙に計算する)私は、毎月7650本抜けてることになりますよね。(日本人の毛髪は10万本だから)あと1年で、私はあらかたつるっぱげだと?
「そうですねえ。でも、新しい毛も生えてくるので、そこまではなりませんが、一刻も早くなんとかしないといけないですよねえ」
畜生。俺より汚い頭皮のくせに、なんたる言い草だ! 来年、俺がまたここへ来て毛量にさして変化がなかったら、どうしてくれる。あんたがその間に買ったブランド品全部よこせ、質に入れてやるから。
と言ってしまっては取材が即終了になるので、我慢して情けなく相づちを打つ。こいつはなんてヘビーな仕事なんだ……。
界面活性剤が入っていないってホント?
ふたたび、スコープでの頭皮チェックだ。
「頭皮がキレイになってますよねえ?」山田さんはうれしそうに同意を求めてくる。
でも、これ数時間で脂また出てきますよね。
「ですからあ、毎日しっかりシャンプーして。あと、強いシャンプーとかだと、ダメなんで。界面活性剤っていうものが入っているシャンプーはダメなんですよお」
ええと……。あの、界面活性剤って、汚れを落とす成分ですよね。あのシャンプーには、界面活性剤が入ってなかったんですか?
「界面活性剤じゃなくて、すごい優しい成分になるんですよお」
どんな優しい成分なんでしょうか?
「ええー、ちょっと、専門家ではないのでわからないのでえ、あとで開発のほうに開いてみないといけないですねえ」
汚れを落とす天然成分で、界面活性剤が入っていないものとは……? ふのり・海藻などのコロイド状物質か、あるいは多孔質粘土とかしか考えられない。確かに、体験サロンで使った2つのシャンプーのうち、一つはクレイ(粘土)シャンプーだった。とはいえ、あれも普通のシャンプーのように泡立っていたぞ……?
謎に満ちたこのテクノヘアのシャンプーの、実際の主要洗浄剤を見てみよう。
①コカミドプロピルベタイン
②オレフィンスルホン酸ナトリウム
どちらも完璧な界面活性剤、しかも合成界面活性剤である。ベタイン系はまだいいとして、問題は②だ。これはAOSと呼ばれる石油原料の合成界面活性剤である。刺激性はかなり強い。育毛サロンなら、もっとマシなものを使えないのだろうか?

メイン商品は130万円!

ここで、やっと金額の話に入った。基本的な商品内容はつぎのとおりだ。
まず、施術代金。そして、シャンプー・育毛剤からなるホームケアセット。
さらに、総合栄養サプリメント(1万円)と抗酸化食品(6500円)。最後に、一台で低周波と高周波の機能を備えたTH(20万円)という機械。以上からなるテクノヘアの各コースの料金体系は表3のとおり。メインは1年間100時間コースだ。

テクノヘアのコースと料金

テクノヘアのコースと料金


みなさん、どのコースから始めるんですか?
「やっぱり、お得なので、100時間からやられる方が多いですねえ」
この100時間の1年間コース終えたら、そのあと、もう来なくてよくなるんですか?
「(自信たっぷりに)はい。1年で脱毛サイクルを元に戻しますのでえ。それからはそれを維持していけばいいので、大丈夫です」
オプション製品がほかにもあるというので、その説明も求めた(表4参照)。
テクノヘアのオプション製品と料金

テクノヘアのオプション製品と料金


 
あのう、これ……全部、身につけるんですか。
「うちで、独自に開発しているマイナスイオン商品なんですよ。ウチはマイナスイオンにすごい力入れているんです。空気を浄化して、血流をよくするのでえ、屑こりとかなくなったりするんですよぉ」
それで、髪が生える、と。
「そうですね。まず、やっぱり体を健康にしていかないといけないのでえ」
驚異のマイナスイオン計測器の正体は?
山田さんはいったん席を立ち、マイナスイオンを計測する機器と、なにやら商品であるらしいブレスレットを持ち出してきた。アジアン雑貨屋で売っているような丸い石が数珠つなぎになったものだ。
茶色の縦筋がいくつも入っている石、鈍く黒光りする鉱石などで構成されている。機械に近づけると、機械のカウンターには「910」という数字があらわれた。
「これ、このトルマリンがマイナスイオンを発しているんですよぉ」
ああ、トルマリン、一時期流行りましたね。その黒っぽいほうですね?
「いえ、この茶色いのですよぉ」
あれ、その筋が入っている石は、トルマリンではなくて、明らかに虎目石だと思いますよ。
それに効果があるかなあ。強いていえば、金運アップくらいかな。黒っぼいほうは……ブラックト
ルマリン? ちょっと渋い色合いだから、あるいはヘマタイト(酸化鉄)かセラミックかな?
水を得た魚のようにくっちゃべっている私だが、すみません、鉱物マニアなんです。
山田さんはよくわからない、といった顔で首を傾げ、
「あの、中に成分を配合しているんでぇ、製造法とか企業秘密なんでぇ……あれなんですけど」
私の興味はすでに機器のほうに移っている。形状は、まるでむかしのでかい電卓みたいだ。手持ちの硬貨や鍵などを近づけてみるが、数字は10〜20程度にしかならなかった。
山田さんは、ブレスレットを再度近づけ、誇らしげに四桁近い値をはじき出す。
(本気で驚く)うおおおお! なんかドラゴンボールに出てくるカウンターっぽいスねえ! ここういうマイナスイオン商品、みんな買うんですか?
れ、数字が高ければ高いほど健康にいいんですか?
「そうですよお。私も肩こりとかすごい取れてえ」
山田さんは満面の笑みで答える。健康にいいかどうかはともかく、なにかを示す数字が出ているのは確かだ。これは……大きな謎だ。
「その人の状態に合わせてお勤めするので。全部持っている人もいますよぉ」
全部! 大丈夫ですか、その人! それで、ちゃんと効果は出てるんですか?
「ええ、ちゃんとみなさん生えていますよ」山田さんは、実績写真集を持ってきた。しかし、そのファイルにはあまりにも極端な例ばかりが陳列されている。なんだか、円形脱毛っぽい、自然に治るタイプのものが多いような気がする。
こういうのばかりでなくて、全体的なデータはありますか? 統計的に客全体の状況を把握できるような。
「でもお、人によって生活環境も違いますし、どれだけ頑張ったかも違いますので」
それを言ったら、ここの施術がどれほど効果があるかもわからないですよね。全来店者の回復傾向を追った客観的なデータはないんでしょうか?
山田さんは他店舗の実績写真集を持ってきたが、これにも数例の劇的な回復例が載っているだけだった。私は礼を言って、それを下げてもらった。
こうして、テクノヘア潜入取材は終了。出口まで見送りに来た山田カウンセラーの顔は、私のそれと同様、かなり疲れていた。
しかし、さらに解せないのはあのマイナスイオン測定器とかいう機器だ。調べてみると、「鉱石・セラミックが発するマイナスイオンを測定する機器」というものが確かにあることがわかった(ちなみに東急ハンズに売っていた)。これらの機器の説明を読むと、こう書いてある。
「石などによるマイナスイオンは微量放射線が空気中の水分と反応して作られるものです」
すると、あの機器は放射線を測定する装置、つまりガイガーカウンターということになる。別にマイナスイオンを直接測っていたわけではない(そもそも、マイナスイオンというもの自体に、はっきりとした定義がない。さらには、健康増進効果があるという明確なデータもないことを付け加えておきたい)。
こうして放射線という単語が出てしまう以上、マイナスイオン関連鉱物の安全面に懐疑的な論を発見することはむずかしくはない。たとえば、日本生活協同組合連合会は、マイナスイオン製品の取り扱いに関して、以下のような態度を取っている。
「放射性鉱石を応用した『放射線型」の寝具などは、微量であっても被曝について慎重な見方があるために取り扱わない。さらに、宝石の一種でマイナスイオン効果をうたうトルマリン製品については『科学的根拠がない」として扱わない」(『朝日新聞」02年8月24日)
育毛サロンは正規の医学には頼れないだけに、ついつい真偽が明らかでない分野にまで手を伸ばす傾向があるようだ。やれることならなんでも取り入れたい。その気持ちはよくわかる。とはいえ、こういう未知のものは、欲張らないで、まじない程度に扱うのが一番ではないか。仮に放射線による健康増進効果(低線量効果という)を期待するとしても、ときおり温泉にでも行くのがベストといえる。リラックスできて、うまいものも食えるのだから。

プロピア

大気のパワーで皮脂吸引発動せよg・d・s
さて、新進気鋭のプロビアが、今回の潜入相手だ。
96年から営業を開始したプロビアは日本毛髪業協会所属の育毛・カツラ業者であり、短期間で全国に23店舗をもつまで急成長した業界屈指の有望株である。テレビ東京系深夜枠に「給与明細」というテレビ番組をもつなど、一貫してイメージ戦略に力を注いでいることでも有名だ。なかでも記憶に新しいのは、ヘア・コンタクトのCM。これは、美少女が腕にくっついた長い髪を引っ張るというなんともフェティッシュかつグロテスク、ついでにコケティッシュなもので、この衝撃的映像が同社の爆発的成長の導火線となったことは疑いない。
市原さん登場!
潜入先は新宿店。地下が男性フロアになっている。内装は幾何学的でモダンなイメージ。かなり高級感あふれるつくりである。
受付に名を告げて待合室のイスで雑誌を読んでいると、白衣を着た中年の女性が呼びに来た。彼女がカウンセラーだ。くりくりした目のおばちゃん……どこか犬っぽい感じの……市原悦子にかなり似ている。
カウンセリング室へ入り、プロビアの育毛概要の説明が始まる。基本的に脱毛の予防、どんどん生えたりはしない、ほかのサロンとほぼ同じことをするなどと、控えめな説明が続く。ただ一点、プロピア独自の施術が存在し、これが「育毛分野でかなりの評価をいただいている」という。
「g・d・s、ヘアグロウデバイスシステムというものです。これは医療の世界でも、ガン患者の毛髪治療に使われているものなんです」
ガン患者の治療……?
そこで、「効果を確認できるデータはありますか」と尋ねてみた。これさえあれば文句なしなのだが。
答えはノー。個人差があるので統計は無理だという。
どこか納得できない。仮に、効果が100人に一人でも、個人差といえばそれまでである。値段も値段だし、個人差を超えた一定の割合になんらかの効果があるというデータはやはり必要だ。もちろん、怪しげな自社資料では困るけれども……。
抜け毛の原因はホントに脂?
ここでg・d・sの説明ビデオを拝見することに。
「大気の原理を利用するヘアグロウデバイスシステム……」と壮大なスケールでビデオはスタート。
かなり長い解説だったが、つまるところヘルメット内部でマッサージ、スチーム、減圧しての皮脂抜き、加圧しての育毛剤噴霧を行うことのできる機械である。最後に、この機械の自宅用ミニチュア版機器の宣伝が続く。このしやれたデザインのボックス型機械(通称シェルタ)は、サロン用の機械とほぼ同等の性能をもつにもかかわらず、一ヵ月1万5000円でレンタルできるらしい。
「プロビアはg・d・sの開発により、気長な育毛から確実な育毛へと進化しました」
「効果を測定できないものを育毛とは言わない!」
マッチョなアナウンスでこのビデオは幕を閉じ、入れ替わりにちょこまかと市原カウンセラーがやってきた。
そういうのって、男性型脱毛でハゲている人にも効き目があるんですか?
「うーん。男性型となると……リーブさんなんかは、医療的にやってます。病院を兼ね備えて。薬を飲ませたりとかするんです。ミノキシジルとかご存知ですか? その錠剤とかを飲ませるんですね。副作用が当然、ありますけれども」
また、リーブの黒い噂が出てしまったが、これは業界では公然の事実なのだろうか?
「ウチは(情報を)全部出してます。なにも隠す必要ありませんから。金額もクリアーにしています。
ただし、ウチの施術は最低でも1年からになるんですが」
これ、みんな1年でよくなって、終わるもんですか?
「いえ、続けられる方が多いですよ。やはり不安だからって」
この答えは、以前のサロンのいずれとも違う。1年で元に戻るので、継続する必要はないというニュアンスのことを言われ続けていたが、プロビアのほうが説得力がある。
効果を測定できないものは育毛とは言わないって、客のデータの統計も取らずにどうやって測定したんですか? と突っ込みたいのだが、相手のおどおどした小型犬顔を見ていると、どうも強く出られない。このタイプ、けっこう強敵だ……。
さて、体験前に頭皮の写真を撮る。市原カウンセラーは、ヘアスコープでキャプチャーした写真をもとに、つぎのように私の頭皮を総論した。
「いまのこの状態だと、毛穴が開いてないんですよ。毛穴がキレイに開いていて、空気が入る状態じゃないと、いけないんですよね」
空気中の雑菌が入らないように、毛を包むサヤは皮脂で満たされているんじゃないですか、と突っ込みたいのだが、もやっとした犬顔にまた意欲を削がれる。これでは、まずい。気を取り直して疑問をぶつけていかねば。
結局、プロビアもほかのサロンと同じく脱毛の第一原因として皮脂をあげていた。ホームページを見ても、「頭髪でお悩みの70%は抜毛による薄毛。その原因は、毛穴が脂肪でつまってしまう脂漏性脱毛症です」と記載されているくらいだ。とはいえ、抜け毛の原因が詣であると、ここまで断言してよいものだろうか。しかも、脂漏性脱毛症などという病名を出すならば、まず医者に行くよう勧めるべきだ。育毛サロンでは、治療に該当する行為はできないのだから。
この毛穴の詰まりが脱毛の原因だとして、市販のシャンプーでは取れないんですか?
「絶対、取れないです」
それじゃ、どうですか、台所洗剤とかだと取れますか?
「(笑って)そんなもので洗ったら、汚れは取れても、頭皮がダメになりますよね」
きっとそういう脂だの皮脂のフタだのだったら、小・中学生でも溜まってますよね。女性だって当然、溜まりますよね。
「それは……まあ、みんな溜まっていますけれども……」
それに、後頭部とか側頭部にも皮脂は溜まりますよね。ハゲる人でも、どうしてそこはハゲないんですか?
「根本的な原因というのは、まだわからないのでなんとも言えません……。カラーとかパーマとかも悪いですし……」
徐々に市原さんの受け答えが揺らいできた。目が潤んで、ぶたれまくったマルチーズみたいな悲惨な顔つきになっている。
なんだか、動物虐待しているみたいな気になってきたぞ。それも、年老いた室内犬をへんてこな棒でつついているような気分だ。なんてこった。私は、「すみません、わかりました」と自ら話を打ち切って、サロン体験を不自然なほど熱烈に要望してしまった。やりにくい、やりにくすぎるぞ、プロピア。これも戦略なのか?

「アトピーでも使えるシャンプー」ってホント?

別室に案内され、いよいよ体験コースの施術がスタート。まずはホホバオイルでクレンジング。油をていねいに地肌に塗り込んだあと、スチーマーをかぶらされる。このスチームの蒸気には、πウォーターという水が使用されているそうだ。説明を求めたが、「命の水と言われています」と言うだけで、意味不明であった。続いて、シャンプー。
「リンスがいらない弱酸性のアミノ酸系シャンプーで、アトピーの方にも使っていただいてます」
ここで、このアミノ酸系シャンプーなるものについて説明しておきたい。
低刺激で洗浄力がマイルドな洗剤として、以前から弱酸性洗浄剤が存在していたが、これは元来肌用であった。花王のビオレシリーズがその先駆である。このシリーズに含まれているMAP(モノアルキルリン酸エステルナトリウム)や、ほかにスルホコハク酸系と呼ばれる界面活性剤などが、現在む洗顔剤やボディシャンプーによく使われている。
アミノ酸系洗浄剤も、この弱酸性洗浄剤のひとつだ。もちろん洗顔剤などの成分としても用いられるが、リンス効果などをもつためシャンプーにも多く使用されるにいたった。ココイルグルタミン酸ナトリウムなどグルタミンを含むものが代表格。ほかに、ラウロイルメチルアラニンナトリウムなどのアラニン主体のもの、ラウロイルメチルタウリンなどのタウリンを扱ったものなど数多く存在する。
ちなみに、ベタイン系と呼ばれる洗浄剤も低刺激であり、アミノ酸系と合わせてシャンプーにはよく用いられる。ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタインなどが有名だ。
では、プロビアのシャンプーの実際の主要洗浄成分とは? 後日、電話で取得した情報をもとに、配合順に記載してみよう。
①ココイルグルタミン酸TEA
②パレス3硫酸ナトリウム
③ラウリルベタイン
①は、グルタミン酸を使用したアミノ酸系洗浄剤の代表格だ。③も、低刺激のベタイン系洗浄剤。
「リンスがいらない」というのは、これらの成分のもっているコーティング作用による。問題は②のパレス3硫酸ナトリウムである。指定成分ではないが、洗浄力、刺激力ともに強い洗浄剤である。
性質としては、市販シャンプーの御用達成分ラウレス硫酸ナトリウムにかなり近い。これで洗浄力を高めてバランスを取っているのだろうが、アトピーでも使えるというまでには、もう少し改善の余地があるだろう。

g・d・s登場!

シャンプーでの洗髪が終わると、ついにg・d・sの登場だ。見上げるほどごっつい鉄の機械が私の背後に備え付けられる。けっこう怖い。まるで、突然テキサスの死刑囚にされた気分だ。
「これをかぶっていただきます」と市原さんは低い声で囁き、その機械にくっついているヘルメットを私の頭にごりごりとかぶせる。
(ビビリながら)うわ、これ、かなりきっついですね……。
頭頂部分を中心にかぶせられたヘルメットは、シリコンゴムで固く頭を締めあげてくる。
「真空状態にしますから、きつく締めるんですよ」
髪、すっぽ抜けたりしませんよね。
「それはありません」と市原さんは笑いながらスイッチを入れた。グオン、グオンと機械が動き出す。減圧・加圧されている感覚はなきにしもあらずだが、それもごく軽い感触でしかない。
これで吸い取ってるんですか?
「ええ。いま吸引しています。そんなに強い機械ではないので。強いと逆に頭皮に悪いですから」
後半の過程に入る。加圧とともに冷却感。
「霧状の育毛剤を充満させてます」
5分程度で施術は終了。この程度の刺激で、市原さんが言うように毛穴が奥まで掃除されているなら、悪くはない。
このあと、ローラー状器具を使用した頭皮のツボ押しマッサージと、g・d・sでは行き届かなかった側頭部や後頭部に同様の育毛剤を塗布される。こうしてこの体験コースは終了した。
私の髪は栄養失調?
またカウンセリングルームヘ舞い戻る。市原さんは、シャンプー時に抜けた私の毛の毛根写真を持ってきた。毛根チエックがスタートだ。
「普通の毛根は、毛の太さの1・5倍から2倍が正常なんですよ」
あれ、3倍じゃないんですか? アデランスでは3倍あるって言われたんですけど。
「そんなにはないですよ。けれども、○○さんの毛根は2倍ないかというくらい。細い毛も多いですし。髪の栄養失調かな、という感じがします」
この毛根は、男性型脱毛じゃないんですかり
「私はそうは思わないですね。健康だと思いますよ。ただ、ちょっと栄養が足りないかな、っていうことだと思います。でも、男性型脱毛を抑えることも必要ですね」
市原さんは、プロビアの育毛剤の説明を始める。
「さっきg・d・sで使った育毛剤はプログノ666グロウエッセンスというんですけど、男性ホルモンを強める5αリダクターゼという酵素を抑制する成分が入っているんですね」
どうやらアートネイチャーと同じく、生薬主体の5αリダクターゼ阻害成分が含まれた育毛剤の
ようだ。
続いて、市原さんはパンフレットをめくり、プラン表を開いた。いよいよ金額説明だ。
「○○さんに最低限必要なのは、このプログノ666という育毛剤と、さっき使ったプログノー26というシャンプーになります」
育毛剤のプログノ666は、1本あたり1万2800円。12本セットで15万3600円。シャンプーのプログノー26は、1本2730円。12本で3万2760円だ。これを施術と組み合わせて、1年コースの総額を計算する。
月1回では総額37万5360円。月2回では、51万3960円。月3回では、60万360円。毎週では、62万9880円。
シャンプー、育毛剤がついて、さらに毎週通って年間62万円というのは、なかなかお値打ちではないだろうか。
鉄壁のガードを崩せ!
あ、そういえば。このプログノ666っていう育毛剤ですが、具体的にどういう成分なんですか? つまり、抗男性ホルモン剤ですよね。
「えー、具体的な成分は、お客様にはお教えできない社外秘になってまして……。三恵製薬という会社を通さないと教えられないんです」
でも、製品には成分が表記されていますよ。もし、いままで使ったことのある育毛剤の成分と同じだったら、あんまり意味がないですし。
「……ですが、上の者に、社外秘なのでそれは言わないようにって言われておりまして。私もここで働いているものですから」
押しても引いても動かない。ここまで拒否されたのは初めてである。
サロン選びで育毛剤のことを把握するのは、なにより大切だと思うんです。それに、先ほどこの育毛剤を使われているんですよ。いちおうは説明してもらいたいんですが。
「契約していただけたら、お教えできるんですが。そう上の者に言われているもので……」小型犬とはいえ、番犬。市原さんは「上の者が、上の者が」と末端構成員風の繰り言を延々と繰り返すばかりだ。
育毛剤の成分がわからないのでは、取材は不充分だ。私は粘りに粘って聞き出そうとしたが、もはや市原さんは、帰ってくれムードを全身の毛穴や皮脂腺から醸し出しはじめている。それでも粘ってお願いすると、市原さんは「店長に開いてきます」と折れてくれた。
だが、それきりなかなか帰ってこない。私は、手持ち無沙汰に、机の上のファイルのひとつを開いてみた。いきなり、見覚えのあるものを発見。アデランスのコース内容を記した契約書が挟んであったのだ。ほかにも、よそのサロンのものらしき金額表が。
えっ、なんで、ここにこんなものが?
市原さんが戻って来る。「やはりダメでした」と言いながら、私の見ているファイルを、やんわりと奪い取る。
「それでは、今日はこれで。疑問があるのに施術を受けていただくわけにはいかないので、また日を改めて……」
市原さんはドアを開けて、私が出るのをじっと待っている始末だ。店長が「追い出せ」とでも言ったのだろうか。もしかして、私を他社のスパイかなにかと思っているのかもしれない。
あなたたちが、他社の動向に異様に敏感だからって、そんなに疑心暗鬼にならなくてもいいではないか……。
こうしてなかば強制的に店を追い出されてしまった私だが、これで引き下がるわけにはいかない。取材は完遂しなくてはならないのだ!
プロビアの各支店に問い合わせた結果、やっと青毛剤の成分が判明した。主要成分は、レゾルシン、タカナール、冬虫夏草(昆虫に寄生するキノコ。各種薬効がある)エキスといったところだ。
市原さんが言っていた5αリダクターゼ抑制作用は、冬虫夏草から採取されるエキスの効果ということらしい。タカナールは、感光素301号という細胞活性化物質だ。数々の市販育毛剤に配合されている。
問題はレゾルシンだ。これは、タンパク質溶解作用をもち、角質を強制的に溶かすので、フケ止め薬としてよく知られている。g・d・sの性能が宣伝どおりなら、こういうフケ止め成分が頭皮でなく、毛根まで直撃することになる。その場合、毛根のタンパク質まで破壊されないか心配である。
さらに、自宅用の簡易版g・d・sシェルタ。ホームページをはじめさまざまな媒体で、月々1万5000円から借りられるとの触れ込みであったこの機械。実際は、初年度で87万円かかる代物であることが判明した。
電話で説明してくれた店員によると、まずシェルタクラブなる会の入会金が38万円、機械レンタル料が18万9000円、機械に付属するヘルメット代金が10万2900円、育毛剤カートリッジが15万円……ともろもろの費用がかかり、総額87万円。しかも、サロンに通っている人でないと、レンタルできないらしい。
紳士的かと思いきや、そうでもない。プロピア----不思議なサロンであった。
 
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